蔡俊行

株式会社ライノ代表取締役。WEBマガジン・フイナム・ガールフイナム統括編集長。フイナム…

蔡俊行

株式会社ライノ代表取締役。WEBマガジン・フイナム・ガールフイナム統括編集長。フイナム・アンプラグド編集長。 http://houyhnhnm.jp https://girl.houyhnhnm.jp http://rhino-inc.jp

最近の記事

ヒップなエディトリアルシンキング 12

第12回 海外へ出よう この連載も今回でまる一年。ちょうどそれくらいで終わるつもりだったのだけど、もうすこしだけお付き合いを。まだ書き切れていないことがあるので。 で、今日は海外を見よう、という項だ。 その前に、このお正月休みに『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(佐々木チワワ著、扶桑社新書)を読んだ話からしよう。 「ぴえん」が若者の間で使われているのは知っていたが、「ぴえん系」というジャンルがあるのをこの本で初めて知った。これは新しいファッションでありカル

    • ヒップなエディトリアルシンキング 11

      第11回 ゼロから考えず前例を探せ 毎日多くの創作物、例えば音楽や物語などが世界中で生まれている。グーテンベルグやエジソンの登場を待つまでもなく、遡れば文化が花開く前から何百年もこうした活動は続いている。それが止まることはなくこの先も未来永劫、人々の暮らしが営まれる限り続くのだ。 そこで考える。創作した作品が、意図せず過去に作られたものと似たものになる可能性は果たしてどれくらいあるのだろうか。 J-WAVEでピストン西沢さんのやっている番組で「音楽の偶然」というのがあっ

      • ヒップなエディトリアルシンキング⑩

        第10回 マーケット感覚を持とう 先日の日経新聞に「緊急事態宣言解除、それでも個人消費の回復が鈍いワケ」という記事があった。その中で消費が伸びない理由が述べられているのだが、ビジネス需要のあれこれがリモートワークで減ったというのがそのひとつであるという。 新幹線の利用者の大半は、出張などのビジネスが目的。しかしオンライン会議が交通機関の利用に待ったをかけた。さらにインバウンドの衰退。こちらはこの先持ち直す可能性もあるが、出張は難しいだろうという論調だ。 俗に「4時間の壁

        • ヒップなエディトリアルシンキング⑨

          第9回 大口をあけて笑おう 年のせいか読んだ本や、観た映画の内容をすぐに忘れるようになった。小さい頃や若い頃に観たり読んだりしたものは比較的覚えているのだけど、最近のものは危ないくらい脳みそにひっかからない。もしかすると体の異変なのかなとも思うけど、まわりの友人たちに聞いても似たようなもんだから、あまり気にしないようにしている。 先日も初対面の人との会話で、最近「Netflix」で観た映画で面白かったのなんですか、と聞かれ、あれ? と口ごもってしまった。確か数日前に観た作

        ヒップなエディトリアルシンキング 12

          ヒップなエディトリアルシンキング⑧

          第8回 本を読もう 「練習が仕事で、試合は集金」。これはあるスポーツ選手の言葉。  ぼくは小学時代から高校の途中までずっとサッカーをやっていた。多くの人に違わず、練習はあまり好きなほうではない。 小学生時代の練習がどうだったかはあまり定かでないが、強豪チームではないので遊びのようなものだったと思う。 しかし中学からは、昭和の運動部らしくスパルタで、練習の始まりは必ずランニングからだった。 どの運動部も練習はランニングから始まり、整理体操前のランニングで終わる。練習中

          ヒップなエディトリアルシンキング⑧

          ヒップなエディトリアルシンキング⑦

          第7回 コミュニケーションを大切に コミュニケーション能力という言葉を耳にするようになってからずいぶん経つ。文字通り、コミュニケーションに長じた技能のことだと思うのだが、意外と間違った意味で使われているような気がしてならない。 転職面接に来た人に対する評価に「コミュニケーション能力が高い」なんてあると、つい疑ってしまう。会ってみるとたいていコミュニケーション能力が高いのではなく、ただ社交的な性格のおしゃべり好きな人だったりする。こちらの質問を正確に理解せず、自分の言いたい

          ヒップなエディトリアルシンキング⑦

          ヒップなエディトリアルシンキング⑥

          第6回 話題の店に行こう はるか昔、我々の先祖がサバンナで狩猟採集生活をしていたころ、情報は命に直結するものだった。どこに行けば食べられる実が成っているか、腐った肉の味がどういうものだったか、あるいは他のグループの一員が森の中で猛獣に襲われたなんてニュースを知ると知らないとでは、生存率に大きな違いがでただろう。 そうしたことを知ることは自分と家族、そして所属するグループを守ることにつながる、何にも増して大切なことだった。 情報やニュースは、人から人へ、ときには間違ったり

          ヒップなエディトリアルシンキング⑥

          ヒップなエディトリアルシンキング⑤

          第5回 アートに関心を持とう コロナの影響で世界中にお金が溢れているそうだ。経済活動を抑制していて、誰もがその苦しみに喘いでいるのになぜ? というのが素直な反応だろう。しかし各国の政府が景気刺激策として支援金や協力金のような形でお金をばらまいた結果、そうなっているのだ。 日本だと昨年国民ひとりにつき10万円支給された。コロナ不況で仕事を失ったり、給与を減らされたりと困窮している家庭にとっては干天の慈雨であるが、生活に困っていない人にとっては通帳の10万円の桁の数字がひとつ

          ヒップなエディトリアルシンキング⑤

          ヒップなエディトリアルシンキング④

          第4回 おしゃれしよう リベラルアーツって聞いたことありますか? もう何年も教育の現場では話題になっている言葉だ。日本語に訳すと「教養教育」ということになるんだろうけど、これだとあまりピンとこない。教養を身につけリーダーとしての人格形成を行うための、人文学や芸術、自然科学など多方面にわたる学問とでも言えばいいのだろうか。アメリカでは人気の履修部門で、あのハーバード大学もリベラルアーツカレッジとしてスタートした歴史を持つ。 総合大学とリベラルアーツカレッジの違いは、前者が

          ヒップなエディトリアルシンキング④

          ヒップなエディトリアルシンキング③

          第3回 ヒップな価値観  すでに書いたように編集思考は誰もが使っている能力のひとつ。  どんな仕事をしていても経験を積めばそれなりに身につけられる。しかし大事なのは、その思考法に至るアイディアの整理であるし、その元となるものである。 アイデアを広げ、合理的に整理し、好悪を検証すると前々回で述べたが、そのアイデアを考える時にそれがイケてるかイケてないかというのはとても大事だ。  料理に例えるなら思考法が調理法。食材がアイデアだ。どんなに腕のいいシェフでも腐った食材では美味しい

          ヒップなエディトリアルシンキング③

          ヒップなエディトリアルシンキング②

          第2回 誰もが編集思考を使っている 「食」への関心がこのところやたらと高くなってきている。いわゆるクリエイターと呼ばれる職業の人たちのこのところの話題は「食」である。北海道の寿司屋に食べに行ったとか、サン・セバスチャンに行ってきたなんて情報を交換しあっている。確かに誰もが食事するので、共通の話題としては悪くない。「ホッジ予想」のような代数幾何学の難問を持ち出しても、たぶん熱を帯びないだろう。  SNSの発達などもあり、あらゆる人たちが食に対して関心を寄せている。そしてそれ

          ヒップなエディトリアルシンキング②

          ヒップなエディトリアルシンキング①

           雑誌編集に関わる仕事、そしてそこから派生する仕事、主に制作関係の仕事になるのだが、それらをずいぶん長くしている。仕事の関わりかたによっては、プランナーになったり、コピーライターになったり。もちろん現場ではディレクター。さらには弁当の手配もするし、撮影時の交通整理をしたりもする。  親が存命のころ、この仕事を説明するのに骨が折れた。そんな何をやっているかうまく人に説明できない仕事であるが、どうやら向いているようで飽き性の自分が飽きもせず、長く楽しんでいる。  フイナムというW

          ヒップなエディトリアルシンキング①