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「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」の(ゲームシステムのみの)感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



注意事項

  • 基本的なゲームシステムのみに着目した内容

  • メインストーリーやPvE中心

  • 基本的に新生エオルゼアの範囲まで

  • 各アップデートにより内容が変わる可能性がある

  • あくまで、本作がどのようになっているのか感想であり、登場している概念やシステムを本作が開発した等の主張をしたいわけではない点に留意
    (多くの場合、他のMMORPGですでに開発済みのシステム)



感想

コマンドRPGをどのように拡張するか

 現代的なファイナルファンタジーシリーズで継続的に行われてきた試みとして、古典的なコマンド入力のRPGをどのように発展していくか、という点が挙げられるだろう。

 有名なのはATB(アクティブタイムバトルシステム)だ。各作品によって異なるが、ターン(手番)の移譲という部分に(疑似)リアルタイム性を持たせるという形になっている。これを採用していない作品でも、似たようなリアルタイム性を取り入れることが多く、伝統的なターン性を比較的継承しているドラゴンクエストシリーズとは一線を画すところだ。

 本作「ファイナルファンタジーXIV」でも、その試みは継続している。

 具体的には、古典的なRPGに、連続的(アナログ)時空間を導入したような形となっているのだ。


 まず、古典的なRPGにおける離散的(デジタル)時空間について考える。

 手番(ターン)は『素早さ』『イニシアチブ』などの数値によって、順番が決まっていき、各キャラクター(あるいはユーザー)が行動していく。そこに連続性はなく、離散的である。

 空間に関してもそうで、前衛・後衛や、グループと言った概念を導入し、離散的な空間表現を試みている。


 対して、本作では連続的時空間を取り扱っている。

 時間について考えると、リアルタイムにより進行している。キャラクターの移動やスキル・アビリティの使用はリアルタイムであり、各クールダウンもリアルタイムで進行している。

 空間にも同様のことが言える。もちろん、厳密に言えば変数値なので離散的なのだが、体験としてはアナログ的な空間について取り扱っている。特に敵の攻撃範囲は、予兆というシステムにより、明確に連続的な空間として表現されており、リアルタイムにより区切られる判定から如何に逃れるか、というゲームプレイが頻発する。

 これらの結果、リアルタイムで判断を求められることも多く、ロールにもよるが、独特のゲームプレイ感を生んでいるように感じた。


 ただし、同時に離散的時空間についても取り扱っている。

 時間で言えば、GCD(グローバルクールダウン)という概念が導入され、基本的な攻撃や回復などでは全スキルで共通のクールダウンを持っている。つまり、ファイアを撃った後、すぐにブリザドを撃つことはできないのだ。これが周期的な区切りとして作用している。一方で、アビリティという別軸を用意し、これはGCDに影響しないので、GCDの合間に撃つことができる。これはTRPGのマイナー・メジャーアクションや、ボードゲームにおけるメインアクション間のフリーアクションの概念に近い。

 空間で言えば、ターゲットと単体の概念が明確にある。前述の通り、範囲攻撃の場合には、連続的空間によって判定されるが、単体攻撃の場合には、誰にターゲットしているかが問題であり、連続的空間は意味をなさない。


 このような組み合わせを行うことにより、古典的なRPGの風味を残しながらも、連続的時空間による利点を部分的に導入している。



ロールシステムによる機能の分解とプレイ感

 各ジャンルのオンラインゲームに近年導入されるロールシステムだが、本作においては、古典的なRPGにおけるキャラクターの分解という意図があるように感じる。パーティが一体となっており、ロール内における互換性はかなりあるが、ロール外における互換性はかなり乏しい。


 まず、タンクは一般的なRPGにおける体力、つまり、攻撃に対するバッファの役割を果たしている。基本的にこのゲームでは、相手の攻撃(特に強力で回避不可能なもの)はタンクに届くと言ってもよく、パーティ全体の体力と言っても良い仕様となっている。

 次に、ヒーラーはタンクや全体の体力を戻したり、そもそも体力をあまり減らさないように立ち回ることが目的となる。相手の攻撃に対して、適切に行動することが求められ、他プレイヤーのカバーなども担う。

 また、タンク・ヒーラーの特徴として面白い点は、それはそれとして、ダメージソースとしての役割も果たしているということだ。つまり、上述したような役割になるべくリソースを割かずに済めば、その分だけダメージが期待できる、という形になっている。

 最後に、DPS(本作品ではロールとしての名称としてもDPSを使用している)は、いかにダメージを出すか、という点に集約している。その自由度からギミック処理などを行いやすく、それを求められる側面もあるが、基本的にはソリティアよりのプレイ感となっており、自身の最大効率を如何に構築し、それを厳密に履行できるかに焦点が合っているように感じた。

 これらがパーティを組み、最終的には敵(ボス)を倒すことを目的とする。つまり、ダメージが勝利点であり、ある時間内にボスの体力という閾値を超えることができるか、ということが問われていると考えられる。


 これらロールの役割はかなりの部分で固定であり、パーティは4人または8人が基本(3×8=24人の形態もある)で各ロールの人数も厳密に決まっている。各ロールの役割、つまり、そのキャラクターが他プレイヤーや敵に対する作用(出力)を固定化することで、(少なくとも高難度でなければ)ロール内での互換性は効きやすくしている。


 そして、それぞれに対し、前述した連続的時空間の遊びが加わることになる。つまり、それは敵のタイムラインに沿った攻撃やギミックであり、予兆範囲の回避であり、クールダウンの調整である。

 このような共通部分と差異を持たせることにより、ゲーム全体のプレイ感、各ロールのプレイ感、各ジョブ(クラス)のプレイ感とそれぞれに共通部分と差異を生み出せている。


 上述の特徴の通り、タンク・ヒーラーとDPSでは、プレイ感に結構な差が生じており、それは許容されるのか、と最初に訊いた時は思ったのだが、やってみるとプレイ感が異なることは、各プレイヤーの嗜好に合わせたプレイを選べるということでもあり、あまり問題に感じなかった。

 古典的なMMORPGとは異なり、キャラクターとロール(クラス)の結びつきが緩いのも、上手く機能しているように感じる。

 昔は、どのクラスをやりたいかを考え、それに適した種族を調べ、作品によってはボーナスポイントを割り振り、キャラクターを作成、といった古典的な(テーブルトーク)RPGのようなことをしたものだが、本作は現代的であり、種族は基本的に外見に影響するだけ(厳密には誤差程度の差があるらしい)で、ジョブを変えるのも、装備を変えるだけだ。

 つまり、今までDPSをやっていても、気軽にタンクになれるので、キャラクターを育成し直したり、別キャラクターでログインし直す必要はない。

 そのため、今のロールが合わなければ、切り替えてしまえばいいのであって、ロール間でのプレイ感の違いは、異なるプレイ感を同じゲームで提供できるという利点の部分が大きい。ロールやジョブで、習熟曲線や、責任感などは異なるが、ジョブをすぐに変えることができるため、自身に向いた性質のプレイ感を選ぶことができるようになっている。



コミュニケーションに重点を置かないオンラインゲーム

 古いMMORPGしかプレイしたことない(「リネージュ」とか「エバークエスト」とか)プレイヤーとしては、隔世の感があった。というのも、当時理想的に唱えられていた、登場人物全てがプレイヤーであるRPGというようなところに焦点が合っておらず、皆で同時にプレイすることができるRPGとでも言うような、緩い繋がりも許容されるように感じたからだ。

 とは言ってもここで考えるシステムデザインは、「World of Warcraft」(筆者未プレイ)で開発されたものを本作が引き継いでいるらしいので、そういう意味ではそちらで開発されたゲームデザインがどういう意味を持つのか、という考察に近い点に留意したい。

 インスタンスダンジョン(各パーティが挑戦するたびに、パーティごとのダンジョンが生成される仕組み)と、コンテンツファインダーの仕組みがその中核を担っている。行きたいダンジョンに申請を行うだけで、自身のロールを加味したパーティに属することができ、コンテンツを楽しめる。

 これは、FPSやMOBAなどの現代的なオンラインゲームにおける試合の協力型とでも言えるマッチングに近い感触だ。プレイしたい時(ストーリーの進行状況でやらなければならない時もあるが)に申し込みをし、結果としてのマッチングに従うだけで、プレイ的にも心理的にもコストが低い。

 ダンジョン内であってもチャットにおけるコミュニケーションが主体になることは少ない。これは、コンシューマ機でプレイされることも多く(自身もそうしている)、他言語プレイヤーも一定数いる(サーバーにもよる)影響もあるだろうが、そもそも、少なくても良いように設計されている。コミュニケーションを主体にしたMMORPGから、コミュニケーションがある程度制限されても成立するMMORPGとなっているのだ。

 ダンジョンとは言うものの、基本的にはリニアであり、敵を順番に倒していき、稀にギミックを処理し、ボスを倒す、という場になっている点も大きい。(もちろん、ダンジョンによるが、基本的に単純化されている)

 いわゆるダンジョン感はないのだが、即席でパーティを組むことや、習熟度や進行度が異なるプレイヤーが混じることからも、これが一つの正解と言ってしまってもよいだろう。


 また、これは上述の内容にもかかるのだが、ロールの役割が明確でありながら、ジョブによる変化の幅は小さいため、ロールの役割を果たし、他プレイヤーに迷惑をかけなければ、最低限は仕事が出来る点が大きい。

 ジョブによって、変化幅が大きければ、即席のパーティによっては、コミュニケーションによる調整が必要になるし、場合によってパーティとして成立しないことが容易に想像できるだろう。ロールによる出力が一定幅に調整されているから実現できている遊び方だ。

 このインスタンスダンジョンとコンテンツファインダー、ロールの仕組みは一体をなしていると感じられ、現代的に遊べるMMORPGとして、緩く広く遊べる構造になっている。



MMORPGをある意味で否定するシナリオ性

 上記のシステム面では、前述の通りに他ゲームままの部分も多いが、このシナリオという点で(筆者がプレイ/知っている範囲では)他のMMORPGと大きく違いがあると感じる。

 MMORPGなのに、主人公の存在が特別視され、従来のRPGのようなのだ。

 当然だが、MMORPGでは、各プレイヤーがキャラクターを作り、それをプレイするわけであり、主人公的な存在として役割を担う、というよりは一介の冒険者のような、特殊な集団に属する一人、という演出が多く、物語があるとしても、それを補助したり、傍観したり、という立場が多かった。

 しかしながら、本作では、各プレイヤーのキャラクターは非常に重要視されていて、特別であり、英雄のように扱われている。複数人いるような表現もあるのだが、基本的には特別な人間としてメインシナリオが進んでいく。少なくとも同じような存在が何万人以上もいるという風ではない。

 普通のRPGのように、物語に深く関わっていくのだ。

 これは大いなる矛盾を含んでいる。ちょっと前までは、特別な一人として扱われたのに、ダンジョンやレイドにいけばパーティを組んで、終わればまた特別な一人として扱われるのだから。

 逆に言えば、両者の強みを同時に取り入れられているとも言える。

 MMORPGはどうしても、物語的な側面に弱く、NPCなども含めた世界があまり変化しなかったり、主人公の働きが与える影響が限定的であったり、という問題があった。本作は、大きな矛盾を一度放棄(本編を進めることにより、その矛盾は解決するかもしれないが)することによって、MMORPGにそれが持ちえなかった強みを導入することができている。


 これは前述の仕組みも相まって、古典的なMMORPGが見ていた夢、あるいは巨大なRPG的世界のシミュレータとしてのMMORPGの限界をみて、ゲームプレイを重視した現代的なMMORPGとなった、と言えるかもしれない。


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