「ダンジョン・インベーダーズ」の特徴
どのようなゲームであるのか、の詳細は以下の記事になります。
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本記事では、その中でも特にゲーム内容に焦点を絞り、どのような特徴を持ったゲームであり、どのようなプレイヤーに向いた内容になっているのかということを紹介したいと考えています。
これにより、自身のゲーム感覚に合っているかどうかを測り、ご購入の参考にしていただければ幸いです。
基本的なトレードオフ
本ゲームの敗北条件は、敵(ユニットカード)が1列に溜まりすぎることと、ダンジョンの耐久力以上にダメージを受けること、となっている。つまりは、敵が盤面にいる方が、敗北に近づく。
一方の勝利条件は、既定ターンが経った(ユニットカードのデッキがなくなった)後、『恐怖』が一定以上溜まっていること、である。『恐怖』というのは、敵を1つの行動でまとめて倒すと手に入る(手に入る『恐怖』の値は[【その行動で撃退したユニットの数】-1])勝利点だ。
つまり、敵が盤面に多くいた方が勝利条件に近づくが、同時にリスクが上がり、敗北条件にも近づく、ということになる。
具体的には、盤面に敵が残っている方がまとめて倒しやすいので、『恐怖』を得やすいが、盤面に追加される敵やダイスはランダムなので、詰みの(あるいは打開策に気付かない)状況になりやすい。
だからと言って、盤面の敵を逐次倒してしまうと、『恐怖』の獲得量が低くなってしまい、最終ラウンドで詰んでしまう、という形だ。
このトレードオフの関係がゲームの基盤にある。
盤面の状況(ユニットカードの数や並び、ダメージの量)というリソースかつリスクを管理することが求められる。
盤面とダイスによるパズル感
ここで言うパズル感というのは、いわゆる『パズル』ではなく、インタラクションやランダム性がなく、論理的にゴールを導き出せる選択肢の組み合わせによって構成されるもの、という概念に近い。
これを繰り返し解いていくゲームなので、そのようなプレイ感が好きという人に向いていると感じている。一方で、本作はデザインやコンポーネントが簡素であり、やり取りが概念的すぎると感じやすいかもしれない。
敵は2次元に配列されていて、上揃えになるように並んでいる。ダイスは昇順に並んでおり、自身のピックの右隣を相手がピックするようになっている。このようなルールの上で、自身にとっての最適解を探り、それを選び続けることになる。
また、色々とルールの調整を行い、簡易化したのだが、それでもまだ、少しだけ複雑性が高いようにも感じている。
複雑性が高いがゆえに、逆に、えいやと選択できたり、じっくりと各選択における組み合わせを考えるような人により向いていると思われる。一人用ゲームであることもあり、他者を待たせることもないため、このような調整になっている。
拡大再生産要素の弱さ
拡大再生産というのは、ある意味では、もはやゲームの王道であり、あらゆるゲームに導入されていると言ってもよい。アナログでもデジタルでも、大きな違いはなく、一人用ゲームでも導入されることが多い。
たとえば、「Slay the Spire」に代表されるデッキ構築のゲームは、この部分を主軸の一つとしており、次第に出来上がっていく自身のデッキが回る様子を楽しめるようになっている。
このような拡大再生産要素は、次第に強化されていく自身の行動やその様を見ていくのが楽しいし、要素の幅が広いものであれば、いわゆるスキルのビルドのように成長の方向性を楽しむことができる。
一方で、拡大再生産というのは、ゲームに対する影響の大きい要素だ。
拡大した要素をさらに拡大へと投資する、という構成上、どうしても序盤の動きがかなり重要になり、その影響は大きすぎると言ってもよい。また、各ターンの細かい選択による差異というよりも、全体的な選択(拡大の方向性やその量)が重要視され、フィードバックのサイクルも長い。(もちろん、これらの特徴を弱めようと実装が工夫されている作品も多い)
つまり、ゲーム全体に対する選択が評価される。強いカードやアイテムやビルドの方向性を知ることが大事で、大きな流れを上手くコントロールすることが必要で、細かい選択による失敗をあまり感じられないことが多い。もちろん、これは利点との表裏一体でもある。
本作(「ダンジョン・インベーダーズ」)は、拡大再生産の要素はほとんどないと言っても良い。規定の手番をなるべく上手く選択していき、少しでもアドバンテージを得ることが重要になってくるようなゲームだ。
あまりにも偉大なゲームなので、参考に出すことも憚られる思いだが、イメージとしては「Into the Breach」のような感覚に近いつもりだ。(一方で「Into the Breach」では、各戦闘の結果によって、中期的な強化を行うこともできるが、それは本作にはない)
単純に、毎ターン生成される敵の並びや、ダイスの出目といったランダム性によって生み出されるパズルをどれぐらい上手く解けたのか、という蓄積によって、ゲームの勝敗が決定づけられる。
これによって生まれる特徴はいくつかあるが、個人的に大きいと思っているのは、フィードバックが短く、鋭敏になりやすい、という点だ。要は、どこが成功だったのか、どれが失敗だったのか、ということが比較的わかりやすく、反省がしやすいと言える。
また、他者から回答を得られる(たとえば、攻略サイトで強力なスキルを知るといった)ようなことが難しく、自身がその目の前にあるゲームの状況と相対する必要がある、という点も大きく感じる。
このような、拡大再生産の要素に乏しく、その分、各ターン(ラウンド)のランダム性が高い状況を解いていく、というゲームの構造は人気がある一方で、比較的数が少ない、と考えている。
たとえば、「Grand Austria Hotel」はこの構成を取っていて、基本セットの範囲では、スタッフぐらいしか継続的な効果が得られるものはなく、客の状況やダイスの出目によって、各手番に最適な選択肢を模索していく。
このようなゲームには、いくつかの弱点があり、特に中量級以上の複数人によるゲームプレイでは大きな問題が発生しやすい。
代表的なものでは、(拡大再生産がない=インフレしないので)早期に勝敗が決着してしまう、各状況によって最適解を探るためプレイ時間が長大化しやすい、ランダム性による偏りに対する処理など、幾つか問題がある。
しかしながら、一人用ゲームでは、このような問題もいくらか軽減することができる、と考えており、本作では拡大再生産の要素をなくしている。
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