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チューリップと向田邦子、母娘はじめての推し活

まさか、母と一緒に「推し活」をする日が来るとは思わなかった。

15歳の頃に地元にツアーで訪れたTHE ALFEEのライブを観たのをきっかけに、まあ色々なグループやソロアーティストのステージを求めて東奔西走し気付けばこの歳に。
ああ、ライブだCDだ遠征だ、といった道楽がなければ高級車が余裕で買えたかも……と意味のないifを語ってみることもある。
当然、後悔はしていない。

今もあれこれ好きなアーティストはいるものの、最もファン歴を更新し続けているのが「チューリップ」。
彼らを過去のグループという人も多いだろう。
とっくの昔に解散したんじゃないの?と言われたこともある(確かに一度解散し、再結成という形で活動している)。
私は解散間際にファンになったので、初めて生のステージを観たのは再結成後だった。
ある程度歴史を重ねたバンドのファンになると、まずは過去の音源を漁り、知り得るだけの情報を求めると思う。
インターネットのない時代、しかも地方だから情報源は雑誌やラジオくらい(テレビ出演は殆どなかったから)。
十代前半の心の吸収力ではとても足りなくて常に渇望していたけれど、悪い情報ばかり飛び交う現代よりも精神衛生上良かったのかも知れない。
しかしそんな時に解散の報せ。
間に合わなかったんだ、そんな思いは小さな傷として残った。
だから再結成と聞いた日には夢かと思ったくらいで、当然ながらツアーを追いかけた。
まさかこんな日が来るとは、ということで冒頭につながった。

娘がいろんなアーティストに夢中になっている姿を、母は多分微笑ましく(ある意味理解できず)見守っていたんだろうと思う。
地元のホールに車で迎えに来てくれた帰り道、「あーカッコ良かったー!」と騒ぐ私に「ハイハイ」と相槌を打っていた姿からすれば信じられなかったが、「お母さんもチューリップのコンサート行きたい」と言ったのが昨年の東京公演の後。
どういう風の吹き回しかと思いながらも内心とても嬉しかった私、とにかくチケットを確保したら、母の分のビギナーズラックか中々の良席。
財津和夫さんと同い年の母、この年齢になり親近感を持った模様。

コンサートはメンバーの皆さん年齢を感じさせないパワフルさと、決して無理はしないという良い意味での緩さがあって、何度足を運んでも飽きない。
母は楽しめてるかな?と思いながら居ると、見事に立ち上がってノリノリ。
「ラジオで昔聞いた曲が多かったよ!」「姫野さんのピュアな人柄がいい」とホテルに戻ってからも興奮冷めやらない様子で、なんだか母娘でこんな話をするの初めてかも、という推しトーク。
推しのライブに狂う娘を長年やってきたけれど、決して母はそれを否定してなかったんだな、ということが本当に嬉しかった。
また一緒に行く機会があるかどうかは追加公演の日程的に難しいかもわからないけど、今回一緒に行けたことで母娘の新たな関係性の扉が開いたのは間違いないと思う。

そしてもう一つの推し活。
これは別記事にも書いたけれど、私たちは向田邦子さんが大好き。
彼女ゆかりの喫茶店「西銀座ブリッヂ」さんにどうしても母と一緒に行きたくて誘ったら「是非行きたい」と。
こちらのお店でミックスサンドをつまみながら執筆していた向田さんに思いを馳せながら、名物のメロンパンケーキを2人でシェア。

カメラを向けずにはいられないビジュアル

中にはたっぷりのメロンの果肉と、さっぱりした風味のアイスクリーム。
うーん、美味。
念願のスイーツとコーヒーで、母娘で向田談議をする。
彼女が亡くなった時は「本当にショックだった」という母。
子供だった私はその新聞記事が妙に心に残っていた。
長い時を経て彼女の作品群に触れてからは、物書きの端くれとして敬愛してやまない存在になっている。
お店の外に展示されている向田さんの記事や資料に見入りながら、「なんであの時飛行機墜ちるのよ……」と二人して心の中で地団駄を踏む思いだった。
彼女だったら、忖度だらけで生きにくい今の時代をどう綴るのだろうか。

翌日は築地と東銀座をぶらぶらしながら、たくさん話してたくさん食べた。

築地本願寺。雲の形が後光みたい。
歌舞伎座と、バックに歌舞伎座タワー。
築地のちょっと高級なお寿司屋さんでランチ。
歌舞伎座至近の文明堂カフェは私のお気に入り。

チューリップと向田邦子、2つの推し活を楽しんだ。
もっとお互い若い頃に好きなものを分け合えたら良かったのかも知れないけれど、これはきっと「機が熟した」ということなんだ。
子供の頃はただただ厳しくて、私の同級生からは教育ママとして有名?だったけど、人生に困らないよう賢くあれ、と必死で育ててくれたのが痛いほどわかる(尚、本人は厳しかったことはすっかり忘れているとのこと笑)。

この歳になってなんだか親友みたいに遊べるというのは、なんて幸せなことだろう。

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