2022年参議院選挙公約比較(外交・安全保障編)

 どうも、来月7月10日に投開票を迎える第26回参議院通常選挙。今回から数回に分けて政党要件を満たす9党の公約を比較していきます。ロシアによるウクライナ侵攻によって安全保障環境は急激に変化しています。各党はどのような政策を掲げ、日本を護っていくのか見ていきましょう。

https://note.com/saito_masaki/n/ne5fab96fcd71

今年のトピック「防衛・軍事費GDP2%比」と「核兵器禁止条約批准」、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」

 安全保障についての公約で目についたのが「防衛・軍事費GDP2%比」と「核兵器禁止条約の批准」についての言及です。
 「核兵器禁止条約」とは核兵器を包括的に法的禁止する条約で2021年1月に発効されました。日本はアメリカの核の傘に入っているという理由から批准はしていません。
 「防衛・軍事費GDP2%比」はGDP(国内総生産)に占める割合でどれだけ軍事力整備が進められているかの目安にもなっています。現在日本の比率は1%弱といわれています。[1] 一方NATO諸国はGDP比2%を目標としています。また2020年の当時の米トランプ政権下でGDP比2%以上にすることを求められていました。[2]
 反撃能力いわゆる敵基地攻撃能力といわれるもので、敵国の基地に対して攻撃や反撃を行う能力のことで「専守防衛」と整合性が取れるのか論点になっています。
 さて各党の公約の中ではどのように明記されているのか、見てみましょう。

「防衛・軍事費GDP2%比」
 賛成
  自由民主党・日本維新の会・NHK党
 反対
  日本共産党・社会民主党・れいわ新選組
 明記なし
  公明党(予算の精査を行う)・立憲民主党(メリハリのある予算にする)・国民民主党(予算の見直し)

「核兵器禁止条約批准」
 賛成
  日本共産党・社会民主党・れいわ新選組(2021年衆院選公約明記)
 条件付き(オブザーバー参加)
  立憲民主党
 明記あり
  公明党(批准環境の整備明言)
 明記なし
  自由民主党(核軍縮は目指す)・日本維新の会(新たなテーブルを構築する)・国民民主党・NHK党

「反撃能力(敵基地攻撃能力)」
 賛成
  自由民主党・国民民主党・NHK党
 反対
  日本共産党
 明記なし
  公明党・日本維新の会・立憲民主党・社会民主党・れいわ新選組

 やはり護憲政党である日本共産党と社民党は軍事拡大については一貫して反対していることがわかります。意外なのは国民民主党が一步踏み込んでおり、これがどう有権者に映るかが気になるところです。
 自民党というよりか岸田首相はこの核軍縮は目指したいが大手を振って核禁止条約に入れないからこう言うような明記になったのではと感じてしまう公約の書き方だなと思いました。
 では詳しく各党の政策も見ていきましょう。

自由民主党

・自由で開かれたインド太平洋を目指すため、米豪印ASEAN、太平洋諸島、台湾と連携強化
 ・国連の改革 ・自衛隊員の処遇改善
 ・海上保安庁の体制拡充と自衛隊の連携強化
 ・安保上重要施設など土地利用を政府が把握するために「重要土地等調査法」を執行する

 政権与党として外交分野では諸外国との連携、防衛分野では自衛隊や海上保安庁の強化を目指していく方向性が見える公約となっています。

立憲民主党

・宇宙、サイバー、電磁波などの領域における能力強化、ミサイル防衛・迎撃能力など新たな脅威への対処能力の研究開発
・ハイブリッド戦への対応や戦力を無力化する能力の研究開発
・核シェア否定
・領域警備・海上保安体制強化法の制定

 現実的に防衛政策を組み立てようとしている所は意外に見えました。

公明党

・先進技術(AI、無人化)を取り入れた装備の早期実用化
・退官自衛官や結婚や出産等で中途退職した女性自衛官の活用
・AI等の新興軍事技術に対しての国際的ルール作りに積極的に参加

 公明党も意外な面から政策提言をしている所に驚きを感じました。自衛隊の人員に対しても向き合っている点や新技術を活用するも国際ルールに乗っ取っていく点は評価できると感じました。

日本維新の会

・核シェア容認 ・中距離ミサイル、軍事ドローン装備拡充
・「専守防衛」規定、解釈の見直し ・戦争被害補償法制の整備への議論
・自衛隊の地位向上 ・旧軍墓地の国立化 ・スパイ防止法制定

 日本を護っていくために現実的な政策を打ち出している感じがします。また戦争被害補償法制の整備や旧軍墓地の国立化など第二次世界大戦を向き合う意志が感じられる政策となっています。

国民民主党

・海上保安庁法と自衛隊法の改正(グレーゾーン事態への対処)
・情報収集衛星の質、量のレベルアップ

 自分の国は自分で守るという理念を基に政策を作っており、「核の傘」についても容認し、現実路線で政策を作っている所が見受けられます。

日本共産党

・ASEAN諸国と協力して東アジアを平和の地域を目指す
・「ロシアは侵略をやめよ」「国連憲章を守れ」で全世界が団結することを目指す

 日本共産党は護憲勢力、平和主義を目指す点でぶれてないと感じましたが、ASEAN諸国と協力して平和を目指すという点は評価できるなと私は感じました。

社会民主党

・戦争しない、させない外交力!

 特にありません。

れいわ新選組

・専守防衛と徹底した平和外交によって周辺諸国との信頼醸成
・国連憲章の「敵国条項」によって、敵基地攻撃能力や核配備など重武装は不可能

 周辺国との外交努力を目指していく基本方針は理解できます。気になるのは「『敵国条項』によって、敵基地攻撃能力や核配備など重武装は不可能」点です。これはどういうことなのか調べてみたらこんな動画が出てきました。

 山本代表が目指す点は経済重視・軽武装論理の上でこの公約を打ち出しているのではと思います。

NHK党

 ・核シェア容認かつ核武装も議論する方針
 ・日本版CIA対外情報機関の創設議論準備

 タブーなしの安全保障政策を行いたい意思表示の表れだと見受けられる政策だと感じました。

 9党の政策を書き出してみましたが、安全保障に関して軍備増強やインテリジェンス強化を打ち出しているのは
 自民党・日本維新の会・国民民主党・NHK党
強くは打ち出さないが現実的な折り合いを出してるのは
 公明党・立憲民主党
平和主義一本を打ち出しているのは
 日本共産党・社会民主党・れいわ新選組
この様な形で振り分けられるのではと思います。

最後に日米関係について

 日米関係について気になる点が一つあり、それは日米地位協定についてどう向き合う点です。それについて見てこの記事を終わりにしましょう。

日米地位協定改定
 賛成
 ・日本共産党(抜本改定)
 ・社会民主党(全面改定、おもいやり予算廃止)
 ・れいわ新選組(基地負担軽減や横田空域などの管制権の変更)
 ・国民民主党
  (見直し、横田・岩国基地空域管制権の返還や米軍人、その家族の日本  
  国内法の順守)
 ・日本維新の会(抜本的見直し)
 ・立憲民主党(改定・改革を進める)
 一部改定
 ・公明党(凶悪犯の起訴前身柄拘束移転の明記検討など)
 ・自由民主党(日米地位協定のあるべき姿を目指す)
 明記なし
 ・NHK党

 野党6党については見直しを目指すと明確に示しており、また公明党は具体的な分野を示していました。自民党は何をどうしたいのかが書かれていませんでした。この部分は私的には評価できないと感じました。

 以上外交・安全保障政策の公約比較でした。

参考サイト
[1]

[2]

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