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2021年度ひねくれゲームプレイ録

続きを楽しみにしている漫画の最新刊を、何ヶ月も読まずにいた。人がバタバタ死ぬ話と向き合うコンディションではないとか、丁寧な物語を疲れた日々の合間に消費してしまってはもったいないと感じるせいだ。

漫画は一例で、小説や映画などはさらに手をつけられるタイミングがないグズグズ人間だが、ゲームだけは別。少しの時間でも電源をつけてしまうし、アプリを立ち上げてしまう。私がゲームを一番娯楽として頼ってしまうのは、手を動かすからだと思う。じっとして物語に入り込むには集中力がいる。

そんなわけで、久しぶりに社会復帰して(体を壊して仕事を辞める→パンデミックで1年以上無職だった)あたふたしていた昨年も、ゲームはいくつか遊んだ。以下は昨年からごく最近までにプレイしたゲームの感想。ネタバレ配慮なし、レビューとしては特にお役に立ちません。

スターデューバレー

Switchで牧場物語の新作が出たので、久しぶりにやってみたいなぁとワクワクしていたのだがやめた。正直いうと、やっと実装されたと思われた同性婚が「大親友の儀」だったからである。私個人は異性とも同性とも大親友で構わないけど……片方だけが結婚なのは釈然としなかった。Simsシリーズなんて10年以上前から性別問わず結婚できるのに、価値観何周遅れなのだ!?

しかし荒れ果てた大地を開墾したい。ニワトリや牛のお世話をして過ごしたい。農場シミュレーションへの意欲が高まるなか、気を取り直して超有名インディーゲーム「スタバレ」を購入してみた。私が遊んでいるのはPS4版だ。

最初はメニューの操作がわからず苦戦したものの(説明を読まないプレーヤー)、慣れたらとても快適。字が細かいと思えばウィンドウの大きさも変えられるし、ぱっと見の印象より何十倍も遊びやすい。クラフト要素のおかげで、序盤から自由に農場を開発できる。

スタバレの何が一番好きって、音楽だ。季節のBGMがそれぞれ心地よくて、畑や町をただ歩き回っているだけでも楽しい。イベントで聞ける曲もロマンティック。音楽も含めてほとんど一人で作ったゲームだなんて、本当に驚く。

オリジナルはもちろん、VGM Classicsの編曲が好きでよく聴いている。

最初に同性婚の話をしたけれど、同性婚があるからってスタバレが特別リベラルとも思わない。ごく普通だった。ごく普通の町で、よくあるような、でも本人にとっては重苦しい事情を抱えて誰もが生きている。主人公だって同じだ。ブラック労働で心身をボロボロにして農場にやって来た。住人たちと少しずつ親しくなり、気持ちを打ち明けてもらうにつれ、私も心が軽くなっていく気がした。


アンジェリーク ルミナライズ

社会人数年目の会社員ヒロインが、仕事に疲れ酔った勢いで宇宙の女王候補になる異世界転生もの的乙女ゲー。

もとい、歴史あるアンジェリークシリーズの最新作である(以下「アンミナ」)。バディミッションBONDが面白かったので、制作のルビーパーティーへの期待と応援を込めて手に取った。ルビーパーティーの作品はいくつかプレイしたことがあっても、アンジェリークは初。「守護聖様」とか言葉しか知らないけど大丈夫かなぁ、と思ったら全然大丈夫だった。

アンミナはシミュレーションだ。育成するのは大陸。さすが宇宙の女王、神様みたいなものなのでスケールが大きい。
ライバル候補のレイナと競っていくのだが、9人の守護聖はときに気に入ったほうに肩入れする。そのお節介に助けられたりやめろー!となったりしながら、バランスよく文明を発展させていく。

金曜だからか誰も働いてくれなかった日のスクショ

シミュレーションが苦手なら難易度を下げればいいし、優秀な執事のサイラスくんにお任せしてしまってもいい。思ったほど難しくはなかった。プロモーションからわかっていた通り、初心者向きの最新作。紫とピンクが基調のUIデザインもかわいくてときめく。

略してDDK。胸に刻んでおきたいセリフ

守護聖との恋愛に関しては、お互いの存在でより強くなれるポジティブな関係性ばかりでよかった。普通の人間がいきなり神様になって違う時間の流れを生きていくわけなので、みんなそれなりに重いものを抱えてはいる。とはいえ乙女ゲーによくある「この人、ヒロインがいないと死んじゃいそう……」みたいな心配はなく安心です。

しっかりしてください

私が好きなのは風の守護聖のヴァージル。知的なキャラクターかと思ってたら、体育会系だったところ、風を司るだけあり掴みにくく面倒なところが良。


戦国無双5

奥義のフィニッシュに入る墨絵がかっこいい

15年以上続く戦国無双シリーズの最新作。
4までで一通り描ききったということで、今回はキャラクターデザインが一新されている。忍者のキャラクターが多く、海外市場を意識して作られている感じ。織田信長の時代だけに絞って描いたのが潔くて個人的には好印象。人気のキャラクターをバッサリとカットして、キャラゲー色薄めの渋い味わいに仕上げている。旧作ではおふざけがだいぶエスカレートしていた会話イベントも、今作は本編に即したものがほとんどで好き。

アクションは前作からのいいとこどり+さらに快適になっているので当然楽しい。武器が選択制になったのはなんともいえないが、周回中に気分転換したくなったとき、真面目な光秀を鼓で戦わせたりできるのは愉快だった。

青年期は刀、壮年期は刀+銃がデフォルトの明智光秀

シナリオは、描く期間が短いぶん重厚。内政や外交などの細かな背景はそんなに説明されないので、ガチで歴史を感じたい人には物足りないと思う。まぁ、無双としては通常運転だ。なぜその時期にそこにいる?とつっこみたくなるキャラクターもたくさんいる。なんだかんだでコーエーの歴史ものが私は好きなのだが、それは歴史に忠実だからではなく、歴史を物語として料理するのが上手だからなのかもしれない。本作における「戦」は、たとえるなら若い任侠たちの抗争のようだった。戦国武将っぽくはないが、物語としては最後までブレがない。

光秀の相棒設定な陽の男・山中鹿介。物語上の役割も大きい

そして主人公は織田信長と明智光秀の二人。これの何がよかったかって、敵がちゃんと敵だから。従来の戦国無双はPC全員が主人公だった。それぞれに個別シナリオがあるので、悪役としては描けなかったのだ。とあるキャラクターの「ろくな死に方しねえよ、あんた」という今際の際の恨み言は、5まで待たなければ聞けない。キャラ一新で一番満足したのはこのシーンであり、よすぎてプレイ動画を保存してある。清廉なのもかっこよかったけど、等身大の人間っぽい最期が新鮮だった。ありがとう……。

あとは、真田丸(4のスピンオフ)あたりから、死に臨む姿勢が好み。死をやたら美化するでもなく、かといって現代の価値観で「死なないで」とひたすら止めるキャラクターも描かない。信念のために、「戦」という手段を選んだというストーリーが割と納得できる。


カリギュラ2(+カリギュラ オーバードーズ)

わーい!駅のマックだー!!(マックではない)

2年以上田舎に引きこもっているからか、都会の街中や地下鉄が歩けてテンションが上がってしまった。オープンワールドじゃないし、グラフィックも簡素なんだけど、再現のツボを押さえているのでマップが楽しい。

前作から名前だけ知っていたゲーム。お正月に何か遊びたいなぁと思っていたとき調べたら、2からでもいけそうだったので購入しました。主人公のビジュアルに惹かれて……(男女どっちもかっこいい)。
学園ジュブナイルというジャンルにずっと興味はあったが、手までは伸びなかった。もう高校生に共感できる気がしないし、かといって青春を懐かしむほど歳を取ってはいないと思っていたから。ではどうしてカリギュラはよかったのか。このゲームの舞台「リドゥ」は仮想空間だからである。

主人公たちはみんな高校生ないし中学生だが、現実で同じ年齢・同じ姿とは限らない。何かしらの「後悔」をきっかけに、意図せずリドゥに招かれてしまった人たちだ。
味方も敵もNPCも、それぞれ現実では叶わなかった未来を求めている。ストーリーを進めたりクエストを攻略する中で、この人たちはいったいどんな人なのだろうと想像し、ついには心へ踏み込んでいく。もちろん、人の心をそう簡単に暴いていいはずはない。だから「見てはいけないほど見たくなる」カリギュラ効果がタイトルにつけられている。

リドゥがまやかしだと知ってしまった主人公たちは、どんなに心地よくても現実に戻ろうと決めている。それでも戦いの合間にはいっとき、理想の世界でしか叶わない学園生活を楽しむ。なんだかキラキラして切ない。学園祭のお化け屋敷イベントでの小鳩のセリフが特にぐっときてしまった。
スターデューバレーもそうだけど、疲れた大人にすごく効く。ラスダンを駆け上がりながらほろほろ涙が溢れてしまった。

バトルはコンボを決めるのがなかなか面白かった。なによりいいのは、楽士の曲がフィールドではオフボーカル、バトルに入るとオンボーカルで聴けることだ。フルコーラスなのが最高。こういう音楽の使い方、みんな好きなやつだと思う(主語拡大)。楽曲はすべてボカロPが担当しており、そのこと自体にストーリー上とても意味がある曲ごとにガラッと変わるエモーショナルなリグレットの歌唱、人間の機微がわからない無邪気なキィの歌唱、どちらも胸打たれます。

選ぶのが苦手な先輩・鐘太に選択肢のある質問をする意地悪

仲間にはLINEのようなシステムで質問があれこれできて、解像度がめちゃくちゃ上がる。みんな好きだけど、推しは仲間なら能登吟、敵なら#QPです。

2が面白かったので、前作の完全版『カリギュラ オーバードーズ』もプレイしている。

こちらは社会的な話題が生々しく表現されていたり、キャラクターのプロフィールに実在の病名が出てきたり、意欲的というか……オロオロする部分もある。
差別や偏見を取り上げるなら原因が社会にあること、だからこそ個人の中だけで解決は不可能なことを明示してほしい。「その場の本人だけ救われることが目的」という制作者のコメントがあるので、自覚的にやっているのがわかるから余計に残念だ。
実は2だって批判されそうな点をぼかしただけで、スタンスは同じ。マイノリティの居心地悪さは本人が納得するしかないし、体が不自由になったキャラクターに対する解決方法が元通り(健常者)になること一択なのも、本当にその表現でよかったのかな、とは思う。

そんなわけで手放しで全部いいとも思わないけれど、ディティールの拾い方が素敵でとても好みなゲームです。オーバードーズはいま2周目で楽士ルートを攻略中。琵琶坂のキャラクターエピソードが楽しみだ。

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