採用戦国時代の今こそ第一志望で応募される採用サイトのつくりかた
はじめに
合同会社サン-リブの堀内崇です。このnoteは採用に悩む人事・採用担当者および経営者向けに「本気で良い人材を採用するための採用サイトで取り組んでほしいこと」について書きました。
まずは自己紹介いたします。弊社は採用サイト制作事業とポッドキャスト企画制作配信の2つの事業を展開。いずれの案件も企画・制作から携わり、リリースまで一気通貫しています。
なかでも、採用サイト制作事業では、自身が採用系Webディレクターとして活動。採用サイト専門の制作会社と提携し、採用サイトWeb制作ディレクションならびにサイト企画プランニングをメインで担当しております。
・大手運輸会社採用サイト立ち上げによるWebディレクション
・派遣会社採用サイト立ち上げによるWebディレクション
・大手道路管理会社採用サイトリニューアルによるWebディレクション
・某省庁における全国採用パンフレット企画提案→コンペ勝利→制作・納品
・数多くの採用サイトの立案およびプレゼンテーション
などを行ってまいりました。
上記と並行して、noteで国内の良質な採用サイトをピックアップして、500〜1000文字程度でレビューをするマガジン「今日の採用サイト」を連載中。100本以上掲載しております。
また、2022年より良質な採用サイトだけを集めた「採用サイトポータル」の運営をスタート。採用サイトの制作・デザイン・コンテンツの参考に採用サイト事例を集めて一覧化したオウンドメディアとして運用しています。
各種採用サイトのプランニングやディレクション、記事執筆や各種レビューを踏まえて、「第一志望で応募される採用サイト」を作るために具体的に何をどのように取り組んでいけばよいかについてまとめました。
なお、この記事は約90,000文字ある非常に長いコラムです。「長すぎて読めない!」「要点だけ欲しい!」という方は、下記目次の「まとめ〜第一志望で応募されるために」をクリックいただければ、押さえておきたいポイントの一覧をまとめております。そちらをご覧ください。
採用サイトは本当に必要なのか
さて、ここから本題へと進みます。本テーマはズバリ「第一志望で応募される採用サイトはどのように作ればよいか」についてお話しいたします。
この記事が必要ではない会社は
次の項目に該当している会社の方は、この記事をお読みになる必要はございません。
・採用することはないいわゆる「ひとり親方・ひとり企業」
・家族・親族のみといった縁故採用しかしない会社
・倒産する予定の会社
・SNS発信がしっかりできている会社
以上4つの項目のうちどれか1つでも当てはまるのであれば、私からお伝えすることはございませんので、そっと閉じてください。
なかでも4番目に書いた「SNS発信がしっかりできている会社」はたとえば
株式会社アクシア 米村歩さん
大和財託株式会社 藤原正明さん
アースメディア 松本淳さん
のように社長や代表自らがインフルエンサーレベルでかつ、セグメントもできた状態で採用プロモーションも含めた発信をしている企業です。こういった企業に対しては、私からお伝えできることはございません。
採用サイトは96%(推定)の企業が必要である
一方で、その逆はと言いますと「採用活動を行うすべての会社・団体」と定義します。これは何も会社だけではなく、すべての自治体・公的機関も含みます。
なお、今回のテーマは「第一志望で応募される採用サイト」。採用に悩む企業・団体がWebなどを活用してどのように採用活動をスムーズにかつ成功させていくかについて書いております。これはさきほどの「記事が必要ではない会社」の4例以外に該当すると見ております。では、さっそくいきましょう!
なぜ、採用サイトが必要なのか
結論を言うとこの2点です。
です。
人手不足が延々と続く未来しかない
日本社会はこれまで全般的に見ても「人余り」の状態でした。解像度を上げると90年代までは若者が多く、これから労働人口が増えていく状況・未来でした。
こういう状態でしたので、ブラックな言い方をすると「人の代わりはいくらでもいる」という状態だったのです。(氷河期世代は会社で、面接でこんなひどいセリフを言われた人も多かったと思います)たとえ退職されても、求人広告1本掲載するだけで余るほど人が集まった時代でしたから。特にバブル崩壊後〜2010年くらいまでこれが20年近く続きました。
ところが、その時とは一転し2025年には若者が当時より30〜40%近く少ない状態になってしまっています。
そして悲しいことに、人口ピラミッドの数値は「もう増えない」未来が決まっています。
数値に表現し直すとこの通り。
これらの推移は日本全体の労働人口に大きなインパクトを与えます。高校在学者が99%を超える現在、おおむね労働人口の入口となる18歳人口は1992年の時点で200万人を超えていたのですが、30年後である2022年の18歳人口はほぼ半減してしまっているのです。
上記のような状況にも関わらず大学進学率は過去最高を更新し続けていますので、なかでも高卒新卒を狙う企業にとってはより厳しくなっていくことが明白でしょう。
また、経産省がリリースした「未来人材ビジョン」では、「生産年齢人口は、2050年には現在の2/3に減少する。」と記載されています。大事なことなので2度言いますが、働ける年齢の日本人が2020年からの3分の2になるのです。
今でも人手不足なのに、働ける人が全体でさらに3分の2までに減ってしまうのです!
こういう状況にも関わらず、人手がかかる細かい業務が多いので日本の産業・企業でDX(デジタル・トランスフォーメーション)が必要ですが、ことさら日本ではDXが進んでいないのが現状です。
業務量・仕事量が変わらないのに、人だけがいなくなる。こんな未来がもうすぐそこまで来ているのです。
そういった状況を反映してか、2019年には中途採用における1人あたりの平均採用コストがついに100万円を超え、103万円になりました。
2018年度では83.0万円でしたからなんと20万円の増加。しかも「1人あたり」の金額なのです。ということは、単純計算して5人採用しようとすると500万円の採用コストを支払わなくてはいけない計算になります。この時点でもう一人雇えそうな金額ですよね…。今はそういった時代になっているのです。
先ほどお伝えした通り、労働人口は減っていることに加え有効求人倍率もずっと1倍を超えていますから、企業における人材の奪い合いはより苛烈を極めることになるでしょう。したがって、1人あたりの平均採用コストについても下げ止まりすることはあったとしても今の金額よりも下がっていくことは無いのでは、と想定されます。
求職者から選ばれなくなった会社の暗い未来
ここで突然ですが、将来はこういう日本社会になるというストーリーをぶっちゃけましょう。
人手不足が続く日本。労働環境や企業の取り組みも変えることができずついに2035年を迎えてしまった。東京都の人口がついに減少し始めたことがセンセーショナルなニュースとして報道。全国の18歳の人口はついに100万人を割り込み、高校は地方を中心に統廃合が進んで地域の2〜3番手高校すら職業科の高校と統廃合されたニュースがあちこちから聞かれる状況になってしまった。
企業の採用においては人材の奪い合いが苛烈を極めていた。そんなある日の朝、エレベーターの待ち時間にスマホでSNSを見た製造業C社人事のAさんが愕然とする。
「うわ!年収750万・総務課長職で内定出したMさん、介護サービスのZ社に行かれちゃった。。大手製造業N社のエースだったのに…」
製造業なのに同業他社ではなく、IT企業や人材サービス、介護やサービス業ですらライバルになってしまう有様。ウハウハしたのはMさんに転職を斡旋し500万の報酬をゲットしたナントカ転職エージェントだけ。今日もこんなシーンがあちこちから聞かれる始末に。
Aさんはがっくりしながらデスクについた。人材の奪い合いに破れた企業の我が社。そもそも応募がびっくりするほど全く来ない。求人広告を大枠で打ち出しても、エージェントにお願いしても、人材派遣会社にお願いしても、毎朝期待を込めてメールを開けているけど今日も応募者数がゼロ。
1ヶ月前にようやく応募してきた人は、明らかに自社に見合わない人だった。というのも半年前に採用した問題社員のY氏と同じタイプだったので見送らせてもらった。
その問題社員のY氏については所属長も頭を痛めているが、日本の解雇規制では簡単に解雇できない。というか問題社員のY氏ひとりいなくなるだけで、同じ部署の人間が大量に残業や休日出勤をしなくてはならなくなるのだ。しかもその部署には65歳再雇用のベテランが3人もいる。もうジレンマしかない。
応募が全く来ない、と言ったがお問い合わせフォームは週に5本ぐらい質問が届く。そのうちのほとんどが「給与体系ってどうなっていますか?」。またこの質問かよ、と思いながら毎回毎回同じような返信をしてエクセルに記録している。この作業、ホント無駄でしかない。。
あまりにも同じような問い合わせが届くので、採用サイトに給与体系のことを掲載したほうがいいんじゃないですか?と社長に提案したけど、却下。そもそも給与体系がバラバラでブラックボックスなんだよなぁ、当社。おかげで給与計算が超面倒。
そもそも当社の採用サイト、50万円で作ってもらったけど全然使えない。制作会社があまりにも営業してきて初期費用が安いから契約したけど、表向きのデザインだけすごくて中身がスッカスカな感じ。制作する人はデザイン以外、全部指示待ちだったし。で、運用し始めても結局毎回有料の転職サイトに求人広告を打ち出さなくてはいけない。いったい何のために採用サイトを作ったのだろう…。
しかも応募があっても私にしかメールが届かないから、誰も対応してくれない。そういえば、夏休み中に届いた応募問い合わせメールを見逃してしまい、その後返信したけどダメだったこともあったなぁ。
今日、藁をも掴む思いで別の転職エージェントと契約した。成功報酬型であるがなんと1人600万!採用する社員の年収とほぼ同額って、何??しかし、複数の転職サイトに年がら年中出稿しているのに全く応募が来ない状態で年間1000万円近くも「掛け捨て」になっているからなぁ。
昼休み。外食はどこも1500円以上するので、仕方なく880円のお弁当を食べながらスマホを見ていたら、人手不足倒産が過去最高になったことの記事が。またかと思いつつもここ5年はうなぎのぼりに増加して、ついに全国で500社を超えた。10年後は我が社もこうなるのでは、と戦々恐々しつつご飯をかきこんで昼休み返上で仕事を再開する。
連日の残業もあり眠気が増してきた午後2時、営業部長と製造部長からの社内メール。開封してみると、営業のK君と製造部のUさん奇しくも同時に2ヶ月後の3月末で退職の申し出が。ちょっと待て!営業のK君、高額のエージェントに紹介されて500万円で契約したんだぞ!?それがたったの1年半で退職っていったい…?? 一気に眠気が飛んでしまった。
バタッ!
午後7時、ここ最近残業続きだったTさんが社内で倒れた。「Tさん!!大丈夫か!?」Tさんはまっ青で受け答えができない。すぐに救急車を呼ぶが
「救急車がすべて出払っていまして、到着まで30〜40分ほどかかってしまいますが…」
は・・・??
「お車を用意できるのであれば、お車で近くの◯◯総合病院に行かれたほうが早いかもしれません」
まさか救急車すらこないなんて!そうこう言ってられないので社用車を使い、急いでTさんを◯◯総合病院に連れて行く。幸い病院では急患として受け入れてもらえたのでなんとかなった。
Aさんは処置室を出て待合室へ。ホッと一息ついた瞬間、Aさんはドッと力が抜けてしまい、ついに待合室のソファーで横になってしまった。
意識が朦朧とする中でAさんはつぶやいた
「もう、転職しようかな…」
おわり。
『未来予測2040〜労働供給制約社会がやってくる』
(リクルートワークス研究所)
https://www.works-i.com/research/works-report/item/forecast2040.pdf
を元に創作。
路線バス会社も廃業させた人手不足倒産の衝撃
先程の作り話、いかがでしたでしょうか。ゾッとするドラマのように聞こえますが、実はドラマの話ではなく現実化していくことが見えつつあります。
救急車の話でもあったように、人手不足の最大の弊害は「インフラサービスが届かなくなること」。そして果ては「人手不足倒産」です。なかでも人手不足から業務が回せないので受注できない・営業できなくなることによる人手不足倒産は昨年、過去最高を記録しました。
その極致となった例が、2023年に全区間廃止・廃業することを表明した大阪府南部にある路線バス会社の金剛バス(金剛自動車)でした。
金剛バスは路線バス自体の採算が取れていないなどの要因もありましたが、運転手の慢性的な不足が続いたことにより路線バスが廃業を決断せざるを得なくなってしまったことを社長が会見。これがまたたく間にニュースとなり、全国に衝撃が走りました。
これはなにも金剛バスだけの話ではありません。長野県で路線バスを運営する長電バスは運転手不足により日曜日一斉運休を決めました。さらに、埼玉県を走る大手私鉄・東武鉄道傘下の東武バスや横浜市の横浜市交通局も同じ理由で減便することを発表。
地方郊外だけではなく、地方中心都市や首都圏でもバスが大幅減便されることがニュースとなり、いよいよ全国的に路線バス業界における人手不足の深刻度が増してきました。
バス業界はその働き方やカスハラ対応の厳しさなどから、求職者から避けられてしまうようになった結果、公共交通を担うインフラ企業すら廃業してしまう時代に突入しました。
これは何もバス業界の話だけではありません。先ほどの創作話のように救急車を運転する救急隊員が確保できない、といった社会インフラ全体が人手不足によってその維持が危ぶまれてしまい、救急車すら来なくなる未来すらあり得るのです。
人材を奪い合う「採用戦国時代」にふさわしい戦略
このように人手不足が加速度的に進む現代の日本、一刻も早く人手不足の時代に合わせた採用対策を練らなければなりません。
「人が不足?求人広告さえ出せば人がやって来るよ!」
そんな時代はとうの昔に終わりました。人手不足倒産の憂き目に遭うこと無く貴社が生き残っていくためには「求職者が入社したくなる会社」に名実ともにならなければなりません。
数少ない求職者のなかでさらに優秀な求職者を奪い合う、今はまさに「採用戦国時代」という戦いの時代になったと言っても過言ではありません。人材採用は経営における最重要ポイントにしなければならないでしょう。
「人材の奪い合い」=「採用戦国時代」といった戦いが必要とされるなら、「戦略」が必要となります。戦略のなかでも大きな虎の巻となるのが採用サイト・採用ページです。貴社が数少ない求職者から選ばれるための採用戦略の手段のひとつとして、私は採用サイト・採用ページの開設を提案します。もちろん求職者から選ばれるための採用戦略は数多くありますが、ここではとりわけ採用ページも含めた採用サイトについて取り上げます。(ここからは採用サイト・採用ページをまとめて「採用サイト」と表記します)
採用サイトにおける優位性
求人広告が拭えない決定的なデメリット
今さらかもしれませんが、採用サイト、採用ページ、求人広告の特徴とそれぞれの違いについてまとめました。
「採用サイトはWebサイトで、求人広告はマイナビとかに入っている枠のことだろ!」と言われたら確かにそのとおりですが、まずはそれぞれの定義からお話しします。
求人広告は文字通り「広告」で、告知を広めるための手段です。それこそ求人広告は新聞の三行広告の時代から利用されております。今でもそのアクセス数は抜群で、求職者に周知・認知させることについては非常に強い機能を有しています。
求人広告媒体自体もネームバリューが強く、それこそ「an」「フロムエー」のような求人広告雑誌で仕事を探す時代を経て、現在は「マイナビ」「リクナビ」「タウンワーク」「アイデム」などそれぞれの求人広告媒体に対してWebを通してで仕事を探すことが一般的になりました。
ただ、この求人広告は多くのデメリットをはらんでいます。求人広告は広告を集合体にしている媒体ですので、広告スペースに限りがあります。しかもスペース内で自由に展開する事はできず、求人広告サイドが設定した型と文字数のとおりに文章や画像などを設定しなければなりません。
それらの数には限りがありますし、動画に至っては掲載できない求人広告メディアもあります。
また、情報を見せるデザイン面についても求人広告においては、デザインの枠があらかじめ決められております。加えてURLに至っては求人広告サービスのドメインの配下となり、求人情報ごとに管理番号が付与される仕組みで決められてしまいます。
求人広告メディアはこういったルールや制限が多く、自由に掲載をコントロールできないという決定的なデメリットがあります。
さらに言うと、求人広告はどこまでいっても外部のプラットフォームです。外部のプラットフォーム内でいろんな寄せ集めの状態であれば、
・大手有名企業
・目立っている広告(多額のお金を投じて大枠や最上位に掲載した企業)
に負けてしまうというデメリットもあります。
また、こういったデメリットもあります。
「絶対に人を獲得するためにここは一発、マイナビに超大型広告をかけていくぞ!」
ちょっと待ってください! もし、求める人物の方がマイナビではなく、リクナビを見ていたとしたら…どうなるでしょうか?
そうなんです!多額の広告をかけたとしても、求めている人物の方がその媒体を見ていない可能性だってあるのです。求人広告の媒体が多すぎて、求職者側もどれを見たら一番良い求人があるかわからない。出稿する企業側もどの媒体を使用したら効果があるかわからない。かといって両方のメディアに掲載するには単純に倍額になり、採用コストが大幅に上がるだけなのです。
さらに、求人広告には「掲載期間」に限りがあります。掲載期間を延長すれば当然掲載料を支払わなければなりません。人が来ないからといってずっと求人広告に掲載し続ければ、それだけお金だけが出ていく…ということになってしまいます。
掲載期間に限りがあることは何も金額コストのデメリットだけではありません。「期間のミスマッチ」を発生させてしまうデメリットもあります。
求職者は転職の際に「穴」・いわゆる無職期間を作りたくないものです。したがって翌年4月に転職を決めたい場合、図のように活動していくと見られます。
期間は長めに取っていますが、期間の長短はそれぞれであってもここで大事なことは、求職者は「線」で動くということです。すべての人がこのように動いているわけではありませんが、転職のゴールに向けて一貫して活動していくことが一般的です。
これに対して求人広告や転職サイトの場合、掲載期間は3週間〜2ヶ月弱ぐらいの掲載が一般的です。求職者が1年スパンで動く中で、求人広告においては「点」でしか存在を知らせることができません。しかも求人広告はどんどん他社の新しい広告に上書きされてしまいます。
求職者が「線」で動いている中、採用側の企業が「点」でしか採用意向を表わせない状況だと、「点」を拾ってもらえない限り出会えない可能性が高くなってしまう。これが期間のミスマッチを生んでしまっているのです。
応募を検討する求職者の約9割が自社サイトを訪問するという事実
求人広告が「広告」に対して、採用サイトはどちらかと言うと「広報」の面が強くなります。広告と広報の違いについての詳細は割愛しますが、かいつまんで言うと
・広告…周知活動による認知獲得および購買誘導が目的
・広報…周知・認知から信頼・信用の獲得およびブランディング向上を目的
としています。このことから、採用サイトは求職者に対する信頼・信用の獲得やブランディングが目的の面が強くなる傾向があります。
では、そもそもなぜ自社で採用サイトを立ち上げたほうが良いのでしょうか?結論から言うと
応募しようと検討している求職者の実に9割近くが自社サイトを見るから
に尽きます。
統計にも自社採用サイトのメリットがはっきりと現れています。
上記は2017年の統計ではありますが、2015年から比べても10%以上上昇していることからも企業ホームページ(=自社サイト)の注目の高さが伺えます。
調査の中でのコメントも
といった求職者からのコメントから見ても、企業ホームページや採用サイトでの注目度が高い傾向にあります。
なぜ、求職者の多くが自社サイトを訪問するのでしょうか?
突然ですがここでちょっと、想像してみてください。あなた自身が求職者になって、転職サイトで仕事を探しているときのことや面接に行く前日のことを。
明日は面接。半ば緊張しているあなた。面接に落ちたくない!と思うあなたは最大限の準備をしようとします。応募する会社や面接する会社が何を事業にしている会社なのか、どのような事業を行う会社でどんな社風なのか。自分に合いそうな会社なのか…最低限のリサーチはしておきたいところですよね?
また、面接で応募先の会社の事業内容を答えられなくて面接官から「あなたは何しに来たの?」と言われたくないですよね? そういった心理状況から求職者は自社サイトを訪問して予習をするのです。
実際にハローワークでは、求職者に対して入社を検討している企業の公式サイトを訪問して予習しておくよう案内されます。実は私も求職者としてハローワークに通っていた時期が長かったのですが、その時も同様に案内されました。
ここで言いたいことは、どのメディアを通ったとしても、最終的には「自社サイト」に行き着くということです。
求職者はさまざまな求人広告なりSNSからの情報を最初に見たとしても、最終的には自社サイトにたどり着くのです。自分に合う会社であるか、企業研究のために。あるいは面接対策のために。求職者は自社サイトにたどり着くことが、統計の数字として現れていることから、これは事実としてみても間違いないでしょう。
あの警視庁も採用サイトに相当力を入れている
警視庁と聞いて知らない人はいないでしょう。誰もが知る警視庁が採用サイトを展開していることはご存知ですか?
「え?警察が採用サイトなんて作ってるの?」とお思いになるかもしれません。実は採用サイトにものすごく力を入れている代表例が警視庁なのです。
ご覧になりましたか?圧倒的なボリュームとクオリティにびっくりですよね。個人的には日本一の採用サイトだと思っています。
「警察官は採用試験に合格しないとなれないから、そもそも採用サイトなんて必要ないのでは?」と思われるかもしれませんが、採用サイトにこれだけ力を入れているのです。その甲斐あってか、毎年採用予定者数に対して令和3年度は男性:5.7倍、女性:6.2倍の受験者数を誇っています。
なぜ、警視庁がここまで採用サイトに力を入れるのか。ここはあくまで推論ではありますが、「なり手」の問題が上がってきます。
警察の仕事は厳しい・きついことはなんとなく想像できます。時には身の危険をおかしてでも突撃しなくてはいけない場合も多々あります。そういったイメージから、警察職を避けられる傾向が出てきたということに加え、少子化による入庁者不足の懸念はかねてよりあった模様です。
加えて、警察の場合は全国の都道府県警察が人材を奪い合うライバルになりえるのです。となれば、警視庁とはいえ一人でも多くの若手に入庁してもらえるように応募を促さなければなりません。
警視庁ですらこれだけ力を入れているのですから、相対的に知名度で劣る中小企業が採用サイトに力を入れない理由はないでしょう。
なにより、採用サイトは自由だ
ちょっと前に求人広告には量も枠もデザインも、そして掲載期間にも制限があると書きました。これに対して採用サイトは基本的に掲載内容と量を自由に設定することが出来ます。
数多くあるホームページと同様に、掲載したいコンテンツの設定もページ数もボリュームもおおむね自由に設定できますし、デザインも自由なので、真っ白なキャンバスに描くように自社の個性をPRすることができます。
採用サイトはドメインとサーバーを用意した上で、制作してアップロードさえすれば誰でも公開できます。社内事情でドメインを変更するまたは、ページを別のアドレスに移し替えることがない限りURLもずっとそのままです。自社での制作なら管理・管轄も自社となるため、求人広告とは違って公開期限もありません。
採用サイトは無期限・無制限の環境にて、求職者に対して自社で働く魅力を自由にPRするメディアです。したがって求人広告よりも情報内容・量・掲載期間において圧倒的にハンドリング・カスタマイズしやすいことから、自社オリジナルの採用サイトの開設を私はおすすめします。
ただし、採用サイトを立てるだけではダメ
応募を検討している求職者のほとんどが自社サイトを訪問するのであれば、自社採用サイトを設置しない手はありません。しかしここまでメリットを打ち出してなんですが、実は採用サイトだけでは効果が出にくいという決定的なデメリットがあるんです。
「え? 採用サイトが大事で設置すべきと言っているのに、採用サイトだけでは効果が出にくいってどういうこと??」
「先程の警視庁の話と矛盾するのでは?」
たしかに、警視庁の採用サイトの例もお伝えしましたので、一見矛盾しているように見えるかもしれません。ですが、もう少し言葉をつけますと「採用サイトの単体運用だけでは効果が現れにくい」ということです。ここに採用サイトにおける大きな誤解があるのです。その誤解について解説していきましょう。
採用サイトにおける4つの誤解
採用サイトにおいて次の4点が誤解されています。
ひとつずつ解説します。
誤解1:採用サイトさえ作れば応募がたくさん来る
採用サイトの話になるとありがちなのが「採用サイトさえ作れば応募がたくさん来る!」ということ。なかには採用サイトこそが採用問題を解決する必殺アイテムのように捉えている方もいらっしゃいます。
もちろん、採用サイトを作って公開してから応募が来るようになるのが理想です。しかし実際には、求職者の応募数と採用サイトの影響は必ずしも合致するわけではありません。
これが言える理由は
以上の3点があるからです。詳しく解説いたします。
①採用サイトは認知・周知といった接点の役割を果たしにくい(認知の壁)
転職・就職活動をしている求職者は下記のような行動フローを経ることで、就職活動開始から入社後の定着〜活躍まで進みます。
なかでも最初の難関となるのが、存在を知ってもらうための「認知」の部分です。これについては株式会社WORDSの代表・竹村俊助さんが一目瞭然の図を表現してくださいました。
要はこれです!どんなWebサイトを立ち上げても周知活動しなければ認知されないということです。採用サイトを立ち上げても知ってもらう活動を行わないと、当事者に知られないのです
現に、貴社は合同会社サン-リブの公式サイトをご存知でしょうか?
初めてこの文章をお読みになる方は、ほぼご存じないと思います。私が所属している会社の公式サイトです。2021年から立ち上げているにも関わらず、周知活動に力を入れていないからです(←社長、すみません。。)。
このように、Webサイトはサイト単体では認知・周知機能を果たすことは非常に難しいのが現実です。せっかく採用サイトを立ち上げても多くの人に知ってもらえなければ、そもそも応募どころではないのです。採用サイトがある、採用求人を行っていることについて、求職者が「知らない」という状態から「知っている」段階に進めていく認知・周知活動が必要になります。
②認知から入社に至るまでの導線が設定されていないから離脱する
求職者から貴社について認知されてから入社するまでにおいて求職者がどのようなフローをたどるかをご存知ですか?
「当社の求人情報を見つけたら、すぐに電話かネットで応募するだろ?」
ハッキリ言います。しません!ほぼ絶対にしませんと断言します。
逆にあなたが求職者だったらすぐに応募しますか?良さそうな求人を見つけたら見つけたでその案件をキープしつつ、もっと時給や条件の良い求人やもっと有名な企業を探し続けませんか? 大多数ある選択肢の中から探す場合、即断で決定しないのが人間の心理です。
さらにあちこちの媒体に掲載したとしても、ゴールまでの橋渡しが正常に出来ていない場合、求職者がたどり着けずに途中で離脱してしまいます。
また、採用サイトでは「求める人物像」が掲載されているケースを多く見かけます。要はピンポイントで『この人』に来てほしいという企業側の意向を言語化したコンテンツです。
求める人物の方に応募・入社して欲しいのであれば、その人がそもそも誰なのかの設定も必要です。さらにその人にはどのような背景があり、どういった心理状況を元にどのような行動の流れを通っていくかのシミュレーションを行っていくことも欠かせません。
なぜなら人は理由・背景がないと行動しないからです。ましてや転職は人生にとって一大イベントですから、なおさらですよね。
求める人物の方に貴社求人の存在を認知されるところから、エントリーして実際に入社するまでの体験を想定して、求職者が自社に入社して活躍するまでたどり着く道のり(フロー)を作りましょう。要は「求職者、入社・活躍への道」を作りましょうということです。
それがないと貴社にピッタリの人物から見向きもされない、または、探す途中で(貴社の入社や応募を)あきらめる可能性が高くなります。
③求職者が通る行動フローにおいて3段階目で機能するから
よくある誤解のひとつとして「採用サイトを作ったら人が来る」というのがあります。採用サイトを作ったら人が来ることは決して100%間違っているわけではないのですが、採用サイト単体では集客媒体として機能しにくいという事実があります。
こんな例えをします。山奥にホテルを建てました。それはそれはもう立派なホテルです。しかしホテルまでの道のりが整備されていなかったらどうでしょうか? 誰も訪れることはできないですよね。採用サイトを単体で立ち上げるだけというのはこれと同じことなのです。
採用サイトは世界中に星の数ほどあるWebサイトのうちのひとつです。億も兆もあるサイトの中から求職者に見つけてもらわなければなりません。求職者に見つけてもらうためには、存在を知ってもらう「認知・周知」の機会と、存在を知った求職者から「発見」してもらう過程が必要となります。
発見した求職者はその求人情報に対して「興味関心を持つ」ことで、貴社の求人に初めて注目し候補のひとつとしてキープされるようになるのです。
ここまできて初めて求職者にとって「検討のテーブルに乗った状況である」といっても過言ではないでしょう。
過去に、転職サイトでキープした求人案件を見比べてウンウン悩んだ経験がある方もいらっしゃると思います。ズバリ、それです!求職者はキープした案件からそれぞれを比較して、自分にピッタリ合う会社であるかどうかを検討します。
2010年代前半まではこの役割を転職サイト・求人広告サイトが担っていました。しかし、比較検討する上で情報量・掲載期間に限りがある転職サイト・求人広告サイトでは差別化がしにくかったのです。
こういった背景から、自社の良さや働く魅力をもっとたくさん伝えるために自社Webサイトで求職者を採用するための専用サイトをつくるようになったのです。これがいわゆる採用サイトです。なお、採用ページは自社コーポレートサイトの一連に存在させたページのことを指します。
ここまでくれば、もうおわかりですね。
求職者は人生において大事な転職先を決めるために(ほぼ)必ず比較・検討をします。その比較・検討フェーズでは、転職サイト・求人広告に変わって採用サイトが広く利用されるようになったのです。
誤解2:大企業のようなカッコいい採用サイトを作れば人が来る
これに対してこの際ハッキリ言います。
「大企業のようなカッコいい採用サイトを作ったら人が来るのであれば、誰も苦労しねーよ」
と。
たしかに憧れますよね、大企業がつくるようなカッコいい採用サイト。
・ビュンビュン文字や写真が飛び出す
・ぐるんぐるん空間的にまわるサイト
・メタバースのようなイメージのサイト
・「No music,No Life」のような感じの「なんかカッコいい」コピー
・まるでRPGゲームのような世界観を全面に演出したサイト
ありますよね、そんなサイト。いかにも「カッコいい採用サイト選手権」に出てきそうなサイトです。
こういったサイトは「デザインまとめサイト」でよく見かけます。こういったニーズがあるのか、「採用サイト デザイン」の検索キーワードでは一定の検索数があります。採用サイトを作るぞ、となったときに「じゃあどんなデザインにしようか」となり、「デザインまとめサイト」を見るのがだいたい世の常です(笑)。
しかし、冷や水を浴びせるようですが「大企業のようなかっこいい採用サイトを作っても応募が増える」とは必ずしも言い難いでしょう。
いや、ここまで言ってなんですが、もしかしたら応募は増えるかもしれません。しかし「採用サイトのカッコよさだけに惹かれた人物」が応募するようになるので、残念ながら貴社の意向に沿わない人物からの応募が増える結果になりかねません。いわゆるミスマッチです。仮に順当に入社したとしても、あっけなく短期離職をされてしまう可能性が高くなるでしょう。
なぜ、私がそれを言えるのでしょうか。
たとえば貴社がロート製薬さんの採用サイトを模倣したとしましょう。
このサイトはカッコいいですよね。カッコよさでは群を抜いていると思います。しかし、これを真似したところで貴社はロート製薬さんと同じ規模感で、同じような社風・社内文化の会社なのでしょうか?違いますよね?
しかし、ロート製薬さんの真似をすると貴社がロート製薬さんの社風・社内文化と同じように捉えられてしまうのですが、それでもよいのでしょうか?
採用サイトで大風呂敷を広げたのに実態は全く違っていた、となれば求職者はどう思うでしょうか? 失望して光の速さで退職します(笑)。こうなるとお互いが不幸になるだけでしょう。
ただし、ここまで話した上であえていいますが、私はデザインにこだわるなとは言いません。Webサイトもプロダクトですから見た目が大事になるのはよーくわかりますし、参考のためにデザインまとめサイトを見てみると、ついついすごいデザインのサイトに目移りしてしまう気持ちもわかります。
見た目が良ければ良い印象を与えることは間違いありません。デザイン会社であるbtraxのブランドン・片山・ヒル氏は監修した著書『発想から実践まで デザインの思考法図鑑』で、「良いUIは良いプロダクトであると認識させる効果がある」と語っています。
しかし見た目だけにこだわりすぎてしまい、肝心の内容が薄くて抽象的なポエムや綺麗事ばかりになっていたら、「うちの会社はSUGEEE!だから入社しろ」と主張しているサイトと捉えられかねません。こういったサイトは、求職者が求める情報についてあいまいになるので、読み手にとっても「見た目がカッコいいサイトだった」だけで終わってしまうのです。
採用サイトで大事なことは大手企業やすごいデザインのマネをすることではありません。貴社の社風や貴社の欲しい人材に合わせて文体の調子やデザインを統一させていくことが求められるのです。ウソや脚色で「自社がすごい」ばかりを見せつけず、「◯◯なあなたにピッタリの会社です」と正直に丁寧に伝えていくことが大事です。
後ほどお話ししますが、大事なことは「求職者に対してまっすぐ正直に、誠実に伝えること」の1点です。大手企業やすごいデザインのマネをする時点で、求職者に意識が向いておらず、すごいデザインをしている会社のサイトだけに意識が向いてしまっていることになるのです。
誤解3:採用サイトさえあれば人手不足の問題が解決する
これは「採用サイトさえあれば人が来る!」と同義語です。どんなに採用サイトをきれいに整えたところで企業の実態がダメであればダメと言いましょう。
2024年4月以降、退職代行の「モームリ」さんがSNSから火がついて、テレビなどでもあちこち取り上げられるほどブレイクしました。そのモームリさんの日報ブログ(https://momuri.com/casestudy/)から、ブラック企業の恐ろしい実態が明らかになっています。一部引用させていただきますと、
…なんかもう、信じられないといいますか。どうやったらこんな人間や職場になるのか理解に苦しむブラック企業の実態が次々と明らかにされています。
サービス残業などブラック労働をさせる、暴言罵言・パワハラ・セクハラなどハラスメントが横行している、最低レベルの時給、理不尽なクライアントばかりなのに何も対策をしない会社…こういった実態がダメな企業って意外と多くいます。
そういう企業が採用サイトにいかにも綺麗事を並べたとしても、まったく意味がありません。たとえ入社されたとしても、それこそモームリさんのような退職代行を使って退職されて、OpenWorkなどの会社評価サイトなどに悪辣な口コミを書かれるだけです。
実態が厳しいのであれば、社内体制の改善がなによりも先です。社内体制がめちゃくちゃなのに採用活動だけ頑張っても、水を入れてもすぐに水が抜けていくいわゆる「穴の空いたバケツ」にしかなりません。
これまではバケツに水ならぬ会社に人が入ってきていたのですが、人手不足のこれからの時代は、人が抜けたきり代わりの人が入らなくなる状況に来ているのです。
綺麗事を並べただけの採用サイトはミスマッチを生むだけで逆効果になります。ウソは絶対に書かずに、脚色もできる限り控えましょう。かといって汚いところをありありと映すのではなく、あくまで実態を再現することが第一です。社内の実態が厳しいのであれば、社労士を入れるなどをして社内の改善を優先にしましょう。
誤解4:採用サイトさえあれば採用コストが削減できる
これも大きな誤解のひとつです。採用サイトさえあれば採用コストが減ると思っている人は、おそらく
求人広告に出さなくて良くなる
→求人広告掲載コストが下げられる
→採用コストが減る
といった連想ゲームのようにお考えなのかもしれません。
もちろん100%間違いではありません。特に長期的な運用・採用広報をコツコツと行っていくことで採用サイトからの応募数を増やすことができれば、求人広告の出稿は減らすことはできます。
ややデフォルメしていますが、採用サイトを立てることで、求人広告やエージェントへのコストが小さくなっていくのが理想です。Web用語では「オーガニック流入」といいますが、能動的な検索や自社サイトからの流入など自然流入する数を上げていくことで広告に依存することを減らし、結果的に広告費を削減することは可能です。
また、Indeedなどの求人アグリゲート広告と連動したATS(採用管理システム)と連携できれば、多額の求人広告媒体に依存することも無くなるでしょう。複数の求人広告媒体に掲載している企業においては、求人出向先の絞り込みがしやすくなるため、より効果が現れやすくなります。
しかし、全体の採用コストを下げられるかと言えば必ずしもそうではないというのが結論です。なぜなら採用サイトを立ち上げても、当分の間は一定数の求人広告や転職エージェントに頼らざるを得ないからです。たた、求職者の認知を獲得するためにSNS広告に出稿したとすると場合によっては広告費が上乗せになるケースもあります。
大前提としてお伝えすると、求人における認知・周知面において現段階では求人広告・転職サイトが最強であるというのが事実なのです。実際に、マイナビによる中途採用・転職活動の定点調査(2024年1月-3月)では中途採用する企業側が約7割も、転職活動を行った正社員中途入社の8割以上の方が、転職サイトを利用していることが判明しています。
このように認知・周知面における手段・メディアの最強手法が現在も転職サイトなどの求人広告であるため、求人広告にも頼らざるを得ない状況は当面の間変わらないでしょう。
また、前述したとおり「採用サイトは認知・周知といった接点の役割を果たしにくい」という面があります。であれば、採用サイトが存在したとしても接点となる認知・周知面での手段・メディアへの露出が欠かせません。
むしろ、転職サイトなどの求人広告で認知を獲得し、採用サイトで深く検討してエントリーする・・・といった流れが王道となるでしょう。
「だったら転職サイトだけでいいじゃん!採用サイトは必要ないじゃないか!怒」
はい、究極を言えば必要ないかもしれません。しかし採用サイトが無くなってしまえば、採用サイト無しの状態で、採用サイトを備えた会社と戦わなければなりません。戦国時代において、武器無しの状態で戦いに出るようなものです。それがいかに無謀なことか、火を見るより明らかだと思いませんか?
全体の採用戦略の中のひとつとして位置づける
求職者における行動フローの法則
もう一度、先ほどのフローの図を見てみましょう。この図は転職・就職を考え始めた求職者が、入社して定着・活躍するまでの一連の行動フローの図です。図は下からスタートして上へ進むイメージです。
求職者は就職、転職の際にほぼ必ずこの行動フローを通ります。中途と新卒、大卒と高卒では多少フローの要素は変わるものの、大まかなフローに変わりはありません。これは求職者の行動法則と言っても過言ではないでしょう。
多くの求職者は転職・就職を考え始めて、ある程度転職・就職意向が固まったときから本格的に動き始めます。
人によってスパンの長短はあるものの、求職者の大多数がこのフローをたどりますので、行動フローに合わせた戦略を展開することが大事です。中途と新卒・高卒、またはアルバイトや短期派遣では認知・認識の行動における行動パターンが変わりますが、ここでは主に中途を中心にお話しします。
採用サイトは比較検討時から力を発揮する
先述した通り、採用サイトをつくってもそれ単体では機能することは実は稀です。採用サイトは残念ながら、最初の接点となる認知・認識の機能を果たすのはあまり期待できません。
逆に採用サイトが最も活躍するフローは「比較・検討」です。
再度、入社までのフローにフォーカスした図を取り上げます。
採用サイトが活躍するのはこのフロー図の3段目である「比較・検討」段階であり、認知段階では残念ながらあまり機能しません。求職者は2段目の「発見→興味・関心」でようやく採用サイトの存在を知り、比較検討のテーブルに乗るのです。
たとえば、あなたは知らない会社のサイトにアクセスすることはないですよね?取引先になった、アポイントなどの連絡があった、ニュースになった、友人知人が働いているなど、何か・どこか・誰かを介して知ってからアクセスするはずです。知ったあとはその会社のことが気になるからサイトに訪問する…こういったケースになるのは想像できますよね?
この「何か、どこかまたは誰かを介して知る」ことが認知・認識の段階です。そして少しでも興味や関心を持つことができれば、「知っている」から「気になる」に変化します。これが興味関心の段階なのです。
なにかものを買うまでの購買フローに似ていますが、これは採用の場合でも同じです。認知・認識の段階で自社の存在を知ってもらえなければ、そして「この会社、良さそうだ」と求職者に興味関心を持ってもらえなければ、採用サイトを立ち上げたとしても流入されず、その効果を発揮することはできません。
採用サイトを立ち上げる際、求職者に対していかに採用サイトに流入してもらうように認知・認識を持ってもらうか、ここの戦略が欠かせないのです。
求職者との接点となる認知・認識段階を制する
先程の表の通り、求職者は認知・認識からいくつもの段階を経て入社、そして定着・活躍へと進みます。まずは認知・認識戦略をとらないと求職者に存在すら気づいてもらえません。その接点づくりをできる限り行いましょう。
大手企業であればテレビCMやラッピング広告などの広告にお金をかけています。SCSK株式会社のテレビCMは最たるものですね。ほかにも業界紙への出稿も中途〜ハイレベルへの採用に効果があるとみております。
一方で中小企業の場合はどうでしょうか?潤沢な資金がないとなかなかテレビCMや大型広告は打てません。しかし、今やそれら以外の認知・周知させる手段はたくさんあります。
定番の求人広告はもちろん、SNS、動画、オウンドメディア、Web広告もあります。Webの力を使えば大手企業と比べたらどうしても知名度で劣る中小企業でも十分に認知を勝ち取ることができるのです。一通り紹介しましょう。
求人広告
「就職・転職するなら求人広告を見る」ことが今でもスタンダードであることから、求人の存在に対して認知を取るには最適な手段のひとつが求人広告です。最近では職種や年齢別などジャンルに特化した求人サイトなどもありますので、絞り込みやすく、探しやすくなっています。
求人広告は直接求人募集するので直接応募につながりやすいのですが、掲載期間に限りがある点にくわえ、大手から中小まですべての募集が集う媒体です。そのため、大手や知名度の高い企業が有利になります。
SNS
今や情報入手のインフラに近い存在となったSNS。SNSの情報を検索して生活や仕事に活かすケースもあります。総務省による『情報通信白書(令和4年版)』によると、2021年のSNSの利用状況は20代で93.2%、年代が高くなるにつれて利用率が下がりますが、50代でも79.6%の統計が出ています。このうち、もっとも利用されているのはLINE。続いてYouTube、Instagram、X(旧twitter)が続きます。
ただし不用意な発言・発信や、事件・事故、告発などから多大なバッシングとなる「炎上現象」が発生して企業イメージが大きくダウンするケースがたびたび見られます。特に情報発信となるSNSにおける不用意な発言で炎上するケースが跡を絶ちません。
2024年、自然派食品系宅配会社・オイシックスの当時の会長が東北の風評加害となる発言をして大炎上。これにより企業イメージを傷つける結果となり、会長が辞職するまでに発展しました。
動画
4G対応以降、スマートフォンで動画を見るユーザーが急増したことから、採用シーンでの動画の活用が増加しています。一般消費者がYouTubeをスマートフォンで見ることも一般的になりました。そういった背景から採用にも動画の活用が急速に広がっています。
動画の長さはさまざまですが、全体的に短い動画が好まれます。昨今はスマートフォンに合わせて1分以内の縦型動画「ショート動画」が人気。TikTokやYouTubeショートなどがこれに該当します。
最近ではスマートフォンでも動画が作れる時代になりましたが、シナリオ・ストーリー性・映像のクオリティ諸々はやはりプロが作る動画にはかないません。そしてプロにお願いする場合は撮影制作費用が発生します。単価が高いケースがほとんどですので、予算のお見積りには十分ご注意ください。
業界紙など
特定の業界向けの雑誌やWebメディアも採用のきっかけになるケースもあります。自動車、半導体、医療、農林水産業、IT、デザインなどさまざまなジャンルに特化したメディアに社長や有力者が掲載される、業界イベントやセミナーに登壇するなども接点戦略となります。ただし、掲載されるかどうかは名が通っている、コネがあるなどの事が必要となるでしょう。また業界紙などはその読者層から中途やミドル・ハイクラス層に効果が高く、新卒採用にはあまり向かない可能性が高いとみられます。
テレビCM
老若男女問わずマス(大衆)層が最も長い期間接しているメディアはテレビです。テレビCMの強さは、なんといってもそのリーチ数。テレビの内容が火付け役となり、これまでたびたびブームを生んできたのは、それだけ一般消費者の私たちに親和性が高いメディアであることの証拠です。
また、就活生の親世代へのアピールにも効果が高いとみられます。実際に総務省の「令和3年度 情報通信白書」によれば、テレビの視聴時間は年代が上がるにつれて長くなる傾向があります。テレビCMを打つことで就活生の親世代にも見られるようになることから、親世代に対して認知度・信用度をアップする効果も期待できるでしょう。
今どきの就活は親に確認して確約してもらう「オヤカク」も一般的になりました。そうした意味においても、親御さんの信頼を獲得するためにテレビ媒体を利用するのは良い戦略の一つとなるでしょう。
ただし、テレビCMはお金がかかります。制作料金だけでなく放映料も発生します。東京大阪のキー局ですとそれこそ15秒1本で100万円にもなるケースもあります。
パンフレット・チラシなどの紙媒体
「え?今どき紙?」と思われるかもしれませんが、紙媒体の威力はなめてはいけません。紙媒体が大きな効果を発揮するシーンが有るのです。それはズバリ「高卒」「短大・専門卒」といった学校依存度が高いところです。
高校生の新卒就職は基本的に学校を通してからしか受け付けてもらえません。専門学校も学校を通しての就職斡旋が多数です。そういった場合は紙媒体を通して学校に送付することが学生へのアプローチ手段となります。学校という媒体を通す手段がメインである場合、企業PRチラシ・パンフレットなどといった「現物」が強い威力を発揮します。
また、地方などの地域によっては新聞の購読率が高く、地方の企業の代表の方から「ウチは新聞の折込チラシで採用告知をしているよ」とお話しをいただき、納得しました。多くが帰省するお盆や年末年始にチラシを折り込むことで、当の本人なりそのご家族の方が見て検討してエントリーされる、とのことでした。東京生活が長い私にとって目から鱗が落ちるお話でしたが、折込チラシはまだまだ効果が高いことを感じた次第でした。
ただし、紙媒体のような媒体は現物だけで完結させずに紙媒体にQRコードを掲載して、Webサイトへとアクセスしてもらうようにしましょう。スマートフォンからWeb媒体や動画にアクセスしてもらい、さらに理解を深めてもらうといった手段が取ることができます。
求人広告は紙媒体からWebへとシフトしましたが、紙媒体が活躍するケースはまだまだあるのです。
以上、主な認知手段を紹介しました。どの方法がベストなのか。業種、業界、タイミング、ターゲット、地域にもよりますので試してみないとわからないというところが本音です。
いずれにしても、貴社の規模・地域・状況にあわせて認知・認識を勝ち取り、高い興味関心を持っていただくための「接点戦略」が不可欠なのです。
求職者をスムーズにエントリーさせる戦略を
認知段階で流入して興味関心を持った求職者をエントリーまで進める段階が、比較・検討から応募、選考、内定承諾の流れになります。このうち前段階の興味関心の後半部分から比較・検討までで行いたい戦略が「教育戦略」、比較・検討よりあとに行いたい戦略が「案内戦略」です。
さまざまなメディアから求職者が「この会社、良さそう!」と高い興味・関心を持ったあとの行動としては、ほぼ必ず「検索」します。
これはインターネットより得られた情報をもとに、消費者が行動するまでの行動プロセスマーケティング行動フロー「AISASの法則」におけるSearch(検索)に当たる段階です。
認知・注意(Attention)
興味・関心(Interest)
検索(Search)
行動(Action)
共有(Share)
たとえば、ネットショッピングをする場合を想像してみてください。たとえばパソコンを買うときでもまずは検索してどの機種が良いか、どこでかったら最安値なのかを調べませんか? 消費者の多くは商品を購入する前に、自ら検索して情報を集めるようになっています。検索をした消費者は商品情報・購買情報を学び取り、そこから比較・検討材料にしていきます。
認知・注意(Attention) 広告接触
なにかのきっかけで欲しいものが見つかる
↓
興味・関心(Interest) 興味喚起
商品自体の特性などを調べる
↓
検索(Search) 検索
どこで売っているのか。最安値は?信頼できる情報か?
↓
行動(Action) 来店 購買
リアルなら実際に来店、ネットショッピングならEC→購入
↓
共有(Share) シェア
SNSなどに共有
商品を知ってから購買までのフローは、上記のような感じで進むことが一般的です。実は求人における求職者の行動フローも、もう少し細分化されますが基本的には同じ行動フローを通ります。
認知戦略で実施した求人広告やSNS、各種メディアなどから認知・認識されて高い興味・関心を持った求職者は、実際の企業情報を検索していきます。検索をした求職者は、そこから比較・検討材料にするために企業情報や働き方などの情報を学び取らなければなりません。
求職者が会社情報を学び取る際に、自社が「他社よりも入社する価値が高い会社だ」と思ってもらうことが必要です。そのように思ってもらえるための戦略=教育戦略が必要となります。ここでカギとなるのは「差別化」です。詳しくは後述します。
次に、求職者が他社よりも貴社が良い・ぜひ入社したいとなったらいよいよ応募段階へと進みます。この応募行為がスムーズにできるかどうか。そしてその先の入社までスムーズに進んでもらえるかが勝負となります。
言葉で説明するとこんな感じですが、実際はそれほど単純なものではありません。
そもそも求職者は応募自体を見送ってしまいますし、たとえ応募したとしても面接前に辞退されるケースも多々あります(面接辞退問題)。面接までこぎつけて内定出したにもかかわらず、内定を辞退されてしまうといった問題が最近ことさら多くみかけます。
応募〜入社までさまざまな脱落ポイントが有り、オンライン上だけではなくオフラインでのやりとりでも対策を練っていく必要があります。
これらの一連の流れに対して求職者にスムーズに進んでもらえるためにも、戦略が欠かせません。この段階の戦略を案内戦略と言います。
この案内戦略では、求職者にエントリーへ進んでもらえるようにすることはもちろん、転職顕在層の中でも割と初期に来訪した求職者や、直近の転職は検討していない転職潜在層向けに対して「第一志望候補としてキープしてもらうこと」にあたるようにすることがこの案内戦略にあたります。
いまや求職者にとって有利な時代。だからこそ求職者に求人情報を知ってもらう接点戦略だけでなく、教育・案内のいずれの段階においても、戦略をとっていって初めてスムーズな採用が進むと考えております。
施策は「一発の花火」ではダメ
様々な施策を紹介しましたが、大事なことは、
・線(導線)にあわせて施策を展開すること
・継続して長期的にPDCAを回していくこと
の2つです。
少し前にお伝えした通り、求職者は「線」で行動します。企業側は求職者側が通る線に合わせて採用の導線を設定し、求職者を自社にエントリーしていただくよう運ばなければなりません。そのためには求職者に対して線でつながってもらえるよう、点の施策を仕掛けて点と点をつなげてもらえる戦略を打ち出します。
ここで注意していただきたいのは、SNSや求人広告、動画など、施策はどこまでいっても「点」でしかないことです。それぞれの施策が、採用の導線の中で機能するものであれば良いのですが、導線とは違うところで一発の花火のようにただ打ち上げるだけになってしまっては、効果は見込めないでしょう。
インスタでバズる写真を撮ればいいんじゃない?
今はYouTubeがメジャーだからYouTubeで勝負だ
TikTokが今来ているじゃん?TikTokのほうがよい?
ネットの記事を見ているとこんなノウハウがあるよ、こんな方法が効果がありますといろいろ紹介されています。すぐに結果を出そうとしてついついノウハウに飛びついて…失敗したとか。最初は成功したとしても次回以降は全く無風だった…というケースに陥ってしまうパターンが往々にして見られます。
偶然に頼るのではなく、良い人材を採用するために認知から応募・入社までの採用導線をきちんと描いて、その先の中で施策を行っていくこと。そして継続して何度もPDCAを回していくことが大事なのです。点の施策ばかりあれこれと打ち出して、てんで話にならない結果になってしまった…ということは避けたいものです。
採用に効果的なのは「ブランディング」なのか「マーケティング」なのか
採用ブランディングのブランディングって何?
近年、「採用ブランディング」という言葉を聞くようになりました。少なくとも私が新卒だった2000年代前半や印刷業を退職した頃の2014年前後にはほとんど見られませんでした。
ですので、ここ数年の人手不足が深刻化した背景や良い採用を実現したい企業を中心にこの取組みが始まったのではないかと考えます。
採用ブランディングについては下記のように定義されています。
「〇〇といえば、◆◆株式会社」と広く認知してもらいつつ、最終的な目標として「この会社で働きたい」と感じてもらうためにブランド化していくことと定義しています。
確かに、知名度が高い企業や、ケチャップで有名なカゴメのようにブランドイメージが一貫している企業は求職者にとって非常にわかりやすく映りますので求人の人気がある…と考えられます。
ところで、あなたに質問です。そもそもブランディングって何でしょうか?
またブランディングと並列されることの多い「マーケティング」との違いは何でしょうか?
と、企業ブランディングを手掛けるbtrax社はこのように定義しています。
btrax社は以上のようにブランディングとマーケティングの違いを解説しています。
もうひとつ、事例を挙げます。企業ブランディングを手掛けるトゥモローゲート社では
と書かれています。ブランド=約束ならば、ブランディングは「約束する行為」と言えるのではないかと考えます。btrax社もトゥモローゲート社も解釈は少々違えど、私はどちらも正しいと考えています。
私は、無印良品でたとえさせてください。無印良品の場合は、
・無印良品といえば、華美な色使いや装飾を極限まで省くことでどの家にもフィットするプロダクト
・無印良品といえば、茶色と暗めの赤のラベルが貼られている
ということが消費者側から印象付けられていますし、企業側としても消費者に対してそのスタンスを約束しています。
ですから無印良品は決して全面青や緑のラベルは使いません。緑茶であっても他の飲料メーカーのようなラベルのような表現はしないですよね。それが無印良品のブランディングだからです。
無印良品を印象づける(ブランドコンセプトの一環)ために、What(何)を伝えて、かつ伝えたことに対してコンセプトを崩さないことを約束していること、これがブランディングとも言えるでしょう。
ですが、このブランディングは一朝一夕では成し得ていません。What(何)を伝えたとしても、マーケットがなければ何も生まれないからです。どのように市場に伝えていくか、どのように(How)取り組んでいくかについて幾度となく差別化、商品開発、販売、PDCAを繰り返したマーケティング活動の中で生まれてきたものなのです。
マーケティングは成約するまでの仕組み
ではブランディングに対してマーケティングはどういったものでしょうか。
マーケティングは、かいつまんで言うと「欲しい人たちに欲しい物を届けて購入する仕組み」です。
ここで言う「欲しい人たち」とは、マーケットのこと。マーケットが無いとそもそも商品・サービスは売れません。しかし、マーケットがあっても商品・サービスを届けられないとマーケットは買うことができないのでやはり売れません。
「欲しい人たち」と「欲しい物(商品・サービス)」を橋渡しする「仕組み」であるマーケティングが、売れるために必須なのです。
今回は採用がテーマなので「売る・買う」行為ではないのですが、「売れる」を「成約する≒採用が成立する」「買う≒面接を申し込んで入社を決める」と考えれば、採用シーンも同様に「求める仕事に就きたい人たちに、求める仕事の情報を届けて入社するまでの仕組み」である採用マーケティングの図式が成り立つでしょう。
で、先ほどから仕組みというワードを使っていますが、その仕組みを分解しますと
接点+教育+案内
の3つのフェーズに分解できます。
前章でも戦略として接点・教育・案内の戦略でお伝えしました。今度はマーケティングの視点からお話しします。
「接点」は、文字通り情報の接点となるフェーズです。情報の接点は多ければ多いほど認知してもらう機会が増えます。ただし、接点がいくら多くあってもその求人情報はいったい何か、どんな会社でどのような人に申し込んでほしいのかを明確にしないと、求職者を案内の段階まで進めることができません。
接点のあとの2つ目のフローは「教育」です。この「教育」次第で求める人物から申し込みが来るか来ないかを左右します。
具体的に誰(=貴社が求める人物)に来てほしいか、そしてその人物がどうしたらスムーズに申し込んでくれるか。申し込み後に辞退されないようにするために、どのような未来を提案できるのかを明確に言語化して、ターゲットに認知させていく段階が教育のフェーズです。
たとえたくさんの接点があり、教育を行ったとしても申し込みのひと押しがないと求職者は申し込みに動きません。最後のフローである「案内」が重要です。
たとえば、あなたがネット通販で商品を購入しようとしたとしましょう。せっかく良い商品を見つけたのに、購入しにくいから購入を諦めた経験はないですか?実は採用のシーンも同じなのです。
案内のフェーズで重要になるのは、募集要項とエントリーボタンです。募集要項の情報については曖昧になっていないか、そもそも法令に反していないか、掲載している条件は非現実的になっていないかを確認しましょう。
最後の最後はエントリーボタン。エントリーは募集要項の直下や、各ページの最下部に設けるに限ります。別のページにジャンプさせないと申し込めない、そもそもエントリーボタンがどこに有るかわからないような仕組みになっていると、せっかく接点・教育を充実させても離脱されてしまいます。これではこれまでの努力が水の泡ですよね。何事も最後が肝心、案内のフローまで確実に押さえておきましょう。
以上、接点+教育+案内の3つのフェーズで解説しました。
「さっき、認知とか比較・検討とかで説明していたよね?あれはどうなるの?」
はい、求職者が通るフローのことですね。その図と3つのフェーズを合体するとこうなります。
マーケティング視点で見たフェーズでは全体で3段階あり、その中で求職者が通る過程は5〜6段階のポイントがあると言ってよいでしょう。求職者が通るポイントにどれだけ到達してもらえるか、マーケティング視点で見たフェーズごとの戦略が欠かせないと考えています。
このマーケティングの仕組みを導入しないと、求職者を迷わせてしまうでしょう。または求職者がそもそも採用サイトを見つけられない、エントリーまでたどり着けなくなる可能性が高くなるため、あなたの会社が求める人物に申し込んでもらえる確率を下げてしまうのです。このことから採用にはマーケティングの観点も不可欠であることがご理解いただけるのではないでしょうか。
ブランディングとマーケティングは両輪でまわす
以上から私はブランディングがすべてではなくマーケティングとも両立させていくことが重要だと考えます。
ブランディングだけを意識しすぎると求職者へのアプローチやフローがぼんやりしてしまい、結果的に採用の成功が難しくなるでしょう。かといってマーケティングに振り切りすぎると、集客戦略ばかりに拘泥してしまい肝心の「企業としての約束」が見えなくなります。マーケティングにがんばりすぎた結果、たとえ入社数が増えたとしても早期離職が増えるだけになった…といった弊害も発生しやすくなることも想定されます。
採用においてはブランディング、マーケティングともに片手落ちではなく、両輪を備え動くことではじめて良質な採用を生み出すと考えます。
ブランディングの視点からは、求職者に何を約束することで高い価値を感じてもらえる会社なのか。マーケティングの視点からは、誰(求める人物)に何をどのように届けていくか。
この2つの軸を確固たるものにすることが採用サイトの最重要項目なのです。
ちなみにこの考えをもとにすると、ブラック企業や求人詐欺を行う会社は「約束を破る」行為になります。これでは誰も幸せにならず、依頼側にとっても私にとってもディスブランディングになるため、私はブラック企業や求人詐欺を行う会社を明確にお断りしているのです。
採用はビジネスモデルをつくって長期戦で挑め!
新卒は「3月解禁されてから」ではもう遅い!?
これを書いている2024年の3月はまさに来年度新卒・25卒採用の募集が解禁されたばかりの時期です。3月からヨーイドンのような感じで企業が一斉に応募を受け付ける流れが一般的でした。
しかし、その解禁日となる3月1日に株式会社学情が衝撃的なデータを発表しました。
株式会社学情が2025年卒業・修了予定者対象に内々定率調査(2024年2月末時点)を実施。2024年2月末時点で内々定率はなんと38.1%!しかも理系の内々定率は約5割に達するとの調査結果が発表されました。(文系は3割)
3月解禁の時点ですでに3人に1人がどこかしらの企業の内々定を獲得しているという状況なのです!理系に至っては2人に1人はもう内々定済み。就職氷河期を通ってきた私は白目むきそうな感じですが(笑)。
その内々定を獲得するためには最終面接を受けなければなりません。その最終面接の時期も年々早まっているのです。
24卒では募集解禁の2ヶ月前の1月が最終面接最多だったことに対して、25卒では12月に前倒しになっているのです!人手不足に加え、新卒は少子化により絶対数が少なくなっているゆえか企業も先手を取っているのが現状。これを見る限り、今や「新卒採用は3月から勝負では遅い」ことがよくわかります。
これだけ内々定が早まった一つの要因として、インターンシップの定着化が挙げられます。
HR総研とONE CAREERが2024年2月5日に発表した「2025年卒学生の就職活動動向調査」によると、新卒就職活動として既に取り組んでいることに「就職活動として既に取り組んでいること」の選択肢のうち「インターンシップへの応募・参加」がなんと92%!
この数字を見る限り、新卒学生にとってはインターンシップへの応募・参加がほぼ当たり前と言っても過言ではないでしょう。今の新卒は次のような行動フローで就職活動を行い、入社するのではないかと見ております。
SNSや企業からの発信をキャッチ
→インターンシップ参加
→面接
→内々定
→3月にはもう決まっている
これはむしろインターンシップが新卒獲得の最大の勝負どころであり、3月解禁時にはもう決まってしまっていると言えるでしょう。裏を返せば、インターンシップに参加されなかった企業は、新卒学生によるエントリー検討のテーブルにも乗らないと言ってもよいでしょう。
毎年3月の新卒就活解禁が形骸化しているのではないか?と思えるくらいの様相を見せているのが今なのです。その現状に対して追いついている企業が学生の囲い込みをして一人勝ち。
一方で、その現状を見ること無く新卒は毎年3月からしかスタートさせていない企業は見向きもされずに、「取りこぼし」や「滑り止め」ばかり拾う羽目になるのです。
「取りこぼし」や「滑り止め」の学生が優秀ではないと言い切ることはできませんが、この人こそといえる優秀な学生は、3月の時点でもうすでに内々定を持ってしまっているのです。
新卒学生を獲得したい場合はセミナービジネスモデルを参考にする
このことからインターンシップが新卒獲得の最大の勝負どころであることがわかります。ではインターンシップだけに注力すればよいかというと、そこだけではなかなか難しい面があります。
なぜなら、インターンシップは一つの通過点だからです。
こちらのフローのように、新卒学生は「線」で行動します。むしろ入口は多数から検討されて、しかも他社との比較検討が入ることを見ると学生は「面」で行動しているパターンも多く見られます。そんななかでいち企業が点で行動してもなかなかキャッチされにくいということは想像に難くないと思います。
ではどうすればよいでしょうか。私は、セミナー集客ビジネスモデルを参考に新卒学生を集客していくことを提案したく思います。
「集客? 販売じゃないんだぞ!」
という声が上がりそうですが、集客以外の言葉が見つかりません。
「だいたい新入社員はお客様じゃないだろ!」
という声もわかります。少なくとも今読んでいるあなたが氷河期世代を通った方であればなおさらです。(私もです)
ですが、そのお考えは一度脇において聞いて下さい。今の新卒学生を仮にお客様として見立ててもらえばの話としてお読みいただければと思います。
セミナービジネス集客モデルは下記のとおりです。
セミナービジネスモデルとは言うものの、セミナー開催そのものがゴールではなく、セミナー開催を軸にその前後で多くのタッチポイントを設けています。そのタッチポイントそれぞれをつなげて「線」にしていることがわかります。セミナーがすべてではないということです。
では、これをインターンシップを軸にした新卒採用に置き換えたらどうでしょうか?
ほぼそのままのフローで展開できますよね? 新卒学生は、SNSまたは広報・企業ブログなど企業からの発信をキャッチします。会社の存在を認知して興味が高まったところでインターンシップに参加→面接→内々定となります。こういった既定路線が出来上がりつつあるのですから、それに乗らないのはもったいないとしか言えません。
多くの人が通る既定路線があるなら、その既定路線に対して流入してもらうポイントを設けていかに離脱しないようにフォローしていくか。これだけで新卒学生のインターンシップの参加数とインターンシップ後の面接率も飛躍的に上げられるはずです。
インターンシップでは学生は「実務の体験」を求めている
いよいよインターンシップ。先述の通り、インターンシップでの体験が最大の山場になります。9割の学生が参加を希望しているというデータも出ていますから。
とはいえ、そもそも学生はなぜそこまでインターンシップにこだわるのでしょうか。2018年度に行われたリクルートの調査によれば、学生がインターンシップに参加する最大の理由は「業務理解」との結果が判明しています。
それもそのはず、学生は基本的には実務経験がありません。よほどの人ではない限り、アルバイト程度の経験しかないケースが大半です。ネットの知識で仕事の内容は知っていたりするものの、やはり経験からの理解にはかないません。学生は実務を通した業務理解を経験することで、入社後の自分の仕事の流れをリアルに理解します。そして実務状況や実務を通した社風の感覚など、いわば肌感覚の判断をしていきます。
このことからわかるように、インターンシップでは業務を理解してもらうことをできる限りたくさん提供することが必要です。通常業務に近づけて、参加した学生に対して業務の理解をしていただくことで、参加した学生側の満足度を大きく左右するでしょう。
そして、参加後はフォローアップも徹底しましょう。インターンシップに参加しても、実際に応募するかは学生次第です。応募につなげるには、インターンシップを通じて高くなった関心や志望度を維持する必要があります。
しかし何もフォローがなければ、参加した学生たちも忘却曲線のように関心度や志望度は下がってしまいます。
関心度や志望度を下げないために、インターンシップ後も定期的に参加者と接触する機会を設けるなどのフォローアップをしましょう。学生が従業員とのカジュアルな食事会を開催するなど業務内容や企業の雰囲気などへの理解をより深められるようなことを行うのも一つの方法です。
もし、リアルな開催が難しければオンラインの交流会・座談会でも良いでしょう。それすらも難しい場合はメールマガジンやLINEを送るだけでも大きく変わります。なにより大切なことは、開催後のタッチポイントをゼロにしないこと。フォローがあることで学生側も「忘れられていないのだな」と感じるようになるからです。
一方であまりにアプローチが多すぎるのもうざったく思われてしまいます。回数、頻度はほどほどにする必要があるでしょう。
いままで中途は「ギャンブル採用」だった!?
この章では新しい形の新卒採用の集客モデルを提案しました。ですが、「うちは中途採用しかしていない!どうしたらいいんだ?」という会社もあるでしょう。こちらについても、セミナー集客モデルは通用すると見ております。説明していきますね。
その前に、これまでの中途採用を振り返ってみましょう。
中途採用はこれまで「欠員が出たから求人広告で採用」が一般的な傾向でした。しかし昨今の人手不足により、そうも言ってられない状況になりました。が、未だに「とりあえず求人広告媒体に出しているだけ」の企業が多いのが実情です。
先述した通り、求人広告は短期的な認知には高い効果を持ちます。その短期間だけしかみられていない状況ですと、優秀な求職者がせっかく入社したくても入社のタイミングを逃されてしまいます。
また、短期間だけの勝負は当たるも八卦な「ギャンブル」です。掲載期間に見てもらえているかだけでなく、その優秀な人が今は転職するタイミングではないというケースもあるからです。
せっかく優秀な人物を採用したいのにタイミングが合ったり、合わなかったり。こういうケースを日本では総じて「ご縁」というふわっとしたワードで済ませてきました。もちろん、どんなに戦略的に採用を行ったとしてもご縁の面がどうしてもついてくるのは否めません。ですが、それ以上に企業が日頃から優秀な人に対して「入社して働く価値の高い会社であること」と「長期的に採用の窓口を設けていること」の2つのPRが足りないゆえに、優秀な人物を採用したいのにタイミングが合わない結果になってしまっていると考えられます。
中途採用の多くはキャリア採用です。他社でキャリアを積んできた経験を活かして自社でその力を発揮してもらうことが目的になります。しかも早い段階から会社の中堅〜中核を担う存在にもなり得る人たちです。
そういった人たちを「ご縁」という名のもとで、偶然性に近いいわばギャンブルとして採用していること自体、おかしなことだと思いませんか?
偶然やご縁だけにまどわされず、優秀な人を戦略的に採用していく中途採用にも、新卒インターンシップと同じビジネスモデルを行っていくことを提案します。
中途もセミナー集客ビジネスモデルが通用する
先ほど新卒インターンシップのところで紹介したセミナー集客ビジネスモデル。これを中途採用のシーンで置き換えるとこうなります。
ほぼそのままのフローで展開できますよね。中途採用も今までのやり方に対して発想を変えるだけです。
このシステムのよいところは「自社で時間をコントロールできる」という点です。従来の「求人広告を出してあとは待っている」の場合、応募は偶然に任せるしかありません。普段の業務がたくさんある中でいきなり応募があって、メールや書類を見て対応し、面接日程の調整もして面接をする。こんな感じで偶然応募が入ってきたら、その時々に対応することになります。要はイレギュラー対応が降って湧いてくるような現象ですよね。これでは人事担当が時間をマネジメントしたくても、偶発的なタスクに振り回されることになります。
ですが、中途採用を採用ビジネスモデルに組み込むとビジネスモデルの中に
・職場見学会またはカジュアル面談の日程
・面接日程
をあらかじめ組み込むことができるため、その日程を押さえたうえでスケジュール通りに進めることができます。最終面接については選考の進行具合や役員のスケジュールによるため調整が必要になりますが、少なくとも職場見学会またはカジュアル面談、初回面接についてはスケジューリングができるはずです。仮に応募がなかったとしても、予定をキャンセルして他の業務を遂行すればよいだけですよね?このように予定が組みやすくなる効果もあります。
「『この日・この時間しかダメ』と言ってくる求職者がいるんだけど?」
こういう場合はいったん調整中として、先の日程で共通の職場見学会またはカジュアル面談会や面接日程を再度告知してみてはいかがでしょうか。
それでも日程が合わないことが続けば、それこそご縁がなかったと言ってよいでしょう。こちら側も最大限時間を調整したのに、合わせてもらえないまたは合わせようにも噛み合わないことが続くということは、入社後も同様のことが続くのではないかと見られます。日程調整に対して歩み寄りができないとなると、入社後の業務の中でも同じような感じになってしまうことは容易に想定できるのではないでしょうか。
以上のように新卒採用も中途採用も偶然性だけに任せず、長期戦を前提により戦略的に採用ビジネスモデルを構築することで優秀な人を採用することができるようになります。これに加えて人事担当の時間負担を減らすこともできるようになると想定します。
求人検索広告と採用管理システムを味方につける
ビジネスモデルも採用サイトについてもわかった、ではいよいよ採用サイトを立ち上げよう…もうちょっと待ってください!採用サイトを立ち上げる前に、求人検索広告と採用管理システムを知ってからにしてほしいです。
なぜなら求人検索広告と採用管理システムを知らずに、採用サイトを立ち上げてからではなかなか引き戻せないからです。特に採用管理システムは導入しないと損をすると言っても過言ではありません。これについて、お話しします。
求人検索広告を活用しないのはもったいない!
求人アグリゲート広告とも呼ばれている求人検索広告。言わずとしれたリクルート傘下のIndeedを始め、株式会社スタンバイが運営するスタンバイ、カカクコムが運営する求人ボックスがこれにあたります。
これまでは各求人サイトだけのクローズ情報として求人が公開されている状況でした。これはこれで求人媒体(サイト)の力が強ければ有利になりますが、一方で、求職者がその媒体を見ていない場合、機会損失になるというケースも発生しています。
要は自社求人はリクナビに出稿しているが、自社にピッタリな求職者がエン転職しか見ていなかった…というパターンです。採用する会社側も仕事を探す求職者側も、どちらにも対応できていればよかったのですがなかなかそうはいきません。会社側が複数の求人媒体に出稿する場合は、単純に金額が加算されることになります。
Indeedを始めとする求人アグリゲート広告はこうした問題に対して、風穴を開ける存在となりました。収集するという意味の「アグリゲート」の名のごとく、星の数ほどある求人サイトや各企業ごとの求人情報を収集することで、一律で検索できる仕組みにしたからです。
求人検索広告が決定的に有利な点は「検索で探すことができる」「1投稿で複数の媒体に掲載される」という点です。それまでは例えばリクナビに出稿したらリクナビの中でしか探せませんでした。しかも期間限定の掲載なのでGoogleやYahoo!で検索してもひっかかりません。要は「媒体囲い込みありき」だったのです。これは今でもこのシステムのまま続いています。
求人検索広告はこういった壁を取り払って、多数の媒体から集めて探しやすくしたことに加え、掲載元媒体と求人検索広告にも同時に転載されるという複数媒体への掲載も両立できるのですからこれほど画期的な仕組みはありません。
今ではテレビでも「仕事探しはインディード♪」「仕事が見つかった~スタンバイ~♪」というフレーズとともに認知拡大も図られたことから、仕事探しではこういった求人アグリゲート広告が一般的になりました。ほかにもGoogleしごと検索やLINEキャリア・LINEバイトなども追随していますね。
さらにIndeedに至っては、2024年から「Indeed plus」をスタート。これまで連携がなかったリクナビNEXTやタウンワークと連携することが発表されました。さらに同年3月以降にはフロム・エー ナビ、とらばーゆ、はたらいく、リクナビ派遣のリクルート系求人ネットメディアが追加連携されることを発表されています。
こうなるとますますIndeedの優位性が高くなると見られましたが、一方で
との発表が人材業界に衝撃を与えました。
自社の採用サイトをIndeedに読み取ってもらっている企業が対応できなくなると、こういった企業が脱落していく未来が見受けられます。(おそらく深い理由あると思いますが…)
Indeedがすべてではなく、Indeedも活用しつつ求職者が集まる受け皿となるメディアを1つに集約し、そのメディアに対して接点を増やしていくことが最適解であると考えます。
その求職者が集まる受け皿となるメディアとは、ズバリ貴社の採用サイトになるのです。
採用管理システム無しでの運用はありえない!?
私自身、恥ずかしながら2022年初頭まで採用管理システムのことを存じ上げずに採用サイトの最適解を展開していました。2022年に、ある採用管理システムのことを知ってからはもう採用管理システム抜きでは語れない状況になりました。
採用管理システムは別名ATS(Applicant Tracking System)とも呼ばれます。その名の通り求職者(Applicant)を追いかける仕組みです。
このATSをひとつ搭載するだけでおおむね
といったことができます。
機能を一つ一つ説明すると長くなりますので、採用管理システムが有る場合と無い場合の違いをまとめるとこうなります。
・募集時および掲載管理
求人をしたい時、求人広告それぞれに広告文章を出稿していますよね?マイナビならマイナビの情報を一から書いて、同じ求人をリクナビに掲載する場合はリクナビのフォーマットどおりに書き換えて、タウンワークなら…といった感じです。一部は使い回しができるものの、1つの求人で3つの媒体に求人を出す場合は、おおむね3倍の工数が発生しているのです。
「一回書いたらすぐにパーっと全部に掲載されたらよいのに!」
と思った人事の方もいらっしゃるのではないでしょうか。それを叶えたのが、採用管理システムです。
Indeedが2024年から始めた「Indeed PLUS」ではすでに連携している採用管理システムからIndeed PLUSを通して、Indeed だけでなくリクナビNEXTやとらばーゆ、タウンワークなどに連携してマルチ掲載する仕組みを取っています。
1回のオペレーションで複数の媒体に掲載されるのですからこれほど楽なことはありません。これだけでも時間削減が見込まれることがわかりますよね?
さらに、掲載する内容についても採用管理システムで一元化できる点がポイントです。求人広告それぞれ対応すると掲載申請した担当者しかわからないということが発生しますが、採用管理システムは遠隔からもログインできますので、本社の担当者はもちろん、支店や営業所の採用担当者もログインするだけで内容を確認することができます。メールに添付したWordファイルで確認して…といった煩雑な作業はもう必要ありません。
・応募対応
求人案件を登録して公開後にエントリーがあった際、専用のメールアドレスを通してお知らせが飛んで来る内容になっています。メールの内容に応募者の情報が書かれており、その内容を見て専用のメールより返信をする。または求人広告運営のシステム画面を通してメッセージを返信すると応募者とやりとりできる流れとして機能しています。
しかし、求職者の記録は求人広告運営のシステム画面にストックされそうなものですが、ここに落とし穴があります。今回限りの募集と割り切って求人広告サービスを解約した場合、求職者の記録がストックされません。応募情報を毎回エクセルに転記するなどの作業が必要になります。
では求人広告ではなく、お問い合わせフォームでの運用の場合はどうでしょうか? こちらはメール対応のみです。フォームから送信された内容が特定のメールアドレス(主に広報あてなど会社代表メール)に届くだけなので、メールに届いた内容に対してこちらもエクセルに転記するなどの作業が絶対に必須となります。
以上から見ておわかりのとおり、採用管理システム抜きの場合、応募者対応への工数(手間・時間)が増えてしまうということです。特に他地域に支店や営業所があるなど2拠点以上での場合、運用がそれぞれバラバラで対応しなくてはいけません。この運用方法だと、担当者まかせとなるため属人化されてしまい、担当者が営業日に休んでしまった場合などは返信が滞る→求職者に見送られるといったいわゆる「取りこぼし」の原因になってしまいます。
採用管理システムを導入すると応募情報がすべてストックされるようになります。応募が来たらメールで通知されることは他と同様ですが、応募情報がすべて管理画面一箇所にストック・一覧化されるようになります。求人広告サイトは案件ごとの管理となりますが、採用管理システムを導入すると採用管理システムに一元化されて情報がストックされるため、会社全体の共有情報として機能できます。
応募対応における採用管理システムのメリットは3つあります。まず、過去に応募したAさんがまた応募して別の社員が対応するといった重複応募・重複対応の防止です。次に、採用管理システムに一元化された状態でストックされるので、全体的な応募者の傾向がひと目でわかるという点です。
3つ目は対応箇所が一元化されるので対応の進捗が見えやすくなる点です。特に2拠点以上の営業所を持つ企業にとっては、それぞれの対応が求められるケースもありますが、そういったケースも本社人事が進捗を追うことができることと、情報の共有がしやすくなります。
また、エントリー受信時から採用管理システムを通してメールを送受信できる採用管理システムも多くあり、担当者個人のメールアドレスを開示する事なく対応できるメリットも見逃せません。メールのテンプレートが常備されていることも多く、メールの工数で悩まされることも少なくなるでしょう。
・進捗管理
これまで紹介した通り、採用管理システムが一元管理できてかつログインひとつで遠隔からでも見られることをお伝えしました。これに加え、採用管理システム内で進捗管理も一元化できます。スケジューリング・求職者への案内メッセージ・リマインドの仕組みが揃っているケースも多いです。
それらをログインひとつで一元化できるので、ある担当者が忘れていたとしても別の担当者が見つけるといった「対応漏れ」を防ぐ仕組みを取ることができます。ただし、複数の社員がアクセスする物理的な情報漏洩を防ぐよう厳重に注意する必要があります。
こういったシステムには、応募者のデータや履歴書、面接の実施状況や面接での評価情報、合否判定などすべての情報がストックできます。こういった情報がストックができるようになると、応募者から実際に入社した人までの傾向が把握できるようになることから、求人情報や採用サイトにおける情報発信に対するフィードバックをしやすくなります。
採用管理システムが求人情報や採用サイトをブラッシュアップしていくことにつながり、結果として優秀な求職者からの応募率を上げることもできるようになるのです。
最強なのは「採用管理システム+求人検索広告」の連動
前述した通り、採用管理システムは求人管理から入社までの進捗管理まで一元化する機能を果たす役割があります。
一方で求人検索広告は、「検索で探すことができる」「1投稿で複数の媒体に掲載される」という特徴を持っていることはお伝えしました。
であれば、「採用管理システムで作成する求人情報が、求人検索広告掲載に連動できれば最強になる」ということは容易に想像できますよね?
これまでは、複数の求人広告に対して毎回それぞれ申請して掲載し、応募があれば担当者のメールに届き、担当者がエクセルに転載しながら個別メールに対応する。そして掲載期限が来たら延長するしないもそれぞれで対応…と書いているだけでもめまいがするような細かい工数が発生していました。
これに対して、求人検索広告へ連動できる採用管理システムを導入すれば、掲載処理は採用管理システム上の1回だけ。掲載開始ボタンを押せばほどなくして複数の求人検索広告媒体に掲載されます。
また、応募対応も採用管理システム内で完結。たとえ専属の担当者が休暇等で対応できなかったとしても、引き継ぎ対応ができることに加え、進捗状況の共有も可能になります。
このように「採用管理システム+求人検索広告」をオールインワンにしたシステムを導入することは採用工数削減に大きく貢献するようになるのです。そもそもシステムを導入するのであれば、採用業務に関わる工数を減らさないと意味がないですよね?採用サイトを新しくしたけど、掲載対応や応募対応などの工数が増えて担当者の残業時間が増えてしまったのでは本末転倒ですから。
採用管理システムは国内にも多くありますが、なかでも無料で導入できるのが株式会社エン・ジャパンによるオンライン採用管理システムのengage(エンゲージ)・hirehub(ハイヤーハブ)があります。
engageでは求人案件を公開すると複数媒体へマルチ掲載ができます。掲載申請した案件は、enエンゲージだけでなくIndeedやスタンバイ、求人ボックス、Googleしごと検索にも転載されます。
hirehubはengageと連携。hirehubではエン転職にも掲載できますので本格的に中途正社員を募集したいときには重宝するでしょう。hirehubでは主に応募者管理や選考管理、日程調整に強く、これひとつで対応がひとまとめできる無償なのが不思議なくらい優秀なシステムです。ただし、2024年6月1日時点ではIndeed PLUSとは未連携のようです。
詳しい機能は下記より案内サイトをご覧ください。
engage案内サイト
https://en-gage.net/company/
hirehub案内サイト
https://hire-hub.io/
第一志望で応募される採用サイトにするために必要な6つのこと
いよいよ(ようやく?)採用サイトの作り方に入ります。「採用サイトにおける4つの誤解」でも説明した通り、制作サイドの独断でカッコいいサイトを作るだけでは求める人物からのエントリーは増えません。
ではどのような採用サイトを作ればエントリーが増えていくのでしょうか。6つ提示します。
①ターゲット・ペルソナは誰かを設定する
ターゲットとペルソナを狭めたら人が来なくなるという「誤解」
この話をすると多くの人から「ターゲットとペルソナを狭めたら人が来なくなるのでは?」という疑問をぶつけられます。ターゲットとペルソナを狭めたら人が来なくなるというのはありません。むしろ、逆です。
ここでターゲットとペルソナの違いを表しますと
ターゲット(Target)とは、商品やサービスを提供する対象となる特定の顧客層のことを指します。ターゲットを設定する際は年齢や性別、居住地域、収入、ライフスタイルなどの属性で絞り込みます。販売促進などにおいては適切なターゲットを定めることで売上効果が期待されるため、ターゲットの設定を行ったうえで商品開発や販売戦略を立てているケースがほとんどです。
一方でペルソナ(Persona)とは、ターゲットをより具体的なイメージで表した架空の人物像のことを指します。ペルソナには年齢や職業、趣味、価値観、ニーズなどの詳細なプロフィールが設定されます。ペルソナを作ることでターゲット顧客の実態を具体的に想像しやすくなる特性があります。
このことからターゲットは対象とする顧客層の範囲を示すのに対し、ペルソナはその範囲内の理想的な顧客像を具現化したものです。ターゲットが広がりとしての顧客層を定義するのに対し、ペルソナはその中の代表的な人物像を詳細に描き出すものだと言えます。両者を組み合わせて活用することが重要視されています。
ダーツの理論で考えるターゲットとペルソナ
「販売?これは採用の話だよね?」
「わかったような、わからないような…」
すみません。小難しい話をしてしまったかもしれません。
ターゲットとペルソナの話をする際、私は必ず「ダーツの理論」をお話ししています。あなたはダーツをやったことはありますか?子どもの遊びレベルでも本気でもどちらでもかまいません。
ダーツの矢を投げるとき、あなたはどこを狙いますか? ダーツの的のセンター、いわゆる中央部分の赤い小さな中心点ですよね。どこでもいいやとして投げたら「まぐれ」で的に刺さることはあるものの、高確率で的から外れてしまいます。一方でセンターの赤い中心点をめがけて投げると、センターの中心点に刺さることはかなり難しいですが、的に当たりやすくなるはずです。
実は採用サイトにおけるメッセージもこの要領と同じなのです。
採用サイトであればダーツの的にあるセンターの中心点はペルソナ、ダーツの的はターゲットにあたります。ペルソナに刺さるメッセージをめがけて投げないと、ターゲットになる人に刺さらないということです。
このペルソナをあいまいにしていたり、誰でもよいような設定でメッセージしてしまうと、ダーツで的を外すように本当に採用にふさわしくない人にも刺さり、応募される確率が高くなってしまいます。採用担当者としては採用にふさわしくない人からの応募ですら真摯に対応しなくてはならないので、それだけで余計な採用コストがかかってしまうことになるのです。
とはいえ、優秀すぎる人や現実離れした人物をペルソナに設定してしまうと、それはそれでエントリーされにくくなります。
たとえば、年収300万円にも満たない会社が次のようなペルソナを設定していたとしたらどうでしょう?
「25歳、東大京大慶応早稲田卒。頭が抜群に良く上司に従順で、コミュニケーション能力が高く、仕事もできる」
…確かにこういう人はいるとは思いますが、聞いただけでなかなか無謀だと思いますよね。まず、その人は年収300万円にも満たない会社に入社するよりも年収1000万円くらいの外資系コンサルファームに入りそうな人ということはなんとなく想像できると思います。
このように、採用したい人物像があいまいで具体的になっていない、または現実からかけ離れているペルソナ設定では、求職者にとっても
「これは誰を求めているのだろう?」
「私には合わない」
という印象を受けてしまいます。その結果として応募されない、または採用するにふさわしくない人からの応募だけが増えていく結果になりかねません。採用したい人物を明確化せずに求人することは、結果的に余計なコストを生むことにしかつながらなくなってしまうのです。
ターゲット・ペルソナを設定する最適な方法
では、ターゲット・ペルソナはどのように設定したらよいのでしょうか。
ここで疑問に挙がるのはターゲットが先か、ペルソナが先か、についてです。
結論、使い分けが必要であると見ております。現在の既存職種に対しての募集であればペルソナから、DX人材など現在の貴社にない新規職種であればターゲットからが良いと考えます。
これは今の社員さんにペルソナモチーフになる人がいる・いないゆえの判断です。既存職種であれば、そこには優秀な社員さんたちや「この人には絶対にやめられてほしくない社員さん」が複数いるはずです。その人たちをモチーフにするとわかりやすくなるでしょう。
ただし「優秀」と言っても、ある程度までにとどめましょう。優秀な社員さんの定義は会社の数だけ存在するはずですが、ペルソナを設定する際に考える"優秀な人材"の設定が一定能力に偏ってしまっているためにペルソナが条件過剰、いわゆるハードルが高くなってしまっているケースも多々あります。これでは現場で求められる能力とズレが生じています。
また、下手に基準を高く感じさせない言い方にして必要歓迎条件の記載をするくらいにしないと、最終的に読み手となる求職者にとってハードルが高すぎる印象となり、逆効果になりかねません。
このバランスがなかなか難しいところですが、いわゆるトップ社員だけではなく、数人ピックアップしていただき、ある程度平準化していくことも必要となるでしょう。
一方で新規職種であれば新規職種にふさわしいジャストな人材は所属していない可能性が高いでしょう。そういった場合はペルソナを先に設定することは難しいかもしれませんので、ターゲットを分析してターゲットから設定し、そのなかで自社にとってふさわしい人材を設定していく順番が妥当でしょう。
ここで注意してほしい点は、たとえ新規職種であってもペルソナを設定する考え方だけは外さないようにしてほしいことです。
これまでにない職種とはいえ、入社すれば自社の会社の一員であることには変わりません。職種の新規性云々以前に、会社のメンバーになって自社の社風に慣れていただくのです。それゆえ、自社と親和性が合う人材のペルソナ設定をしていただかないとミスマッチが生じやすくなります。新規職種の人材を募集する際は特にそういったことで早期離職される可能性が高くなることから、気をつけたいところです。
②ペルソナに一言で「口説く」言葉を設定する
伝えたい「言葉」は端的に
「口説く」というと、意中の異性に対して口説き落とすみたいなイメージが有るように見えますが、採用のシーンもこれと似ているところがあるかなと思います。というのも、就職における採用・入社はある意味「お見合い」と似ているからです。とはいえ、口説く際にくどくどしゃべり倒すだけでは、口説き落とすどころかむしろ相手が離れてしまいますよね。(おしゃべりな人あるある 笑)
別のケースで例えます。あなたは過去に訪問販売とか保険のセールスで面談を受けて、相手から長々とくどくど話されて嫌になった経験が一度や二度くらいはあると思います。
そういった経験を元に考えれば、長々と語るだけでは相手は口説かれないということはもうわかりますよね。企業側から見たらなんとしてでも入社してほしい求職者を説得したい、そのためにしっかり説明したい・・・というお気持ちはすごく、よくわかります。わかりますけど、長々と説明したい気持ちを抑えて、ここは一言で口説いてほしいので
というイメージで。これがいわゆるコンセプトです。
採用サイトでのコンセプトは、入社を検討している求職者に対して、伝えたい本質または本質的にある強みを言語化したものです。「要はあなたにとって◯◯◯◯◯◯な会社なのです」とまとめたものといってもよいでしょう。
ここでいう「◯◯◯(がほしい)」は求職者が欲しい未来像に当たります。「□□□の会社です」は何をするのDoであったり、何ができるのCanまたはWillであることが理想です。
コンセプトはいわば枝葉を全て取り除いた「木の幹」「木の根」にあたるところです。枝葉はあったとしても幹がなければ木として成立しません。逆に、枝葉がなくても根幹さえあれば「木」としては成立します。それくらい大事なことですし、コンセプトが全体を支えているものになるのです。
では、このコンセプトをどのように作ればよいのでしょうか。コンセプトを単純に分解してみると
「誰に」「何を」
です。
もう少し、詳しく肉付けすると
誰に………ターゲット・ペルソナ
何を………あなたの◯◯◯(メリット・ベネフィット)になる◯◯◯(内容)の会社です
(または)あなたの◯◯◯(メリット・ベネフィット)になる◯◯◯(内容)の職種です
といった内容です。
「え?採用にそんなことを考えなければならないの??高めの給与額を見せて誰にでもできるお仕事です、って言えば来るんじゃないの?」
あのー…何のために前項でターゲットとペルソナ設定をしたのでしょうか?ペルソナに近い人に「貴社が第一志望です」とエントリーおよび入社されるためですよね? そのペルソナだって、貴社以外のそれこそ大手から著名ベンチャーまで今や選び放題の世の中なのです。(氷河期卒業の私『うらやましい…』)
そんな状況から貴社が選ばれるためには、「(たった一人の)あなたに来てほしい」というメッセージを発信することです。求職者は常に不安な心境を抱えています。求職者にとって就職・転職は人生の大きなテーマですし、就職・転職に失敗してしまったら人生を揺るがすほどの一大事になってしまうことになりかねません。
そんな求職者の不安な心情に対して、「あなたの人生にふさわしい・あなたにとってメリット・ベネフィットがある会社です。なぜなら◯◯◯だから」と言い切ることで、求職者は入社して自分の人生で取り戻せない時間を投資する価値があると決断しやすくなるのです。
就職・仕事・キャリアは人生を左右するほどの大きなテーマです。今、お仕事をされているあなたにとってもそうですよね? その立場に立ってペルソナの求職者の不安を代弁して時間を投資する価値ある会社だと表現することがよいコンセプトになります。
コンセプトと似たような言葉に「キャッチコピー」があります。一見同じように見えますが、
の違いがあります。コンセプトはそのものが持つものを言語化した言葉に対して、キャッチコピーはそのコンセプトに合わせて心をつかむ言葉に置き換えたものです。
似ているようでちょっと違うこの2つですが、コンセプト抜きにキャッチコピーはありえませんのでご注意ください。
弱者の戦略
貴社が求職者から選ばれるためには
の4つが絶対必須です。
大手企業や著名企業の場合、これら4つを凌駕するくらいブランドネームを持っていることからターゲット・ペルソナの設定を細かく行わなくても毎年新卒の学生から応募があります。
(とはいえ、大手企業も上記4つを押さえているケースも多いですし、それ以上に会社ブランドを毀損させないようにしています。これについては後述します)
ですが、中小企業が求職者から選ばれるにはライバルとなる「競合」がいます。採用の世界でも「競合」が必ずいます。販売や業界の文脈であれば、たとえば自動車メーカーならトヨタ←→ホンダ、銀行ならみずほ銀行←→三菱UFJ銀行・三井住友銀行など直接の競合はもちろん、業界を超えた競合も成立します。営業職は最たる例ですよね。
中小企業であれば、大手企業と同じ戦略は取れません。「弱者の戦略」を取っていくことが必須です。「弱者」というと語弊がありますが、たとえばトヨタ自動車やニトリのように毎年新卒人気企業第1位にいる企業じゃなければ、1位の企業に対してすべてが弱者といっても過言ではありません。
弱者に対して1位は王者と呼びましょうか。採用の王者だからといって、王者は全ての求職者を採り尽くせるわけではないですよね?
2位以下にも確実にチャンスは有るわけです。1位の王者に対して弱者である私たちは、王者にはできない細やかさや手厚さなど、私たちなりの戦略を取っていけばよいのです。
そのうえで、先述したターゲットやペルソナに向けて、その方が魅力的に思う自社の強みや魅力を言語化すること。それが弱者の戦略のなかでも大事なことになります。その戦略をコンセプトメッセージとして発信し続けること、これが弱者の戦術です。
コンセプトメッセージとしては下記です。
このように言語化することで、自社に合う求職者=貴社が求めている求職者に近い人物にメッセージされることになり、その当該人物から自分ごとのように受け取られるようになるのです。
貴社で働く上での強み、働く魅力は何ですか?それは貴社で働く社員たちが知っています。特に3年以上働く社員は何かしらの理由で、他社ではなく貴社で働いているのです。その理由を聞き出してみましょう。
ちなみにこの「弱者の戦略」はランチェスター戦略からヒントを得たものです。今回紹介した内容すべてがこのランチェスター戦略にあてはまるわけではありませんが、もしお時間がある方はランチェスター戦略の書籍を読まれることもおすすめします。もともとは販売・営業におけるマーケティング戦略の本ですから。
③元・求職者に聞け!
入社5年目以内の社員にヒアリングしてみよう
②ではコンセプトとキャッチコピーについてお話ししましたが、ではどうやってそれらを決めればよいのでしょうか。
思いつきで決める?天才的なひらめきが必要?? いえいえ、実はそんな事はありません。
ヒントは求職者にあります。もとい、「元・求職者」と言い換えましょうか。そう、現在いらっしゃる社員さんです。現在所属している社員さんは、元はといえば新卒・中途どちらにしても求職者だったはずです。その求職者の立場であったときの心境をヒアリングしてみましょう。
ヒアリングする項目は
だいたいこのあたりでしょうか。
まずは「きっかけ」です。きっかけがないとそもそも入社されることはありません。中途の場合はほとんどの人が、現在の職場を退職して新たに職を探す「転職」です。としたら、現在の職場を退職する理由があるはずです。その理由からリサーチすることで、貴社にエントリーする求職者の傾向がある程度見えてきます。
そして「採用PRを見て〜決断まで」の過程についても掘り下げていきましょう。求人広告なり採用サイトなりいろんな媒体を見て比較検討をしたはずです。比較検討の際になぜ自社に決めたのか、逆に競合をなぜ見送ったのかについて聞いてみると、実は思わぬ判断ポイントが見えてきます。実はここに隠れた強みや差別化ポイントがあった、というのは私たちの中ではよくある現象です。
さらには「入社初日から現在まで」についても重要なポイントになります。この店のヒアリングについては下記の内容で聞いてみましょう。
入社されても、入社後の印象が良くなければすぐに離職されてしまいます。ですが、他社に転職せずに今でも自社に所属し続けているのが今の社員さんです。社員さんが所属し続けていることにも、実は理由があります。その理由を掘り下げてみましょう。
「生活のため」「家が近いから」といった個人的な理由が多いとは思いますが、それ以上の価値もあるはず。できれば掘り下げて本音を聞き出していきましょう!
ヒアリングする社員さんは、入社2年目〜5年目くらいの社員さんにヒアリングするのがベストでしょう。入社1年目ではさすがに社内の仕事に慣れていないのでコメントが難しいですし、入社7年を超えるとさすがに当時のことを覚えていないまたは別の記憶に変わってしまっている可能性もあります。また、よくも悪くも社内の常識に染まってしまうので客観的な視点での意見がとれなくなってしまいます。
ヒアリングする人数は5名前後はとったほうが良いでしょう。1〜2名だけですとそれこそ「n=1」程度のサンプルにしかならず、その人だけの独自の考え方だけで客観性がとれにくくなるためです。
アンケートも併用すると効果的
あわせて、もう少し母数を広げてアンケートも取っていくとより精度が高まります。
「ヒアリングもしたのにアンケートも取るの?重複するから意味ないのでは?」
いえいえ、アンケートは全体の傾向を知る上でちょうど良い方法です。
アンケートはマクロ、ヒアリングはミクロを照準にした傾向調査と表現したほうが良いかもしれません。たとえば5人にヒアリングして詳細の傾向を調査したところ、5人がいずれも偏ってしまった回答をしていたとしたら、全体との齟齬が出てしまいます。
ある程度社内における全体的な傾向も把握できたうえで、ミクロである個別のヒアリングで精度を高めていくことが最適解となります。
実際に私は
・大手物流会社ではアンケートを全国50名規模、ヒアリングでは3名
・道路管理会社ではアンケートを地域60名規模、ヒアリングでは3名
を実施して、コンセプトやキャッチコピーの考案につなげていきました。
自社だけでは見えない隠れた強み・良さがこういったヒアリングやアンケートから見えていくのです。これこそ「マーケティング調査」となるのです!
アンケート調査は、できる限り選択方式でかつA4サイズ二枚分くらいに収めるとスムーズに進められます。
④エントリーしやすい採用サイトにする
数多くある採用サイトの中にはエントリーしやすい採用サイトもあれば、エントリーしにくい採用サイトもあります。
「エントリーしにくい採用サイトとは?」と思うかもしれません。意外にもこれは存在します。エントリーしにくい採用サイトの代表的な例としては下記3つがあります。
エントリーボタンがわかりにくい・たどりつけない
「え?」と思うかもしれませんが、実は結構こういったケースを見かけます。本来、Webサイトは見てもらったユーザー(顧客・見込み客など)に購買やお申し込み、お問い合わせなどの行動を起こしてもらわなければなりません。
その目的を加味していないでWebサイトを制作するとエントリーボタンがわかりにくい・たどりつけないWebサイトができあがります。これではせっかく訪問されたのに求職者が「エントリーはどこ?」と迷ってしまい、結果的に脱落することになるのです。
これは私見ですが、自社コーポレートサイトを名刺代わりのみでしか使用していなくて、コンバージョンなどを気にかけていない会社に多い傾向にあります。
下層ページからすぐにエントリーフォームへの導線がない
求職者が採用サイトの下層ページを読んだ後にエントリーへ進みたくても見つからなく、一度トップページに戻らないとエントリーページへ進めない状態になっています。今、説明しただけでも「なんか、めんどくさい」と思われたかもしれません。ですが、偏見かもしれませんが体感的に3割ぐらいの採用サイトがこういったケースになっています。
このケース、実は格安Web制作会社やフリーランスのWebデザイナーでもやってしまっています。マーケティングやユーザー行動についてもう少し加味していただきたいのですが…。
エントリーが「お問い合わせ」表記になっているケース
突然ですが、マラソンの話をします。マラソンを走っているとします。スタートして長時間走り続けて、ゴールを目指しているとしましょう。さぁ、いよいよゴール!というときに、
「ゴール」の表記が「ここまで」となっていたらどうでしょうか?
たしかに「ゴール」と同じかもしれませんが、「え?本当にここがゴールなの?」って拍子抜けしてしまいますよね。同じようなことが採用サイトのエントリーで発生しています。
エントリーフォームやエントリーページは、企業側にとって最後の「関門」でもあり、求職者にとってはチャレンジの入口となります。ここがもし「お問い合わせ」だけになっていたらどうでしょうか? 求職者の立場からしたらこう思うでしょう。
「お問い合わせ? エントリーはここでいいのかなぁ? 問い合わせって質問とか書くところだと思うけど、質問は無いし。別に申し込むところってあるのかな?」
という心理になってしまいます。
いやいや、お問い合わせもエントリーも一緒でしょ? って思うのは企業側の一方的な論理でしかありません。Webサイトは常にユーザーのためにあります。採用サイトにおけるユーザーは求職者です。求職者を迷わせないように、最後の関門でもあるエントリーボタンもフォームもわかりやすく表記していただきたいものです。
ここまでエントリーしにくい採用サイトについて解説しました。では逆にエントリーしやすい採用サイトとは何でしょうか。
かいつまんでいえば、先ほどとは逆のことを実践すればよいのです。
・エントリーボタンがわかりにくい・たどりつけない
→「エントリーボタン」がすぐある・すぐ進める状況をつくる。
・下層ページからすぐにエントリーフォームへの導線がない
→どのページであっても、最下部のフッターにエントリーボタンを設置する
・エントリーフォームが「お問い合わせ」表記になっている
→ボタンの表記を「エントリーする」に、フォームのタイトル表記を「エントリーフォーム」にする。
これだけです。この3つを実践するだけでかなりエントリーされやすいサイトになります。
採用サイトはエントリーしてもらうことが目的ですから、ちょっとした改善でエントリーされやすい採用サイトにしていきましょう。
⑤語る内容と順番を間違えない
これを間違えたら伝わるものも伝わりません。
またまた例え話をしましょう。親族から突然「50万円を貸して」と言われたらどう思いますか? ほぼ絶対に嫌だと言いますよね?
ですが、
「子どもが東京大学に入学することになった。だけど入学費用がどうしても工面できなくて大変困っている。だから貸してもらえるとうれしい」
といわれたらどうでしょうか?
実際にお金を貸すか貸さないかは別として「それならば、力になってあげよう、頑張ろう」と思うようになりますよね。
これが「論理」です。論理とは現状と目的をつなぐ言葉の橋渡しのことです。伝える内容にも順番があり、その順番通りではないと論理が通らない=言葉の橋渡しができない状況になってしまいます。
これは採用サイトでも同じことが言えます。論理と表現するとなんか難しいように聞こえますが「当社は◎◎だから◎◎のあなたが活躍できる会社です、だから入社して欲しい」といったことが矛盾していなければよいのです。
たとえばキャッチコピーで「ホワイトな会社」と謳っていれば徹頭徹尾ホワイトな面を紹介し、もちろんその後の面接から入社後の勤務までホワイトな状況であればよいのです。
矛盾しないこと。求職者が読んで矛盾を感じるような伝え方をしないこと。これだけです。
⑥正直に、誠実に
2024年4月に週刊誌がとんでもない事実を報道して大炎上しました。いなば食品株式会社による新卒社員集団脱走事件です。
ツナ缶や猫用ペットフードで大ブレイクしたいなば食品はこれまでネガティブな話題になることはありませんでした。しかしこの事件をきっかけに、いなば食品は一気にネガティブな印象付けがされてしまいます。
事件の詳細は報道のとおりなので詳細はそちらにお任せしますが、当のいなば食品の対応で最もまずかったことは
“(結果的に)嘘をついた印象を与えてしまったこと”
です。もちろん、騒動後の広報対応のまずさや次から次に出てくる暴露もありますが、それ以上にまずかったのは新卒入社の学生に対して寮の件で正直に開示しなかったことです。
問題の寮における一連の不具合について、いなば食品側は虚偽ではないと弁明しています。しかし、開示されなかったことにより新卒入社社員の方たちは最低限の生活すら危ぶまれる環境に押し込められる(新卒入社は全員入寮必須)結果になりました。事前に共有されていて何らかの対応を行っていれば、ここまでの騒動には発展しなかったはずです。
その報道以降、首を傾げたくなる社内実態のあれこれが芋づる式のように出てきましたので、お里が知れるといいましょうか。この会社はヒット商品を生むほどの著名な企業であり、印象の良い企業イメージからその評判は地の底に落ちてしまいました。
おそらく次年度入社予定の新卒(25卒)の多くは辞退されるでしょう。こうなってしまっては、数年間はまともに採用できないくらい厳しい局面を迎えるのではないかと見ております。(オーナー企業なのでなおさら)
この例から見て、改めてわかった絶対にダメなことは
「嘘をつくこと」
です。
もう一度言います。いなば食品側は虚偽はしていないと表明しています。しかし結果的に嘘をついた印象を与えてしまったことは大きな痛手となりました。
ブランディングの章でも語りましたがブランディングとは顧客との「約束」のことです。顧客との約束を反故にした企業が倒産や解体されたという例は、これまで雪印やビッグモーターなどがありました。
採用にももちろん顧客がいます。採用における顧客はズバリ求職者です。もちろん高校生採用や障がい者採用になると、教員や保護者の方も顧客のひとりとして扱われますが、それでも顧客のセンターピンは求職者であることは変わりません。したがって、求職者を裏切る行為は絶対にご法度。いなば食品の事例は最たる例ですね。
だからといって、求職者に媚びろというわけではありません。私が貴社に絶対にお願いしたいのは
会社として正直に・誠実に伝えてほしい
これだけです。
世の中にはびっくりするほどカッコつけた採用サイトが散見されますが、会社の実態と合っていますか?と聞きたくなるサイトが数多くあります。
後述しますが、見せかけでカッコつけたり実際とはかけ離れたことばかりアピールする会社は信用ができません。実態とは違う「ウソ」「装飾」でごまかしているからです。そんなことを行って入社されたとしても、すぐにメッキが剥がれて簡単に退職されてしまいます。求職者という顧客にウソや偽りでごまかす会社が、どうやって顧客に誠実に向き合えるのでしょうか。
偽る会社には、偽る人間がやってきます。類は友を呼ぶ。騒動時のビッグモーターをイメージしてもらえば、わかるのではないかと思います。
正直に、誠実に伝えること。これは採用において絶対に外してはいけない原理原則です。
エントリーが増える採用サイトのつくりかた(コンテンツ)
さて、いよいよ採用サイトに掲載するコンテンツについてお話しします。採用サイトに何を掲載すればよいか、気になるところでしょう。ですが、掲載コンテンツについて大前提の考え方があります。それは
「求職者がほしい情報を掲載すること」
です。
これはマーケティングの考え方に基づきます。マーケティングは平たく言うと「相手(ユーザー)がほしい物を目の前に差し出すこと」です。たとえ採用サイトをブランディング重視するとしても、この考えに基づくことが欠かせません。求職者が欲しい情報にすぐにアクセスできること、これが採用サイトにおけるコンテンツ構成における基礎基本です。
不安を払拭させるコンテンツから優先的に
成功する採用サイトの条件「求職者ファースト」
採用サイトを訪問している求職者は常に不安な心境を抱えていることについては先ほどお話ししました。ここでいう求職者が抱える不安とは主に
・就職や転職ができなかったら無職となり生活が維持できなくなる不安
・就職先や転職先が自分に合う会社であるかどうかの不安
・そもそもブラック企業ではないかという不安
の3つです。
1番目は想像に難くないと思います。転職を経験した人に加え、特に無職期間を経験したことのある方にとっては痛い記憶として残っているかもしれません。かく言う私も30代・40代で無職期間を経験し、きつい日々を送った記憶はいまだに忘れもしません。
2番目・3番目は自分がその会社に合うかどうかです。もし合わない会社であったり、そもそもブラック企業であった場合、求職者にとって最悪の選択となってしまいます。社会人、特に会社員の方は生活の半分近くを会社で過ごす方が大半です。一週間の半分近くを費やす会社で、嫌な思いばかりをしてまで働きたくないというのが本音です。
たとえブラック企業ではないとしても、会社と求職者の意向が合わない状況ではお互いに不幸になってしまいます。
求職者はこういった不安を抱えています。求職者の不安に対して求職者目線で詳しく応えることで求職者の不安をほどいて、安心して応募される採用サイトでなくてはいけません。何よりも求職者の不安を払拭させるためのコンテンツなりメッセージが先にみられるようにする。これが本書でいちばんお伝えしたい、求職者ファーストの採用サイトです。
当社ではあなたが安心して働けます。健全な会社です。ブラック企業ではありません。よりレベルの高いスキル・キャリアをご自身のものにすることができます…など、求職者の不安に対して応えていくメッセージを先に伝えましょう。
間違っても変なポエムやカッコつけすぎた英語キャッチコピーなどでカッコつけアピールをすることはやめてください!
大手企業のサイトのマネをしたのか、カッコつけた抽象的(というよりむしろ意味不明な)キャッチコピーに、理念がどうたらこうたらとポエムのような長い文章。で、うちの会社カッコいいだろ?じゃあ、お前の挑戦を待っている…
…って、何様や?!
とツッコみたくなるような痛々しいメッセージと、ビュンビュンアニメーション(後述します)で、派手に見せている採用サイトが結構な確率でみられます。中には、何の会社であるかわからない採用サイトすらあるんです。
こういったサイトは誰が満足するものなのでしょうか? その企業の担当者または、役員や社長ですよね。社長や役員は会社の建前をかっこよく見せたいですし、担当者はそういった上役に評価されたいですから。
ですが、肝心の求職者の知りたいを満たす目的にはなっておりません。求職者を無視したカッコつけ採用サイトが乱造されている状況なのです。
理念は最後に伝える
「採用サイトでは当社の理念とか、会社のポリシーとかを知って共感してもらいたいんだよ!」
おっしゃることは理解できます。ですがお伝えした通り、求職者は不安が先行していることをお話ししましたよね? マーケティングのところでお話ししましたが、求職者の求めていることを出しましょうと伝えました。このことから不安が先行している求職者には、まずは不安を払拭させるコンテンツを見せることです。そこを外してはいけません。
「じゃあ、理念とかは出さなくていいのか?」いいえ、最後の方に打ち出しましょう。
貴社の理念への共感は最後の最後には必要になってくるでしょう。ですが、あくまでも「最後の最後」であって、最初に見せるのは逆効果になるのです。
これは「語る内容と順番を間違えない」のところでもお話しした通り。求職者は不安が先行しているので、求職者の心理としては「私の不安を無くしてくれる職場ってないの?」という想いでいっぱいになっています。
「いっぱいに」なっているのですから、そんなさなかに貴社のポエムなんか言っても刺さるわけがありません。求職者の不安に応えてその不安を解き、いろいろ読み込んで安心したタイミングで理念を伝えたほうが、よほど心に響くのです。
「伝える順番の問題」。これを押さえておかなければなりません。
あえてネガティブな情報も掲載する
求職者の不安を解消させる不安払拭コンテンツ。これをイメージさせるのはあくまでポジティブなイメージではないでしょうか。ここでとっておきの方法が実はあります。それは、あえてネガティブな情報も掲載することです。
ネガティブな情報とは、自社にとって都合のよくない情報のことです。たとえば「残業が平均して毎日1〜2時間あります」「完全週休2日制なので祝日のある週の土曜日は出勤になります」「時に朝令暮改のように方針が変わる場合もあります」「テレワークは行っておりません」といった内容です。
今挙げた内容について、残業はイヤだという人にとって毎日1〜2時間の残業がある生活は耐えられないと思います。祝日があると土曜日が出社日になるルールがイヤだという人もいるでしょう。テレワークを希望する人がテレワーク不可の会社ではダメでしょう。このようにネガティブな情報をあえて開示することによって、ミスマッチを防ぐことができるのです。
残業の件については、バリバリ頑張りたいという人にとっては1〜2時間の残業は軽いものだと捉えるでしょう。一方で子育て中の主婦などの場合、残業を強いる環境では難しいでしょう。
そういった意味でのお互いのスクリーニングができるのです。だからこそ信頼がおけるとも言えるのです。むしろ、そういった情報を開示しないことで入社後トラブルになり、早期離職したとなったらお互いに不幸ですよね?
このネガティブな情報をあえて開示しているのが株式会社アステックペイントの採用サイトです。
「正直に言います!アステックペイントのここが課題」というページ名で、
などなど、本当にさまざまなことを開示しています。
これらの情報を読んでどのように思いましたか?
受け取り方はさまざまですが、この開示があれば入社後に「こんなはずじゃなかった!」ということが限り無く少なくさせることが期待されます。要は入社後のギャップによる早期離職を防ぐためです。
ネガティブな情報を掲載することには抵抗があるとは思いますが、あえて開示することでそういった条件も受け入れた求職者がエントリーするようになります。したがって入社後のミスマッチ・早期離職が減ることになるでしょう。
派手な演出なんかいらない!
ビュンビュンアニメーションは嫌われている!
いろんな会社の採用サイトを見ていくと、高確率で遭遇するのがびっくりするくらいエフェクト(装飾効果)がされているサイトです。
アクセスした瞬間にビカビカ点滅し、シュッとかシャキーンとかの効果音がつきそうなカッコつけた登場アニメーションがそこかしこにビュンビュンと。メタバースよろしくのようなぐるんぐるんまわる3D立体…
これらのようなサイトを見るたびに「何のためにこれらのエフェクトは必要なの?」って思います。こういった質問をするとだいたい
「かっこよく見せられるからいいじゃん」
「ブランディングのためよ」
という答えが返ってきます。そんな人達に私は言いたい。
「求職者のことをまるで見てねーじゃん」
と。先述した通り、採用サイトは求職者のためにあるものです。求職者はいわゆる一般ユーザーであってWebのプロではありません。プロを唸らせるわけでもないのに、「ブランディング」という名のカッコつけアニメーションでお茶を濁しているのは最悪です。
アニメーションについてはこちらのnoteにしっかり書かれておりましたのでシェアします。
Webサイトにアニメーションは必要あるのか。ないのか。どっちなのか。
(Takumi HASEGAWAさん)
HASEGAWAさんはアニメーションの必要性として下記4点をあげております。
・閲覧者の視線を誘導する
・閲覧者の操作で画面内の要素に変化が起きたときに、何が起きているかを通知する
・UIもしくはWebサイト全体の使用感を向上させる
・発信者が表現したい世界観・雰囲気を演出する
本来、アニメーションはそれ自体が主役ではなく、伝えたい内容に補足して理解を促進させるためにあるものです。
アニメーションがあるからユーザーの視線を誘導する、誘導した先にユーザーが本当に見たい情報があるケースです。あくまでも「ユーザーが本当に見たい情報がある」のであって、「サイト運営者がユーザーにコンバージョンを強制させる」ものではありません。もちろん、カッコつけるためのものでもありません。
ユーザーが見たいこと、見落としがちな点を誘導して正しい情報取得と良い結果をもたらすためにアニメーションは存在するはずです。
「我々もカッコつけたいんじゃなくて、うちの会社の世界観・雰囲気を演出するためにあるのよ!」
このように言う人もいますが世界観はあくまで「ユーザーが見たいこと・欲しい情報」があってこそ。ユーザーの欲しい情報があり、その情報を補完する背景としての世界観が初めて必要になるのです。
美術館のサイトはまさにその典型です。紹介する美術・芸術の世界観を壊さないこと=美術・芸術を求めるファンたちの心情を壊さないように、基本中の基本である「展示情報が探しやすいこと」をベースにサイト全体を洗練させ、独自の世界観を構成しています。そこは必ずユーザー(美術芸術のファン)の使いやすさとクライアント(出展芸術品)の世界観の演出を優先させているからなのです。
求職者のことをまるで考えず、なんちゃってブランディングを盾にビュンビュン・シュッシュとしたアニメーションを使い、てんかんになりそうなくらいビカビカに点滅させている。内容はよくわからない精神論で「挑戦する君を待っている!」とか。
「何この会社、よくわからんわ」
としか言えません。
結局こういったアニメーションは、制作会社がクライアント(特に社長)を喜ばせるために担当者がリクエストしたり、制作会社のデザイナーがデザイン見本サイトから引っ張ってきて、提案したりしています。そして社長が「すごいじゃないか」と喜んで、担当者も喜ぶ…。
そう、そこに求職者の存在が1ミリも含まれていないのです!
しかも求職者のような一般ユーザー層はこういったアニメーションは嫌う人が多い傾向にあります。読みにくい、内容が現れるまで時間がかかるなどタイパ志向の強いZ世代の方ならなおさらです。
アニメーションをこれでもかというくらいビュンビュンさせて、当の企業側も制作者も悦に入っているけど、求職者から嫌われてエントリーされない…。こんな滑稽なことがありますか!?
ちなみにHASEGAWAさんはこうも説いております。
「デザインを殺す」はなかなか強烈なワードですが、言い得て妙でしょう。内容を伝えて理解しやすいようにデザインしているのに、そのデザインの効果を払拭しているのですから。アニメーションが逆効果を生んでいることがわかります。
だからといってアニメーションは決して必要ないとは言いません。アニメーションがないことで、スクロールして通過されて見逃されるケースもあるのです。これでは発信者としても求職者としても不幸な結果になってしまいます。
アニメーションについては、求職者の視線を誘導する程度の必要最低限までに抑えましょう。読んで欲しいピンポイントのメッセージの場所のみ、自然な印象でアニメーションで出現させるくらいに留めることが理想です。
写真撮影は必須!日常の一部を切り取ろう
採用サイトで必要不可欠なのが、写真です。世の中にはイラストだけ使用している採用サイトやテキストだけの採用サイトがあったりしますが、よほどブランド力のある会社や著名な会社ではない限り、写真なしの選択肢はとらないほうが良いでしょう。
写真はリアルを切り取った非言語コミュニケーションの素材です。一見、難しそうに聞こえますが、言い換えれば「百聞は一見にしかず」です。言葉で口酸っぱくしてもわかってもらえなくて、実物や写真を見てもらったら一発でわかってもらえる、といった経験はありますよね? それと同じです。
ましてや応募前の段階では、見ず知らずの他人である求職者に伝えなければなりませんから。写真があれば雰囲気はわかってもらえることも多く、それは採用サイトであっても変わりません。
これがイラストだった場合は抽象度が上がります。そしてイラストレーターさんが描くタッチ(絵の雰囲気)によって受け取り方が大きく変わるため、正しく伝わらない可能性のほうが高くなります。
いわんや、テキストのみでは伝わらないことはおわかりでしょう。求人広告や求人サイトで最小枠で掲載した時、写真が掲載できたらいいのになーと思ったことは多いと思います。採用サイトであればそういった制限がまったくないのですから、写真はふんだんに使いましょう!
フリー素材・有料素材は極力使用しない
ただし、フリー素材(有料の素材写真も含めて)はできる限り使用しない、使用したとしても最小限にしましょう。派遣会社など勤務シーンや社員紹介が打ち出せない場合は別ですが、そういった会社や場合以外ではフリー素材は極力使用を避けてください。
フリー素材はあくまでイメージ素材です。フリー素材は人物・設備ともきれいな写真が多く、自社の実態とはかけ離れているケースが多いことが特徴です。そんなフリー素材を見てバラ色の未来を想像した求職者が、入社後にフリー素材でのイメージとは全く違う現実に対して絶望し、早期離職するということも発生しかねません。
カッコつけすぎない・ポーズを決めない
意外と見かけますが、ドラマばりのキメキメのポーズや超笑顔のガッツポーズ、イェーイなポーズで横にはスライディングしてふざけている人がいるパーティー集合写真を前面に掲載しているとか…。そんなキメキメポーズばかりの写真を掲載している会社に問いたい。
会社でそんなシーン、日常でありますか?
「あるわけないじゃん」がほぼ100%でしょう。もちろん、会社イベントの日にはそういった光景もあるかもしれませんが。
求職者が見たいことはあくまでも「日常」です。年間休日110日の会社であれば、残り255日のほとんどが日常です。会社ではイベントの日よりも圧倒的に日常が多いのですから、日常を知りたくなるのは当然です。
日常を毎日笑顔ばかりでワイワイ過ごしているわけじゃないですよね?真剣に仕事をしているシーン、対面で打ち合わせしている、熟考している表情、額に汗しながら重機を操作しているシーン、大変な事態になりそうな状況…さまざまあるはずです。
たしかに喜怒哀楽の「怒」「哀」を掲載するのはあまり良くないですが、だからといって仕事は「喜」「楽」ばかりではないですよね。イベントでのイェーイなパーティー集合写真とかって、パーティーとは関係のない求職者にとっては内輪の盛り上がりにしか映りません。求職者も新卒学生も、SNSなどを通じてそういったところはもう知っていますので、そういう写真を前面に見せられた採用サイトにはしらけているのが実情です。
「喜」「楽」ばかりではない写真にするには、真剣な表情シーンや困難に向き合っているところを表情として切り取ることをおすすめします。
特に、製造業や設計事務所、ものづくりにあたる会社は、職人のような真剣な表情を切り取ってみましょう。特に「鋭い目線」は何より効果的です。ものづくりであれば、厳しい現場を通ってきた人の眼光はちょっとやそっとのものではない、鋭さを秘めているケースが多いです。人は人の目を見る習性があることから、被写体の方の真剣な「目」に惹かれます。目に惹かれる求職者は、自分自身もこうなりたいという未来の自分を投影させているのです。
そういった真剣な表情をシーンを掲載しつつ、一方で一息ついたシーンを織り交ぜるといった硬軟の緩急をつけることにより、職場のリアルをバランス良く伝えることができるのです。
依頼して良いフォトグラファー・依頼を避けた方が良いフォトグラファー
では撮影するためにはどのような準備や段取りを取ればよいのか、お伝えします。
まず、撮影はプロのフォトグラファーに任せましょう。今やスマホの画質が最高ではありますが、構図の取り方やフォーカス、仕上がりの色出しなど写真ならではの非言語化されたコミュニケーションが発するメッセージの打ち出しについては、やはりプロが圧倒的に勝ります。
依頼するなら、人物やビジネスシーンの撮影が得意なフォトグラファーです。できれば採用サイト案件で撮影したことのあるフォトグラファーがよいですが、そうでなければコーポレートサイトや会社案内など会社公式資料でかつ人物や仕事のシーン中心の撮影の経験が多いフォトグラファーに依頼しましょう。
何度も撮影依頼したことのある私の経験上、下記のフォトグラファーに依頼するのは避けたほうが良いと考えます。
①撮影の場数の経験が10回未満
②風景や景色専門のフォトグラファー
③商品撮影のみ、モデル撮影のみなど特化しているフォトグラファー
④自治体の広報誌案件や個人店経営向け、学校撮影など「ゆるめの」要件でしか撮影したことがないフォトグラファー
①を避けたほうが良いのは想像できると思います。②③についてはそもそも専門外ということが大きな理由です。採用サイトはビジネスユースでありかつ、会社の魅力をビジネス文脈で人物やシーンの切り取りを行わなければなりません。こういったことを現場で一人で撮影するといった場合にビジネスシーンでの撮影の経験がないと提案ができないことになりかねません。
④にも通じる話ですが、現場では想定外のケースが発生・発覚したりします。その中で現場にある条件だけで最大限の切り取り方ができるのか、これは撮影者にしかできないことです。②③のフォトグラファーさんには素晴らしい写真を撮影する方がたくさんいらっしゃいますが、あえて専門外の方にビジネスユースの撮影をお願いしなければならない理由はないでしょう。
ここで避けた方が良いケースの④について理由を話します。採用サイトの撮影は条件・要件が非常にガッチリと固められるケースが多数です。たとえば、撮影するリストの見本をお見せしますと
このような感じで撮影するリストを作り、撮影ポーズや画角の指定まで細かくガッチリと行います。特に採用サイトでは、出演する社員さんにどのようなシーンで日常のリアルを写し出したいか、できる限り日常の延長を再現できるようにします。お客様とも相談して「こういったシーンがよいでしょう」と決めて撮影に臨みます。
「ざっと◎◎な感じのシーンを何枚か、いい感じで撮っておいてください」では通じません。適当に撮影することはできないのです。
④の自治体の広報誌案件や個人店経営向け、学校撮影などの場合は要件がガッチリと決められていないで全体のバランスを見つつ撮影します。採用サイトのように個別でシーンやポーズをガッチリ決めて撮影しないことから、④の経験が中心のフォトグラファーさんではうまく対応いただけない場合があります。
私はこの件で依頼した(正確に言えばクライアント経由で紹介された)フォトグラファーさんから8点も「撮影落ち」されてしまい、大変な目にあった経験をしました。そのフォトグラファーさんには撮影リストを共有して打ち合わせも行いましたが、8点も撮影落ちが発覚。「感覚だけで進めてしまいまして…ごめんなさい」と言い訳されてしまい、何のために撮影リストを作ったのだろうかと頭を抱えてしまいました。(結局、他の撮影写真からリカバリーしました)
撮影は失敗が許されない
撮影は基本的に1回限りの本番一発勝負です。そのためには入念な準備が欠かせません。なぜなら失敗が許されないからです。そもそもですが、撮影には膨大なイレギュラーコストが発生しています。金額云々もしかりですが何より大きいのは時間コストです。
まず、撮影の打ち合わせでクライアントの担当者に貴重な時間を割いてもらっています。
なによりクライアントの担当者も被写体となる社員さんもすべて通常業務とは全くイレギュラーの時間コストを払っているのです。また、その段取りのために所属するセクションの上長が配慮したり撮影時間におけるリカバリーをどなたかが行っている可能性もあるのです。
にもかかわらずクライアントの担当者も被写体となる社員さんも、周辺で協力した社員さんも撮影したからと言ってお金がもらえるわけではありません。
実質的に「持ち出し」で行っているのです。
したがって、撮影において絶対にあってはならないことは「企画側の準備不足で撮影落ちが発生して撮り直ししてしまうこと」です。
現場の社員さんは、通常業務時間中にご協力をお願いして持ち出して時間を割いてくださっているのに、企画側の不手際でもう一回やり直しさせて…なんて言われた日には当の社員さんから多大なる不信感を抱かれます。場合によっては、激怒されて撮影し直し自体が断られることもあるでしょう。
それくらい、撮影は失敗の許されない本番一本勝負なのです。企画する側は極力失敗しないように入念に準備に準備を重ね、段取りや根回しを不足なく行いましょう。
撮影リスト(香盤表)つくる
撮影に臨む際は「誰を・何の目的で・どんなポーズを・(撮影日程以内の)いつ・誰と・どんな衣装で」撮影するかを細かく記載します。被写体は社員さんとはいえあなたではない他人、撮影するのは貴社のことをご存じないフォトグラファーです。
「ざっくり、こんな感じで〜」と適当に伝えていても、撮影してみたら全然ポーズが違っていたり、場所も全く違っていたり、そもそも被写体の人(モデル)が違っていた、というオチすらありえます。
これはひとえに準備不足と伝達不足。「連絡したんだけど」となっても、具体的にはよくわからないまま撮影に臨んだということもあり得るのです。
それだけ他人に伝えることは難しいことなのです。
撮影に必要なことは
「誰を・何の目的で・どんなポーズを・(撮影日程以内の)いつ・誰と・どんな衣装で」
です。これを細かく言語化してひとつにまとめた書類が香盤表(こうばんひょう)です。
この香盤表は単なる撮影リストだけではなく、下記の情報も含めております。
撮影当日は段取りが全てになりますので、香盤表に穴がないように網羅しておきましょう。
香盤表は基本的にほとんどテキストで書かれます。とはいえ、具体的にどんな撮影ポーズにしたらよいか、撮影者に具体的なイメージを共有しないとなかなかわかりにくい点もあります。そういったイメージ共有を補完する資料が「撮影イメージ表」です。
画像から一例をあげると、インタビューで談話しているシーンとテキストで書いても、被写体の人は座ってインタビューを受けるのか立って受けるのかがわかりません。テーブルは必要なのかどうか、撮影の角度はどのようなイメージが良いかどうかもテキストでは伝わりません。そういった具体的なイメージを誰が見てもわかるようにしたものが撮影イメージ表です。
撮影イメージ表は見本となるポーズやシーンの画像を貼り付けますが、イメージ素材サイトのPixtaやiStockなどから見本カンプ画像を引用しておくことで大体は対応できます。
もし希望するポーズの写真がなければ、自分でポーズを取ってスマホで撮影してもよいでしょう。
プロのフォトグラファーに依頼できない時
どうしてもプロのフォトグラファーへの依頼が予算的に難しい場合は、カメラ好き・撮影が趣味の社員の方や知り合いの方を探しましょう。この場合もプロの撮影者と同様に香盤表やイメージ表はマストです。
100人単位の集合写真や大きな敷地にある会社の全景など大掛かりな写真ではない限り、一眼レフカメラではなくてもコンパクトデジタルカメラでも十分に撮影できます。コンパクトデジタルカメラもお持ちでない場合はスマートフォンでも撮影はできるケースもあります。最近のスマートフォンはカメラの解像度が高いものがほとんどなので、デフォルトのカメラアプリを使用すればメインビジュアルに使用する写真には不向きかもしれませんが、ボディコンテンツで使用する写真であればおおむね対応可能なケースが多いです。
できればコンパクトデジタルカメラ以上のカメラをご用意いただきたいのですが、どうしても無理であればスマートフォンのデフォルトのカメラアプリで撮影しましょう。
撮影の際に注意したいことは
・縦向きではなく横向きで撮影する
・撮影直前に画面をタップしてピントを合わせる
・明るさを考慮する
・同じポーズやシーンを数カット撮影する
上記4点にご留意ください。
暗すぎる写真や逆に明るすぎて服や肌が白飛びしてしまった写真、手ブレやピントがボケた写真などに対して、画像加工で補正してくださいと言われても限界があります。以前に「撮影は失敗が許されない」と書きましたが、それにはこういった理由もあるのです。
最後に、写真撮影した方には謝礼を忘れずに。特に社外の友人の方ならなおさらです。
求職者が注目する掲載コンテンツの例
第一志望で入社したくなるコンテンツを選ぶ
さて、いよいよ採用サイトに掲載するコンテンツについてお伝えします。(採用ページへの掲載も同様です。)採用サイトに何を掲載したらよいか、すべての基準は「求職者がほしい情報を掲載する」ことにあります。
では求職者がほしい情報とはどんな情報でしょうか。求職者にアンケートを取った統計がございますので共有します。
これらのデータからわかることは、
・求職者は新卒・中途問わず具体的な仕事内容を知りたい
・求職者は社内がどのような雰囲気であるか、社風を知りたい
・どのような人が働いているか、人となりを見たい(≒求める人物像にもなる)
・休日や給与はどのくらいあるかは押さえておきたい
次点としては
・転勤の有無
といったところでしょうか。
社会人にとって仕事はライフスタイルに大きな影響を与えるものです。求職者にはそれぞれの内情があり、ライフスタイルがあります。それゆえか求職者はライフスタイルを壊してまでは働けない・働きたくないといった内情が浮かび上がります。(とはいえ求職者は、ある程度ライフスタイルが変わることを覚悟していると見ております。)
求職者は自らが望むライフスタイルにすり合わせて、自分に合う職場であるかどうかを情報をリサーチしています。これはまさに求職者によるミスマッチ対策ですよね。入社後のミスマッチを防ぎたいと思っているのは採用する企業側だけでなく、実は求職者も同じなのです。
ミスマッチを防ぐためには事前リサーチが欠かせないのですが、ちょっと前までは求職者側がエントリーする会社を見極めるのは困難でした。今のように口コミサイトもなく、また採用サイトを立てている会社はほとんどありませんでした。本当に、求人広告や転職サイトだけにあるわずかな情報量だけで判断していたのですから。
そんな時代から今や、情報公開・企業の魅力アピール合戦の採用サイト乱立時代に!人手不足が延々と続く採用戦国時代ですから。人材獲得戦争と言っても過言ではない今だからこそ人材獲得戦略を決めて、戦略の言葉通り、戦いを略して求職者から第一志望で応募されることが最適解となります。そのための採用サイトです。
採用サイトに掲載するコンテンツを検討する際は、求職者が第一志望で入社したくなるようなコンテンツを選びましょう。なんと言っても、採用サイト(採用ページも含む)は求人広告や転職サイトのように文字数や表現に制限がないのですから。とにかく詳しく、わかりやすく伝えて、貴社が欲しい求職者の方に第一志望で入社してもらえるように整えましょう。
採用サイトに掲載したい主要コンテンツ
職種紹介・仕事内容
就職・転職の募集である以上、具体的な仕事内容については必須中の必須です。単に「営業」「テレアポ」だけではなく、より詳細が見えるよう具体的な文章や写真、動画で表現しましょう。1日のモデルケースを時間別に具体的に紹介するのも一つの方法です。
ここで大事なのはウソやレアケース、極端な脚色はしないことです。1年に1回、すごいクライアントへのプレゼン大会があるからそれを大々的に紹介する…確かに間違ってはいないですが、1年に1回はさすがに日常ではないですよね?求職者は日常を知りたいのですから日常の業務内容やそこで起こるエピソードや働く先輩の本音を書きましょう。
社員インタビュー・座談会
その会社で働く先輩はいったい何を話すのか、どのような言葉で話すのか。これを表すコンテンツが社員インタビューや座談会コンテンツです。会社に入社したきっかけから、今どのような業務を担当しているか、仕事で面白いことや厳しかったこと、ピンチに立たされた時にどのように乗り越えたかなど、できる限りのリアリティを再現しましょう。
そしてできる限り「その人の言葉で」表現することです。出演する社員さんは、その人となりを表す言葉を持っています。言い回しまでも再現できると人柄がにじみ出てより良い効果が期待できます。ただし、だからといって言葉に詰まったときの口癖でよくある「あー」「うー」「えー」までは必要ありません。
社員さんに語っていただくコンテンツについても、ウソは論外として「ウソっぽくならないこと」が大事です。「ウソっぽくならない」とあえて表現したのは、ウソではないけど綺麗事ばかり語っていて本音が見えないような状態になっていないか留意してほしいです。
仕事ですから楽しいときもあれば、ツラく厳しいこともあります。むしろツラく厳しいことのほうが多いのでは? という会社や職種もあると思います。そういったことを隠して、良い面ばかりを見せていこうとすると結果的に読み手である求職者にリアリティが感じられずウソっぽく見えてしまうのです。
今やニュースサイトやSNSでいろんな情報を入手することができる時代、働くことに関する情報や報道も調べている人が多いのが事実です。きれいなところばかり見せている情報に対して、裏があるのではないかと見てしまうのが「人間の性(さが)」です。
ですからきれいなところだけではなく、裏側の大変なところなども正直に話していただきましょう。そういった裏の側面も見せていくことで、逆に「きついところもあるのか。正直に見せてくれるのはいい会社だ」と信頼を寄せるようになるのです。
求める人物像
企業研究の上で知りたい情報として常に上位に上がってくるのが求める人物像です。文字通り、この企業はどんな人物を求めているかを言葉に表した内容を紹介するコンテンツです。
間違っても
「大卒、できれば難関大学卒の人。イケメンで性格もよく、頭も抜群に良く仕事は上司に従順で、対人コミュニケーションは最強、仕事もできる人」
と書いてはいけません。これを見た瞬間、読み手である求職者は
「いるわけねーだろ」
「いても、貴社に入社しないよ」
というツッコミが来るでしょう。ツッコミだけならまだしも、心理的なハードルが上がってしまうため、この情報だけで検討から外れてしまうことも十分に考えられます。
もちろん現在所属している社員の1割でもそういう人がいれば、貴社がその人にふさわしい会社であることが客観的に証明されます。しかし、一人として所属していない場合は高嶺の花といいますか、現実的ではないというのが関の山でしょう。
求める人物像は実は読み手にとって、自分の性格やスタイルとすり合わせるための重要な項目です。先に書いた通り、自分の性格やスタイルが会社の社風に合わないとなればすぐに退職されてしまいます。これではお互いが不幸になります。
「ターゲット・ペルソナは誰かを設定する」のところでも書きましたが、優秀すぎる人や現実離れした人物をペルソナに設定してしまうと、それはそれでエントリーされにくくなります。
求める人物像については、現実離れした人物や現在所属している最優秀プレイヤーではなく、2〜5番手当たりの方を数人ピックアップしていただき、その人の仕事のスタイルをモチーフにしつつ、平準化させていった言葉でまとめてください。
言語化した人物像の特性には、理由も書き添えておくと納得されやすくなります。
営業職であれば
と書き添えてあれば、読み手から納得されやすくなりそうですよね。
求めることには必ず理由があるはずです。企業サイドが一方的に「◯◯な人物を求めます!」と言われても読み手から見たら「はぁ…」といった印象を受けかねません。できる限り理由を添えておきましょう。
また、大前提としてライフスタイルに大きく影響しますので、勤務時間や勤務曜日(土日休みか平日休みか、夜勤があるかどうか)なども合わせて記載しましょう。
給与モデル
求職者が最も注目するのは給与です。マイナビによる『転職動向調査 2024年度版』において転職の理由が「給料が低いから」が男性のトップ、女性でも2位に位置づけられており、転職先の決定理由については男女とも「給与が良いから」がトップに来ることが判明しました。
転職を始める・決めるきっかけの大半が給与額となることから、給与額については切っても切り離せません。給与モデルを正確に公開しましょう。求人広告やホームページ上の採用情報にて給与額・報酬額を公開しないのはご法度です。
また、特に募集要項で「給与:当社規定による (経験に応じて応相談)」と掲載されているケースをよく見かけますが、これも絶対に避けてください。たとえ本当に高い金額の給与帯であったとしても、求職者の視点で見た時に「(給与額が安いから)堂々と書けないのだろう」と、いらぬ憶測をされてしまいます。
ここでは「給与モデル」と表現しました。あくまでモデルとは言いますが、現実的なラインを明示してください。たとえば、
入社時(平均年齢 23歳)
スタッフ職
年収 280万~330万円
▼
10年目(平均年齢 33歳)
チーフ・主任職
年収 390万~440万円
▼
20年目(平均年齢 43歳)
係長・課長職
年収 500万~550万円
▼
30年目(平均年齢 53歳)
部長・部長代理職
年収 650万~720万円
といった感じです。もちろん、職能や各種手当、評価額も見込まれることから金額が変動しますので、上記のようなイメージでおおむね平均の範囲を書いていただけたらイメージしやすくなります。
ただし「年収300万〜1,000万円」といったあまりにも金額に開きが多い表現は避けてください。範囲に100万円以上開きがあると上位額のイメージがしにくくなり、逆に求職者は最低額だけ見るようなうがった見方をするようになります。これでは、逆効果になりかねないので範囲の金額は50〜70万円ぐらいにしておいたほうが良いでしょう。
ここで絶対に遵守してほしいことがあります。間違ってもこの額面を脚色しないことです。人手不足だからといって、応募者を増やすために給与額を高く表示するのは職業安定法に違反します。これの最たる例は、2022年10月1日に読売新聞での報道で明らかになった大阪の洋菓子製造「マダムシンコ」の運営会社による求人詐欺でした。
月給35万円のはずが、17万円に……!? 繰り返される「求人詐欺」の真相
記事は私が大ファンにしているブラック企業アナリスト新田龍さんの記事です。抜粋しますと
上記に対してマダムシンコの運営会社側は
として争ったとのこと。これは明らかに「求人詐欺」です。当然ですが、この裁判は元従業員の男性側が勝訴。裁判所は月給35万円での契約成立を認め、マダムシンコの運営会社である株式会社カウカウフードシステムに対して合計100万円の支払いを命じました。
求人・採用にて正しい情報を出さずに誇大広告やウソで募集するのは職業安定法にて禁止されております。マダムシンコの運営会社は法律を無視し、しかも「広告は閲覧者を増やすために給与額を高く表示したものにすぎない」と開き直ったのでですから、悪質の最たる例です。
法律を守らない会社はズバリ「反社」です。こういったケースが白日のもとにさらされやすい世の中になりました。SNSで炎上したり報道されることもあれば、ずっとネット検索やGoogleマップなどに履歴が残り、いつまでも上位表示されることになります。こうした行為は企業ブランドが地の底に落ちる結果になりますので、ウソや誇大、行き過ぎた脚色は絶対にやめてください。
正直に、誠実に。これがすべてです。
データで見る当社
昨今、採用サイトにて「データで見る当社」「数字で知る当社」といったインフォグラフィックを使って自社の特徴や特性を紹介するコンテンツが人気です。
インフォグラフィックは情報をグラフィックと合わせて伝える表現方法として2010年代初頭から注目されるようになりました。このインフォグラフィックが2020年代から採用サイトに取り入れられるようになって、各社ともさまざまなコンテンツを展開するようになりました。
インフォグラフィックの最大の特徴は
・初見の情報であっても読み手が見て瞬時に理解できる
・コンセプトテーマにひもづけて表現できるので読み手にも理解されやすい
・情報を整理しやすい
の3点にあります。
テキストの情報を理解するには、どんな人でも一定の時間がかかります。表現不足や読み手の読解力の問題もあって、テキストの表現では誤解されてしまう面もあります。そういったことを防ぐために、情報を抜粋して的確に訴求するためにインフォグラフィックを使用します。
表現例としては下記がございます。
・株式会社エヌ・シー・エヌ
https://recruit.ncn-se.co.jp/data/
・武松商事株式会社
https://recruit.takematsu.co.jp/data
・株式会社スリーハイ
https://www.threehigh.co.jp/recruit/company/data.html
職場の男女比や出身地の割合、年齢の比率などのオーソドックスな情報から、それぞれの会社による独自のアンケート集計など、その会社ならではの特徴を紹介します。
このデータが見るコンテンツは紹介した特徴だけではなく、コンテンツの紹介の仕方やグラフィックからその会社の性格や社風が現れるケースもあります。求職者に対して「面白い視点や切り口で紹介する会社だな」という印象を持ってもらいやすくなるでしょう。
ただし、あまり「奇をてらう」ようなことにならないようにしてください。求職者が知りたいことは結局のところ「仕事内容」「給与」「人間関係や社風」「職場の日常」「キャリア・将来性」です。データで見る当社やインフォグラフィックは、求職者の知りたい欲求を補完するコンテンツに過ぎません。グラフィックにこだわるあまり、内容に乏しいことにならないようにご注意ください。
キャリアパス
求職者が気にするのは入社直後だけではありません。正社員の場合、求職者は特に長く働いた先の未来も加味して仕事を選びます。それもそうですよね。「なんでもいいから、どこでもいいから働ければいいや」と考える人もいないことはないですが、多くの人は無駄に働くことはしたくない、将来のための経験にならない働き方をして貴重な時間を潰したくないと思うからです。
したがって、求職者が「この会社に入社した先に、どんなキャリアアップが期待できるのだろう?」という視点でこのコンテンツを作ってほしいと思います。
翻って、自社ではどのようなキャリアを歩むのか、どのようなキャリアのフローの用意があるのか、キャリアアップにおける軸はどんなことなのかについても考慮してください。多くは、役職または給与額のアップ(掲載例は給与モデルの節を参照)はキャリアアップの軸になるのかと考えます。
また、転勤有りの職場であれば、転勤経験のある社員さんにおける実際のキャリア例を具体的に表しましょう。転勤有りの職場についてはライフスタイルの変化が必然的に発生します。転勤にまつわるリアリティがないと転勤後の生活に想像がつきにくくなるため、応募をためらわれてしまう結果になりかねません。
コンテンツはすべて「おもてなしの精神」で
採用サイトに掲載しておきたいコンテンツを紹介しました。コンテンツについては、採用サイトの中身を占める大きな要素となります。あれもこれも無尽蔵に掲載できたらよいのですが、コストや制作期間を考えるとなかなかそうはいかないのが実情です。
過去には「採用サイトでうちの会社に来て欲しい」との想いが強すぎて、先程のような主要コンテンツではなく、他社にはないオリジナルの企画を用意できないかといったリクエストもありました。
限りある時間とコストの中から掲載するコンテンツを決めなければなりません。その基準となるのは、先ほど紹介した「第一志望で入社したくなるコンテンツを選ぶ」の節の最初に紹介したグラフのように求人情報で重視するポイントの統計を参考にすることが一つの基準となるでしょう。
求職者は採用サイトで何を知りたがっているのか、求職者の知りたい情報を掲載することが大事ですので、この基準は外さないようにしましょう。
もうひとつ、大事なことがあります。それは「おもてなしの精神」です。私が採用サイトを作る際に大切にすることは「採用サイトは採用窓口のおもてなし」ということを念頭に置いていることです。
コンテンツがいろいろあったとしても単なる自己主張のオンパレードだったらどうでしょうか?それこそ「うちの会社はSUGEEEE!だからお前の挑戦を待っている」といった極端なまではいかないかもしれませんが、中身を読むと誰に向けてメッセージしているのかがよくわからない採用サイトを多く見かけます。
それこそ全面ビュンビュン・ビカビカさせたり、ヘタウマな(?)イラストを散らしては社員さんにカッコつけたポーズであたかも楽しい職場ですよーと無理やり見せている採用サイトは、言葉を選ばずに言うと「自己演出の自己満足芝居」です。
あえて「芝居」と書きました。芝居はあくまで人生の中における数分から2時間程度の現実逃避だから成立するのであって、日常が芝居になるわけはないですよね? 求職者が採用サイトで知りたいことは「日常」であるにも関わらず、そこで芝居じみたサイトを見せつけられているとしたら…それはおもてなしでもなんでもない、単なる企業側の自己満足ショーにしか過ぎません。見ている側からしたらこれほど痛々しいことはありません。
それよりも、次のような感じで、柔らかくお声がけされたらどうでしょうか?
と言われたら「あ、すごく感じの良さそうな会社だな」と思えますよね? 来客時にはこんな感じでお客様をおもてなしされると思います。このおもてなし精神を採用サイトで行ってほしいのです。
先程のお声がけは、お客様をお迎えするような感じで少々大げさに表現しましたが、採用サイトでのおもてなしはまさにあの例文のとおりです。
採用サイトのお客様は求職者です。コンテンツを決める時はもちろん、何を伝えるかも含めてすべてがおもてなしです。へりくだる必要はありませんが、おもてなしする心持ちで採用サイトを表現していただきたいです。
おもてなしは相手における第一印象・第二印象を左右しますから。
Webだけではなく他メディアもクロスさせていく
これまでは採用サイト・採用ページの掲載コンテンツについて紹介しました。求職者に伝えるコンテンツはなにもWeb掲載のテキストや画像コンテンツだけではありません。動画、ショートムービー、ライブ配信もありますし、採用ピッチと呼ばれる採用用途のプレゼンテーションのスライドショーコンテンツもあります。
採用サイトや求人広告以外のWebメディアであればSNSやnoteがあります。採用広報として使用しているオウンドメディアがあれば、それも採用に通じるメディアとなります。また、そこから派生したコンテンツとして、マシュマロやmondなど匿名質問相談メディアもコンテンツとなるでしょう。ここからは採用サイト以外の代表的な表現媒体を紹介します。
動画
動画はリアリティを再現する上で現時点では最強の手段です。リアリティの最強は現場での体験です。しかし現場での体験はインターンシップや職場体験見学などではないとできないため、すぐに気軽にできることではありません。できる限りリアルの現状を伝えるには、リアリティに近い状況をパッケージできる動画が現時点では最強になります。
動画では話し方、声、所作、にじみ出る考え方や人間性までもが現れます。動画を見た求職者は、そういった「雰囲気」から自分に合うか合わないかを判断します。
動画を撮影・制作する際は、できる限りリアリティを再現するようにしてください。間違っても映画や情熱大陸のような演出をしないようにしましょう。カッコつけただけの痛さがにじみ出てしまい、本来伝えたいことが演出で伝えられない結果になりかねません。
紙媒体
一方Web以外の認知メディアとしては「現物」で認知を広めていく方法もあります。就職フェアや高校生への職場見学、インターンシップなど現場参加型でアプローチする際、パンフレットやチラシなど圧倒的に「現物」が強いです。直接手渡しされた感触は強い印象が残りますので、対面で対話してさらに渡されたらほぼ確実に受け取ってもらえます。
ただし、現物の場合でも必ず採用サイトなどのWebメディアやエントリーページの両方にたどり着けるようにすることが欠かせません。現物は、手渡しされた日には受け取った人から見られますが、その後は本棚にしまわれたり、他のチラシと一緒にされるなどして翌日以降はほぼ見られなくなります。
チラシやパンフレットなどの紙媒体はアプローチ手段のひとつに過ぎません。できれば手持ちのスマホに一刻も早く収めてもらう事が必要です。そのために、紙媒体には必ずわかりやすい位置にQRコードを設けて読み込んでもらうようにしましょう。
間違っても「URLだけ」「検索欄だけ」はやめてください。人はスマホで文字を入力することは基本的には面倒だと思っている傾向が強いので、LINEメッセージやSNSのコメント以外、入力することを避けたがります。わざわざ検索欄で文字を入力したくないですし、ましてやURLなんてなおさらです。
できる限りすぐに結果を出したいときは
ここまで紹介してきた内容は、長期的なスケジュールで採用していくことを前提にしています。基本的には6ヶ月前後で採用サイトやSNSの初期公開設定を完成させ、公開後は3〜6ヶ月単位で効果測定をしていくことを基本としています。ブランディングやマーケティングのメッセージは、一朝一夕で周知させることはできませんので、一定の時間と継続的に発信していくコストがかかることをご理解ください。
ただし、どうしてもできる限りすぐに採用をしなくてはならないケースもあると思います。まずは3ヶ月前後で採用を決めたい場合は次の方法を使ってみましょう。
リスティング広告を活用する
リスティング広告はGoogleやYahoo!における検索広告のことを指します。検索したら検索画面の最上部や最下部に表示されるテキストの広告のことです。採用を急ぎたい時は、リスティング広告をおすすめします。採用サイトが完成したらすぐに広告をかけましょう。
なぜリスティング広告がおすすめなのか、理由は2つあります。1つ目は、他社を出し抜くことができるからです。
多くの会社が求人広告サイトに依存する中、自社の求人告知に対して検索広告を活用するケースは実は少数であることはご存知でしょうか。
業種・業界にもよりますが、求人を探す人は求人広告サイトも見ます。ですが、今や検索が当たり前の世の中。スマホやPCでほぼ必ず検索を行います。
ではどんな検索を使用しているかと言いますと
株式会社ナイルが2023年、全国の男女4403名を対象にインターネット利用時の検索行動に関するアンケート調査を実施したところもっとも利用頻度の高い検索ツールは圧倒的にGoogle、次点がYahoo!でした。SNS検索が当たり前になってきたと言われ、実際にSNS検索も増えていますが、それでもGoogleの圧倒ぶりは他社を追随させないものになっています。今後生成AIによる検索行動に変わることからこの数値がどのように変わっていくか、見守っていきたいところですが。
このようにリスティング広告はGoogleまたはYahoo!検索時に最初の1ページのトップまたは最後部に表示されますので、求人広告に入られる前に自社の求人情報への入口を表示させておけば、先に見つけられるということになります。
このリスティング広告、意外と求人情報に対してはブルーオーシャンでして、各社ごとの案件がリスティング広告に掲載されていないケースが結構あります。
求職者は検索する際、例えば「神奈川 工場勤務 求人」「埼玉 IT 営業 求人」など、「(地域名)+(職種)+求人or採用」で検索します。
地域名は都道府県名がよいですが、地域によってはもう少し地域名を絞っても良い場合があるでしょう。愛知県なら三河、尾張などの地域名を入れても良いです。また、県庁所在地の都市名や、県庁所在地以外でも北九州市や浜松市、相模原市などの政令指定都市名、または地域の主要都市名(例:山口県なら下関市や周南市など、福島県なら郡山市やいわき市など)も良いでしょう。
このワードで実際にGoogle検索を行ってみましょう。だいたい求人広告メディアが最上段に現れます。
「じゃあ、求人広告サイトに広告を入れればよいじゃないか」と思われました?
いえいえ、実は求人広告メディアに出稿すると結局求人広告サイト内で比較されてしまいますし、最悪、他社広告に埋もれてしまいます。自社の広告が他社の求人広告に埋もれたら意味がないですよね?
また、求職者は何も求人広告サイトを見たくて見ているのではありません。自分の大切な仕事を選ぶために仕方なくアクセスします。求職者は「できる限り、早く、よりよい職場を見つけたい」一心で探しているのですから、求職者の要望に応える意味でユーザーが求人広告サイトに入る前に、「先に」求人広告をしてしまいましょう。
最近はGoogleしごと検索の順位が強かったり、派遣会社の広告が強かったりしますが、専門職においては会社単位や店舗でリスティング広告が強いケースも見られます。検索上位に来ている求職者が求人サイトにクリックされる前に、求職者が広告枠でクリックしたくなる告知文でクリックしてもらうようにするのです。
このリスティング広告は有料。Googleの検索広告として一定の金額を支払えば、検索の上部・下部のいずれかに掲載されます。金額によるため最上位表示は難しくても広告枠で掲載されることから、検索しても検索結果が表示されないことが無くなります。検索上位を確保し、アクセス数を増やすためにもぜひリスティング広告を活用してみましょう。
2つ目の理由は「デポジット方式」だから。
リスティング広告は通称・PPC広告(ペイ・パー・クリック)とよばれていて、クリックしなければ支払われないクリック型課金です。要は交通系電子マネーをご想像ください。
Suica、PASMO、ICOCA、Sugocaなど交通系マネーは入金しても使わなければずっとチャージした金額は残り続けますよね?リスティング広告は交通系マネーと同じデポジット方式なのです。
クリック課金形式は検索ワードによって変わりますが、クリックされなければデポジットが減りません。逆にクリックする人は広告されている内容に興味・関心が高いと言えるでしょう。興味・関心が高い人だけがアクセスするので効率よく広告できます。
なお、採用が終われば広告のクローズもできます。クローズした時点でデポジットが残っても繰越ができるため、次回の広告運用にご利用いただけますのでご安心ください。
ここまでお話するとSEOを知っている方は次のような質問をされます。
「SEOで集客できるんじゃないのか?」
と。
SEOで「株式会社●● 採用」で検索したらすぐに最上位に上がってくるのではないか、とのこと。
たしかにサイトを公開して、適切なSEO対策をすれば1ヶ月で「株式会社●● 採用」の検索1位を取ることもできるでしょう。
しかし、社名+採用で検索する人はすでにあなたの社名を知っているケースだけです。
あなたの会社が、その地域や全国に名前が知られている企業であれば問題ありません。SEOだけでも十分に対応できるでしょう。たとえば「パナソニック 採用」「京セラ 採用」「コメリ 採用」など大企業や地元の有力企業は、検索したらすぐにそれらの会社の採用サイトにたどり着きます。新卒でもない限り実質、求人広告サイトにアクセスする必要はありません。
しかし中堅〜無名の会社では「社名+採用・求人」で検索されるのはまれでしょう。
実際にあなたが、仮に全く違う業界の会社に転職するとします。たとえばあなたが製造業にお勤めなら、アパレル業界の会社に転職するとしましょう。アパレル業界の会社名を挙げてみてください。おそらくユニクロ、ユナイテッドアローズなどの大手とあなたが知っている服のメーカーくらいですよね。中小企業はほとんど挙げられないはずです。そのくらい中小企業は会社名が連想されませんし、誰かに教えてもらう以外検索されることはありません。
このように中堅〜無名の会社が社名で検索されるケースはかなりレアなのです。ですが、いざ転職しようとしたら大企業だけしかないという人を除けば中小企業も転職の視野に入ります。
では転職先の中小企業をどのように検索するかと言うと「(地域名)+(職種)+求人or採用」です。
「(地域名)+(職種)+求人or採用」で検索してもらうためには「(地域名)+(職種)+求人or採用」でSEO対策をすることはもちろん、採用広報ブログの更新やSNSの更新なども進めていく必要があります。
しかし地域内の同業他社も同様に「(地域名)+(職種)+求人or採用」でSEO対策をしている可能性も高いですし、これらのワードは求人広告サイトが上位を占めやすいため、SEO対策だけでは限界があるのです。
また、ランディングページの形式を取る場合、ランディングページの形式は1ページ構成ゆえ、複数ページを構成するホームページ形式よりもどうしてもSEO対策だけでは上位に上がりにくくなる特性があります。
なお、これは2021年12月現在の情報のためGoogleのアップデートによっては変化する可能性はありますが、それでもページ数の多いサイトが有利になる傾向があるため、SEO対策だけでは検索上位に上がりにくい傾向は変わらないでしょう。
SEOも重要ですが、あくまで求職者に届ける手段のひとつ。SEOばかりにこだわるよりも短期・長期の視点で考え、広告運用するかSNSなどでじっくり関係性を深めていくようにするか、状況に応じて戦略を選択していきましょう。
媒体別有料広告を利用する
短期的に効果を出したいなら連動して掲載する媒体別の広告枠を利用する方法もあります。
engageなら、連動している「エン転職」に有料枠で出稿する方法の「エンゲージプレミアム」と、連動するIndeedに有料スポンサー枠で掲載する「Indeed広告」が選択できます。短期的な結果を望むならこれらの広告を活用する方法もよいでしょう。
engageプレミアム
エンゲージプレミアムは、応募数保証やAIによるスカウトに加え、会員数800万人以上の「en転職」や、Indeedの有料枠、LINEキャリアの有料枠にも求人が掲載されます。料金は50,000円からチャージ方式で、応募があればチャージから天引きされる仕組みです。なお天引き金額は地域・職種によって変わりますので詳しくはエン転職担当者にお問い合わせください。
Indeed
Indeedのスポンサー枠は、Indeed掲載で上位に表示されます。
スポンサー枠は検索結果で最優先に掲載。時期や検索ワードによっては検索結果1ページ目はすべてスポンサー枠になり、2ページ目までスポンサー枠である場合もあります。求職者はGoogle検索と同様に検索結果の上位から見ていく傾向がありますので、検索上位が優位になります。
料金はリスティング広告と同じクリック課金方式です。Indeedの公式サイトのヘルプページ(https://indeed.force.com/employerSupport2/s/article/203366230?language=ja)によると、Indeedのスポンサー求人は、求人情報が求職者にクリックされた時にのみ請求金額が加算される「クリック課金型」を採用しています。料金についてはIndeedの担当者にお問い合わせください。
転職サイトや転職エージェントサービスとかけあわせる
どうしてもすぐに採用を決めなければならない…こういう時こそ転職サイトや転職エージェントサービスの出番です。
すぐに決めたい時はこれらのサービスをかけあわせてスピーディーに結果につなげましょう。
転職サイトは多数の求職者を集めています。常時多くの求職者がいるため多くの求職者に届く仕組みができています。
このときも自社採用サイトがあれば強いです。なぜなら自社採用サイトを作る過程で、求める人物が何を求めているかについて明確になっているからです。したがって求人広告サイトへの出稿も原稿に迷うことがありません。求人したい内容はすべて自社採用サイトに書いてあるため、求人広告への原稿は採用サイトを要約するだけなのです。
また転職エージェントサービスについても具体的な人物像を限りなく具体的に伝えられますのでエージェントもピッタリの人物を探しやすくなります。
とはいえ、できる限りコストの高い求人広告や転職サイト、エージェントサービスを利用しなくても「集まる仕組み」を作るようにしましょう。そもそも、自社採用サイトを作る目的のひとつは長期的に求人コストを下げることですから。
採用サイトか採用ページか
採用情報をWebサイトとして発信する際、選択肢として「採用サイト」「採用LP」「採用ページ」があります。それぞれの特徴を理解して、自社に最適な方法を見つけましょう。
採用におけるWeb表現の種類
採用サイト
採用サイトは、企業のコーポレートサイトとは別の場所で運営されます。自社サイトとは違う独自のドメインまたは、自社サイトのURLの前に(◯◯◯.)をつけたサブドメイン、または(/◯◯◯)のように別のサブディレクトリで構築され、多くのページから構成されています。
この形式では、会社の文化やビジョンや働く環境、社員インタビューなど採用に関連する詳細な情報を伝えられることから、会社の魅力を余すところなく伝えたい場合に適しています。また、採用サイトは独立しているため採用活動に特化したデザインやコンテンツを展開しやすいという利点もあります。
採用LP
採用LPはランディングページの形式で構築され、1ページで完結します。こちらもコーポレートサイトとは独立したドメインやサブドメインなどで運用されています。採用LPはページ全体を一気に見せることができるため、特定の募集要項やイベントの告知など目的を絞った情報発信に適しています。
採用LPの最大の特徴は、シンプルでありながら効果的に情報を伝えられることです。ユーザーの目を引く内容を一気に読ませて、応募を促すCTA(Call to Action)が配置されていることが一般的です。
採用ページ
採用ページは企業のコーポレートサイトの一部として存在します。ドメインの直下にあるサブディレクトリに配置されるため、企業全体のブランディングと統一感を保ちつつ採用情報を提供できます。
採用ページは1ページから数ページの構成となり、コーポレートサイトの流れに沿って自然な形で採用情報を見せることができます。採用ページは企業の他の情報と一体化していることから、採用以外の情報も見てもらいやすいという利点があります。
基本的な採用情報を簡潔に伝えたい場合や、コーポレートサイトを訪れるユーザーに自然な形で採用活動をアピールしたい場合に適しています。
以上が、「採用サイト」「採用LP」「採用ページ」の特徴です。それぞれの特徴を理解し、自社の採用戦略に最適な方法を選びましょう。
採用サイトにかけるコストとリニューアルの周期
では採用サイトにかけるコストはどのくらいが適正かについてお話しします。
このお話をする前にもう一度、前に取り上げた平均採用コストの図を出しましょう。
画像の通り、2019年度における新卒採用の1人あたりの採用コストは93.6万円、中途採用の1人あたりの採用コストは103.3万円です。もう一度言いますが、これは1人あたりの金額です。びっくりするような金額ですが、これが実情です。
図ではひとくくりに採用コストと表現していますが、さらに内部コストと外部コストとで分けられます。
内部コスト:人事担当や社内社員が対応したコスト(主に時間対価)
外部コスト:上記以外、外注したコストすべて
もちろん内部コストも抑えるようにしなくてはならないのですが、如実に変わるのは変動費となる外部コストです。特に欠員が出たから募集をしたけど入社されなかったとしたら、外部にさらなるコストを支払わなければなりません。
求人広告に頼っていると「来る時は来る」けど「来ない時は来ない」という偶然性に任せるため、後者の場合は掛け捨てでコストを支払い続けることになってしまいます。来ないなら断念して・・・となると今度は欠員した部署は少ない人員でカバーしなければならないため、残業代が増えてしまう結果になりかねません。
こうならないためにも、採用サイトを常時立てておくことで長期的に採用できる状態を続けておくことが大事なのです。
実際に採用サイトを立てて適切に運用を行っていくことで、次の図のように進んでいくことが期待できます。
たとえば、最初の1年目は年間5名を採用したいと仮定します。そのうち1名を採用サイト純粋流入で獲得できれば、単純計算で100万円が浮く計算になります。(あくまで仮定です)
2年目〜3年目は転職サイトやエージェントへの出稿費用を削減して、採用サイトを軸にIndeed連携+リファラル+SNSなどを活用して2年目は年間5名のうち2名を、3年目は3名を採用サイト純粋流入で獲得できるようにします。
こうして、採用サイト純粋流入で3年間で6名獲得した場合、単純計算で3年間600万円程度のコスト対パフォーマンスが見込めます。
もちろん、採用サイトを立てれば必ず採用コストが下げられるかというと確約はできません。採用サイト純粋流入といっても、過去に転職サイトや広告枠を見たことから知ったケースもあるので、単純に103万円/1人分が浮くとは言えないでしょう。3年間で6名・600万円程度のコスト対パフォーマンスを見込んだ場合、その50〜60%として300万〜360万円が目安といったところでしょうか。
もちろん、貴社の業界や募集職種、雇用形態、地域によって1人あたりの採用コストの金額は変わってきます。また、どのくらいの時間をかけていくか、採用したい人数の目標は? といった観点から考えると、採用サイトにかけるべきコストも変わります。
また、時間軸についても見ていきます。採用サイトを作った場合、その採用サイトはどのくらい持つのかについて下記のデータをご覧ください。
このデータによれば多くの企業が採用サイトを2〜4年使用しており、5年までを含めると実に75%に達します。逆に2年未満は少数派であることが判明しました。このことから言えることは
「採用サイトのコンテンツは3〜4年と長く使える傾向にある」
と言えますよね。
経営方針がガラッと変わったり、コロナのような社会全体が変革を求められるといったことがあれば採用方針が変わるかと思いますが、そうでなければ、文字修正など少々の変更は発生したとしても1年単位で大リニューアルする必要はありません。
掛け捨ての求人広告とは違って、採用サイトは時間をかけて育てていくものです。要は時間をかけて求職者の受け皿となってキープされていくため、求職者の応募機会損失を産まなくなる可能性が非常に高くなるということが期待されます。
したがって、3〜4年程度を視野に入れて、たとえば6名採用・600万円程度のコスト対パフォーマンスを見込んだ場合、その50〜60%として300万〜360万円程度の効果と考えると、このコスト対パフォーマンスがそのまま採用サイトへのコストとして活かせられるはずです。
「300万〜360万円!?採用サイトに?」
と思われるかもしれません。
採用サイトの価値は、最低3〜4年程度からリニューアルを含めて5年〜10年をかけた長期的な採用効果における対価となります。毎回掛け捨ての求人広告にずっと支払い続けるか。自社でアピールして本格的な検討をし始めた求職者にじっくり見てもらえるかつ、長く使える採用サイトが良いか。これこそ貴社のご判断、経営判断となるでしょう。
まとめ〜第一志望で応募されるために
第一志望で応募されるために押さえておきたい採用サイトのポイント
以上、第一志望で応募される採用サイトのつくりかたを中心にお話しをしてまいりました。長くなりましたので各節の最後部に記載した「ポイント」を抜粋してまとめました。第一志望で応募されるために押さえておきたいポイントです。ぜひチェックしてみてください。
採用戦国時代における最強の武器は採用サイト
現在の採用シーンにおいて採用サイトは欠かせません。採用戦国時代における必須アイテムでもあり、最強の武器と言えるでしょう。ただし採用サイトにおける求職者への機能・効能であったり、そもそもの伝え方を間違えてしまっては逆効果の逆ブランディングになってしまう恐れもはらんでいることもお伝えしました。
戦国時代で武器がない戦いは素手で戦いに出るようなもの。だからといって、持つ武器を間違えては、戦えないどころか返り討ちにあってしまうということです。
繰り返しになりますが、販売サイトがお客様のためにあるように、採用サイトは「求職者のため」にあります。自社のプライドの誇示やカッコつけのためのものではありません。
自社の内情と向き合い、自社の強み・弱みと向き合って正直に誠実に表現することです。その上で採用サイトを見た求職者が貴社に対して、「未来」を感じるように作りましょう。
貴社のカラーに合わせて、貴社の社長や人事の方そして所属する社員さんが語りかけることで、求職者が心から入社したい会社として第一志望で応募されるように。
当社・合同会社サン-リブでは今回ご紹介した考えを元に、採用サイトをゼロから制作して公開まで一気通貫する「サン-サイ」と、コーポレートサイトの採用情報ページを企画して内容を精製する「カッサイ」の2種類のサービスをご用意しています。
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「いや、今年は採用サイトの予算を組んでいなくて…」
「今使っている採用サイトは大丈夫なのだろうか?」
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数々の採用サイトや省庁の採用パンフレットをプランニングから制作まで担当している採用系Webディレクターの堀内崇が、貴社の採用サイトにどういった問題・課題があるかを共有し、最適な解決方法や活用法をzoomにてお話しいたします。
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さいごに
今はまさに「採用戦国時代」です。冒頭でもお伝えした通り、少子化が加速度的に進むこれからの日本では、労働人口が増える見込みはありません。パーソル総合研究所が発表した『労働市場の未来推計 2030』では2030年には644万人もの労働力が不足するといわれています。
644万人って、想像できますか?
これは、東京都区部を除く日本最大の市である横浜市(372万人)と2位の大阪市(269万人)の総人口を足した数値とほぼ同数です。横浜市と大阪市の総人口なのでこれは物理的に働けない16歳未満の児童や働けない高齢者や病気療養者なども含めての数値ですので、いかに不足している労働力644万人が莫大な数値であるかがよくわかるのではないでしょうか。
にもかかわらず、相変わらず「人手」がないと成立しない仕事が日本には多すぎます。もちろん最低限の人手は必要ですが、ムダな作業やムダな慣習などに人手が割かれてしまっているのです。
いまだに経費計算を電卓と紙の帳簿でつけている会社、メールを送信したら相手先に必ず電話をいれることが必須になっている会社、申請は紙の書類でかつ手書きでないとダメ、稟議には何個もハンコを求められてしかもお辞儀ハンコをしないと最初からやり直しさせているとか…。そこに効率や時間短縮の概念は一切なく、ただただ社内慣習で決められていることを惰性で行っているんです。さらに言うとDX(デジタルトランスフォーメーション)どころかデジタル化すら全く無縁の会社がいまだに多く存在するのです。そんな会社が「人手が足りない」「若手が来ない」と嘆いているのですから、もう…。
たとえDXができた、自動化をした、移民入れたとしても労働力不足を補えるかと言うと個人的には懐疑的です。人数は単純計算であって、個人単位のミクロの視点で見るとまた違った事情が見えてきます。子育て中で働けない、介護で働けない、メンタルが不調で働けないなどさまざまな事情があるため、単純に埋め合わせできるかと言うとそう簡単ではないというのが私の見方です。
また、90年代中盤〜2000年代中盤までの就職氷河期はもう来ないのではないかと予想しています。たしかにバブル崩壊後の大不況だったとはいえ、まだ労働力に余裕がありましたし、この年代まで日本の人口は年々増えていたのですから。
しかし日本では労働人口が減る一方の未来しかやってこないため、2000年代のような世界線は戻ってこないでしょう。現にコロナの影響で2020年〜2022年は世界的な不況だったにも関わらず、有効求人倍率が1倍を割り込まなかったのです。氷河期のピークやリーマン・ショック後の不況では0.5倍程度まで下がったのに! 飲食や宿泊業など一部業界では壊滅的な打撃を受けましたが、その他の業界では人手不足が続いていたのです。
採用戦国時代に終わりは来ない、と言っても過言ではないでしょう。
そんな未来が来るのが確定しているのですから、日本の会社はビッグモーターのように不正を重ね、社員に激しい罵倒やハラスメントを浴びせた上に奴隷のように使い捨てして経営陣や幹部たちが「金だけ・今だけ・自分たちだけ」いい思いをするようなことをしている場合ではないのです。ましてやマダムシンコのような求人詐欺をするなんてもってのほか!
こういった会社はそもそも会社体質を変えるか、伊藤忠がビッグモーターを完全に買収し刷新を図るくらいのことをしなければならないでしょう。体制がダメな会社は入社した途端やめられる「穴の空いたバケツ」となります。SNSや週刊誌にさらされて「こんな会社なんか入りたくない」と思われてしまったら、そのバケツに水が入ってこない=入社されず人員を確保できない未来しかやってこないのですから。
入社されるようになるためには、企業は求職者に「第一志望で入社したい」と思ってもらえる会社であるべきです。そのためには、まずは社員さんを大切にすることが第一でしょう。会社のブランド向上のためにSDGsの取り組みやESG経営をアピールするとか、女性取締役を入れるとかよりも、社員さんがこの会社で働けてよかった!と心から思ってもらえる会社であるようにしなければなりません。
こうなれば早期離職を防ぐことができて定着率も上がるでしょうし、採用コストを減らすことができます。さらには社員さんからの紹介(リファラル)で入社する人が増えていくことにもつなげられるのです。リファラルで応募されるのであれば、それこそ究極の採用コスト削減となりますよね。
終わらない採用戦国時代を生き延びるために大切なことは
①定着率が悪ければそもそもの会社体質を変えること
②「入社したい・働き続けたい会社」で在り続けること
③採用活動で正直かつ誠実に発信して、入社前後においてお互いに齟齬がないようにする
以上3つです。
①は経営者の覚悟のみ! 体制がダメなら今すぐ改革を!
②は経営者だけでなく人事や管理職を含めた対応が必要となるでしょう。
③はまさしく採用サイトが採用戦国時代における大きな武器になります。その採用サイトでは会社の今と魅力を正直に開示して、誠実に伝えましょう。これに尽きます。
私は採用にお困りの会社に採用サイト制作を介して尽力いたします。ブラック企業ばかりが取り沙汰されますが、世の中には素晴らしい企業が多数あることも存じ上げております。そういった企業が、人手不足で倒産するなんて絶対ありえない!と強く思い、採用サイトの面から支援させていただいております。
あなたのいる会社が終わらない採用戦国時代を生き延びて、そして取り引きするお客様に喜んでいただけるようになるために。そして働く人も喜ぶ…そんな社会になることを願って。
ご依頼のお問い合わせ先
採用サイト制作のご相談・ご依頼は合同会社サン-リブのお問い合わせは下記よりお願いいたします。
(販売目的や人材サービス等の営業メールは固くお断りします)
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コーポレートサイト内の採用ページの制作・リニューアルについては、現行採用ページ活用サービス「カッサイ」にて承ります。下記よりお申し込みくださいませ。