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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#78

佐佐木 政治

ゆき暮れて 立ちどまる この純白のノートの前では
かつて如何なる物語も 荒野の一陣の砂煙を飾ったにすぎない
古代の英雄たちの世界征服譚も 消えるべくして
わずかな時の橋を 旗をおしたてて渡った風に過ぎない

大いなる努力か 馬の鼻づらに吊り下げられたにんじんと
果てしない並行線をたどったとしても
おゝ 否定の海がせり上がってくるだけだ
書きつける言葉は きまってエネルギッシュな波濤にかき消される

音もない 実体もない けだし底しれぬ 陥没の力に満ちた 
すすりなきのような音声の中へ 
ぼくらは引きかえす 

この純白のノートのふちへ手をかけることによって
いやそれのみによって 息を吹き返す
大いなる努力が無と引きかえにやってくるのだ


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。



>>>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<<< 

亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。