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情けない店。かっこいい店。

例えば、

・客が欲しがっている物を出す

と言うと、良いことのように聞こえるが、

・流行に影響される

と言うと、悪いことのように聞こえる。

商いにおいて、客の欲しがっている物を
把握し、それを提供することは、
基本的なことである。

一杯のコーヒーを、
客に出すとする。

昼飯を食べ終わった客と、
お茶をしに来た客に出すコーヒーは、
同じコーヒーだろうか?

コーヒーに差をつける、というのは、
客が欲しがっている物を出す、
ということだ。

さて。

商いにおいて、流行を把握し、
それを提供することは、
必ず効果があるわけではない。

一杯のコーヒーを、
客に出すとする。

最近の流行は、酸味の強い、
フルーティなコーヒーのようだ。

スペシャルティとかいうやつの、
浅煎りを出す。

客は、

「これが最近流行りのコーヒーか、
なるほど言われてみればこの酸味は、
フルーティだなぁ、なるほどなるほど」

などと言う。
そして、

「いやぁマスター、このコーヒーは
美味しいね、値段は少し高いけど、
こだわっているんでしょ?やっぱり、
ブラックで飲むべきだねぇ」

などと言いながら、
1分後には砂糖とミルクを入れている。

美味しいわけなどないのに。

コーヒーに限らず、
全ての人に受け入れられる物は
存在しない。

物は、

↑全人類皆大好き!
 ほとんどの人が好き!
 嫌いな人はあまりいない!
 一部の人は好き!
 マニアックな人なら好き!
↓全人類皆大嫌い!

の間のどこかに位置する。

まあそもそも論として、
人間が先か、物が先か、
みたいなところはあるが、
料理については、たぶん人間が先なので、
ここでは論じない。

コーヒーは料理である。

何言ってるかわかんない、
ってなっている人もいるはずだが、
コーヒーは料理である。

納得してくれない人もいると思うので、
ここでは、コーヒーは料理だと仮定する。

まず、焙煎済みのコーヒー豆を買う。
鰹節を買うのと変わらない。

次に、豆を砕く。
鰹節を削るのと変わらない。

湯を沸かし、豆に注ぐ。
もうおわかりだろう。

鰹節から出汁を取る。
コーヒーも出汁なのだ。

だいぶ話が逸れたが、
このまま行く。

コーヒー豆から取った出汁は、
主に3つの味を含む。

苦味、酸味、雑味、だ。
ちなみに鰹節は、旨味、塩味、雑味。

人が欲するのは、前の2つだ。
雑味は、あまり好きではない。

コーヒー豆にお湯を注ぐと、
まず苦味と酸味が多く出る。

その後、苦味と酸味が減り、
雑味が多くなり始める。

終わり頃には、雑味も少なくなり、
コーヒーの香りのするお湯になる。

コーヒーの美味しさは、
苦味と酸味のバランスで決まるらしい。

つまり、コーヒーを抽出することは、
コーヒー豆から雑味を取り除くことだ。

わかりやすく言うと、

いくらか抽出したら、
一度雑味の多い箇所を捨てて
(カップを変える)、
コーヒーの香りのするお湯を追加するか、
ただのお湯を追加する。

こうすると、雑味を取り除くことができる。

鰹出汁も、鰹節を煮すぎると、
まずくなる。
雑味が出るからだ。

ただし、この考え方では、
抽出時に、美味しさは変更できない。

お湯の温度で味が変わる、のは、
雑味の量が変わっているからだ。

コーヒーの美味しさは、
苦味と酸味のバランスである。

これは、焙煎度によってだいたい決まる。

深煎りだと苦く、浅煎りだと酸っぱい。

これだけのことだ。

さて。

←浅煎り   深煎り→

とする。

さっきの↑↓と組み合わせると、

     ↑

←                            →

     ↓

の座標軸ができる。

これに方程式を当てはめると、
上に凸の二次関数のグラフになる。

お山の形である。
お椀の形ではない。

コーヒーを客に出す人たちは、
お山のてっぺんを目指す。

つまり、万人受けする、ということだ。

そして、このグラフは、
流行に左右されない。

いや、左右はされるのだが、
必ず元の形に戻る。

例えば、浅煎りのコーヒーが流行れば、
お山のてっぺんが、少し左にズレる。

しばらくすると、元の形に戻る。

流行が終わったからだ。

今度は深煎りが流行るかもしれない。
そうなれば、お山のてっぺんは、
少し右にズレる。

しばらくすると、元の形に戻る。

流行はいつか終わるからだ。

たぶんスペシャルティの流行は
しばらく続くので、
当分は左寄りだろう。

不景気が続いて、上質な豆が、
手に入らなくなったら、
右寄りになるんじゃないかな?

流行を把握し、追いかけるのは、
間違いではない。

グラフが左寄りなのは事実なのだ。

ただ、個人的には、
流行に合わせて味を変える、ということを
したくはない。

なら始めから、味のバリエーションを用意する。

客に選んでもらうのだ。

私「ご注文はお決まりですか?」
客「ホットコーヒーで」
私「量はどうなさいますか?」
客「120mlで」
私「温度はどうなさいますか?」
客「95度抽出、90度提供で」
私「豆の産地はどうなさいますか?」
客「ブラジルで」
私「豆のグレードはどうなさいますか?」
客「トップスペシャルティで」
私「煎り度はどうなさいますか?」
客「フルシティで」
私「カップの柄はどうなさいますか?」
客「花柄で」
私「申し訳ございません、ただいま花柄は
  他のお客様が使用中でして…」
客「なら水玉で」
私「お砂糖はどうなさいますか?」
客「角砂糖2個で」
私「ミルクはどうなさいますか?」
客「生クリーム10mlで」
私「ビスケットはどうなさいますか?」
客「ロータスで」
私「…すいません、忘れてしまったので
  もう一回初めからお聞きして良いですか?」
客「…ホット120、95、90、ブラジルの
  トップ、フルシティ、水玉、角2、
  生クリーム10、ロータス」
私「かしこまりました。お時間20分ほど
  いただきます」
客「…なるはや、で」
私「なるはや、は追加料金をいただきますが、
  よろしいでしょうか?」
客「かまわんよ」
私「承知いたしました」

こんな具合だ。

これめちゃくちゃ面白いな。

めちゃくちゃ大変だけど。

追加料金でバンバン儲かるぞこれ。

C○C○壱とかでさ、300g2辛、とか
あるじゃん?そんな感じ。

でもさ、もし私がそんなお店始めたら、
めちゃくちゃ情けないな。

面白いけど、情けない。

この味!って味を出せないから、
選択肢を増やすんだろうな。

だって味に自信があったら、
選択肢なんかいらないじゃん。

これを飲め!って感じの方が、
かっこいいよね。

うわー、迷うな。
どっちにしよう。

難しいね。
商いって。

だからこそ、飽きない、
なんつって。

なんて情けない終わり方なんだ…

終わりに

いろいろ迷走しましたね。
最後の方、投げやりですね。

ちなみに、私は深煎りが好きです。
酸味が全くないぐらいのやつ。

そんじゃあ、今回はこの辺で。

またね。

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