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呼吸する団地_青写真

#01 言葉が降ってきた

コロナ禍あらゆる価値観が変化している。それは僕たちの暮らしの変化に起因するところは大きいだろう。
僕自身、コロナにより、仕事、友人、コミュニティ、生活圏、趣味、思考変わらなかったものは何1つない。

昨年1年間、僕はたくさんの人の力や想像力を借りて、いくつかチャレンジをしてみた。今までこういった活動を行なってこなかったため、一種の疲労感がたまり、終わった頃には小休止状態になってしまっていた。
そんな時、ふと娘と立ち寄った、吉祥寺のとある小さなアパートの前の公園で大切なシーンに出会ってしまった。

日曜日の午後。
公園にはたくさんの家族づれが遊んでいる。
そして、公園の目の前のアパートには小さな軒下のカフェやギャラリーとそのお客さんが思い思いな時間を楽しんでいた。

はっとした。
そうだった、僕はこれが作りたかったんだ。
ちょうどいい距離感に子供と大人がいる、お互いは関係していないように見えて、実は絶妙な調和がとれている。それは、「全てが届く範囲にあった、幼少期のまちの風景」だった。

ほとんど同時に2つの言葉が降りてきた
「呼吸」と「団地」

僕の小学生時代の大半の思い出は団地だった。当時、団地によって育くまれた感動や気持ちは今でも色褪せず胸に残っていて時折顔を見せる。そして、どうしたらあの時代に感じていた安心感をこの時代に作れるだろう。そんなことを思ってしまった。「強烈に作りたい」。

#02 イマジネイションから始める

イマジネイションは、新しいものをつくり出す創造的な構成力・創作力を指す言葉だ。つまり、エネルギー体なのだろう。
また、このエネルギーはある一定の人々と共有されることで、形を成すものでもあるようだ。

その状態をビジョンと呼んだりもするらしい。ビジョンは、その規模に必要とされる一定人数まで伝搬し増幅を繰り返し、やがて大きなうねりとなりこの世界に具現化していくのだろう。

そう考えると僕が作り出したいものも想像することが具現化するための1番の道なのだろうと思い至った。
そうして、フィクションではなく、これから起していくイマジネイションが
読む人の頭の中に建設され、増幅され、伝搬していく媒体となってビジョン化していく、まずはそこを目指そうと思う。

#03 コンセプト

これは今から10年後の2031年のある日常

東京都心から少し離れた郊外に変わった団地がある。駅から自転車で20分、バスで10分の場所にある団地。決してアクセスが良い場所ではないのに、この団地は常に入居待ちの人気物件だ。かくいう僕も、2年待ってやっと先月入居したひとりだ。

団地の名前は『さくら団地』。
大きな公園を中心に12棟の団地で構成されており、1棟あたり50戸、合計で600世帯がここで暮らしている。団地としては少し小さい規模だ。と、ここまでは、どこにでもある平凡な団地だ。

ただこの団地のシステムは常識外れものが多く、それがこの団地の特徴、魅力になっている。今日はコンセプトを中心に概要を紹介してみようと思う。

呼吸する団地

この団地のコンセプトは「呼吸する団地」。呼吸は吸い込んで、吐き出す、2つの行為がある。これを生活に置き換えると、稼ぐこと、暮らすことの両輪になるわけだ。

暮らしのための団地サービス
この団地ではあらゆる暮らしに関わるサービスが提供されている。例えばwifi・携帯電話から始まり、保育所、学童、学校といった子育て関連から介護サービスとその提供サービスは日々拡張しているようだ。
またハード面だけでなく、インターネットのバリアフリー化を目指す、コンシェルジュサービスなんかもユニークなサービスだ。これはインターネットに対する知識や習熟度が低い人でもその恩恵にあずかれるよう、オープン当初から一貫して力を入れて運営されているサービスのようだ。

わかりやすい料金設計
住むために欠かせない家賃、そこにも独自の考えが見える。それは家賃は月額性で、敷金・礼金は発生しない点だ。そして家賃には予めwifi、携帯料金が含まれている。なんでも、煩雑なやりとりや料金を、団地を1つの契約主とすることで、料金が引き下げられ、集合住宅のメリットが提供できるからだそうだ。後述するが、共益費は全て家賃に含まれている。

健全な介護生活
暮らしに関連してこれだけ特筆しておきたいと思った。公園から少し離れた2棟に在宅介護者向けの居住エリアがある。
これらは福祉施設ではなく、ハードもソフトもバリアフリー化された、住居だ。居住者に対しては、団地が運営する訪問介護サービスが提供されている。これにより共同体として、団地での生活リズムを保ちながらも、介護される側(親)、介護を依頼する側(子)にとって罪悪感がない健やかな暮らしを提供することができている。

特定の年代だけに絞るのではなく、介護といった個人ではもはや抱えきれない課題を団地という枠組みで支えることで、団地の収益性も担保しつつ、住人の安心を目指す考えがこの介護サービスに込められているようだ。
さて、では次はは暮らすの反対の「稼ぐ」について説明をしてみよう。

健全に稼ぐ仕組み
団地の1階部分は一部のエリアを除き、商業スペースや、共用スペースになっている。商業スペースのほとんどは、ここで暮らす住人にめがけて営まれている。一部を紹介すると、パン屋が2軒、お花屋さんが2軒、ランドリーが10箇所、美容院3軒、歯医者さん3軒、他にも飲食店やカフェが6軒ほどある。(まだ全部回れていない。。。)
それぞれの業種には上限数があって、その数はこの団地が持つ消費力に比例しているみたいだ。

そして、このテナントスペースは常に満室だ。
なぜならば、商いを始めたい人にとってこのテナントはたいへん魅力的な場所だからだ。
まずテナント料、これは住民に対して必要となるサービスを展開する限り、収益ベースで月40万円を超えるまでテナント料を取らない取り決めになっている(驚くべき事実だ)。

また、団地が運営するラジオ、メディアなどを通して住民に対するプロモーションを団地がサポートする仕組みをとっている。当然、より住民に知ってもらうために、出店者が住民となる場合は特別な居住サポートなども用意しているらしい。

つまり良いものを提供する限り、この団地での商いは成功する確度が非常に高いといえそうだ。その証拠に、殆どの店主はこの団地に住み、住民の話を聴きながらサービスを洗練していくので、3ヶ月を待たずに黒字化をしていくケースが多い。
住民が好んで利用するテナントが増えれば住民の生活と経済両輪が回せることになり、呼吸する団地にとってテナントはとても重要な要素になっている。余談だが、この団地の住民のために作られたサービスは、団地以外の近隣住民にも好評でわざわざ隣町から来店する人も多い。それがこの団地の運営費に大きく寄与していることは言うまでもない。

稼ぎながら暮らすリモートワーカーの存在
公園近くの一区画にリモートワーカー用のスペースがある。(厳密には団地全体に5GのWi-Fiと貸出バッテリーがあるため、団地のどこからでも仕事は可能になっているが。)彼らのほとんどはフリーのデザイナーやエンジニアが多く、この団地での消費行動を支えてくれたり、子供たちを見守ってくれたり、ある時は遊び相手になってくれたりと、子供にとって身近な自由に働く大人のモデルケースになりつつあるようだ。
また、彼らの多彩なスキル、センスはこの団地のアセットやコミュニティを活用し新しい文化やサービスの開発にも寄与しているようだ。

とまぁ、こんな感じで、これからこの団地について紹介をしていこうと思う。

2031.3.30 団地暮らし始めたよ

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