『吾輩は歌詞である』前編


とある学校の、とある教室の隅っこ。先生が黒板に書いたのをノートにとっている最中、授業の教科書で隠しながら、僕はノートに誰の為の歌詞書いていた。

僕「・・・」
授業終わり、僕は夢中になって書いていた歌詞を止めて、黒板の書いている文字を書き写していた。

友人「いやー踏ん張ったな!すげー眠いの何のって、声小さいんだよ、なあの先生」
前の席に座る友人は後ろを振り返り、息詰まった授業に解放された反動を僕に向けてきた。


僕「・・・」
友人「まだ書いていたのか?もう日直に消されるぞ?」
友人が何の気もなしに、どこまでノートに書き写しているかを見ようと、丸まり気味になっている僕越しに、ノートを見ようとする。


友人「どこまで書いた?見してみろよ」
僕「いや・・・」
友人「いやって。ちょっとだけでいいから」
僕「いや、いい・・・」
友人「ちょっとだけ・・・」
僕「いや・・・」
友人「ちょっ・・・」
僕「い・・・」
友人「ちょ・・・」
僕「い・・・バリア!!」
友人「ちょ・・・⁉」
僕「バリアー!もうここからバリアしてまーす」
友人「⁉・・・バっバリア切り!」
僕「⁉・・・じゃっじゃあ超バリアー!」
友人「はい!超バリア切りー!切ったー!バリア切ったー!」
僕「⁉・・・超、超バリア」
友人「もう切ったのでバリア効きませーん!」
僕「⁉・・・ちょ、ちょ・・・部長!!」
友人「⁉」
僕「もうここから部長してまーす!」
友人「⁉・・・社長!!」
僕「⁉」
友人「はい!社長でした!!」
僕「え⁉しゃ、シャチョウサン・・・じゃ会長!」
友人「CEO!!」
僕「CEO兼!エグゼクティブプロデューサー!」
友人「CEO兼!エグゼクティブプロデューサーからの!クリエイティブプロデューサー!」
僕「前澤友作!!」
友人「三木谷浩史!!」
僕「カルロス・ゴーン!!」
友人「はい、特別背任罪」
僕「くそー!!」


友人「いい加減あきらめろよ。ノート見せるくらいいいだろ?もしかして、そのノートの中に・・・わかった!〇先生の悪口書いてたとか?」
僕「そんなの書いていない」
友人「じゃあ△先生?」
僕「悪口じゃない」
友人「あっ‼えっろい女性の裸体を書いて・・・」
僕「そんなんじゃない!」
友人「じゃあなんだよ・・・お前がなにを書こうがな、俺は全然、リアクションしないから。な、教えてよ。ね、お願い。」
僕「・・・何もすんなよ」
隙間をあける僕。その隙間から友人がノートの中を見る。


友人「・・・ぽ、ポエムじゃーん‼wwwww」
僕「リアクションしないって言ったろ‼」
友人「ぽ、ぽ、ポエム書いていたのかよ!wwwww」
僕「ぽ、ポエムじゃねーし!」
友人「え?」
僕「これ、・・・これは、しょ、小説だよ!」
友人「え?小説?」
僕「そう!小説!よくあるだろ?小説家になろうとか、そうゆうところに投稿してさ、コンクール出して評価してもらって、小説家になる。パって文章が閃いてさ、だからノートに書いていたんだよ。怖いねー自分の才能‼」
友人のリアクションを見て、一気に恥ずかしさと怒りで感情が抑えきれなくなり、つい思ってもいない事を言ってしまった。


友人「小説ねー・・・じゃあさ、タイトルは?」
僕「え?」
友人「タイトル。決まってるんだろ?教えてよ。」
僕「えー・・・」
友人「やっぱりポエムだ。もう歌詞って書いてあったじゃん。小説じゃなくて、歌詞書いていたんだろ?」
僕「・・・わ、」
友人「わ?」
僕「わ、吾輩は歌詞である」
友人「・・・吾輩は歌詞である。それどっかで聞いたことがぁ・・・」
僕「吾輩は歌詞である。名前はまだない。」
友人「じゃあ決まってないじゃん」
僕「そうゆうタイトルなんだよ。もういいだろ、これはポエムなんかじゃない、小説!書いているんだから邪魔しないでくれ。」
友人「なんだよ・・・わかりましたよ、小説家様。」


ポエムだと言われて、バカにされそうだと焦って嘘をついてしまった。
友人に突き放した言葉を掛けてしまったと後悔しながら、独り作家活動を装って歌詞を書き始めた。丸まった姿勢はさらに丸みを帯び、殻に閉じこもっている様だ。明るい世界から遮断された中、誰かが呼んでいる声が聞こえる。


後編に続く。


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