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ボードゲーマーに「ウォーハンマー」を勧める5つの理由

 「ウォーハンマー」を始めてから、約1年が経った。ボードゲームに比べれば少しマイナーではあるが、ボードゲーマーにとっては、親和性の高い要素が多く、あまりプレイさせていないのがもったいなく感じる。

 特に、純ユーロゲームというより、アメリカンの方向のボードゲームに興味があったり、それが棚を圧迫していたり、キックスターターを蹴ったり、ということを行っているプレイヤーには、オススメできる。

 本記事では、なぜ、筆者がそのように感じたのか、どのような点から、ボードゲーマーに「ウォーハンマー」をオススメできるのかをまとめる。

(この記事の画像は公式サイトか、筆者のものを使用している)


 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。




◆1.ファンタジーかSFを選べる

 ボードゲームでも人気の2大フレーバーと言えば、やはり、ファンタジーとSFと言ってもよいだろう(諸説あります)。

 科学技術が成熟しきっていない時代、未知に溢れているような時代、人類がまだ力を持っていない時代に、ドラゴンが空を駆け、地からスケルトンが湧き出て、エルフやドワーフと人間が共存している。そんなファンタジーは人々の心を惹きつけてやまない。

 方や、科学技術が発達しきった未来。現代ではまだ到達し得ない技術を用いて、宇宙という未開拓の領域に足を踏み入れたり、異星人との遭遇を経て、発展したように見えた人類も、未だに残る人間性に足を引っ張られる。そんなSFに胸を膨らませる。

 これらは共通点もありながら、相反する世界観でもあって、しかし、ボードゲーマーを惹きつける。「テラミスティカ」と「ガイアプロジェクト」、「クランク!」と「クランク! イン・スペース!」など、両者のフレーバーでそれぞれの出版されているゲームは枚挙に暇がない。

 そして、ミニチュアゲームとしての「ウォーハンマー」というタイトルもまた、その2大フレーバーの世界がそれぞれ用意されているのだ。


 まず、ファンタジーの世界は、「ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー」(通称AoS)と呼ばれるゲームタイトルになっている。

 色々と特徴的な設定もあるが、オーソドックス(トールキン的)なファンタジーに近く、ファンタジー世界のミニチュアと言ったら、こういうものが欲しいよね、というものは一通り揃っていると感じる。

 たとえば、メインを張るのは、金の鎧に身を包んだ兵士(この辺は結構オリジナル色が強いが)だが、ドラゴンに乗ったりもするし、

 エルフやドワーフ、エントやリザードマン、恐竜までいるし、

スチームパンク風のドワーフ(火山のドワーフもいる)
森エルフと木人
リザードマンと恐竜

 そういった世界における都市の軍隊もいる。

騎士や歩兵、砲兵など

 対する存在として、オークやゴブリンに相当する種族や、

 ゴーストやスケルトン、吸血鬼なども跋扈し、

幽霊の馬車(右上)の造形は本当にすごい
こいつらはどちらかと言うと、骨ゴーレム(スケルトンの勢力もいる)

 と盛沢山だ。

 ファンタジー世界が好きであるならば、どれか好きな陣営が一つは見つかるに違いない。



 一方のSF世界は、「ウォーハンマー40,000」(通常40k)と呼ばれる世界となっていて、AoSとは別世界という扱いになっている。

 ここでは、宇宙に進出した人類が『帝国』を築き上げているが、それでも、権力の腐敗や悪魔たちの干渉、異種族の襲撃に頭を悩ませている。ディストピア的で、皮肉の利いた世界観や歴史が魅力の一つだ。

 パワースーツに身を包んだ強化人間たちがこの世界の主役であり、

スペースマリーンと呼ばれ、40kの顔でもある

 それらを補佐するように、クロックパンク風のサイボーグたちや、

 現代に近いような兵器で戦う一般兵たち、

戦車と砲兵、歩兵というような現代的な軍隊に近い

 巨大なロボットも存在する。



 人類に対するは、異世界みたいなところからやってくる悪魔たちや、

色々と複雑な設定がある

 それに魅入られ、帝国を裏切った者たち、

悪魔と契約したスペースマリーン、みたいな感じ

 あるいは、各異種族だ。

 オークに近い外見の菌糸類(!?)や、

いわゆるオークだが、実は超能力を持つ菌糸類、という設定になっている

 平たい顔で全体主義の、最近科学技術を発達させた、というどこかで聞いたことがあるような特徴を持つロボット使いの異星人たち、

リアル系のロボットっぽい造形

 宇宙エルフに、

 宇宙ドワーフ、

 果ては異次元から侵略してきたエイリアンたち

いわゆる「エイリアン」っぽい奴ら

 と、てんこ盛りで、こちらもSFが好きであるならば、好きな陣営の一つは見つかるだろう。


 このように、人気がある普遍的なフレーバーでありながらも、少しひねった設定が面白く、そういったフレーバーが好みであるのならば、是非オススメしたい要素になっている。



◆2.ミニチュアのコレクション性・造形

 ボードゲームのキックスターターで、つい、オール・インを選んでしまうような方々は想像に難くないと思うが、これらの魅力的なミニチュアを集めた時のコレクション欲の満たされようは、また格別だ。

 様々な陣営から気に入ったミニチュアを並べてもいいし、お気に入りの陣営のミニチュアを集めてもよい。

 ボードゲームの場合、やはり、どうしても箱にしまっておくことになるだろうが、「ウォーハンマー」は(良くも悪くも)保存用の箱が付いてくるわけではないので、自然と飾るように置くことになり、目の保養になる。

 近年は、ボードゲームのコンポーネントでも、素晴らしい造形のものも多いが、とはいえ、やはり、それだけで数十年も飯を食ってきている「ウォーハンマー」のミニチュアの造形は素晴らしい。

 特にすごいのが、これらが3Dプリント駒というわけでもなく、一般的なプラモデルと同じということだ。様々な側面で分割されたパーツ(接着剤が必要なことがほとんどだが)がランナーに隙間なく埋められている様は、独特の機能美を感じさせ、惚れ惚れとしてしまう。

これと
これで
こうなる


スターターキット(接着剤不要)のランナーですらこれである

 これらは、一般的にゲームタイトルごとにミニチュアを設計しなければならない他のタイトルとは異なる点の一つで、独自の魅力がある。



◆3.塗装は面白いし、潰しが効く

 接着剤などを使用して組み立てたプラモデルを、自分の手で塗装することになるのだが、それが楽しい。

 複雑な造形の立体物に対し、様々な塗料、手法をどのような順番でどのように用いることによって、最小の手間で最大の利益が得られるのか、というのを考えるのがパズルのように感じられるのだ。

 一般的に、「ウォーハンマー」の塗装は筆塗りで行われることが多い。細かい造形が多く、エアブラシでは塗り分けを行うのは難しいからだ。また、単に飾るだけではなく、ゲームの駒として使用するため、運搬や使用に耐える必要性があることからも、水性塗料を使用することが多い。

 そのため、一般に使用されるのは、水性塗料であるシタデルやファレホといったブランドを持つ塗料だ。

 これらは溶剤を使用しておらず、それらの臭いがないために、リビングの片隅でも作業ができるし、気持ち悪くなることもない。これらの塗料は非常に優秀で、数回塗るだけで、見違えるほどミニチュアが良く感じられる。

筆者が初めて塗装を体験した時のミニチュア(正規店では、無料で塗装体験ができる)

 当然、これらの塗料はボードゲームのミニチュアや立体駒にも使用できるし、もしかしたら、すでに所有されているかもしれない。

 そうであるのならば、ボードゲームのミニチュアを塗っていた塗料を使って、そのまま「ウォーハンマー」のプラモデルを塗ることができるし、そうでなくても、たとえ、「ウォーハンマー」に興味がなくなっても、その塗料はボードゲームの駒を塗ることに使用し続けることができる。

 塗装環境や塗料を整える、というのは、ミニチュアゲームにおけるハードルの一つではあるが、(そういったジャンルが好きな)ボードゲーマーは、すでにそのハードルを乗り越えているか、あるいは、そのハードルを乗り越えることによるメリットが大きいと言える。一石二鳥なのだ。



◆4.ルールを読み解くのが得意

 こうして、自分の軍隊となるミニチュアを用意することができた。

 すると、次はゲームをすることになる。「ウォーハンマー」はアナログゲームなので、そのルールは当然、ルールブックとして文章に書かれている。今の版では、コアルールはネットで公開されているため、下記でダウンロードすることもできる。

 すると、結構な文量のルールテキストに直面することになる。

 正直、面を食らう方もいるかもしれないが、ボードゲーマーとして、数多のルールに接してきた方々であれば、読み解きやすいと言えるだろう。

 確かに、立体的な、盤面的な情報や処理を文章で説明するのは難しく、それがルールブックの読み解きにくさにも反映されてはいるが、単語の統一などはしっかりとされているし、図示も交えながら、順番にゲームの処理が記載されている。

 本当に遊べるのかすらあやしいようなルールを何度も読んできたボードゲーマーにとっては、むしろ、読みやすい方の部類に入るルールブックだと個人的には感じている。

 そういった、アナログゲームに触れてこなかったプレイヤーに比べれば、ボードゲーマーは速やかにゲームに参加することができるだろう。(とは言っても、重量級ボードゲームの数々と同じように、最初は経験者と同卓したり、インストをしてもらったり、という方がよいだろう)



◆5.プレイ環境がすでにある

 ミニチュアも用意し、塗装も済ませ、ルールも理解できた。

 しかし、まだ足りないものがある。

 それは一緒にプレイしてくれる仲間と、ゲームをする場所だ。

 ただ、それはボードゲームでも同じだ。数多のボードゲームをプレイしてきた貴方たちは、筆者と違って趣味嗜好が近いプレイ仲間がいることだろう。そういった方々と共に「ウォーハンマー」を始めることによって、最大の障壁と言ってもよい、対戦相手を手に入れることができる。

 また、ゲームボードも正直、なかなかの広さで日本の一般的なテーブルには収まらないほどの大きさと言える。

 しかしながら、ボードゲーマーの方々の家々には、十分に大きなプレイテーブルがあったり、あるいは、行きつけのプレイスペースなどがあるだろう。そういった場所でプレイすることによって、これらのハードルはクリアできると言ってもよい。

 何もないプレイヤーが一からそれらを整えていくことを考えれば、すでに準備が整っていると言っても過言ではないだろう。


 また、ボードゲームの場合、その駒をせっかく丁寧に塗って、ルールを完全に理解したとしても、そのゲームが遊ばれなければ意味がない。そうは言っても、ボードゲームは次々と出版されるわけだし、なかなか遊べなくなることもあるのではないだろうか。

 その点、「ウォーハンマー」は継続型のゲームタイトルだ。

 基本的には、常にプレイシーンが続いているし、ネットや取り扱い店を通して、プレイヤーを見つけることも比較的行いやすい。

 一定の期間(たいてい、3年おき)ぐらいには、版上げというコアルールの見直しが入る。この時、データがなくなり、ミニチュアが使用できなくなることもあると言えばあるのだが、それは十数年前のミニチュアといったことがほとんどで、それ以外は基本的に継続して使用することができる。

 ある意味で、ミニチュアと、データ・ルールというものが切り離されているからこそ、継続してミニチュアを使用し続けることができるのだ。



◆まとめ

 ミニチュアやダイスを使用するようなアメリカンボードゲームと、ミニチュアゲームである「ウォーハンマー」にはいくつも共通点が存在する。

 片方のためになることが、片方のためにもなることが多く、両者を遊ぶことによるメリットは大きく、(片方あたりの)コストは小さくなる。

 しかし、「ウォーハンマー」は継続型のゲームタイトルという点が大きく異なり、独自のゲーム人口があり、それによる利点も大きい。それらの特徴を魅力的に感じるのであれば、是非、触ってみて欲しい。

 まずは、ウォーハンマーストアか、一部の取扱店で行われている無料の組み立て・塗装や、ゲーム体験を行ってみることをオススメする。

 それで、面白い、となったのであれば、間違いなく適性があると思ってよいだろう。ゲームの始め方は、それぞれ、様々な記事が存在しているし、なんなら、疑問点を呟けば、経験者たちがすぐに教えてくれることだろう。

 本記事が、何かのきっかけになれば幸いである。


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