ディズニー映画全部見る11・イカボードとトード氏

イカボードとトード氏/The Adventures of Icabod and Mr.Toad(1949・68分)

 11作目は2本の中編から成るオムニバスです。日本ではあまり馴染みがない物語が題材であるためか、ディズニーリゾートでも特にモチーフにされたりはしていません(海外パークにはアトラクションがあります)。タイトル自体初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。

 トード氏(Mr.Toad/35分)

 イギリスの児童文学「たのしい川べ」が原作。父の莫大な遺産と屋敷を相続したヒキガエルのトード氏はやりたい放題。好奇心の赴くまま、次々と新しい趣味に手を出しては浪費を繰り返します。そんなトード氏にも彼の身の振り方を案じる友人が3人いました。父の古い友人であるアナグマのマクバジャー、水ネズミのラット、もぐらのモールです。名前がわかりやすくていいですね。

 トードの領地である川辺の村に住む3人は美しい屋敷を誇りに思っていました。そのため屋敷が人手に渡らぬよう、どんぶり勘定のトードの代わりに経理もしているのです。トード氏の現在の趣味は乗馬。小さな体で起用に手綱を操ります。相棒の馬ともこんなに愉快な主人は初めてだと相性バッチリ。猛スピードで領地を駆ける2人は畑を突っ切り、温室を破り、街灯を薙ぎ倒しと破壊の限りを尽くします。ただでは済まなそうですが、でもへっちゃら。後で弁償すればいいし!面倒な手続きは経理のマクバジャーがやってくれるし!

 あまりにも無責任なトードに真面目なラットが怒ります。マクバジャーが気の毒じゃないのか。もっとしっかりしろ!しかし、大人しくお説教を聞くトードではありません。すぐ側を横切った自動車に目を奪われると、もう頭の中は自動車でいっぱい!今すぐ自動車が欲しいと馬車を放り出してしまいます(馬かわいそう)。こうなったトードはもう手を付けられない。ラットとモールは二人がかりでトードを屋敷に引きずっていくと部屋に閉じ込めてしまいました。自動車熱が冷めるまで大人しくしていなさいと。

 しかし閉じ込められたくらいで反省するトードではありません。窓から脱出すると自動車探しに一目散。そして翌朝には車両窃盗犯として逮捕され、裁判にかけられてしまうのでした。車なんて盗んでない。屋敷と交換したんだと弁明するトードですが(交換するな)、交換の契約に立ち会った酒場の主人がトードは私に盗んだ車を売りつけようとしたと偽証して有罪確定。懲役刑を食らってしまいます。そもそも馬車による器物損害の余罪がありまくるんですけどね。

 一人寂しく冷たい牢屋で過ごすトード。クリスマスでもひとりぼっちです。もう無茶はしない、これからは真面目に生きると決意したトードですが、愛馬のシリルが変装道具を持ってきて脱獄を促したお陰でたちまち冒険心に火がついてしまいます。警官を撒き、何とかラットの家に逃げ込むトード。脱獄に驚くラットとモール、そこにマクバジャーもやってきます。トードの屋敷にはイタチがいっぱい、大宴会の真っ最中。そのイタチ達のボスがトードの裁判で偽証した酒場の主人だと言うのです。ボスはトードから渡された屋敷の権利書を持っていました。トードが車を盗んでいない証拠です。トードを無罪放免にすべく、権利書を取り返しに友達4人でこっそり屋敷に忍び込みます。

 大騒動の後、何とか書類を取り返したトード。再審で無罪判決となり、晴れて自由の身です。クリスマスは牢屋だったけど、新年は友達と一緒。今度こそ心を入れ替えたトードを友達3人は誇りに思います。馬車も自動車も卒業。これからの時代やっぱり飛行機だよね!結局、新しいもの好きで無鉄砲な性格は直らないトードでした。

イカボード先生と首なし騎士(Icabod Crane or The Legend of Sleepy Hollow・33分)

 こちらはアメリカのゴシック小説「スリーピー・ホロウ伝説」が原作。ハドソン川のずっと奥、スリーピー・ホロウという小さな村がありました。その村の小学校に新しく赴任してきたイカボード先生は変わり者。カカシのような瘦せっぽちののっぽに鷲鼻、片時も本を手放さない。しかし優雅な身のこなしと美声で村の女性たちはメロメロ。イカボード先生はすぐに人気者になりました。それまで村の人気者だった力自慢のブロムは面白くありません。

 モテモテでも意に介さないイカボードでしたが、村一番の美女であり大地主の娘であるカトリーナには心を奪われました。特に彼女が最終的に受け継ぐであろう財産に(最低)。このカトリーナ、前作に登場するスルーフット・スーや次作のヒロインシンデレラにどことなく似ており、当時のディズニー的美人の基準が何となくわかります。

 カトリーナは村の男全員が自分と結婚したいと思っている事をわかっているので、皆が自分の気を引こうと躍起になっているのを見て楽しんでいます。それはイカボードについても同様でした。カトリーナのお相手争いは遂に力自慢のブロムと教養で勝負するイカボードの一騎打ちになりました。しかし今のところは真新しさのあるイカボード先生の方が有利です。カトリーナの屋敷で行われるハロウィーンパーティにもイカボードがカトリーナから直々に招待されました。

 パーティ会場ではカトリーナはずっとイカボードとダンスしています。カトリーナの父君の覚えも良く、ゴールインまではまっしぐら。ブロムも一村人として招待されていましたが、全然カトリーナに近付けません。何とかイカボードに一泡吹かせたいと考えを巡らせるブロム。イカボードが迷信を気にする臆病な性格と見破り、パーティーの余興として村に伝わる怪談話をします。

 ハロウィーンの夜に現れる化け物達も恐れる首無し騎士、彼は夜中さ迷って自分の首の代わりになる頭を探しています。見つかればたちまち首を切り落とそうと追ってくるので急いで逃げなばなりません。そんな首無し騎士にも弱点があり、橋を渡る事はできません。なので出くわした場合は全速力で橋を目指す事。

 そんな話を聞かされて、臆病なイカボードは震えながら家に急ぎます。そこは会談のお約束、墓場を通り過ぎたところで首無し騎士に遭遇!必死に橋を目指すイカボード。何とか橋を越え首無し騎士から逃げきりましたが、こんな恐ろしい経験をした村にいたくなかったのでしょう。橋の側に帽子だけを残し、翌朝イカボードは消えてしまいました。ライバルが消え、ブロムはめでたくカトリーナと結婚。村人たちは噂します。イカボードは別の村でお金持ちの女性と結婚したらしい、いや首無し騎士にさらわれてしまったんだ。真実は誰にもわかりません。

関連作品

・ミッキーのクリスマスキャロル(1983・25分)

 チャールズ・ディケンズのクリスマスキャロルのディズニー版。酒場の店主としてトードが、貧しい人々への街頭募金を募る二人組としてラットとモールが登場。主人公はドナルドのおじさん、スクルージ。クリスマスの精霊としてピノキオのジミニー・クリケット、ファンアンドファンシーフリーの巨人ウィリーも登場する。

 

・スリーピー・ホロウ(1999・105分)

 ティム・バートン監督、ジョニデ主演、ヒロインはクリスティーナ・リッチ。主人公のイカボードは教師でなく刑事。首無し騎士の事件を捜査するためにスリーピー・ホロウにやってくる。ゴシックロマンスな雰囲気がとてもお勧め。個人的にはディズニーより好き。

 以上、イカボードとトード氏でした。今回が初視聴でしたが、イカボードの挿入歌はどれも楽しくて好きです。次は遂にウォルト・ディズニーが手掛けた中で一番好きな作品だと公言していたシンデレラについて書きます。


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