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プレイしてみて感じたAoSと40kの設計思想の違い

 以下の文章は全て個人的な感想です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 言うまでもなく、両者にはそれぞれ特徴があり、ここではそれについて考える、というだけであり、優劣を付けるようなものではない。

  • 主にルールやデータ構成の差異から、その違いについて考える。

  • 両者とも競技的に遊んでいるわけではないので、競技的な視点からは異なる意見になる可能性が高い。

  • 記事内容は、それぞれ一般的な(標準的な)処理、アーミーやユニットについてのものとなる。もちろん、それぞれに例外的な処理、アーミーやユニット、戦闘状況が存在する。

  • AoSは4版、40kは10版ルールでの話になる。AoS・40kという呼称を使用しているが、これはシリーズにおけるルール全般の話ではなく、現行の版に対するものだ。(もちろん、それが過去の版にも言える内容であることもあるだろう)

  • ルールの差異自体をまとめた記事は以下になる。



感想

『剣』と『銃』の違い

 端的にAoSと40kの違いを表現するのであれば、前者は『剣と魔法』のファンタジーを志向しているのに対し、後者は『銃と戦車』のSFを志向しているという差である、と筆者は考えている。


 まず、『剣』と『銃』という差異について考える。

 これはAoSは近接(白兵)を主軸しているのに対し、40kが射撃(遠隔)を主軸としていることを指している。(以下は白兵・射撃の表記に統一する)

 両者ともに白兵と射撃の処理は似通っている(根幹的な処理はほとんど同一であり、詳細に差異がある)が、AoSでは射撃手段を持っているユニットが限られ、それを主軸とするアーミーが少ない。一方、40kではアーミーにもよるが、総じて強力な射撃手段を持っているユニットが多くいる。

 このような差は、どのようなゲームプレイの差へに繋がるのだろう。


 白兵と射撃の差は、まず、なんといってもその射程、つまり、攻撃可能な距離である。AoSでも40kでも白兵をする前には、『突撃』という行為を行うのが一般的であり、それは両者ともに2D6を振ることによってその分だけ移動する。突撃成功の判定が、0.5mvと1mvと異なるが、おおよそ同じであると言ってしまってもよいだろう。2D6の期待値として7mv、それに上記の範囲を足しても8mv前後であると言える。一方、射撃であれば、最短の距離がそれぐらいであり、40kでは24mvも標準的な範囲に収まる。これは、白兵の8mvの3倍であり、明らかに差がある。

 実際には、テレイン(射線を遮るもの)が存在し、その射程そのものを振り回せるわけではないのだが、それでも白兵よりは明らかに遠くまで届くし、仮にそれを考慮しないとすると、かなりの距離になる。

 それによって、生じるのは、火力の集中である。


 前提として、ミニチュア(ウォー)ゲームである両者のゲームは、各プレイヤーがゲーム開始時には同一の戦力を用いて、ゲームを行っている。そこで、各ユニットは(ゲームメカニクス名としての)体力を持ち、それがなくなれば、そのユニットは取り除かれることになる。

 もちろん、勝利点という軸で、ゲームの勝敗は決まるわけだが、その獲得にはユニットが必要であり、ユニットが殲滅されてしまえば、そのプレイヤーは不利になる。

 体力というメカニクスは、(例外はあるものの)相手のそれを0にすることによって、最大の利益を得られる。つまり、複数のユニットにダメージが分散し、撃破されるユニットがいない、という状況であれば、それぞれのユニットはまだ行動が可能であり、(弱まっていることもあるとは言え)攻撃などが可能である。一方、ユニットが撃破されてしまえば、それは何らかの利益を生み出すことはできなくなる。(つまり、ゲーム数理的に言えば、ユニットはゲームメカニクス的に建物であり、それを撃滅し合うことで、将来的な利益を妨害し合っている、ということになる)

 白兵の射程であれば、攻撃可能なユニットの数は一般的に限られることになる。しかし、射撃の射程であれば、さらに多くのユニットを対象にすることができる。それぞれのユニットについてそうなので、火力を集中することで、敵のユニットを撃破しやすくなる。

 加えて言えば、射撃というのは、一方的な攻撃として両者で表現されている。射撃フェイズでは、(例外もあるが)手番のプレイヤーが攻撃を行うだけなのに対し、白兵フェイズでは、両者のプレイヤーが攻撃を行う。これはフレーバー(シミュレーション)的にも自然だろう。射撃は一方的に相手のユニットを撃破することができるのだ。

 つまり、射撃主体のゲームの方が、殲滅力が高い(ユニットを撃破しやすい)ゲームになると言えるのではないだろうか。


 このような差異は、両者の『白兵』のルールをみても、逆説的に説明することができる。

 40kでは、先述した『突撃』に成功した場合、『先手』という効果が付与される。これは端的に言えば、相手が白兵攻撃をする前に、こちらが攻撃できるという効果である。複数の兵で構成されたユニットの場合、先に攻撃されると、兵の数が減り、攻撃力が減る。そして、相手の兵の撃破数は小さくなるので、攻撃力の減少幅が小さくなり、より撃破されやすくなる、という関係が成立している。正のフィードバックが成立しており、『先手』という効果が強力なのがわかる。

 一方、AoSでは、突撃で『先手』は一般的に付与されない。

 この差異は、40kの射撃と釣り合うような殲滅力を40kの白兵に与えるためのものである、と筆者は考えている。

 要は、40kにも、白兵を重視するアーミーも、射撃を重視するアーミーも存在する。ユニットも同じだ。前述の通り、射撃が強力であるとするのであれば、白兵を強化する必要があると言える。そのために突撃で先手が得られるというルールが実装されている、という考えだ。

 逆に言えば、AoSでは、射撃による効果が弱く調整されることによって、それらのバランスを取っている、と考える。


 結果的に、AoSはファンタジー世界の『剣』によるゲームなので、殲滅力が弱い設計になっている。結果として、ユニットが一気に減ってしまい、ゲームが続けられないような状況になりにくくなっている。

 逆に、40kはSF世界の『銃』によるゲームなので、殲滅力が強い設計になっている。結果として、ユニットが一気に消失するようなことも起こってしまい、早期に事実的な決着が付くようなこともある。

 そのように考えており、これは実際にプレイした時の感覚に近い。



『戦車』とウーンズの違い

 AoSと40kの大きな違いとして、ウーンズロールの違いを挙げるプレイヤーは多いだろう。

 AoSでは、武器ごとにウーンズロールが固定化されている。たとえば、3+のように書かれていれば、それは誰を相手にしようが3+である。

 40kでは、こちらの攻と相手の耐を比べ、ウーンズロールが決定する。倍以上ならば2+で、上回れば3+のように相対的に決まる。

 このウーンズロールが絶対値であることと、相対値であることは、何を表していると言えるだろうか。

 それは、ダメージの価値が絶対的なものか、相対的なものか、という違いである、ということができる。ウーンズロールによって、最終的に得られる資源はダメージなので、その判定が異なる、ということは、得られる資源の性質が異なっている、と考えることができる。


 AoSにおいて、ダメージは比較的等価であると言える。もちろん、実際には、騎兵や歩兵に対してダメージを強化するというようなアビリティは存在するが、40kと比べれば小さな差であると言える。巨大なモンスターに与える1ダメージも、小さな歩兵に与える1ダメージも、その資源の価値としてはある程度同じである(もちろん、それが与える影響は異なる)。

 40kにおいて、ダメージは相対的に価値を変える。たとえば、耐が14あるユニットに対しての1ダメージは貴重なものであると考えることができる。なぜならば、攻が7以下の攻撃であれば、ウーンズロールが6+となるため、ダメージを与えにくいからだ。ゆえに、高い耐を持つユニットには、定数的なダメージを与える手法(グレネード策略など)を使用することになるのだ。このユニットに対する3ダメージは、耐が3しかないユニットに対する3ダメージとは価値が異なると言える。


 では、なぜ、このような実装の差が生まれているのだろうか。たとえば、どちらかに合わせた方が覚えやすくてよいのでは?

 そうなっていない理由はいくつか考えられる。

 まず、第一に弱い理由として、フレーバーがあると考えられる。戦車に対して、ピストルを撃ちこむのと、生身をさらしているカルティストにピストを撃ちこむのと、ダメージが等しいのはおかしい、という感覚に答えるためのものだという考えだ。しかし、AoSにだって、バスティラドン(アンキロサウルスのような恐竜)と蛮族のダメージが等しいのはおかしい、というように考えられるだろうし、これは比較的弱い理由だろう。


 第二に、本命として、殲滅力を抑えるためだと考えられる。上述のように40kは射撃がメインのゲームであり、殲滅力が高くなりがちである。これのダメージが等価(ウーンズロールが固定)であると考えた場合、火力の集中における戦果が高くなりやすいだろう。

 そこで、このような相対的なダメージの価値を導入する意味がある。それによって、各ユニットがどのユニットを対象にするかによって、その攻撃(ダメージ)の価値が異なることになり、それを最大化する選択が取られやすくなる。よって、攻撃が分散しやすくなり、殲滅力が相対的に減少すると考えられるのだ。


 また、これはもう一つの大きな差異である、ダメージ分配の違いの説明にもなると考えている。

 AoSでは、ユニットに対するダメージは共有され、兵(ユニットは通常、複数の兵によって構成されている)を貫通する。つまり、体力が1の兵で構成されたユニットに対し、3ダメージが与えられると、3体の兵が倒れる。

 40kでは、ダメージは共有化されない。体力が1だとしても、3ダメージの攻撃が1回だけ飛んできたのなら、1体の兵しか倒れないのだ。

 AoSの方がゲーム処理としてはシンプルで、様々な処理がしやすいのは明らかだ。40kのセーヴやダメージ分配の処理は、色々な問題を内包しており、公式も致命ダメージの扱いなどが二転三転している。

 それでも、このような仕様を維持しているのは、ユニットや攻撃の種別の差を生み出すためだろう。攻14の1回の攻撃は、耐7や耐12の少数編成のユニットへと向けたいわけであって、耐3の兵10体のユニットに向けたいわけではない、というわけだ。

 つまり、40kでは、攻・耐、貫通・防、ダメージ・傷、回・兵数という関係によって、攻撃手段・ユニットにバリエーションを持たせ、殲滅力を抑える(加えて、後述する位置関係によるゲーム的な選択の幅を広げる)ことを目的とし、複雑な処理を許容している。一方で、AoSでは、処理の簡潔さを優先していると考えることができるのではないだろうか。


 とはいえ、この考えが正しいとするのであれば、個人的に現状の40kは、この点が上手く表現しきれていないのではないか、と少し感じている。

 特にスペシャルセーヴ(特に4+のような高いもの)と会心ウーンズが存在することや、耐・防と攻・貫通がほとんど連動していることが問題であると感じている。

 スペシャルセーヴは、対抗する手段が極端に限られる割には、気軽に持たせ過ぎているように感じる。本来であれば、これを持たないユニット(たとえば、戦車)に回が少ない高貫通の攻撃を当てたいのであり、これを持つユニット(たとえば、ターミネイターのようなエリート兵)に回がそれなりの中貫通の攻撃を当てる、という区別のために存在している、と考えられる。

 しかし、それは本質的には、兵数で表現が可能であるのではないか。そうでない違い、たとえば、プライマークと戦車の差異を出したいとしても、一部が持っているような、FNPやダメージ量を定数軽減したり、半分にする処理で表現が可能ではないだろうか。

 スペシャルセーヴ4+は巨視的に考えれば、回が半分になるようなものだと考えられるが、事実的には、振れ幅が大きくなりすぎると感じるので、別の実装の方が優れているように思う。たとえば、4+の判定が4回されるとして、どれも成功する確率は1/16でかなり現実的な数値であり、その逆もしかりだ。しかしながら、その効果量は大きく異なるだろう。それが序盤に行われた場合、それがどちらに触れたかの影響はより大きくなる(もちろん、それをさせないための用兵が前提とはいえ)。このようなランダム性により、逆転可能性を示したいのかもしれないが、そもそも殲滅力の高い40kにおいては、帰趨が決した後にこのような部分で逆転することは難しい。あるいは、このランダム性によって、固有の問題を生成したいのかもしれないが、そのような振れ幅がなくとも、40kには位置関係や兵種による十分な複雑性があると考えている。

 また、セーヴは相手が行う判定である、というのも重要である。最終的な決定権(たとえば、リロールなど)は、相手側にあるわけであり、低い方に収束すると言ってもよいだろう。対処法が少ない。一方、これが強力であると考えるのであれば、会心ウーンズもまた、強力である、ということになる。これを無視できる効果だからだ。実際に、10版開始時に猛威を振るい、ルールが改訂されたが、しかし、根本的に解決されただろうか?

 アエルダリのようなダイス目を変更できるアーミーが初期に強力であったのは、これらのルールも一因だと考えている(スペセや会心ウーンズを強力に使用できる)。もちろん、現状がそうなっているように、これらは様々なデータ構成や能力などで、バランスを取ることが可能である。しかし、根幹的なルール・データ設計として、バランスが取りにくいような形になっているようにも感じる。

 このような問題を感じる一方で、スペセによる設定で明確に面白さが上がっているようには感じない。むしろ、インフレによる数値上昇に対するバッファーとして用意されている、というような感覚が強い。


 加えて、耐・防と攻・貫通が、多くの場合に連動してしまっているということも問題であるとも思う。概念が近しいために、それに引っ張られ、片方が高いと片方も高いことが多い。せっかく複数のステータスがあるのに、それを活かせていない(前者が後者の細分化のようになってしまっている)。兵数と回も同様だ。もちろん、ある程度偏りのあるものも存在するが、そうでないものの方が多い。特にユニット種類が少ないアーミーには顕著だ。

 もちろん、実際には公式がユニットを開発(リリース)する能力には限界があるし、その中でゲームを成立させるには、ある程度の種別にまとめる必要があるとは思うが、それを加味しても少ないように思う。

 そのせいで、ある程度強力な攻撃方法というのが明確化しすぎているために、一部の武器やユニットが強くなっており、スパムがより強くなっている側面があるのではないか。


 特効という効果も、せっかく、上述のステータスで様々な攻撃・防御の種類を表現しようとしているのに、それを一定部分壊しているようにも思う。ただでさえ、対処法が少ない会心ウーンズをより強力にしている側面もあるため、あまり好ましい能力でないのではないだろうか。

 というか、極論をするなら、特効でバリエーションを表現するのであれば、基本的には固定ウーンズ+特効で表現するという手法でよいはずだ。その方が簡潔で、高速に処理ができる。(なんなら、版上げごとに処理を簡潔にしていく方向がこのまま継続するなら、数版後にはこのような処理になっていてもおかしくはない)

 競技的には十分に習熟したプレイヤー同士で対戦を行うため、上記のような問題は発生しないかもしれないが、カジュアルで遊ぶ分にはそのように感じている節がある。



ダブルターンと指揮ポイント・策略の違い

 他にもAoSの特徴として、ダブルターンが挙げられる。

 これは、各ターンごとに先攻・後攻が切り替わることによって生じるターン進行を示したものだ。つまり、後攻→先攻という遷移をした場合、連続で手番を行うことができる。

 このようなルールはなぜ、AoSのみに存在しているのだろうか。


 まず、上述の通り、白兵が主軸であることと、殲滅力が低いということが一因になっているだろう。

 AoSでは突撃による先手ボーナスが存在しないために、白兵フェイズにおいて、手番プレイヤーの有利性は比較的低くなっている。どちらも攻撃をし合うためだ。こちらが主軸であるため、射撃が主軸である40kと異なり、どちらが手番プレイヤーであるかの影響が弱くなっている。

 また、殲滅力が高いなら、ダブルターンにおける損害も当然大きくなる。そのようなゲームでは、このようなルールは許容されないだろう。ダブルターンが許されている、ということは、それが低いことの証明にもなる。


 また、指揮ポイントと策略の違いにもよると考えている。

 AoSにおいて、指揮ポイントはターン終了時に失われる。そして、それを消費する策略(指揮アビリティ)には、相手のターンに動くことができるものが多く存在する。大抵、少しペナルティがあり、ユニットは限られるが、ある程度は遜色ない動きができるのだ。

 これは、AoSにおいて、指揮ポイントが(ゲームメカニクス的に言えば)アクションポイントのように機能していると考えることができる。

 先攻プレイヤーの方が、相手のターンが次に来るために、策略における柔軟性をどの程度残しておくかを考え、指揮ポイントを残しておく必要がある。そして、無駄になったり、足りなかったり、ということはあるだろう。

 一方で、後攻プレイヤーは、相手のターンで使用しなかった指揮ポイント(アクションポイント)をその分だけ、自身が有利になるように割り振り、使用することができる。

 これらは、ダブルターンを許容し、面白くするためのルールとして整備されているように感じる。


 40kにおいて、指揮ポイントは蓄積されるため、一般的な資源として捉えることができる。

 また、策略はデタッチメント(アーミーに紐づいており、自軍に設定するカテゴリ)に結びついており、その特徴を示す能力になっている。一方、AoSにおいては、このような特徴を表現するのは、『魔法』や祈祷であると考えている。ある意味では、40kにおける策略の側面が分割され、それぞれに新しい性質が付与されたような状態にある、と解釈できるかもしれない。

 話を戻すと、つまり、40kにおける策略は、各プレイヤーに与えられる共通の資源であり、それをどのように活かすのか(変換するのか)によって、そのプレイヤーの技量を示したり、デタッチメントごとに特徴的な効果にすることにより、そのバリエーションを示すためのものになっている。

 両者ともに似たような概念ではあるものの、保存性の違いや、各効果の実装の違いで、別のものが表現できる、ということを示してくれる。


 このような違いにより、AoSではダブルターンが許容されており、40kでは許容されないと考えている。(あるいは、AoSでは、それが許容できるようにルールがデザインされている)



テレイン、作戦目標、位置関係の違い

 両者ともにテレインが存在するが、その存在感は大きく異なる。

 40kにおいては、テレインはゲームの根幹を成す要素の一つだ。特に射線を妨げるテレインは、ゲームに深く根ざしている。

 理由としては、上述の通り、射撃は殲滅力が高いが、それを抑えているものの一つだからだ。戦場をまたがるような極大射程ですら、大きな意味を持たないのは、トーナメントコンパニオンに従う限り、その射線が適切に遮られているためだ。また、歩兵のような兵種やプライマーク、カウル様に関しては、ここを直接通り抜けることができるというようなルールが兵種のバリエーションを表現していたりもする。

 むしろ、これが根幹的な要素すぎて、問題になっていると言ってもよい。40kがイマイチ楽しめなかったプレイヤーは、自身のテレイン配置を確認した方がよいかもしれない。これはプレイヤーではなく、ゲームの瑕疵なのだが、テキトーなテレインの配置では、上述したような射線の妨害が上手くできず、殲滅力が発揮でき過ぎてしまうことがある。初心者や復帰者ほど、テレインの配置はテキトーにならざるを得ないと思うのだが、そうであるほど、つまらないゲームになる可能性が上がる、という、一種の罠のような構造になっているのだ。トーナメントコンパニオンというファイルがウォーハンマーコミュニティから無料でダウンロードできるので、それを読み、そこのテレイン配置に従って構築した戦場でプレイするのが望ましい。

 AoSにおいては、白兵が主体ということもあり、テレインは相対的にそこまで大きな存在ではない。一方で、陣営地形というものがあり、これはアーミーごとに設定されている固有のテレインだ。これは、アーミーの特徴を能力・外見の両者で表現する存在となっている。


 作戦目標に関するルールも異なっている。

 AoSにおいて、作戦目標はゲーム開始時(とほぼ同等)のタイミングでチェックされる他、各ターンの終わりに確保していると、相手に確保されるまで、確保の状態が保持されている。

 40kにおいては、フェイズごとにチェックされ、現状に近い状態が維持される他、ユニットの能力などがない限り、その場を離れてしまうと、確保状態がなくなってしまう。

 これも、白兵主体と射撃主体の差が表れていると考えることができる。

 白兵の場合には、相手に近づかなければ攻撃ができない。このような状況で、確保状態が保持されないのであれば、確保用のユニットが必要になるだろう。これはただのかさましにしかならないし、そのような低いポイントのユニットがいるか、そのポイントがいくらかでアーミーごとに差が生じてしてしまうし、事実上の必須ユニットになりかねない。保持はこのような状態を避けるために必要だ。

 射撃の場合には、作戦目標を踏みながらでも攻撃が可能だ。ただの捨てユニットにはならず、どのようなユニットがそこを踏むのかが意味を持つ。逆に言えば、確保しているユニットが攻撃されることもあり、それを倒し、確保していない状態にする、ということも比較的しやすい。

 このような差が表れていると考えられる。


 そして、これらを総合すると、40kの方が、その戦場における細かな位置が重要になるゲームだと考えられるだろう。テレインの配置や、作戦目標の確保と保持、射線の長さ、ユニットの種別(の組み合わせ)などで、適切な位置を探っていく必要があると考えられる。



ポイントの規模感の違い

 ユニットの規模感も、両者で大きく異なっている。両者ともに主流な戦いの規模は2000ptとなっているが、ユニット数が倍とは言わずとも、それに近いぐらい40kの方が必要だ。AoSの方がポイントの基準が高いと感じる。(結果として、AoSの方がユニット数が少なくなる)

 これも、殲滅力の違いと、兵種の違いによるものだろう。

 互いに攻撃をし合うわけだから、片方の攻撃で撃破されつくしやすいユニット数にすることはできない。互いに攻撃し合って、十分な打撃を与えられるだけのユニット数が必要なので、40kの方が要求量が多いのだろう。

 兵種、つまり、ダメージ量などが相対的に決まる問題においても、アーミーの中にある程度は(例外もあるとはいえ)バリエーションのある兵種を揃えることができるようにしなければならない。各ユニットのポイントが高いと、これが揃えられなかったり、編成の幅が極端に狭くなってしまう。

 一方で、AoSは、ダメージ量が比較的絶対的であることから、各ユニットはポイントに対し、スケーリングしていると考えることができる(もちろん、魔術師などの例外もある)。ある意味では、ポイントに対応する体力や攻撃力のようなものが計算しやすく、それがある程度統一されていると考えることができ、そのような状況においては、ユニット数が少なくても問題なく成立することができる。(余談だが、これはコンバットパトロールより、スピアヘッドの方がデザインが容易であることを示唆している。新コンバットパトロールには、ビークルなどが少ないのは、金額におけるバランスもそうだが、次版のコンバットパトロールを、兵種をある程度揃えることによって、バランス調整しようとする目論見があるだろう。ただ、それが適切に40kの体験を表現しているかと言えば、前述のように疑問が残る)



(オマケ)初心者へのオススメ

 では、このようなルールの差異を考えた時に、初心者にオススメできるのは、どちらであるだろうか。


 まず、間違いなく言えるのは、ゲーム的な特徴よりも、見た目が好きなミニチュアが、好きなアーミーがある方を選ぶべきだ、という第一原則だ。

 コアルールは定期的に版上げされ、変化する。アーミーの強さどころか、特徴ですらもそうだ。もちろん、大きな特徴は変わらないことがほとんどだが、どのようになるのかは想像ができない。

 そんな時、確かに残るのは、自身で作り上げたミニチュアだ。それだけを信じるべきだ。そもそも、多くのプレイヤーにとって、ゲームをしている時間よりも、ビルドやペイントをしている時間の方が長くなる。ここが苦痛では、続けることも難しいだろう。


 次に、遊べる相手で選ぶべきだ。

 どちらをやるべきか悩んでいるぐらいならば、基本的にはどちらでも楽しめるだろう。だったら、近くでよく遊ばれているゲームや、友人や知人がすでにプレイしている方を選んでおけばよい。

 首都圏であれば、どちらであっても対戦相手には困らないだろうが、地方であるほど、この問題は深刻に捉えるべきだろう。

 いくら発売を待っても、遊んでくれる相手が店頭に並ぶことはない。少なくとも、遠くない未来までは。


 それでもなお、悩むというのであれば、『競技的にウォーハンマーを遊びたいと思っているか、ティラニッドかネクロンが気になっている』のなら、40kの方を、そうでないなら、AoSの方を薦めたい。


 まず、プレイヤー人口で言えば、40kの方が多いのは間違いがない。結果として、競技的なプレイヤーも多く、競技的な大会も多い。上述の特徴を読んでもわかるように、40kの方が競技的に向いている特徴を持っていると言える(もちろん、AoSにも競技プレイ・シーンは存在する)。

 また、執筆現在、もうすぐ刊行が終わりそうな「ウォーハンマー:インペリウム」というアシェットの特典付き雑誌は、かなりお得にミニチュアを獲得できる。ネクロンは特にお得度が高いと言え、幾つか売り切れの号があるとしても、十分なうまみがあると言える。

 今の版で、スターターに選ばれているティラニッドに関しても、お得に獲得できる機会が多いと言えるだろう。

 これらのアーミーが気になっているのならば、40kの方を優先して始める理由の一つになると考える。


 一方、そうでないならば、AoSの方がオススメだ。

 前述の差異からわかるように、AoSの方が殲滅力が低く、ユニットが早期に全滅してあんまり遊べないということも(比較的)少ないだろう。一定の面白さが得られる可能性が比較的安定している。

 ルールに関しても、AoSの方が易しい。全体的に、例外処理が少ないし、紛らわしい処理も少ない。こちらを先に習得する方が楽だろう。

 また、執筆現在、版上げが行われたばかりであり、このルールはおそらく3年以上は遊ばれるだろうから、損もしにくい。

 執筆現在では、コアルールも、各アーミーのルールもインターネットで無料公開されており、それを読むことができる。

 加えて、上述のようにポイントの基準が高いから、すぐに1000ptや2000ptというよく遊ばれるポイント規模に近づけることもできる。

 また、ヴァンガードやスピアヘッドと呼ばれるボックスセットを購入することで、スピアヘッド戦という遊び方ができるようになるのだが、これも十分に面白い。(本当はスピアヘッドのための戦場とカードのセットが必要になるのだが、究極のスターターセットなどに入っているし、ネットでそれを持っている対戦相手を募集してもよいだろう)

 カジュアルに遊ぶのであれば、AoSの方が適しているというのが、個人的な意見になる。

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