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平本蓮ロングインタビュー「MMAに転向して本当によかった」

MMAデビューから2連敗を喫してしまった平本蓮インタビュー!RIZIN大阪大会前日に話を聞きました(聞き手/ジャン斉藤)


――元気ですか?

平本 そうですね。元気だと思います。

――「思います」ですか。

平本 いや、めちゃくちゃ元気です!(笑)。本音をいうと、試合が終わって、弟(平本丈)や石渡(伸太郎)さんと話をする中で、試合中に掴めた部分があるから、すごい前向きになれたんですよ。ケロッとして切り替えられたというか、この感覚を忘れないように5月でも6月でも試合をしたいなって。周りからはけっこう落ち込んでると思われてて、心配する連絡がけっこうあって。なんか落ち込まないといけないのかなって……っていうぐらいケロッとしてますね。

――それは敗戦を前向きに捉えることができたってことですか?

平本 試合で「この部分が俺に足りないのか」って直に感じることができたじゃないですか。まあ、練習であってもダメな部分には気づけるし、すぐにはダメな部分がなくなることはないから、練習ってずっと続いてくんですけど。試合ってそのさらに何倍も自分のダメなところを突きつけられるっていうか。逆にいいところもそのぶんわかるんですけど、試合中に「あ、自分ってこういうところがいいんだ、武器はあるんだ」と。でも、自分のダメなところはそれ以上に価値があるので、試合中になって突然突きつけられるっていうか、「こういうことか……」みたいな感覚がすごい。それがあるから、早く次の試合がしたいなって。切り替えたというか、切り替えるしかなかったっていうか。

――これからもMMAに取り組んでいくんだったら切り替えていくしかないってことですかね。

平本 ホントそうですね。変な話、5勝30敗とかでも最後にチャンピオンになっていればいいじゃないですか(笑)。

――それは針の穴を通すルートですね(笑)。萩原京平戦のときも思ったんですが、平本選手はけっこうな負け方をしてもこういった取材に出てくるじゃないですか。オフィシャルや自分のYouTubeだと出やすさはあるとは思うんですけど。

平本 ああ……学校のクラスとかでもハブかれることがあったんですけど、そこで外を向いて何もしなくなるのって、めちゃくちゃ簡単だなと思うんですよね。逆に立ち向かいたくなる自分がいるというか。「絶対に勝ってやる」って気持ちで試合に臨んでいるから、試合が終わったときに「クソ」「やっちまったなー」って悔しいし、「もっとできたのに」「ここはこうできたのに」というのがあるんですけど。復活の火は自分の中で消えてないというか、そこは往生際が悪いと思われるんだけど、「絶対にこんなんで終わらせらんねえぞ」っていう風に思ってるし。そこに閉じこもってるのが恥ずかしい、じゃないですけど。

――負けたから表に出てこないんだろう、とは思われたくないと。

平本 そうそう。自分としては、そっちのほうがすごく悔しい気持ちになるというか。自分を殺せるのは自分だけだと思ってます。それは肉体的に死ぬとか、そういう話ではなくて、自分が諦めてないかぎりは死なない。どれだけ他人が自分の夢や希望を遮ったり、バカにする奴がいてもいいとは思うけど。結局、自分が「もうダメだ」って思わないかぎりはずっと続けられるっていうか、自分の意志で戦っていけるわけじゃないですか。ホント自分を殺せる瞬間というのは、自分が諦めたときであって、それ以外は死ぬことなんてないんだなって。肉体とは関係なしに自分の精神が死ぬか・死なないかは、全部自分次第だなと。だから、誰かにどう思われてもかまわないすよ。

――デビュー戦と比べて、試合前に何か違った点ってありました?

平本 いやあ……どうですかね。戦う気持ちが違ったのかなっていうのは、あるっすね。毎試合、成長しているのは誰だってあたりまえだとは思うんですけど、試合前はすごいリラックスしてたかもしれない。LANDMARKの会場って青コーナーの選手全員の控室が一緒なんですけど、アップする場所が控室で。新宿FACEでキックの試合をしてる頃を思い出しましたね。その雰囲気は自分としては嫌いじゃないから、あれはあれでよくて。客との距離がすごく近いこともFACEに似てるなっていう。

――試合のターニングポイントはどこだと考えてますか?

平本 1ラウンド目に右をもらってフラッシュダウンみたいになって、そこからホント熱くなっちゃって。作戦とかいろいろ飛んじゃって「倒してやる!」ってなったというか。もうなんていうんですか、人間って窮地に追い込まれたら得意の動きが出るじゃないですか。それがキック時代の動きになっちゃったんですよ。いつもやってきた練習が1発もらったことで「もうヤバイ、倒さなきゃ!」っていう焦りに変わって。あとから試合を見返すと、キックの頃みたいに歩いて追いかけてワンツー。もう完全に「倒してやる」ってなっちゃったなって。

――パンチを食らって落ち着けなかったんですね。

平本 もう完全に熱くなっちゃってましたねぇ。3ラウンド目のインターバルのときにセコンドの石渡さんから「ちゃんとわかるか」って言われて。3ラウンド目からちょっとずつ落ち着いてきたじゃないですけど。もうホントに殴って倒してやるしか考えてなかった(苦笑)。キックの数がゼロでしたし。

――キックを一度蹴らなかったのは何か作戦だったり、ケガをしていたわけじゃないんですね。

平本 もう昔からのダメなクセが出ただけです。だいぶ前ですけど、木村ミノル選手とキックルールで試合したときも、バーンともらって熱くなって蹴りが全然出なくて、逆にパンチで殴りあっちゃったんですよ。「この野郎!」みたいな感じで。自分のダメなクセが出ましたねぇ。

――それくらい最初のフラッシュダウンが尾を引いてしまったと。

平本 ちょっと焦っちゃった部分もあるっすよね。1発もらってからは相手のパンチは全部見えるようになったんで、あとは1発ももらわなかったんですけど。相手が1ラウンド目で両手を骨折したって言ったじゃないですか。けっこうヒジでブロックしたりしたんで、そこで壊せたかなって。ブロッキングで痛がってるのを感じたんで「あ、これは殴り合いで絶対に潰せるな」ってところで熱くなっちゃったっすね。

――相手の負傷も察知していたこともあって殴り合いに行ったところもある。

平本 殴ってこないし、嫌がってるのもわかるし、こっちのパンチが効いてるのもわかったんですよ。余計に手応えがあったので、倒しに行っちゃったのかなって。

――でも、倒せなかったわけですね。

平本 そこは完全に蹴り忘れじゃないですかね。蹴ってないとパンチで倒せないですよ。混ぜてパンチを当てないとやっぱ効かない。「パンチが来る」って思ってたら対処できるし、完全にそこですね。ホントに熱くなってケンカみたいになっちゃったんで。いやまあ、シンプルに自分の経験不足です。試合中に足りない部分もすごく理解できたし、技術的なことをすごい磨いてきて、ホント地味な練習ですけど、そういうドリルをずっとやってきて、そういう技術がいろいろ身についた部分もあるんですけど。純粋なレスリングのぶつかり合いのトレーニングもアメリカではグレコローマンの選手とたくさんやって、すごい身についた部分はあったんですけど。もうちょっと必要だなっていうことは、すごい感じたなって。ごちゃごちゃ感っていうんですか。技術のないぶつかり合いじゃないですけど、自分の中で足りない部分を試合中に感じたんで。トレーニング方法もまたあらためて変えてみて、また試合をしたいなって。

――逆によかったところはどこですか?

平本 最初にもらってダメージもあったすけど、そこからメンタル的に盛り返すことができたというか、そういう精神的な部分で「俺、こういうところで踏ん張れるんだ」「スタミナ全然切れないわ」とか、いろいろ知れた部分はあるんで。逆に次の試合はもうちょい安心して、自分は大丈夫、もっとできると思うわけじゃないですけど、試合をたくさんしていきたいなって思ったんですよ。去年はホント試合に出なかったから、今年は逆に誰より試合に出るのが面白いのかな(笑)。

――試合をすることで極限状態の自分が確認できたところはあるんですね。

平本 そうっすね。練習のままの動きを出すのって、なかなか簡単じゃないなっていうのはあるんですけど。でも、自分なら絶対できると思うので。

――何度かテイクダウンされたじゃないですか。そのへんってどうでした?

平本 もうあんときはフワフワしちゃってて「あれ、どうやるんだっけ?」みたいな(苦笑)。もうホント初歩的なことも忘れる感じになっちゃって。ああいう極限状態もしっかり頭に入れて、練習から見直したいなって。

――そこはパニックになったという感じですか?

平本 いや、パニックというよりかは、ちょっとボーッとしてたっていうか。「なんかヤバイヤバイ!」っていうのはなかったですけど、ホントにボーッとしてたかもしれない。

――平本選手が寝かされてからエビすらできてないという指摘が多いじゃないですか。CAVEの関係者と話をしたら「エビの練習をやってないわけないんだけど、あれはもう完全に飛んでいた」と。

平本 そうなんですよね。ホントに「あれ、あれ……?」みたいな。「思い出せ」っていう風に自分でも思うぐらい、こんなに飛ぶことがあるんだなって。

――キックの試合でも飛ぶことはあったんですか?

平本 キックボクシングは一瞬一瞬の攻防しかないから、なんかガサツでも通用しちゃうときはあって。それはMMAでもあるとは思うんですけど、組んでしっかり考える状況って体験もなかなかないんで、変にボーッとしちゃいました。パンチをもらってけっこうフワフワしていて。3ラウンドになってから、自分のやるべきことをちょっとずつ思い出してきたんです。ボクの中でスッキリさせる答えは……5ラウンドなら勝てた(笑)。

――またいろいろと言われますよ!(笑)。

平本 ハハハハハハ! マジメな話、スタミナの自信はついたかもしんないですね。自分もフワフワして全然、力を使うタイミングがなかったですけど、もっとホントやれたのに……っていう。完全に悔いの残る試合ですよねぇ。でも、逆に宿題というか、課題が目に見えてわかったから。明日からの練習は楽しくなるわけじゃないですけど、いまやるべきことがしっかりわかるから。次の試合でちゃんと見せます! って言うしかないですよね。

――コーナーに押し込まれてる時間が長かったじゃないですか。あのとき何を考えていたんですか?

平本 あんときもボーッとしてて。まあ、相手を押し付けてきてるだけなんで、ヒジで削ってたんですけど。フワフワしてて、見えない景色に行くのが怖かったわけじゃないですけど。組み替えようとか、変にいろいろやろうとしすぎちゃった部分もあるのかなって。あそこは組みを切って、総合格闘技じゃなくてシンプルに打撃で戦っていくことができたと思うし。いろいろ自分の中でやりたいことがゴチャゴチャになりすぎたってことがあんのかもしれないです。

――練習だと目的を持って取り組めるけど、試合ではその場でその場で臨機応変に組み立てていくには経験が必要ってことなんですかね。

平本 やっぱり経験を積んでいくと、ホントにいらないものがやっとわかってくるじゃないですか。ああいう場面に陥ったときに、幅の広さが大事になるとは思うんですけど。そこはいつも練習中には感じてて、自分なりにはできるつもりでも、いざとなってみたら、ちょっとその選択が何個かあったりして。「ヤバイ、これはどっちやろう?」とか、その選択肢が急激にパンと出てきて、そこで迷っちゃう自分もいるわけで。そのへんを、たかがデビュー2戦目でできたらスゲエよっていう話だとは思うんですけど。しっかり最短で覚えていって、自分の必要なものを吸収して、今年はやっていきたいなって。

――鈴木千裕という格闘家と肌を合わせてみて、どんな印象がありますか?

平本 もっと打撃でくるのかなと思って、逆に組んでテイクダウンしようと思ってたんですけど。

――鈴木選手はパンクラスのネオブラ優勝者だし、やっぱりキャリア差はあるなって見てたんですね。

平本 いまの萩原(京平)がどうかわかんないですけど、萩原と鈴木やったら、鈴木のほうが意外に相性がよかったりするんじゃないですかね。俺に勝ったから、アゲているわけじゃないすけど、鈴木戦が決まったときも正直、萩原より下の相手とは思わなかったし、むしろちょっと強いんじゃないかぐらいは思ってて。(鈴木の)ブン回しを意識しすぎたってのもちょっとある話ですけど、じつはそうでもない。

――試合後リングに残って鈴木選手のマイクを聞いていたじゃないですか。帰ろうと思いませんでした?

平本 リングを出ようかなって思ったときに「いや、何か一言を残して帰らないと気がすまないな」って。ここは言葉を残したほうが必ずいいなっていうふうに思ったすね。終わったあとに「いやー、これはやっちまったな……」とコーナーに戻ったんですけど。MMAって延長ないじゃないですか。それなのに石渡さんに「あれ、これ延長ありましたっけ?」って聞いちゃって(苦笑)。

――ハハハハハハ。「負けました。でも負けてないです」という名言が出ましたね。

平本 いや、いろいろとあの場で考えたというか、思いついたんすけど。悔しすぎて結局、マジメなことを言ってしまって。

――けっこう響く言葉ですよ。

平本 なんていうんですかね、自分としては一捻り入れたかったんですけど。これは早く再起を誓うしか処理する方法がないなと。

――試合前の「ポペガー」じゃないですけど、もうちょっとふざけたかったと。

平本 もっとふざけたほうが面白かったなと思うんですけど……すごくマジメな自分が出ちゃいましたね(苦笑)。

――“裸の平本蓮”がむき出しになったということですね。

平本 ホントそうっすね、出ちゃったっすね。でもホントは「●●●●●」とか言いたかったんですけど。

――……そっちじゃなくてよかったですよ!(笑)。

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