プレイヤーの目線で成功を導く:ボードゲーム制作のテストプレイ戦略
ボードゲーム制作の醍醐味は、制作過程でのテストプレイにあります。
実際、多くの制作者は制作時間の大半をこの重要な工程に費やします。
『テストプレイなんてしてないよ』というゲームまで登場するほどです。
テストプレイを中心に据えた企業や団体も存在します。
今回は私が手がけたアブストラクトゲーム『CIFRA』や、運営中のオンラインカードゲーム『東方リキャストリフト』を例に、テストプレイの裏側に潜む思考プロセスを探ります。
なぜテストプレイを行うのか
テストプレイはゲームの正常な進行を確保するための重要なステップです。
ゲームの完成度によって、チェックポイントが変わってきます。
漠然とテストプレイしてはいけません。
目的を持ってテストプレイを開催しましょう。
テストプレイは目的別に、階段を上るように段階的に進みます。
作品を準備したらスグにテストプレイしよう
当たり前のことですが、ゲームなしにテストプレイはできません。
しかし、そのゲームは完成している必要はないのです。
テストプレイはちゃんとゲームが最後まで遊べるか調べる場でもあります。
作品の準備ができたら早速テストプレイです!
もっと完成度を上げてからとか考える時間は無駄なので、とにかくテストプレイしましょう。すべてのゲーム制作はテストプレイから始まります。
テストプレイは段階によって目的が異なります。
その段階の基準は、作品の完成度です。
ざっくり簡単に完成度順の目的を掲載します。
思いつき段階:ゲームは最後まで遊べるか? 自分が好きなゲームか?
コンセプト段階:メカニクスを何に絞るか? 似たゲームは無いか?
面白さ段階:テーマは何か? 遊んで気持ちいい箇所はどこか?
遊びやすさ段階:ルールブックだけで遊べるか? 難しい所は無いか?
リプレイ性段階:また遊びたくなるか? プレイ感は重いか軽いか?
バランス段階:特定のプレイングに収束しないか? 導線はあるか?
拡張性段階:第二弾を出せるか? プレイ人数の幅を増やせないか?
ターゲティング段階:どんな場で遊びたいか? 誰と遊びたいか?
コンポーネント段階:大きさや重さは安全か? 制作費はいくらか?
広報段階:買うならいくらか? 何個くらい頒布できそうか?
この記事では10段階に分類しました。
後に行くほど遊んでもらう人数が増えます。
1~3はブレスト中心、4~6が試行錯誤、7~10は営業です。
『CIFRA』の場合は50人にテストプレイをお願いしました。
それなりの形があるテスト版はだいたい4の段階で作ると良いです。
コンポーネントの手触りはゲームの感想に直結します。
人を集めよう
テストプレイは一人で行うことが難しいため、必ず第三者の目が必要です。
テストプレイのためにチームを編成するのを見かけますが、テストプレイの段階によってメンバーをその都度かえた方が良いと思います。
なぜなら、テストプレイに参加し続けた人は、第三者の目を失うからです。
良くも悪くもデザイナー寄りの目線でゲームを見るようになります。
テストプレイで最も重要なのはプレイヤーの目線です。
だからといって、ゲームデザイナーを呼ぶな、という話ではありません。
ゲームデザイナーでも最初はプレイヤーです。
とはいえ、10段階を順番にやるのではなく、いくつか連続する順番のところはまとめてチェックしても大丈夫だと思います。
人によって出てくる意見が違うので、互いに自己紹介をしてから、後でテストプレイの目的を伝えると良いですね。
目的の開示は意見を偏向させるので、伝えるかどうか慎重になりましょう。
『CIFRA』制作の際は学童保育にお邪魔して小学2年生~6年生の子どもたちに遊んで頂きましたが、さすがにこの場で拡張性やコンポーネントについて質問することはありませんでした。
どんな人に遊んでもらうか、というのが大事です。
段階ごとにどんな相手が良いのか考え、目的に合った人を集めましょう。
時間と場所を確保しよう
都心部ではゲームのテストプレイ会が開催されています。
地方ではテストプレイ会が無いので、ボドゲ会に持参してもテストプレイと聞いただけで遊んでくれない場合がほとんでです。
都心部のテストプレイ会はけっこう同じメンバーと顔を合わせる機会が多いですが、彼らは有識者なので確度の高い意見を頂けます。
思いつき段階から飛び込みたい場です。
そうしたテストプレイ会の場では、せいぜい1作1時間が限度です。
それ以上の重たいゲームを作る場合は、テストプレイ会はふさわしくありません。他にもテストプレイしたい人がいるでしょうからね。
現在『シルクロードの詩人たち』という約4時間くらいの重ゲー制作に関わっているのですが、こちらは休日にUdonariumでテストしています。
時間がかかるテストプレイほどオンラインが適していると思います。
『東方リキャストリフト』は1戦10分ほどですが、2人用対戦カードゲームというジャンル柄、2戦目の方が確実に面白く感じられるし、2戦目はめちゃくちゃ頭を使うから思考時間を含めて30分くらい掛かるゲームです。
1回遊んでも終わりじゃないゲームは重たいゲームの仲間だと考えているので、『東方リキャストリフト』もオンライン中心でテストプレイした結果、そのままオンラインのボードゲームにしちゃいました。意外な解。
おかげで『東方リキャストリフト』のDiscordメンバーは今や80人です。
Thank you!!
みんなで遊べる『東方リキャストリフト』はコチラ