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「絵師」と「イラスト生成AI」の不和を考える その1(作曲の事例を交えて)

 初めに、ある問いかけをします。
ピンと来ない人が多いと思うので、順を追って記述していきます。

問題提起:
「①AIの関わらない、②トレース素材がかなり充実して、③ゲームパッドなどでゲーム操作的にイラストが作れる――そして生み出されたイラストの権利がユーザにある――というツール」がこの世に生まれる前に、実用レベルのイラスト生成AIが生まれてしまった。
 これがイラスト製作者とAIユーザの溝をより深いものにしている一因ではないか。



 この記事は、僕(一人称は僕で通させていただきます)のAIへの感情的な部分と、界隈の空気感などを混ぜて話させていただきます。

……まあ、"界隈"というざっくりとした括りを使うことの認知のズレなんかは怖いところがあるのですが、今そこをクドクド話すことが後述の理由で難しいため、「僕のSNSなどの観測上のざっくりとした認識」程度に思ってください。


筆者と生成AIの関係


 イラスト生成AI、皆さんはどう思いますか。

 もし、イラスト生成AIを当たり前に使っている人が読んだら残念に思うかもしれない“感想”を書きますが、僕は生成AI(イラストに限らず、創作全般)に関して嫌だなと思う感情がありました。
(過去形、現在は少し違った考えを持っている)

 一方で、直接創作とは干渉しない形でAI技術を用いたツールは使っていたりします。また、自分の望む、望まないに関わるらず、youtubeがAIを使って管理している動画たちを観たりしているので、AIと関わらない生活はないと思っています。
(例えば:Youtubeが使用楽曲の収益を原曲に還元してくれるシステム、問題もたくさんありますがあれにクリエイターが支えられている面や二次創作のしやすさに繋がっていると思います)


 その上で

 イラストレーターの文脈とAIが適合できていないと感じているのです。

「感情論だよ」と言って終わらせるのは望ましくなく、自分の考えを詳しく述べさせてください。

 クリエイターとしての自分の立場をまずは語らせていただきます。

2024/6/21追記
 尚、以下に語る生成AIの所感は、追記現在の生成AIの感情ではなく、少し前の、既存イラストレーターにかなり寄った意見であることを留保してください。
元々
イラストへの著作権周りの歴史的経緯への敬意
『"引用"に対する過剰な嫌悪』への冷めた目、一部界隈の納得のできなさ
の両方を自分の中に抱えて界隈を見ていました。

 その上で、両方に触れて記事を書くことが後述の理由で難しいために、「歴史的経緯への敬意」を優先して文章を記述しました。ご了承ください。

闘病生活


 僕は5年以上前から闘病生活の身です。

 闘病生活前から舞台パフォーマンスなどの表現者ではあったのですが、2017年頃から体調が著しく悪くなり、一度創作をやめました。

 その間、"色々"あったのですが、その"色々"はおそらく「生成AI」に関するトピックとしてこの記事を読みに来た読者に回り道させすぎてしまうので、ここでは深く語りません。ただ、以下の状態です。
「病気は依然治っておらず、先行き不安で、年々体調が悪くなっている」

 ……さて、そんな中、2023年頃から、創作を再開しました。体調が(総合的は)良くなっていないのに、です。
 理由はいくつかあるのですが、創作しなくても孤独に身体が壊れて行くなら、
・自分の思いついた創作に実体を持たせたい
・創作の自給自足をしたい
・創作物を作って生きていた証を残したい
・自分の考えや感性が伝わって欲しい
・働けず年などあってもなお出費がかさむ生活の中、生産的行いをしたい
・もっと言うと、この活動で体調が悪い中でも「お金がかかる面白いこと」にアクセス出来る状況になれたり、助けの手が増えてくれるような状況を増やしたい……

 などなど。

 僕は主に以下3つの創作を2023/5-2024/5の間で行いました。そのうち音楽は比較的まだ続いています。
・小説
・イラスト
・音楽

 しかし、何年も中断していた創作活動を再開するのは、それだけでも大変で、何度も落ち込んだり諦めたりしました。

便利ツール」を求めて彷徨うようになります。

 当然、"AI"という選択肢がよぎるのです。
(ここで言うAIは、創作の"補助ツール"というニュアンスよりは、創作物の出力そのものに関わる"生成AI"やそれに準拠するものです)


 しかし、ユーザー、クリエイター両方の立場から生成AIに対して不快感がありました。2023年前半。Pixivの検索結果に大量にはびこる生成されたイラスト。正直「センスがない!」と言いたくなるFanzaのCG集……

今までアート、イラストの「人同士」の間で了承されていた著作権の、そして創作物を作る営みを度外視している「AIのイラスト学習の範囲、手法」に対する議論の散漫さ。

 それと“肩書き,名称”の問題。「AI絵師!? 書いてるのはAIであってあなたではないです」(今では見なくなった肩書きですが)
※2023年前半の意見である。

 などなどなどなど


 結果、ミュートワードに"AI"を設定して極力関わらないように。


 ……さて。

 それでも「AIを使う方が僕の幸せなんじゃないか?」と感じる場面に何度も襲われます。

 僕は前述の通り、身体が上手く動かない。普通ならなんでもない作業に痛みが伴う。
 闘病生活でお金もない――2022年、ストレスと痛みで死にたくなる夜に「どうせ死んでしまうくらいなら!」とネット上で散財して同人誌を買いまくったりしたのは、深く反省する点ですが――現在ほんとに貯蓄がない。

 そんな状態だと、創作の「助け」を求めても全然、声は届かないです。SNSでバズれるような使い方もできないので、つぶやきはこぼれ落ちていきます。
「病気に絡めた助けを求める声」は一歩間違えれば多くの人がミュートしたり見放すようになる「ネガティブツイート・ポスト」になります。


 ――生身の人間の助けがないなら、AIじゃない?いっそ生成AI界隈に入った方が幸せじゃない?

 何度かそういう発想になりました。とくに、最近はAIと気づかずに「なんかいいじゃん?」といいねを押してしまうイラストがたまーにあったり、「AIと生身の人間の合作」があったり……


 しかし、やっぱり僕の"センス・趣向"がそれを拒否するんですよね。

それに「あなたの創作物、AIでしょ!」って、AIを使っていない作品に対して言われたくない。


でも、絵を描ける体調じゃない……結局筆を折りました。


音楽とイラストでは創作に関して様子が違う


 ここまで、僕の「イラストとAI」に対する関わり歴を書いてきました。

 SNS(主に旧Twitter)でのイラストレーターの生成AIへの反応とも概ね一致すると思います(ちょっと主語がでかいが許して欲しい)。


 僕はイラストのほかに、音楽と小説という表現、創作もしてきました。小説に関しては筆を折るか悩んでいるような状況です。


 一方、音楽――とくにDTMというPC上で作曲などをする「打ち込み音楽」は続けられています。
(収益は現時点で全くのゼロですが)

 DTMのコミュニティにも参加しており、旧Twitterの「おすすめ」にもDTMerの作品やつぶやきが流れてきます。
(ところで、"X"のおすすめ、色々酷くないですか? ……趣旨がズレるので、これ以上言及しませんが)

 すると、あることに気づくのです。


「(既存の)絵師・絵描き・イラストレーターの方々より、DTMerの方がAI…さらに言うと生成AIを受け入れてる人が多いぞ」

 なお、ここで言う"受け入れ"にはかなり注意が必要です。

「作曲することそのものへの生成には"AI"(sunoAIなど)を使わず、動画を出したり、Twitter上で"楽しむ"時に『イラスト生成AI』を使う人が増えてきているな」という感覚です。


 結構、AIへ複雑な気持ちを抱いている自分には驚きでした。

(なお、自分の"音楽"作品として作曲部分で生成AIを使うような人はぜんっぜんいないので、そこの認識は間違えないでください)

 その理由を自分なりに考えて見たのです。


 どうやら、自分が闘病生活の身でもなんとかDTMerとして活動できていることと、関係があるのでは?と考えるようになりました。


 さて、イラストを諦めた自分が、今音楽をやれている理由――それもギリギリなのですが――は、とても重要です。何が重要かと言うと、以下3つがあります。

1.「イラストにはない技術提供が音楽、DTMにはある」
2.「著作権の空気感がイラストと違う」
3.「AIの絡まない"自動生成"に音楽は適合しており、その歴史が長い」

 2と3に焦点を当てた記述が出来る体調が今ないため、1を中心に話させてください。その記述の中に2と3の内容も少し含めます(後日、記述出来たらいいな)。

作曲

 僕はDAWで作曲をします。この時、様々なプラグインソフトウェアシンセサイザーを扱うことが出来ます。そしてありがたいことに、リズムやメロディに関して膨大なプリセットが存在します。

 これらを使った曲作り例を提示します。

『ドラムパターン1、ドラムパターン2のプリセットをセットします。その後、ドラムのパラメータを自分でいじり、各ドラムにリバーブなどのエフェクトをかけて、パターン1とパターン2を合算させます。
 次に、メロディをMIDIシーケンサーを使って作ります。この時、メロディは手打ちで入力しても、MIDIツールの機能で設定した条件でランダム生成しても、どちらでも良いです。
 シンセサイザーを呼び出し、音色を調整して、MIDIシーケンサーと接続します。
 そして、メロディとリズムを合算し、上手く1つの音楽になるよう音量や音色、テンポなどをMIXします』


 このような過程で生まれた音楽は、「作曲:彩色彩兎」と宣言して構いません。もちろんプリセットやアプリを制作したクリエイターにリスペクトは持ちつつ、曲の権利者、著作権者は自分なのです。


 そして一番大切なことは、上記作業を「iPad1台で実現でき、トラックパッドの操作で完結出来る」という点です。

 闘病生活を送っている僕は、椅子での作業というのがほんとに辛い状況です。普段、ベッドの隣に机を置き、アームスタンドを机に設置します。
 タブレットをベッドから仰向けになって目視できるようにします。
 目が良くないので、ある程度目と画面の距離を離した上で文字や画像が「拡大」できることが重要です。
 手を伸ばしての画面タップが(ほぼ)できないので、トラックパッドで操作することになります。


 以上が、今僕が音楽で創作できている理由です。
 ――ただし、それでも最近は限界を感じていますが。iPadが古く、マシンパワーが足りていないのと、それを補うツールを購入出来る懐の余裕がないです。


イラストを"作る"

 上記「作曲」の流れ、方法を「イラスト・2DCG・3DCG」に当てはめた時はどうでしょうか。

 一番近いのは「主人公のキャラメイクができるゲーム」です。モンスターハンターワールドや、黒い砂漠、ポケットモンスター スカーレット/バイオレット などがイメージに近いでしょう。

 しかし、それらは自分の創作性を主張できるほど素材の組み合わせが豊富ではなく、またゲーム側も「権利はゲーム側にある」と判断しています。


 僕は以下のようなゲームを求めています。

1.キャラメイク・ポージング・撮影に特化
2.イラストの描かれ方・系統を複数から選択できる
3.出来上がったものを自分の創作物として発表できる

(キャラクリエイトではないですが、建築ではある意味理想に近いものが発売、提供されています。マインクラフトです。)

 もしかしたら「3Dキャラメイキング」に関しては、僕が使用しているタブレットが古いために恩恵が受けれていないのかもしれません。
 iPad版「VRoidStudio」に手持ちのiPadは対応していないのです。
https://apps.apple.com/jp/app/vroid-studio/id6449727674

 2Dイラストに関しても、技術的には「コントローラーの操作で素材選択やパラメーターをいじり、画風もたくさんの中から選択して、イラストを作成する」というのも可能でしょう。

 ただ、(3Dも含めて)今議論が続いている段階で、なかなか前に進んでいない、といったところでしょうか。

 ゲーム内創作物の権利の話題は、Youtubeチャンネルの「ゲームさんぽ」の利用規約、著作権の回がわかりやすいです。
https://youtu.be/y2bWTvqfMro?si=9DzW_9WMPAkDr8kb

AIを使わなくても、素材の組み合わせ(時にはランダムに組んでも)とパラメーターの調整によって自分の創作とさせてくれるツール」は、音楽では提供され、アニメ系イラスト作成には現状ないのです(合ったら教えてください)。


 そして、作曲法に関して上記例のように曲を作っている人々にとっては、この「現状存在しないツール」の代わりに(ほとんどの人は存在しない上記ツールを意識してないでしょうが)、「生成AI」と「自分で"筆"を持って描くこと」を天秤にかけたら、「生成AI」側に行く人もそりゃいるよな。と思うのです。


まとめ

 本当は以下も絡めて記述したかったのですが、体調が許してくれないので省略します。(以下10項目)
・サンプリングの文化
・DJ
・MAD動画
・ボーカロイド
・音楽におけるコード進行とイラストにおけるトレス、及びその範囲の著作権
・演奏と"再現芸術"としての音楽と、イラストにおける模写
・十二音技法と"退廃芸術"と第二次世界大戦と亡命
・文章、小説、翻訳の立場から見た話、物語論
・芸術とコミュニケーション
・学校教育と芸術

 ……確実にここまで書いた文章より長くなる。


 改めて、冒頭に問題提起した文章をここに提示します。


「トレース素材がかなり充実して、ゲームパッドなどでゲーム操作的にイラストが作れる――そして生み出されたイラストの権利がユーザにある――というツール」がこの世に生まれる前に、実用レベルのイラスト生成AIが生まれてしまった。
 これがイラスト製作者とAIユーザの溝をより深いものにしている一因ではないか。

 ……そんなことを考える日々です。


 この記事は一旦ここで締めます。結局書けなかった音楽とイラストの著作権感のズレや、歴史の遷移など、今後体調がマシな時に書けたらなあと思っている次第です。


2024/6/3追記

「まとめ」の絡めたかったトピックに以下を追加。
・ゲーム実況が濃いグレーからホワイトになった経緯とプラットフォーム
・トレス素材の提供といいつつ、それは髪なし素体……場合によっては目鼻口なし素体であること、それが一般的なボーダーになってることへの"危惧"
・ジャンルごとの引用の歴史と現状
・ザル翻訳と通販による変な文への"耐性“


2024/6/12追記

 音楽を"続けられている"と書いたが、実のところは
「小説も辛いが、音楽制作はより辛くほぼ諦めかけていた。
 しかし、2024/3に『Poly2』というSynthesizerに出会えて音楽が上記手法によりある程度作れるようになった」
がより正しい。

 日本語で「(身体不自由な人が)iPadとトラックパッドひとつで作成」できるような解説をしてくれている人は先ずいない。今後、自ら書きたい。

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