シン・ウルトラマンが伝えたかったこと(ネタバレあり)
「シン・ウルトラマン」が伝えたかったことを考察する。
結論から
物語終盤、ゾーフィが放った「ゼットン」を倒すために、「ウルトラマンになる男」神永が飛び立つが、そこで遺すセリフがある。
ゼットンは強大すぎて、ウルトラマンは結局倒すことが出来ない。だが、伝えたいことは結局、この「努力をすること」「やってみること」の大切さではなかったか。
絶望感を覚えていた滝も、神永(ウルトラマン)が残したUSBメモリから何か「為せる」ことを探そうとする。物語のメッセージ性は結局、終盤の30分に詰まっているのだ。
それまでの物語
オープニング
メッセージがそこにあるのならば、それまでの物語には何か伏線のようなものがあったのだろうか。オープニングシークエンスでは、ウルトラマンが地球に「降着」する。
ウルトラマンは、そこで自分を犠牲にして幼い生命を守った神永の身体を借りて地球に残る。
新しく登場した「脅威」である銀色の巨人を担当する分析担当として赴任してきた浅見にウルトラマンは問いかける。「バディとは何か」「ここにいる人間たちは何か」。要は、オープニングはウルトラマンの登場と、人間世界への溶け込みがテーマだ。
相互理解へ
「第2の事件」である「ガボラ」戦では、ウルトラマンが神永であることを明示しつつ、ウルトラマンが人間とコミュニケーションを取れる可能性を示唆する。核汚染の可能性がある相手に対してウルトラマンはスペシウム光線を使わず、あくまでも爆発させずに戦闘を終結させる。ガボラを担ぎ上げたウルトラマンは去り際に浅見達を一瞥、アイコンタクトを行い、コミュニケーションの可能性を示唆する。
人間の欲望
読み解く鍵になるのはザラブ星人とメフィラス星人の2つのシークエンスだと思う。ザラブ星人は偽のウルトラマンとなりウルトラマンへの「信頼」(のようなもの)を失墜させようと試みる。
一方でメフィラス星人は浅見を巨大化させ、「ベータシステム」の供給を餌に地球人を道具に仕立てようとする。
ここで語られているのは「欲望」である。よく云うフレーズに置き換えれば「利権」なのかもしれない。外星人と初めてコンタクトしたことによって、どんなに隷属的な条件でも地球にないものを得ることができる「利権」。よくよく考えれば、人間を巨大化させたところで何かしらのアドバンテージになるかどうか、というのは疑問符がつく。メッセージがあるとすれば、「政府の男」である竹野内豊が絡んでくるメフィラスとの条約締結シーン。全てを白日の元に晒すために敢えて屋外の調印式場が設営されている。人間の利権争いというのはかくも「醜い」という一種のメッセージなのかもしれない。
ちっぽけな何か
この2つのシークエンスの中で語られていることはもう1つあって、それは、外星人のそれと比べた時に地球の技術力は、まだまだ未発達である、ということだ。ザラブ星人が一瞬でデータを復旧させたように、そして、メフィラス星人が一瞬でYoutube(らしきもの)から浅見の動画を消し去ったように。
ウルトラマンは言う。「全知全能の神ではない」と。結末のメッセージへの伏線はおそらく2つのシークエンスから、全知全能の神ではない、というフレーズを経て、「為せば成る、成さねば成らぬ、何事も。」へ繋がるのだ。
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