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「大人しく優しい女性×強気な男の女攻めCP」「エネアド」のネフセトについて、妄想を八割交えて語りたい。

何で自分で思いつかなかったのか、と己の不明を恥じた。
ホルスを夜這いしにきたセトが余りに手馴れていたので、「なるほど。ネフティスに対してはこんな感じなのか」と特に疑問なく思ってしまった。よく考えたらそうとは限らない。
ネフティスとセトの直接の絡みが今のところほぼないのでわからないが、第一部最後の審判のシーンを見ると、ネフティスに対しては「ホルスを夜這いしに来た時の感じ」ではなさそうだ。

ただの推測だが、「セトはネフティスには素が出せないのでは」と思う。
セトがネフティスに素を出せるなら、オシリスとの関係をネフティスに知られることにあそこまで恐怖しない。
「ネフティスに知られちゃ駄目だ。俺を男と認められなくなるだろう。気持ち悪いと思うだろう」
と言っているが、オシリスとの関係は強いられたものなのだからセトは何も悪くない。
ネフティスがオシリスと取引をしたことでセトがそういう羽目に陥ったのだから、むしろ申し訳なく思うと思う。
だがセトは理屈を超えて「自分がオシリスに〇されたことをネフティスに知られること」に恐怖を覚えている。

ネフティスはセトが素を出せない唯一の相手なのではないか。
ここに二人の関係のポイントがあると思う。

セトはネフティスを信頼していないわけではなく(ネフティスがどういう人間かは関係なく)、「好きな女の前では、頭のてっぺんからつま先まで常に「男」でいたい、いなければならない」と思っている。
「セトが『社会的に男であること』に特に疑問もなくコミットしていたこと」は、「エネアド」の重要な要素だ。

「セトからネフティスの愛情がどういうもので、二人の関係がどういうものか」はオシリスが指摘していた。

(引用元:「ENNEAD」49話 MOJITO)

このシーンの会話の文脈では「そんな愛はまやかしだ」という含意があるが、自分はセトみたいな(あえて言うと)男にとって、「夫という立場からの責任感」を与えられ果たす、ということは最大の愛情表現だと思う。
だから第一部を読んだときに「セトは本当にネフティスが好きなんだな」と思った。(*セトはMBTIだとESTJだろうと思っている。)
「ENNEAD」は面白い点がいくつもあるが、こんなに色々な紆余曲折があったにも関わらず、セト→ネフティスの愛情が強固で揺らいでいないこともそのひとつだ。

セトにとっては、「夫の立場からの責任感を背負い、夫という役割を抜きにした『(素の)自分』を後回しにすること」が妻に対する最大の愛情表現なのだ。
そのためネフティスの前では、「男(夫)」であることが常に先行する。その属性を抜きにした「自分」を出すことはない。
しかしネフティスにとっては、「素を見せること」が愛情のバロメータの一部であり、セトがそれを見せないことに対する違和感や不安が少しずつ溜まっていったのではないか。

セトの「素」とは何かというと、ホルスをアヌビスと勘違いした時に見せた顔やオシリスに〇されている時の感じだ。
セトはそういう「自分の気持ち悪い部分」を見せないのが愛だと思っているが、ネフティスはそういう部分を見せるのが愛だと思っている。
セトのほうは気付いておらず万事うまくいっていると思っていたら、ネフティスのほうにはいつの間にか不満が溜まっていた。
よくあると言えばよくあるすれ違いだ。

強く反省している風だからスルーしてしまいそうになるが、ネフティスのやったことはよく考えるとすさまじくえげつない。イシスがブチ切れるのもさもありなんと思う。

ところがセトは、「肉体的には関係はない」と言われたらあっさり許すモードに入っている。
どころか「俺が頼りなかったのか?」と自分を責めだしている。

(引用元:「ENNEAD」40話 MOJITO)

セトは他の人間に対しては理不尽で傍若無人だ。忍耐も寛容さも欠片もない。
しかし何故かネフティスに対しては、何百年も他人の子供を自分の子供と偽られていたことさえ「自分が頼りなかったから、ネフティスは言えなかったのではないか」と際限なく「寛容で器のデカい男」になろうとする。

「そんなに俺が頼りなかったか?」と「男だから」「夫だから」と責任を一方的に背負うところを、オシリスに「そんなものは『社会的で利己的な愛』だ」と指摘される。
ネフティスがセトに対して抱いていた不満も、ここでオシリスが指摘したことと同じものではないか。
ネフティスの行動は、どこまでやればセトが「優しく寛容な夫の仮面をかなぐり捨てて素を出すか」という試し行動的な意味もあったと思う。

「ネフセト」を軸として考えると、40話からのセトとオシリスの絡みを、ネフティスとセトがやるべきだったのだ。
素のままに死ぬほど怒り狂ってネフティスを激詰めし、二人が全力でぶつかり合う。ネフティスはそういうことがしたかったのではないか。

セトは「馬鹿みたいに怒鳴り散らすだけで話を聞いてやろうとしなかった」が、それは「怖かった。あいつらの中で、俺の存在が消されるんじゃないかと思って」だ。←ネフティスはこれを聞きたかったんだと思う。
ここまできっちりやらないで逃げ出すから、話がこじれてしまう。オシリスに向かって言ってどうする。
(よく考えると意味がわからん)

セトがネフティスに「怖かった」という素を出せれば、二人の関係性は変わり、セトはネフティスの前で「常に男でいる」必要がなくなる。
その後は、昼間は従来の「頼りになる責任感の強い夫」でいて、夜は「素」を出すと無事に(?)女攻めになる。(昼と夜で関係性が逆転するって萌える。「ダンス・マカブル」の最後の話がそうだったような)

こんなに際限なく「優しく寛容で器のデカい夫(男)でいる、いなければいけない」というのはそれこそ呪いだ。
そういう呪いを打ち破る方法として、ぜひ昼夜リバの女攻めをご提案したい。←BLじゃなくなるな。

※ということからも、「エネアド」はこういう話に見える。


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