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エジプト神話BL「エネアド(ENNEAD)」の設定や時系列をまとめ。

話の時間軸が過去と現在で錯綜している上に、超常的な設定が多い。
登場人物がみんな何かを隠しているうえに、抱えている思いも複雑なので設定や心情の変遷をそれぞれの登場人物ごとに追わないと理解するのがひと苦労だ。
なので自分の頭の整理がてらまとめてみた。

改めてじっくり読むと、最初の印象以上に無茶苦茶面白い。

◆エネアドとはラーの直系の九人の神のこと。

元々の「エジプト神話」も後で本を読むつもりだけど、とりあえず「エネアド」本編に描かれている神話について。

混沌から太陽神ラーが生まれる。
ラーは単身で大気の神シュー、湿気の神テフヌト、豊穣の神バステト、愛と美の神ハトホル、真理と正義の神マアト、厄災の神セクメトの六人を生む。
このうちの大気の神シューと湿気の神テフヌトの間に、天空の神ヌト、大地の神ゲブが生まれる。
しかし、「ヌトとゲブの間の子供が、エジプトの支配者になるべし」という予言があったため、ラーは二人の間に子供が生まれないようにヌトに呪いをかける。
困ったヌトは、知恵と知識の神トトに相談する。
ヌトに相談されたトトは、ラーにセネト(チェス)の勝負を挑み、その間の四日間だけラーの目をくらませた。
この四日間に、ヌトはゲブとの子供を四人産む。それが生命の神オシリス、魔法の神イシス、戦争と砂漠の神セト、調和の神ネフティスである。

太陽神ラー。
ラーの子供のうち、大気の神シューと湿気の神テフヌト。
シューとラクネトの子供である天空の神ヌトと大地の神ゲブ。
ヌトとゲブの子供である、生命の神オシリス、魔法の神イシス、戦争と砂漠の神セト、調和の神ネフティス。
この九神が「エネアド」である。

(引用元:「ENNEAD」MOJITO 第二話)

◆第一部の元となる神話。「太陽神ホルスの誕生」。

生命の神オシリスと魔法の神イシスが結婚し、イシスはナイル川に水が永遠に枯れない魔法をかける。オシリスは最高神・王となり、エジプトを統治する。
二人は幸せに暮らしていたが、ある日、災厄の神セクメトが戦争の神セトにオシリスに対する嫉妬を吹き込む。
セクメトにそそのかされたセトは、兄のオシリスの身体を九つに切断し、ナイル川にばらまく。
セトは自分が最高神・王となるべく、イシスに迫る。
イシスはセトを拒み、セトに呪いをかけた。
呪いをかけた罪でイシスは地下迷宮に閉じ込められたが、妹のネフティスに出口を教えてもらい、迷宮から脱出する。
イシスはナイル川に流れていたオシリスの身体を拾い蘇らせ、二人は束の間愛し合った。
しかしオシリスは、既に冥界(ドゥアド)の神になっていたため、現世に留まることは出来ない。
イシスはオシリスとの間の子供を身ごもると、セトの目を逃れるために、身をやつして逃げ回る。
イシスが産んだ子供が、後の太陽神ホルスである。
一方、セトはイシスを探し回り、他の神の神殿を破壊し、人々を殺す。エジプトはセトによって、血に染められていった。

この話があの本編になるのが凄い。素晴らしい妄想想像力だ。

◆「呪い」について。

「エネアド」では、「呪い」という概念が非常に重要だ。色々な人の「呪い」によって、物事が動くからだ。
この物語の「呪い」は、
「その魂の寿命を削るほど何かを強く願うとき、実体化する(実際に作用する)もの」(第61話)だ。
「呪い」を解く方法が
「すべての絆を断ち切って、何もかも忘れて遠くへ行くこと」(第61話)→執着を失くすことであることや、セトがアヌビス(やホルス)にかけた「呪い」の内容を考えると、「呪い」は「執着」や「愛」と言い換えることも出来る。

この「執着(愛)」こそがオシリスを始め、イシス、セト、ネフティスも狂わせ、呪いとして機能してした。
第一部の後半でラーがセト4兄弟に「人間のような愛情」に絡めて、「神としての在り方」について苦言を呈しているのはこの部分だ。
神は本来このような「愛情(執着)」とは無縁の存在である。
ところが4兄弟はこの執着に足をとらわれたため、呪いが機能してしまい今の状態に陥った。

◆セトの罪と贖罪。

(引用元:「ENNEAD」MOJITO 第5話)

*セトはイキっている時が一番輝いているな。

物語の最初の段階で表向きに信じられている話としては、セクメトの呪いによってセトは兄であるオシリスを殺し、王となり暴虐の限りを尽くしている。
ホルスとイシスは、兄オシリスから玉座を奪ったセトの罪を糾弾し、オシリスの子であるホルスが玉座を奪い返す「セトを殺すためではなく、奪われた権利を取り戻すためにやって来た」(第四話)

セトの罪は「実の兄を殺害して王位を奪い、数百年間不正を働いたこと。暴政によってエネアドの均衡を壊し、死の秩序を乱したこと」だ。(第4話)
本来、人間は死ぬと魂が審判を受けて冥界(ドゥアド)に行く。
だがセトは人間の魂を破壊して呪いを生み、その呪いからより強い武器を作る。そしてその武器で、さらに人間の魂を破壊するために、死の秩序が乱れていた。
だから後に贖罪として「破壊した魂を収集し、彼らの呪いを解き、死者の秩序を戻すこと」を求められる。(第73話)

「粉砕された魂を集めて呪いを解き、死者の秩序を戻す。これが出来れば太陽の船へ追放。出来なければ消滅」という判決になった。

◆アヌビス(とホルス)にかけられた、セトの呪いまとめ。

神の子供が神になる条件は、完璧な(成長した)肉体と精神を持つ(第20話)ことだ。
しかしホルスとアヌビスは、セトに「子供のままでいて欲しい」という呪い(執着・愛情)をかけられたため、成長が止まる。
アヌビスは呪いを解くため、また暴君になったセトへの反発もあり、ホルスとイシスに協力する。
ホルスは肉体は大人になったが、心はセトへの執着に縛られているため神にはなれない。イシスの「あなたはオシリスを超える神になる」という言葉に「そんな日は来ない」(第26話)と言っているので、そもそもなる気もなさそうだが。
ホルスは「ラーに笑われたあと、急に成長し出した」(第13話)ので、ラーがホルスが王になるために後押ししているということはありそうだ。

ホルスは「エネアド」の登場人物の中で、唯一ほとんど何も隠さず、モチベーションが「叔父様大好き」で一貫しているのでわかりやすい。(今のところは)

◆太陽神ラーの思惑。

セクメトが鏡の中に本物のネフティスを閉じ込めたのも、ラーがやらせたのだろうか。
セクメトが偽物のネフティスにオシリスとの間にアヌビスを生ませる。セトが激高してオシリスを殺すのが狙いだったのか。
ラーを中心にして見ると、「セトはラーのオシリスに対する復讐に巻き込まれた」ということなのかもしれない。

(引用元:「ENNEAD」MOJITO 第71話)

この「ラーやべえ」のシーン大好き。

オシリスが何を望んでいて、なぜセトに執着しているのかは、ブログ記事で書いたので割愛。


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