見出し画像

誤読のフランク 30回 車の少年たち、じいちゃんばあちゃん、死んだキリストは、いちゃいちゃ

Belle Isle, Detroit

表面的には静かな写真で、実は結構ドロドロとした数枚の次はふっと軽くなる1枚。疾走する車の1枚、ベルイスルは前の回で黒人なんて出てけ!って騒動が起こったところ。それから10年ぐらいでこんな開放的な雰囲気というのは素晴らしいことだ、みたいに感じる部分でもある。
ひとつ前のベルイスルの写真でも白人と黒人が一緒に写っている。
車。デトロイトだし、車。

このアメリカンズでも車が描かれた写真はいくつもあるけど、この写真が1番車という新し価値観を証明しているのかも知れない。遠景に見える数多くの車は車社会の繁栄が証明されているし、ここから始まる車のシークエンスの始まりとして、キャッチーな1枚になっていると思う。オープンカーだし。
黒人の少年たちはロバートフランクを見ている。

Belle Isle Park (Michigan)
https://en.wikipedia.org/wiki/Belle_Isle_Park_(Michigan)
観光地だよね。島までは長い橋を渡って車で行くしかない。ある種の理想郷として作られた。島の名前は領主の妻の名前だし。
面白いことに、ここ、太平洋戦争中に海兵隊によって、硫黄島の上陸訓練が行われたりしたみたい。
<The island park served as a staging ground by the U.S. military during World War II for a re-enactment of a Pacific island invasion by the Navy and Marine Corps. The island was temporarily renamed Bella Jima, and Detroiters were treated to the sight of an island invasion without the bloodshed. It was conducted after the invasion of Iwo Jima.>

公民権運動に関しては先に書いた。


Detroit

背景を見れば1枚前の写真と同じ場所かも知れない。
若々しい少年たちに比べておじいちゃん達は横向きで静かな写真になっている。当然、ロバートフランクを見ていない。
オープンカーでもないし。
この年寄り達は若い頃に車を買った世代ではなく、ある程度年齢が高くなった時に買ったのだろう。例えば若く見積もって65歳だとしても、1890年生まれ。アメリカの近代国家生成を肌身で感じながら年齢を重ねて来ただろうことは容易に想像できる。それは歴史だ。

日本ではアメリカには歴史なんてないから、みたいに言うこともあるが、良くも悪くも、ものすごい勢いで歴史は作られている。アメリカンズが撮影された時代にしても、さまざまな物語があったことは、今まで見てきた通り。

背景見ると、岩と水が見えてる(ような気がする)。Belle Isle島か、同じようにオンタリオ湖の湖畔か。よくわからないけど、同じ場所(地名)が続くのはこの写真と最初の方のニューオリンズのトロリーバスとカナルストリートの2セット(だったかな)。

あ。2人の顔の奥に見えてるのは船かも知れない。


Chicago

この写真はこのふたつの言葉が注目される。
キリストは我々の罪によって死んだ。

キリストは罪人を救いたまう

これらの言葉は、ある種の互いに相反する罪への意識。ハッキリ言って今までの写真のあんまり重たい歴史に人間の罪深さにげっそりしたのか、もしくは次の写真に呼応してるのか。

罪とはなんだ? 他者を踏みにじり生贄にして生き延びることか? ロバートフランクは神と罪をどのように考えていたのだろう。アメリカンズはアメリカの罪を描こうとしたのではないだろう。アメリカの人々を撮れば自ずとアメリカ人が何だか分かるのではないかというふうに最初は思っていたのだろう。残り数枚まで読み解いてきたアメリカンズの写真(とキャプション)が示す、アメリカの姿は、どのようなものになっていただろうか?

さて、この罪の言葉が貼られていたのは車。移動手段としても、世界をつなぐものでもある。
乗馬の発明(?)以降、はじめて個人が個人の裁量で距離と時間を自由に変更できる手段として、自動車の普及は人類の何かを大きく変えた(たぶん、次の発明はインターネットであろう)。このアメリカンズも自動車がなければ成立しない。そしてこの人類が手にしたあたらしい力は、力の制限を失ってしまった先にある、たとえば原子力だとか細菌兵器とか、人類が手綱を間違えば手に負えなくなってしまうものに対しての、抑制を見失わせてしまったのではないか。よく考えればモータリゼーションの高まりは核開発の時期と軸を同じくしている。手に負えなくなるもの(手に負えないもの)への恐怖と羨望は、独断的な冷戦と和解の遮断による敵と味方の峻別、やがては妄信と残虐な結果を生み、更なる力による支配への希求による暴力的空想の中でSFとUFOを生んだ。なぜリンチが起きるか。今でも毎日のように黒人は罪もないのに殺されてゆくかと問うと、行う者にとって被害者は、UFOから出てきた宇宙人と同じように見えるのかもしれない。それは、他者への想像力の枯渇でもあるし、力を求めてしまう人類の、それこそ「罪」であるのかもしれない。

シボレーのマークは十字架でもある。

Public park - Ann Arbor, Michigan

アンアーバーといえば、jazz & blues Festivalっていうのはブルースファン。マジックサムの音源がね。なんて話になったものだ。今ならJazzの名演も何枚も出てる。でも残念ながら、jazz & blues Festivalってもう少し後の話。まあ、だいたいこの「誤読のフランク」には音楽ネタが多すぎる。書いてる人間の興味が歪んでるからどうせ歪んでる。でも、「本を読む」というのは歪んだ作者の言葉を歪んだ目で見て受け止めることだ。作者の言葉をそのまま受け止めることは読書ではない。ただの学習(というよりコピー)だ。
でも、そのおかげでこの街に興味が出てきた。
アナーバー(アンアーバー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC
<アナーバー市では、文化的なアトラクションやイベントが数多く開催されており、かなりのものがミシガン大学によって後援されている。大学内には無数の舞台芸術のグループがある。大学とは直接関係のない舞台芸術グループとしてはアナーバー市民劇場(Ann Arbor Civic Theatre)、 アーバー・オペラ劇場(Arbor Opera Theater)、アナーバー交響楽団(Ann Arbor Symphony Orchestra)、 アナーバーバレエ劇場(Ann Arbor Ballet Theater)、アナーバーシビックバレエ(Ann Arbor Civic Ballet)(1954年にミシガン州で最初に設立されたバレエ団)、そしてPerformance Networkがある。ステート・ストリート周辺地区には、3つの主要な劇場がある。アナーバー交響楽団の本拠地でも有るミシガンシアター(Michigan Theater)、ステートシアター(State Theater)、そして、ミシガン大学のヒル講堂(Hill Auditorium)である。メインストリート周辺地域では、小規模のライブハウスやナイトクラブでジャズを始め様々な音楽が上演されている。>

ここは、大衆音楽からクラッシックやバレエなどさまざまな文化的な土壌があるんだなって感じてとても興味深い。この写真を見たとき、あーもしかして、jazz & blues Festival の会場のすみっこ?みたいな気がしたのだけど、どうもそのラインではなかったようだ。

たとえば、前の写真の「罪」がこの写真のように男女がいたるところでまぐわってるようなことを言うのであれば、個人的にはちょっと違うんじゃないのかななんて感じたりする。どこかで「罪」がこれだと(他のページを調べてる時に)読んだ気がする。
この写真が描いているある種の雰囲気は、昔の倫理観からこの後のヒッピー、フラワームーブメントをつなぐ、ある種の性の解放への発展段階のようにも感じられる。80年代後半以降のエイズの恐怖はまた性に対する認識を逆行させたのではなかっただろうか。

たとえば「エイズの時代とクィア映画」。
http://rainbowreeltokyo.com/2001/qdp/aids.html
映画で描かれるHIVの話。あの時代に青春時代を過ごした者としては、エイズが20世紀最後の恐怖の象徴としてメディアを席巻した時代というのは少なからず精神生活において影響はあった、と思う。

でも、この写真はずっとそれより前。アベックが等間隔で並んでチュッチュしてるのって、別にいいじゃん。うらやましいというか、今の言葉で言えば、リア充シネ!なんて感じることもあるかもしれないけど、でも、それって、別にロバートフランクが何かをしたワケでもなし。写真とは関係ないよね。

で、この写真、真ん中の車の中から、男女がちょうど出てくるところ。暗くてよくわからないけど。男はこっちを見てる。
またカメラを持ったロバートフランクは見られている。「神が罪人を救いにやってくる」なら、神にも、僕らは見られていることになる。


気に入ってくれたら投げ銭していただけると助かります。