ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#99
佐佐木 政治
あなたの言葉は 極めて厳粛に ぼくらを見張る
ぼくらが秩序からはみ出さないようにと 手足にまといつく
言葉によってしか 障害の壁は打ち破れないと
言葉だけが 空飛ぶじゅうたんであるに違いないと 固く信じていたのに
あなたの言葉は絶えず戒厳会を敷いていて 恋人との逢瀬を許さない
あなたの言葉のじゅうたん爆撃は ぼくらの恋を路地裏でせん滅する
なるほどと 感嘆せずにはいられないほど
満ち足りたあなたが織り上げる 言葉のオサはぬきさしならないのだ
しかしときには あなたの粋なはからいがあってか
闇夜の同情があなたのオサの辻の光を潰す
敵がまさしく あなたの信号を踏んで立つときだ
そんなとき ひそかに闇に乗じたぼくらは 窓の窓をひらく
あの不思議な花粉の月光を浴びたあと
闇の跡がいつまでも生々しい傷跡となる 不浄の夜のことだ
父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。
>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<
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亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。