バイオリン
佐佐木政治 1956年10月2日 ノート「詩集 青い枯れ葉」より
木曽川の鉄橋に差しかかると
日本弦楽器製作所の門灯の下に
一台のハイヤーが止まっていた。
雨のために 車内はうすぐらく
赤いクッションの上に
真新しいバイオリンが一台置かれていた。
向こうのドアが開いていた。
だれかが来るのだろう。
特別注文のバイオリンに違いない。
駅ははるか 山麓の高台にある。
そこから又バイオリンは
遠い都会に はこばれていくのだろう。
そのためか
雨はしきりに降りつづき 川水は増していた。
昭和31年、当時25歳の文学青年が書いた詩です。
A5サイズの大学ノートはすっかり色褪せ、日に焼けています。
彼の文字とともに紹介していきます。
※みんなのフォトギャラリーから写真をお借りしています。素敵な写真をありがとうございます。
亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。