多層ガラス絵/3つの技法の横断=広さの守破離
◎「習う」という意識から距離をとるには。
前回、絵を描く時に誰かに習った事から離れて、自分がこうしたいということに従うと書きました。前置きが長くなりましたが、そういうスタンスが新しいことをやってみようという動きのベースになります。
◎守破離
さて、ここまで偉そうにオリジナルと書いてきましたが、ある日ゼロから考案したわけではありません。
当然と言えば当然です。作家と言えど、自分の手持ち(既に知っているもの)をどう使うかしか表現する術はありません。要はその使い方を、自分なりにどうカスタマイズするかが創造性と呼ぶものだと私は考えています。
特に私の場合、先人の技法を学ぶことなしにはこの技法は成立しませんでした。
芸事の修行プロセスを簡潔に述べたものを 守破離と言います 。美大生の頃、版画の先生から聞いて印象的だったので覚えていました。
これを更に、技法を自分のものとする過程には、"深さ"と"広さ"2種類の縦軸と横軸の守破離を想定すると分かりやすいのではないか、と私は考えています。
現在の私の多層ガラス絵の技法には、3つの古典技法の横断(広がり)があります。これが横軸です。
◎銅版画×ガラス絵×黄金祭壇画=多層ガラス絵
守:私にとっての「守」は銅版画です。
高校生の頃に教科書でホルスト・ヤンセンの図版を見た当日、独学で始
め、その後大学院まで専門で研究しました。今も発表をしている私の
軸になった技法と言えます。
破:銅版画で学んだ技法を、ガラス絵の上に掛け合わせたものが私にとって
の「破」です。
ガラスの片面に絵を描き、その裏から鑑賞する絵画が通常のガラス絵で
す。特徴は、乾燥後も潤いのある発色が保たれること。
14世紀頃からベネチアを中心に本格的にヨーロッパで広まりました。
離:「破」で掛け合わせたものに、イタリアで見た古い黄金祭壇画の質感を
自分なりに再現したものが私にとっての「離」です。
でもこれだけではまだまだ思いつきのレベルです。そこで必要なのは"深さの守破離"です。次回に続く。
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