風の囁きが聞こえる
「お疲れさんやったな」
『いや~ドッと疲れ出たわ』
「気ぃ張っとったんやね」
『そうかもしんない』
「お仕事、忙しなるで」
『そうなの。休まないと』
「読んでもらえて良かったな」
『いやホント、感謝だよ』
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こんにちは。フジミドリです。
お陰様で書き切れました。感無量です。本当にありがとうございました。
3月20日から連載して参りました私物語は昨日第14回でシーズン1の完結です。
最後は1頭の馬について種観霊──
種観霊とは霊魂の観点を通した人生の再確認です。小説と随筆の融合創作として私物語と名づけました。
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「よう書いたな」
『書けないかと思った』
「シーズン初めに書く言うとった」
『ずっと書けなくて先延ばし』
「確かに読むと凄絶やわ」
『目に焼き付いて耳で響く』
「けど、乗り越えなあかんのや」
『どうにか手放せた。26年!』
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日本では、競馬も馬術も馬の大半が屠殺場で最期を迎えます。疝痛で苦しんだものの、病死まで飼われたタムオは少数派です。
私とミドリには、息子代わりとも言える存在でした。結婚2年から三十代後半まで12年ほどの付き合いだったのです。
ミドリは、人間より動物が好きなくらいでした。馬術に憧れ、会社勤めをしながら土日だけ乗馬クラブに通い、私と出逢ったのです。
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「ミドリさんが愛したタム君、子供を望まんフジさん夫婦には大切な家族やった」
『そうなの。ペット溺愛な人じゃないと、わかってもらえないよね。しかも馬だからさ。馬術は日本でマイナーだもん』
「わたしも雌の柴犬を2頭見送っとる。家族より支えてくれたわ。下の子が高校出るのを待って離婚したけど大切な存在やった」
『そうだったね。オレは動物愛好家じゃなかったの。だんだん情が湧いて来たというか』
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父は、大学の馬術部で乗り始め、代表監督まで務めました。高校で水泳部員だった私が、大学生になって家で本ばかり読んでいると嘆いて、乗馬クラブへ連れ出したのです。
よく間違われます。競馬ではございません。日本では、馬術がマイナースポーツだから仕方ないのです。調教法も真逆となります。
私は、祖父が研究者だったこともあって学問研究を志しました。とはいえ、人生なかなか思うように参りません。
まぁ還暦過ぎの今となっては、何もかもが必然であったと感じます。成るように成るものだな、しみじみ呟くのです。
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「フジさん、医学部に入ろう思うたんやろ。研究者なったら、どないやったかな」
『精神医学に惹かれて浪人したけど、入試前日、親父の会社が倒産して。落ちたら、親父が気にするだろうなって考えたの』
「そらプレッシャーやわ」
『実力が足りなかったね。大学は諦めて民間治療やろうかとも考えたよ。でも、お袋が内職で通わせてくれたわけ』
「心理学者なろう思うた?」
『思ったけど色々ございましてね。でもさ、研究者だったら、意識とは何かどう使えばいいのかって探究してたよ』
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大学を出て、初めは経営コンサル会社の営業でした。高度経済成長を陰で支えた錚々たる先生方から、企業の在り方が学べたのです。
大学の卒論は自己実現に関する研究でした。進学塾の講師へ転身した後も、一貫して夢を叶える方法が探究テーマだったのです。
そして道術と出逢います。
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「そう聞くと、意識の探求でブレん人生や思うで。わたしなんか何一つとして達成できてへんよ。見込みもあれへんしな」
『あはは~ホントだな。オレもそんな気になるよ。でもこれって、脳が記憶改竄して辻褄合わせしただけなのね。自己満足さ』
「なるほどな。死んだら消えてなくなる。ゼロや。ほな、せめて楽しく生きんと損やで。まぁフジさん、死んでも変わらんやろな」
『あはは~そうなの。タムオの話を書き始めてからますますゼロというか。今ここが死後の世界だぜ。そういう心境なのよ』
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どなたも、おありでしょう──
記憶の底に封印して、できれば触れずに済ませておきたい出来事が。けれども、いつかは光を当てなければなりません。
心震わす思いを抱えたまま、次なる世界へは旅立つことができないのです。
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「幽界へ行ったら、突きつけられるゆうか、露わになるんやもんな。隠せへん」
『だけど、幽界なんて想像がつかないから、つい先延ばしになるのさ」
「生きてる間、目の前にあるお楽しみに夢中でいたいもんやで。人間の情いうか」
『死後の世界は人間的な感情が通用しないからね。死んでから気づいても遅いのさ』
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この世には、辛くて苦しい凶事がある一方、心躍る愉快な慶事も多くございます。
目の前にある何かへ没頭し、死後の世界など考えたくもない。それもわかります。
正直なところ、私も何故このようなお話を書くのか、疑問に感じる時はあるのです。
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『書く内容と方向性が浮かぶと、人間のオレは無理できっこないって思うわけよ』
「ははぁ。もう一人の自分というか、霊魂の自分が書け書け、急かすわけや」
『そうなの。中真を意識してゼロになれば、守護の神霊と繋がっちゃうのさ』
「けどフジさん、楽しみなことまで、辞めろいうわけやあれへんやろ」
『楽しむことも決まってるからね』
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人生に、こうでなければならないという正解はございません。決まってる通り坦々と済ませつつ、理解を深めれば宜しいのです。
息子代わりだったタムオの最期も、心奥深く秘めたまま済ませることはできました。
公開しなくても──
とはいえ、書き終えれば、これでいいのだと心地よくなれました。どなたかにお読み頂く前提で、書き記す必要があったのです。
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『切なくも温かい物語。家族の在り方は自由ですね──そういったご感想を頂けた。書いてよかったと嬉しくなる。感謝だよ』
「作者冥利に尽きるわ」
『それでふと読み返してみたら、感極まってもう涙が溢れちゃって』
「スマホに吹き込んだ声を聞いて、これ誰やねん言う感じんなる、あれと同じかな」
『そう。そんな感じよ。でね、感動しながらも、ああこれもオレが創ってきたのか、しみじみと感じ入っちゃうわけ』
「なるほどな。読ませてもろたわたしからすれば、フジさんに書かせたいう理解や。何もかも自分で創っとるんやね」
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私はこのように書き、縁ある方々に読んで頂き、そうして癒されました。前世の約束が果たされ、業を済ませ得たのです。
とはいえ、どなたにも当て嵌まる道筋ではございません。頭で考え心に感じてうまくいくのか。私たちにはわからないのです。
やはり、守護の神霊にお任せするのが間違いございません。誕生から死まで全てを見通していらっしゃるのですから。
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『土曜にパソコンが壊れてさ。まぁ古いし、ヒヤヒヤしながら使ってはいたけど』
「えらいパニクっとったな。まーた、よりによって、最後の更新前日やからな」
『スビバセン。でも、丸投げのチャンスや、あの一言でゼロになれた。ありがとね』
「試されとるなぁ、思うことあるよ。何が起こってもお任せでけるかどうや」
『すぐ、忘れちゃう。独りじゃない。守護霊てか霊団。主護の神霊もいらっしゃる』
「なんやソレ、字が違うんか」
『うーん。どう説明したらいいんだ』
「あっはっは。書くネタ増えたな」
『まぁ、こんな感じかね☟』
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目前に起こる事件、やらかした失敗──今の私は後悔することがございません。
まだまだ人間的な私ですから、あれこれ思い浮かぶものですが、長い時間に渡って囚われることはないのです。
決まってるんだな──
そう囁いた瞬間、スッと消えます。そして、人生で感じ取った理解を、次の世界に活かせばよいと頷いているのです。
どうしよう、困ったと思う時は、すぐ守護の神霊を頼ります。全面的に凭れかかり、何もかもお任せするのです。
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『自立ってそういう姿勢だと思うのよ。守護の神霊に任せるからできるわけ』
「そらまた、新しい人生観やな。なるほど。自分の中に味方が居るから外に頼らん」
『最強軍団が控えているのさ。あるいは自分自身が独立企業みたいなもんだよ』
「三密は鬱陶しいけど、守護霊はんとは密になりたいわ。ええチャンスか知れへんな」
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今ここで生きていらっしゃる。生命がある。これより大切なことなどございません。ただ存在だけで素晴らしいのです。
生命がある。しかも、永遠の生命なのです。肉体や心は替え、時と場所と相手も違え、幾度となくやり直せるではありませんか。
なんと素晴らしい仕組み!
生命が何であるか、誰にも説明できません。科学も哲学も宗教もできないのです。説明はできないけれど確かにある──
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『何もかも一つだよ。一体感を取ればいい。何万年を遡れる前世。果てもなく続いていく来世。全てが自分自身なのさ』
「それ聞くと自分が大きいなる。わたしは空一杯に広がるわけやね。空から肉体の自分を見下ろす感じがしてくるわ」
『風が吹くでしょ。ある時オレは風の囁きが聞こえたの。ミドリの声で。大丈夫よ。何も心配いらないわってね』
「風の囁きか」
『そう。風が囁くのさ』
「耳を澄まさんと」
『うん。心の耳をね』
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シーズン1完結です。
ありがとうございました☆
シーズン2は、9月18日午後3時スタート予定でございます。西遊記は翌日午後6時、是非またお逢い致しましょう!
ではまた💚
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