エジプト神話BL漫画「エネアド」を第二部19話まで読んだ感想。(全年齢版)

※第二部21話まで読んだ後の最新の感想。

結局シーモアに登録して読んだので、第二部19話までの感想を書きたい。
十八禁要素に触れた感想は、たぶん後で書くので今回は全年齢版。
*ネタバレ注意。

◆ストーリーやキャラがしっかりしていて、サブキャラの葛藤や思惑も面白い。

「エネアド」はメインのストーリーがしっかりしているので、普通のストーリー漫画としても十分楽しめる。
特に46話「イシス怒り爆発回」が良かった。
イシスがセトを追い詰める理由は、色々な要素が混ざり合いひと口では言えず複雑だ。
イシスは「オシリスでもセトでもなく、こんな風になってもまだオシリスを愛している自分自身を呪っている」が、それ以外にも「仲のいい姉弟、友達で同志だとさえ思っていたのに、セトは自分に何も打ち明けてくれなかったこと」に傷ついている。

引用元:「エネアド」MOJITO

あんたまで失いたくないから、あんたがどんなことをしたかも直視しなかった。
あんたが私のことを本当に仲間だと思っていたら、私の旦那と同衾するんじゃなくすぐに私に助けを求めたはず。私と一緒に怒って、共に悩み、どうにか一緒に乗り越えようと努力したでしょ。
私にとってあんたは愛する家族で友人だったし、信頼できる同志だった。
なのに……長い間、私たちが築いてきた信頼と友情はとこへ行ったの?

(太字は引用者)

このセリフを読むと、イシスはセトが「オシリスと関係を持ったこと」よりも(それも怒っているが)「相談してくれなかったこと→黙っていたこと」に怒っている
イシスはオシリスを愛しているから憎めない、だからセトを恨んでいるのではなく、セトを信頼していたから「裏切られた」という気持ちが強く激ギレしているのだ。

「あんたは私のことを理解しようともしていないのに」には、「オシリスの妻であることは関係なく、自分とセト、二人の関係へのこだわり」を感じる。こういうセリフが出てくるということは、イシスは本当にセトが大切だったのだと思う。

だが一方でセトはなぜ、イシスに何も言えなかったのかもわかる。ネフティスにバレたら「俺を男として認められなくなる」と思うのと同じ理由だ。

引用元:「エネアド」MOJITO

前回の記事で、「『エネアド』は男向けで言うところの『くっころ』ではないか」と書いたが、対象が女性である場合「くっころ」は性別以外の別属性(姫騎士など)が付随しないと機能しづらい。
だが対象が男である場合、別の属性がなくとも「くっころ」の文脈が「男」という性別だけで生まれやすい。「男」という属性の中に既に、「男向けくっころ」でいうところの「姫騎士的な要素」が含まれているのではないか。
「男という性別」には、なぜ「くっころ」が機能しやすいのか、ということが「エネアド」を読むとわかりやすかった。(うがちすぎだったら済まないが、もしかしたらこの『くっころが機能しやすい何か』を描きたいから男が男に〇される話を書くのかなとも思った。)

セトから見れば「何もかもイシスに打ち明けること」と「オシリスを受け入れること」は、「くっころが機能しやすい何か」に抵触するという意味では同じなのではと思う。

恋愛的ないざこざのない男女が強い信頼で結ばれている関係がとても好きなのだが、それが木っ端みじんに砕ける描写でそれが伝わってくる、しかもどちらの事情もわかるのでどうにもならないことがわかるのが何とも切ない。

◆オシリスとホルスは似すぎている。

セトに対する執着のしかたがそっくりだなと思った。両方とも自分一人の中で勝手に話を進めてしまうタイプだ。(苦手)
ホルセトのド鬼畜な外伝が載っていたが、あれがホルスの本性なのかな、なんだろうなと思う。

◆BLを読んで、何故か「女攻め夫婦」に萌える。

自分が好きなのは、案の定マアトトだ。
クールな美女×なよなよした情けない男の夫婦。最高すぎる。

引用元:「エネアド」MOJITO

この構図がセリフといい状況といい、ドストライクだ。(女性であるマアトがちょっと上であることが窺える態勢やセリフが好み)
この後に「マアトのこと、信じている。チュッ」ですよ。たまらんわ。
トトも黙っていれば美形なのだが(女性的な美形なので、この絵だけだと百合に見えるな)トトはあの情けなさがいい。

「私はあなたのミスを待っているんですよ。あなたのためにとてもしつこくて可愛らしい罰を準備しています」というマアトのセリフが、マジで最高すぎる。
ドジを踏んだトトがマアトにお仕置きされてピーピー泣く話なら、エンドレスで見ていられる自信がある。

マアトト、最高! 素晴らしい! 尊い! と思って支部で検索したが、一件も引っかからなかった。ホルセト、オシセトばかりだった。(たまにアヌセト)いや、まあそうでしょうね……orz

という風に、BLなのにサブキャラたちの恋愛模様に萌えるくらい周りのキャラもストーリーもしっかり立っているところが良かった。

第二部20話まで読んだ感想。


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