バチカン大使が司教の政治的暴走を支持?(平成19年10月24日)
(画像はカステッロ大司教。カトリック中央協議会HPから拝借しました。ありがとうございます)
「政治に直接介入することは聖職者ではなく、信徒の役目である」
とするカトリック教会の教義(カテキズム)に反して、日本の教会指導者である司教たちが反天皇、反ヤスクニ、改憲反対など政治活動を展開していることについては、「正論」その他の拙文で問題提起してきましたが、ここへきて新たな展開が生まれています。
バチカン大使が司教たちの政治的暴走を支持するかのような挨拶をしたというので、信徒間に波紋が広がっているのです。
問題となっているのは、6月18日のローマ教皇庁大使館カステッロ大使(大司教)の挨拶文です。
2007年度の定例司教総会が開催されるにあたって、日本の司教たちに対し送られたもので、司教たちの「異端化の本丸」ともいわれる正平協(正義と平和協議会)のホームページにその抜粋が載っています。
〈http://www.jccjp.com/#anchor-Msg-Ambassador-Vatican〉
大使は挨拶文の中で、新・教育基本法や憲法改正手続法の成立について、世界の多くの人々が、言論の自由や信教の自由が損なわれ、戦争放棄が人類の利益にとってそれほど重要でないことに取って代わられることを心配している、と指摘したうえで、司教たちが、政教分離の原則、憲法9条の重要性について、さまざまな明確な声明を出してきたことを賞賛し、支持を表明しています。
これに対して、8月に信徒から質問状が大使に提出されました。
質問は3項目で、「抜粋」ではなく「全文」を知りたい。教育基本法や憲法の改正は信徒の多くが支持しており、その中心には信徒の政治家がいる。大使の発言は明確な内政干渉で、日本の信徒に大きな分裂をもたらす。世界の多くの国が懸念しているという具体的事実はあるのか、というものでした。
大使の挨拶はバチカンの公文書というわけではなく、単なる挨拶文に過ぎません。であればこそ、「抜粋」が、カトリック中央協議会のホームページではなく、正平協のホームページに載せられているのでしょうが、司教たちは自分たちの政治的言動の正当化に利用しているようにも見えます。
もしバチカン大使が、ローマ教皇庁の代表という立場で司教たちの政治的暴走にお墨付きを与えているのだとしたら、大使の行動それ自体が教義に反することになりかねないし、バチカン国の外交使節代表という立場で日本の政治を批判しているのだとすれば、外交問題に発展することにもなるでしょう。
大使はほんとうはどのようなメッセージを、どのような考えで、司教たちに送ったのか。信徒の質問状から2カ月、大使からの返答はまだないようです。
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