ディズニー映画全部見る9・ファンアンドファンシーフリー

 ファン・アンド・ファンシー・フリー/Fun and Fancy Free(1947・73分)

 9作目は2本の中編から成る劇中劇式のオムニバスです。ピノキオのジミニー・クリケット、実在した腹話術師のエドガー・バーゲンを司会役として冒頭、各話の間、最後に本編2編を紹介するための小話が入り、本編の最中もナレーターによる実況がある異色の作品です。

ボンゴ/BONGO(30分)

 子グマのボンゴはサーカスのスター、一輪車にお手玉、ボクシングだってお手の物。ショーの度に拍手喝采のボンゴですが、それは公演の間だけ。ショーが終わるとボンゴは固いベッドがあるだけの檻に閉じ込められてしまいます。

 仕事漬けの毎日に嫌気がさしたボンゴはサーカス団から脱走し山へ逃げますが、生まれた時からサーカスにいたボンゴは初めての大自然に戸惑います。雨風は冷たいし、虫はうるさい、木登りもうまくできません。

 まぁいいさ。僕にはサーカスの技がある。サーカス団から唯一持ち出してきた一輪車に乗ってボンゴは器用に山を移動します。そして出会ったのが女の子の子グマ、ルルベル。年の近い二人はすぐに恋に落ちます。バンビの浮かれ頭がごとく二人だけの世界に入るボンゴとルルベル。良い雰囲気になったところでなんと、ルルベルがボンゴの頬をピシャリ! 平手打ちを食らわせたのです。

 何でこんな事するんだろう?もしかして嫌われちゃった? 戸惑うボンゴにルルベルは不満そう。もう一度ボンゴの頬を叩こうとしますが空振りし、傍にいた別のクマ、ランプジョーの頬を叩いてしまいます。ランプジョーは怒るかと思いきやルルベルにメロメロ。惚気顔で嫌がるルルベルを抱え自分の縄張りに連れ帰ります。再びひとりぼっちになってしまったボンゴ。ルルベルとランプジョー、その他大勢のクマたちが楽しそうに歌い踊るのを寂しそうに見ています。

 人間ならキスをする、でもクマはほほピシャリ。クマのカップルはそう歌い、互いの頬を叩きあいます。そう、ビンタはクマの愛情表現だったのです。サーカスで育ったボンゴは野生のクマの習性をまったく知りませんでした。ルルベルが僕を叩いたのは僕が好きだったからなんだ!

 急いでルルベルの元に戻るボンゴ。ランプジョーとまともに戦えば勝ち目はない。でもボンゴにはサーカスで鍛えた技がある。一輪車を乗りこなし、ランプジョーを圧倒するボンゴ。ルルベルも無事に取り返し、愛のビンタ。野生の暮らしにすっかり馴染んだボンゴ。木登りはまだ下手だけど、それはこれから練習していこう。めでたしめでたし。

ミッキーと豆の木/Mickey and the Beanstalk(30分)

 幸せの谷には魔法のハープがありました。ハープに彫られた女性が歌えば谷には緑が溢れ、小川はせせらぎ、鳥や獣も元気いっぱい。魔法のハープのお陰で幸せの谷は豊かな自然を享受していました。しかしある時、幸せの谷に大きな黒い影が。影が去った後、魔法のハープも無くなり、幸せの谷は乾涸びひび割れた荒野に様変わりしてしまうのでした。どんなインフラだよ。

 谷に唯一残った農家であるミッキー、ドナルド、グーフィーは毎日食事とは呼べない粗末なものを食べて凌いでいました。このやつれた3人の顔とても貴重です。何とか空腹に耐えるミッキー達ですが、錯乱したドナルドが乳牛を殺して肉にしようとした事で牛を売る事を決意。ドナルド、グーフィーを家に残してミッキーは一人、町へ牛を売りに行きます。

 牛を売ったらいくらになるかな? ミッキーはどんなご馳走を抱えて戻ってくるかな? 浮かれ騒ぐドナルドとグーフィーですが、何とミッキーが持ち帰ったのはたったの豆3粒。ミッキーはこれは魔法の豆だと説明しますが、怒ったドナルドは豆を床に叩き落してしまいます。落ちた豆は床に空いた穴から地面に消えていきました。

 がっかりした3人はとりあえず寝る事にしますが、その晩床の穴から植物の蔓がにょきにょきと伸びてきました。魔法の豆というのは本当だったのです。眠りこける3人を豆の木は雲の上へと運びます。ようやく起きたミッキー達、雲の奥にお城を見つけます。興奮で空腹も忘れた3人は意気揚々とお城に近付いていきます。

 雲の上は何もかも巨大な世界。大きな植物、大きな虫、大きな階段。自分の背丈の何倍もある障害をミッキー達は乗り越え、お城に入ります。お城の中にはまたもや巨大なテーブルと巨大な料理。はしゃぐ一行に誰かいるの?と魔法のハープが声を掛けました。何と持ち去られたハープは雲の上にいたのです。再会できたは良いものの、魔法のハープは箱の中。助けるには鍵が必要です。

 自分は魔法使いの巨人にさらわれたのだとハープは言います。巨人という言葉に慌てふためくミッキー達。鍵を持っているのはもちろん巨人。噂をしているうちに魔法の巨人がミッキー達のいる部屋に戻ってきました。歌を歌ってご機嫌です。俺は何でもできる。小さくもなれる、空も飛べる、姿も消せる。チートか?

 巨人から逃れようと食べ物に身を隠すミッキー達ですが、そんな雑なかくれんぼでは当然見つかってしまいます。しかしそこはさすがのミッキー、軽快なトークで乗り切ります。気をよくした巨人は何にでも変身できるぞ、何が良い、言ってみろとご満悦。困ったミッキーがテーブルの上に目を走らせるとそこにはハエ叩き。閃いたミッキー、ハエに変身してと頼みます。ハエなんてつまらない、ピンクのウサギはどう?可愛いし、と巨人。ハエが難しいならいいよ、とミッキー。ムッとした巨人はじゃあ、ハエでいいよ。

 作戦勝ちだねミッキー。近くに隠れていたドナルドとグーフィーにも合図して3人で巨大ハエ叩きを構えたはいいものの、巨人が変身したのはピンクのウサギでした。自分を騙そうとしたミッキーに巨人は怒り心頭。箱からハープを取り出し、逆に3人をしまい込みます。ミッキーだけは何とか抜け出しましたが、ドナルドとグーフィーを助けるにはやはり鍵が必要。

 ここで魔法のハープの出番です。ハープが歌い出すと巨人はうっとり、眠りにつきます。その内にミッキーは鍵を奪い、ドナルドとグーフィーも救出します。後はハープと共に逃げるだけ。しかしハープの歌がやんだ事で巨人が目を覚ましてしまいます。

 城から庭へ、庭から豆の木へ決死のチェイス。何とか地上へ戻ったミッキー達は豆の木を切り倒します。まだ豆の木を降りる途中だった巨人は地面へ真っ逆さま。魔法のハープも幸せの谷に戻り、それからは皆いつまでも幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。

 ファン・アンド・ファンシー・フリーは今回が初視聴だったのですが、面白かったです。ナレーターによる実況があるディズニー映画はミッキーと豆の木を除いたらくまのプーさんくらいでしょう。一見の価値ありです。

 次はメロディ・タイムについて書きます!

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