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当分は御代拝が続く宮中祭祀?──今週土曜日に手術を受けられる陛下(2012年2月12日)


 私は霊能者でも預言者でもありませんが、昨日は朝からいやな予感がありました。

 建国記念の日ですから各地で奉祝行事が行われましたが、本来なら初代神武天皇の御即位を仰ぐ、天皇御自身による祭りが、中心的に行われるはずの宮中三殿では、すでに昭和23年以来、紀元節祭が中絶されて久しく、そのうえこの3年は陛下の御不例、検査入院のため、恒例の御拝さえ行われていないからです。

 昨年は30分、今年は1時間の精密検査が、午後に設定されればいいものを、午前中に行われ、そのため御拝はお取り止めとなったようです。

 天皇の祭りは、「およそ禁中の作法は神事を先にす」と順徳天皇の『禁秘抄』(1221年)の冒頭に明記されているように、歴代天皇がもっとも重視されてきたことですが、このところ、陛下のご健康問題や多忙なご公務の影響で、あるいはそのことを表向きの理由として、陛下の祭祀がしわ寄せを受ける事例が多々あります。

 そんなことから、もしかしたら、という予感が私の頭をよぎったのです。

▽1 「女性宮家」問題への影響はあるか


 そして、当たってほしくない予感が的中したというのか、昨日、行われた冠動脈の検査の結果、陛下は冠動脈バイパス手術をお受けになることになりました。

 報道によれば、1年前の検査で見つかった左冠動脈の前下行枝と回旋枝のうち、約90%の狭窄がみられた回旋枝について、やや進行している部分が見つかったというので、「従来の生活の維持とさらなる向上を目指して」、手術するのが適切という結論に達したのだそうで、今週土曜日に手術を受けられる、と伝えられています。
http://www.asahi.com/national/update/0212/TKY201202120119.html

 昭和の時代、無神論者を自認したという富田朝彦宮内庁長官は、昭和の祭祀簡略化の中心人物でしたが、歴史上はじめてとなる天皇の開腹手術を、長官として決断したことでも知られます。

 今回は開腹手術ではなく、それこそ過去の歴史にない心臓外科手術となります。陛下のご無事を、ご平癒を、祈らずにはいられません。

 同時に気がかりなのは、陛下のご入院が、目下、進行中のいわゆる女性宮家創設問題や祭祀簡略化問題などに、どう影響するのか、です。女性宮家創設論の表向きの理由は「皇室のご活動」の確保でした。祭祀簡略化もご公務のご多忙ぶりと関連しています。

▽2 9年前の皇太子殿下のご日程


 陛下は9年前の平成15年にも手術を受けられ、ご入院は3週間以上に及びました。

 今回も同じぐらいの期間、入院なさるとすると、その間の国事行為、ご公務、祭祀がどのようになるのでしょうか。

 具体的に振り返ると、15年1月16日午前、東大病院にご入院、2日後の18日午前、3時間40分に及ぶ前立腺全摘出手術を受けられ、2月8日午後にご退院になりました。

 ご入院当日、皇太子殿下に国事行為臨時代行に関する勅書のご伝達があり、ご退院から9日後、国事行為委任が解除された2月18日まで、陛下のご日程はありません。

 この間、2月4日には、皇后陛下がベルギー王子ロラン殿下と御所でお茶をなさっていますが、ご多忙をきわめたのは、皇太子殿下です。宮内庁のHPには以下のようなご公務の日程が載っています。
http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/02/h15/gonittei-2-2003-1.html

1月16日(木)
皇太子殿下 皇太子殿下に国事行為臨時代行に関する勅書のご伝達(受領)(御所)
皇太子同妃両殿下 天皇皇后両陛下に代わり,ご接見(農林水産祭天皇盃受賞者等),ご覧(業績展示等)(宮殿)
皇太子同妃両殿下 ご接見(アイスランド首相夫妻)(東宮御所)

1月17日(金)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(認証官任命式(9名))(宮殿)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(宮殿)

1月20日(月)
皇太子殿下 第156回国会開会式(国会議事堂)

1月21日(火)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(宮殿)

1月22日(水)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(信任状捧呈式(ジンバブエ,ギニア))(宮殿)

1月23日(木)
皇太子妃殿下 ご覧(第20回読売招待閨秀書展)(松屋銀座本店)
皇太子同妃両殿下 ご接見(赴任大使夫妻(大韓民国,チェッコ,エルサルバドル))(東宮御所)

1月24日(金)~1月25日(土)
群馬県行啓(第58回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会にご臨場,併せて地方事情ご視察)
1月24日(金)
皇太子同妃両殿下 東宮御所御発
皇太子同妃両殿下 ご昼食(ウェルサンピア高崎)(高崎市)
皇太子同妃両殿下 ご視察(特別養護老人ホーム恵風園,養護老人ホーム前橋老人ホーム)(前橋市)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(千明仁泉亭)(伊香保市)
1月25日(土)
皇太子同妃両殿下 第58回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会開会式ご臨席(群馬県総合スポーツセンターぐんまアリーナ)(前橋市)
皇太子同妃両殿下 ご昼食(群馬県庁)(前橋市)
皇太子同妃両殿下 群馬県総合スポーツセンターぐんまアリーナお立ち寄り(前橋市)
皇太子同妃両殿下 ご覧(フィギュアスケート競技)(群馬県総合スポーツセンターアイスアリーナ)(前橋市)
皇太子同妃両殿下 群馬県総合スポーツセンターぐんまアリーナお立ち寄り(前橋市)
皇太子同妃両殿下 東宮御所御着

1月28日(火)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(宮殿)

1月29日(水)
皇太子同妃両殿下 ご接見(離任本邦駐在エクアドル大使夫妻)(東宮御所)

1月31日(金)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(宮殿)
皇太子妃殿下 全国公立小・中学校女性校長会役員ご接見(東宮御所)

1月31日(金)~2月1日(土)
青森県行啓(天皇陛下のご名代として)(第5回アジア冬季競技大会青森2003にご臨場)1月31日(金)
皇太子殿下 東宮御所御発
2月1日(土)
皇太子殿下 大会概要ご聴取(大会組織委員会会長ほか)(青森グランドホテル)(青森市)
皇太子殿下 第5回アジア冬季競技大会青森2003開会式ご臨場(新青森県総合運動公園「青い森アリーナ」)(青森市)
皇太子殿下 東宮御所御着

2月3日(月)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(信任状捧呈式(トルコ,キューバ))(宮殿)
皇太子同妃両殿下 ご会釈(勤労奉仕団)(東宮御所)
皇太子同妃両殿下 晩餐(ベルギー王子ロラン殿下)(東宮御所)

2月4日(火)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(宮殿)

2月5日(水)
皇太子同妃両殿下 ご接見(赴任大使夫妻(オーストリア,スーダン,国際連合教育科学文化機関日本政府代表部,ギリシャ,モザンビーク,パプアニューギニア,ギニア))(東宮御所)

2月6日(木)
皇太子殿下 天皇陛下に代わり,ご接見(全国検事長及び検事正会同に参加の検事正等)(宮殿)
皇太子同妃両殿下 ご会釈(勤労奉仕団)(東宮御所)

2月7日(金)~2月8日(土)
青森県行啓(第5回アジア冬季競技大会青森2003にご臨場,併せて地方事情ご視察)
2月7日(金)
皇太子同妃両殿下 東宮御所御発
皇太子同妃両殿下 ご昼食(青森グランドホテル)(青森市)
皇太子同妃両殿下 ご覧(カーリング競技)(青森市スポーツ会館)(青森市)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(青森グランドホテル)(青森市)
2月8日(土)
皇太子同妃両殿下 ご視察(児童養護施設「藤聖母園」)(青森市)
皇太子同妃両殿下 ご昼食(青森グランドホテル)(青森市)
皇太子同妃両殿下 第5回アジア冬季競技大会青森2003閉会式ご臨席(新青森県総合運動公園「青い森アリーナ」)(青森市)
皇太子同妃両殿下 ご視察(三内まほろばパーク縄文時遊館)(青森市)
皇太子同妃両殿下 東宮御所御着

2月10日(月)
皇太子殿下 ご説明(チリ駐在特命全権大使)(東宮御所)

2月12日(水)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(宮殿)

2月13日(木)
皇太子殿下 天皇陛下に代わりご会見・宮中午餐(チリ大統領)(宮殿)

2月14日(金)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(ご執務)(宮殿)
皇太子殿下 国事行為臨時代行(認証官任命式(1名))(宮殿)

2月18日(火)
皇太子殿下 皇太子殿下に国事行為の委任解除に関する勅書のご伝達(受領)(御所)

▽3 9年前はご退院4か月後に祭祀復帰


 殿下は陛下に代わり58件の国事行為などをお務めになりましたが、その一方で、1月7日の昭和天皇祭、1月30日の孝明天皇例祭、2月17日の祈年祭の、陛下や皇太子殿下のお出ましは記録されていません。15年当時は宮内庁のホームページには祭祀に関する記載がなかったからです。

 宗教専門紙の「神社新報」によると、前年暮れのガン発見以来、医師の勧めによって、元旦の四方拝など祭祀のお出ましはお取り止めとなり、1月17日には持統天皇千三百年式年祭が行われ、掌典次長が御代拝、2月11日の臨時祭典は掌典次長の御代拝となり、ご退院後も、3月21日の春季皇霊祭・神殿祭は掌典長の御代拝で、陛下が祭祀に復帰されたのはご退院からほとんど4か月後の6月1日の旬祭からでした。

 今回も前回のようになるとすれば、国事行為およびご公務の復帰が早かったとしても、祭祀のお出ましは、6月16日の香淳皇后例祭にまで延びるのかも知れません。6月1日の旬祭は21年以来、ご代拝となっているからです。

 皇太子殿下のご日程がご多忙になるから、いまこそ女性宮家を創設せよ、という議論が高まるのでしょうか。その一方で、祭祀は当分、御代拝が続くのかどうか。天皇のお務めは何か、という本質論を抜きにして、です。

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