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第1回:「経営革新計画」早わかり スタートアップ・中堅中小企業 公的制度・補助金マニュアル

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
本連載は、スタートアップや中堅中小企業を対象とした国や公的機関の補助金などの制度についてご紹介するものです。

昨今のコロナ禍からの景気下支えの目的もあり、国や公的機関から多くの補助制度が出されていますし、コロナ影響に関らず、スタートアップや中堅中小企業を支援する施策は多種多様です。

企業努力として本業の業績改善を独力で目指すことが本質的ですが、正直、「貰えるものは貰う」スタンスを取るのも経営戦略といえます。

ここでは、「知らなきゃ損」な情報や、「知ってて得した」情報を網羅的に、かつ実務面に落とし込んでご紹介することで、1社でも多くのスタートアップや中堅中小企業がスピード感をもって成長することをご支援することを目的としております。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。
加えて、スタートアップや中堅中小企業の補助金申請サポートや公的補助の受給サポートも行っておりますので、お気軽にお問合せください。

「経営革新計画」ってなんだろう?

経営革新計画は、中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画書のことで、計画策定を通じて現状の課題や目標が明確になるなどの効果が期待できる他、国や都道府県に計画が承認されると様々な支援策の対象となるものです。

経営革新計画とは、
「新事業活動」に取り組み、
「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する
中期的な経営計画書
のこと

上記の要件をご覧になればわかるように、経営革新計画は単に既存事業の改革などによる業績改善などではなく、「新事業活動」によって経営状態を改善するための計画ということができます。

では、「新事業活動」とは一体何か?という点ですが、以下の4類型が明確化されています。

「新事業活動」の4つの類型
・新商品の開発又は生産
・新役務(サービス)の開発又は提供
・商品の新たな生産又は販売の方式の導入
・役務(サービス)の新たな提供の方式の導入、その他新たな事業活動

とされています。
したがって、いわゆる新事業をスタートさせ、その結果、業績の改善を大きく図る計画ということができるといえます。

そして、「経営の相当程度の向上」とはどの程度の改善のことをいうのでしょうか?
こちらも明確に定められています。

「計画終了時の目標伸び率」
計画期間3年間の場合、付加価値額が9%以上、経常利益3%以上の改善
計画期間4年間の場合、付加価値額が12%以上、経常利益4%以上の改善
計画期間5年間の場合、付加価値額が15%以上、経常利益5%以上の改善

新規事業を行い、経常利益で3%以上の改善が必要となる計画が必要となります。

言うは易しですが、3%以上ということは、現状の経常利益が1,000万円の会社であれば、1,030万円の出来上がりになる必要がありますので、簡単と思われるか?それとも難しいと思われるかは人次第です。

ただ、気を付けなくてはならないのは、これら利益改善については新規事業を含む、本業の利益水準となっていますので、既存事業がダウントレンドの会社にとっては結構高いハードルなのかな?とも思えます。

「経営革新計画」が承認されることのメリットは?

この後ご紹介するプロセスを経て「経営革新計画」が承認されると、複数のメリットを受けることができます。

特徴的なものは以下のとおりです。

・日本政策金融公庫の低金利融資
・信用保証協会の債務保証限度額の拡大
・海外展開への支援
・補助金申請への優遇
・特許料の減免

日本政策金融公庫の低金利融資は、新事業育成資金を調達する場合、基準金利マイナス0.9%の優遇措置が受けられたり、信用保証協会の債務保証についても、通常に加えて同額の「別枠」(無担保保証枠8,000万円)が設けられることになります。
加えて、海外展開にあたり現地通貨での融資が受けやすくなるよう、信用状を発行するなどの資金調達に係る諸施策が受けられます。

また、諸々の経営革新計画の承認を前提とした補助金を受けることや、一部の補助事業については、経営革新計画に基づく事業計画が加点対象となるなど、補助金獲得の面でも恩恵を受けることができます。

補助金

経営革新計画の策定~承認フロー

経営革新計画はコンサルタントや中小企業診断士のアドバイスを受けながら策定することもできますが、企業独自で策定し、申請~承認を受けることもできます。

具体的には、東京都所在の企業であれば東京都産業労働局HPに掲載されている「経営革新計画に係る承認申請書」と、直近2期分の確定申告書一式、商業登記簿謄本、定款を東京都中小企業振興公社、東京商工会議所、東京都商工会連合会、東京都産業労働局などの窓口に提出し、審査を受けることになります。

留意しなくてはならないことは、受付は毎月1回のタイミングで行っており、修正・再提出などのプロセス(1~2か月程度)を経て、最短で審査に1か月程度を要することから、受付から結果がでるまで、2~3か月を要するものと思っておいた方が良いと思います。

したがって、経営革新計画を策定することを前提に資金繰りを組む際は、余裕をもって取り組む必要があります。

策定すべき計画の詳細は申請書をご覧になっていただければと思いますが、計画の大枠は以下のとおりとなっています。

経営革新計画申請書の構成
・当社の現状(既存事業の内容)
・本計画を作成するに至る「きっかけ」と経緯
・新事業の内容「自社にとって何が新たな取組であるのか」
・計画の実施「新事業をどのように実施するのか」
・計画を実施した結果はどのようになるのか

という流れで、既存事業と比べて、どこに新規性があるのか?や、他社と比較してどこに優位性があるのか?という点がポイントとなります。
また、その計画の実現性も精査されるポイントで、何をどのように計画を実践してゆくのか?という点が重視されるようです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は、新規事業をはじめようとしているスタートアップや中堅中小企業にとって、承認されることで多くの恩恵をうけることができる経営革新計画についてご説明しました。

先ほどもご説明しましたとおり、本計画は自社の経営戦略の中枢となる新規事業に係る計画なので、本質的には自社で策定することが望ましいと思われますが、一方で、客観的な視点で計画を確認し、「壁打ち相手」としてコンサルタントとともに計画を策定するのも一考かと思われます。

また、コンサルタントは様々な会社の計画策定に関与してきた経験があるので、不慣れな自社リソースで複数回のお役所との往復や、最悪不承認という非効率を避けるためにもコンサルタント起用も検討してみるとよいかもしれません。

いずれにせよ、本計画承認によるメリットはかなり大きいことから、新規事業を計画されている企業は、本計画の申請を検討してみてもよいのではないでしょうか?

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