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アニメ表現(省略の可能性)

アニメ映画について話していこうと思う。
まず前提として、映画の尺は基本2時間程度である。映画の内容は作品によってさまざまであるが、一か月間であったり、一年間であったり、何十年間であったりを描く。そのため、その世界の中での時間を実際に映画にするには、いらない時間を省く必要がある。そこで重要なのはどのように要らないシーンを削るのか、どうやって必要な情報を少ないカットで観客に伝えることができるかだ。今回はその点についてアニメに限って話していく。
これから、例としてラピュタを使っていく。

<目線、画面の工夫>
とても当たり前のことかもしれないが、a君が何か対象に対して目線を送る、これによって次のシーンにその物体をもってこれる。
例えば、ラピュタの最初のシーン。ドーラたちがシータの乗っている飛行船を発見した場面。乗員の一人が指をさす。(これによって観客は何か標的を見つけたことを理解する。さらにキャラの恰好から悪者?とも感じ取れる。
もう一つ言えば、ドーラがピンク色のツインテールなのは、覆面を被った時にこの画像のように誰がボスなのか理解できるからだ。)

次のシーンでドーラの後ろからのアングルになる。
(このカットのみで目標が船員の目線の先にある飛行船にあることが分かる。さらにこのシーンで初めて銃を腰につけていたことが分かる。
これによって敵キャラと観客は認識する。)
これで観客はこれから船員はこの飛行船を攻撃すると予測できる。
予測できなくても、次のカットで飛行船を攻めるところが出てきても、見ている人は違和感は感じないであろう。当然の流れだと観客は感じる。

このように本来この状況を言葉で説明すると、数行必要であるが、工夫したアングルで絵にするとたった二つでこれを説明できる。ちなみに、この作品はシータが飛行船から落下して映画のタイトルが出てくる約4分間の間に会話はほとんど出てきていない。自分は意識してこの作品を見たことがなかったので何回もロードショーを見てやっと気がついた。おそらく、これを見ている人も気づいていないのではないだろうか。
それぐらいセリフがなくても違和感がなく、さらにこれから始まる物語のあらすじさえも我々は理解できてしまっている。
宮崎駿、恐ろしい…。
これを可能にしているのはアングルと目線である。要するに目線で会話をしているのだ。

次の例。
本当はこのnoteを見た後に実際にラピュタを見てくれると分かりやすい。

標的を見つけたドーラは、飛行船に向けて飛び出ていく。
ここで目線によるシーンの入れ替わり(ここでは時間軸と言いたい)が起こる。

ドーラの視線⇨目的の飛行船⇨飛行船の一つの窓⇨シータ
、と移り変わる。ここからシータの船内での時間軸に変わる。
シータの時間が開始される。

少し経ってシータがふと窓の外を見る。ここでまたシーンが移り変わる。
シータ、外見る⇨窓から見た外の景色⇨ドーラ達の乗り物が雲から出てくる

これによって「ドーラ達が攻撃する時間軸」と「シータ達の船内の時間軸」の合流(同じ時間が流れる)が行われ、2つの世界線がつながることで一気に作品の盛り上がりを引き起こさせる。
ドーラからの視線によるシータへのシーンの受け渡しから、最後シータによってドーラに視線のお返しが行われていたのだ。

目線によるシーンの受け渡しはとてもスムーズで違和感がなく、場面を変えるのにうってつけの方法である。


ラストの例。

シータが飛行船から落下するシーン。ここでも時間軸の合流が行われる。

シータがだんだんと落下していくのだが、ここでシータが落下している所の下の町に注目が移り変わっていく。

シータ、落下⇨下の町⇨一軒の店⇨そこにいるパズー

シータの落下と視点の落下(徐々に下の町に視点が移る)で場面をつなぐ。
これも最終的にはパズーがシータが落っこちているのに気づくことによって、「シータの落下の時間軸」と「パズーの日常生活の時間軸」の合流が行われる。これのすごい所は、これによって登場人物の紹介を省くことができることだ。ストーリーに沿って進みながら自然に二人を出合わせられる。お互いのストーリーを持ちながら出合わせることができるのだ。しかもシーンがぶつ切りされることなく。
これまでの流れを言葉で表現しても、
落ちていくシータの下にある町の一軒の店に出入りするパズーが仕事中にシータを発見する。
となり、一連の流れがあることが見て取れる。

このように2つの時間軸を平行して進めさせ、最後に合流させることによって、本来はシーンをカットしまくっている映像も一つの流れを持った物語として映すことができるのである。
この一連の流れを意識して作っているのか、無意識にやっているのかわからないが、アニメ監督というのは凄まじい。

時間があれば次はアニメ独自の表現(表現のデフォルメ)について書こうと思う。

関係ない話だが、今期待できるアニメ監督が宮崎監督しかいない。
自分がアニメを全然知らないせいもあるが…。
面白い監督を知っていたら教えてほしいです。

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