最近の記事

1. 雨の日、街は眠る

————————。 複数の甲高い銃声が雨音と共に夜へ呑み込まれていく。 「任務完了しましたよ、首領」 まだ熱を帯びている銃をだらんとおろし、彼は言った。 『お疲れ様。幸には簡単すぎる相手だったかな』 傍を浮遊していた紙切れから狼牙と呼ばれた男の曇った声がした。蝶をかたどったその紙切れは、雨が降っているのにも関わらず優雅に翅を羽ばたかせている。 「御冗談を。身なりに気を遣う余裕がなくてすっかり濡れてしまいましたよ」 『はは、そんなに濡れても笑ってられる君が羨ましいよ

    1. 雨の日、街は眠る