見出し画像

誤読のフランク(改訂版) 第3回 帽子の男達(RFA-02)

City Fathers  Hoboken, New Jersey(RFA-02)

これもパレードっぽい写真です。最初の表紙が表紙のバスから見ているものがパレード(もしくは火事)、次の窓から下を覗いてる彼らが見ているのもパレード。
そして、この写真は「町の偉いさんたち」という感じか。シティファーザーズ、彼らが立っているのはぎゅうぎゅうに詰まった広くはない場所で小さな手すりが付いてるような場所。背景が抜けていて、空が白く飛んでいる。
もしかすると何かのイベントの開会式とか、公的な祝賀パレードのようなものかも知れない。なにかの記念日かもしれない。

ひとつ前(RFA-01)で見つけたパレードか。

シルクハットと、厚手のコート。胸には花の飾り。彼らは威風堂々と、自らを称えるためにその場所にいる。同じ方向を向いて、壇上に立ち、なにかの式典が進むのを待っている。称えられる前か後かといえば、どこかしら興奮しながらも緊張感が感じられるので、何となく前のように感じる。
もしくは政治的に重要なパレードなのか、セントパトリックデーのように、社会的、コミュニティの維持の大切なイベントなのか、街の有力者たちは向かって左手の方を大切に凝視している。

例えば、いや、むしろこれはパレードだと言い切ってしまってもいいかもしれません。
本当かどうかは、実は関係なくて、この写真がパレードである事の方が前のページからの写真の繋がりとしては順当のように思える、ただそれだけの理由の独断だけど。それに、何となく軍事パレードみたいな厳かな雰囲気もある。

ロバートフランクのこのアメリカンズを見るときにある種の、政治的な部分というのは、あんまり語られてはないんですが、どうしても付きまとうものだと思う。そして、あえてそういった物を入れてこの本を作ったものだと思うんだけど、どうだろう。(言ってみれば表紙から政治的でもある)

なぜ政治的なものを入れるのか。
社会を撮ると図らずも政治的なものも映り込む。また、政治的なものを極端に嫌う日本のような社会の方が奇妙であったりするが、それさておき。

ちょうどロバートフランクがこの写真を作るために旅をした時期っていうのは一種の政治の季節だった。1950年代中盤、そのあたりの時期、公民権運動が本格的に始まる一つ手前ぐらいの動きがある時期で、戦後の世界状況が固定してきた時代。僕らがいま、何となく考える「古き良きアメリカ」のイメージの元となった時代。アメリカ映画でも、1950年代を黄金の時期としたものも多い。そしてレッドパージも。
第2次世界大戦が終わって5から10年。朝鮮戦争ではアメリカ人も何万と亡くなっていて、第二次中東戦争も1956年ですね。

もちろん、僕らはその後の歴史を知っているから、その時代がどんな時代だったかと言うことは予めイメージ出来ているけど。実際にその時間に生きている訳ではないので、実感は共有することは難しい。ましてや60年後の日本だし。わかんねー。でもいろいろと情報だけは調べられる。
時はジャズの全盛期。やがてロックが出てくるギリギリ直前か、もう始まりかけたロックがラジオから流れ出す時代。やがて来る混沌とする時代の前哨戦といたところか。

山高帽が同じ間隔で並んでいる。後から2人目の男だけが色の違う帽子。勿論その上画面の奥の方には何人か見えるのだけど、手前で僕らがこの写真を見た時に意識するのは並んでる五人の男たち。2番目の人だけが色の違う帽子とコートで、非常に目を惹く。

街の長老、お偉いさんたち。
彼らが見ているものは一体何なんだろうという。それは三枚目の疑問の提示なのかもしれない。

この写真の中で僕が一番好きなのは、1番最後の男がちょっと目をつぶってる感じなのが良くて、この写真全体の堅苦しさをほんの少し和らげてる。そして、いかにも典型的な、町の長老たち。2人目はまるで役者のような、映画にでも出てくるような老人。

いい表情だな。

表紙のバスの写真のフレームは5つ。
ここに並んでいるのも5人の男。
2枚目のフレームインフレームから続く平面的な壁に動く風(国旗)、そして、空間情報がない真っ白な空。白い画面で半分から下が黒。白と黒の割合が連鎖されているように見える。

ここでフレームとなるのは細い手すり。
旗の代わりにのぼりかな、布が結えられており、繰り返しの対比で言えば一枚目の後ろから2番目の黒人が、この画面のグレーのコートと帽子をかぶった男に対応している。一番最後の男が目をつぶっているのは、トローリーの一番右側の女性が横を向いてるのと、何となく呼応してるようにも見える。

まるで計算されているこのような連続性。多分計算されているのだろうけど、この呼応が次のシーンで結実する気がする。

まだ数枚進んだだけだけど、早いうちに書いておくけど、ロバートフランクの「アメリカ人」はある種、視線の物語ではないかと踏んでいる。いまのところ。

上で前ページと同じかと思ったが、もう少し調べてみた。
https://hoboken.pastperfectonline.com/bysearchterm?keyword=Centennial%2C+Hoboken+%281955%29&page=3
これはホードーケンの100周年記念パレードみたいだ。

たとえばこれ。
Black-and-white photo of Mayor John J. Grogan (center) and two men on reviewing stand at Hoboken City Hall for Hoboken Centennial Parade, March 27, 1955.
https://hoboken.pastperfectonline.com/photo/EFF05D8C-CC2E-44A7-BAAD-050531139382

うん。間違いない。ロバートフランクはこの日、このパレードのあった場所に居た。

※ホードーケンはドロシアラングの生まれ故郷みたいだ。

気に入ってくれたら投げ銭していただけると助かります。