誤読のフランク 20回 レストラン、車で映画、黒人司祭
Restaurant - US 1 leaving Columbia, South Carolina
サウスカロライナの食堂でかかってるテレビはなんだろ。やっぱり政治家なのかな?
https://en.m.wikipedia.org/wiki/United_States_presidential_election,_1956
この中にいると思うし、多分当時の人が見たら誰だか分かるような気がする。もしくは事件とかあった時のインタビュー的なものかな? ちょっといまでは分からない気がする(僕にはわからない)。
この辺りのシークエンスをまとめると、案外構図優先なのかも知れない。
逆三角の構図、上辺は光が主役。右側の窓から差し込む光にテーブルのフレア、現像時に焼きこんだと思われるテレビの画面、左手奥には扇風機が見える。光の量から見ると朝かも知れない。いや夕方かも知れない。このテーブルのフレアがとても美しい。最近のレンズはフレアが出ないように出ないように作られているが、そんなの勿体ないと思うんだよね。フレアは画質を損ねるけど、今なら光の拡散をレンズによって定着するひとつの手段だったのに、なくそうと(努力)してしまったのが残念。
あ、コメントにleaving が出てきた。
コロンビア アメリカ合衆国 サウス・カロライナ州
https://goo.gl/maps/mRuAsZeP1ZR2
場所はこの辺かー。土地勘ないけど。アトランタ側に抜けるかワシントン側に抜けるか。1号線を地図で見てみると、ジョージア州側に出ると南下してマイアミの先端、キーウェストまで届いている。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/国道1号線_(アメリカ合衆国)
マイアミビーチに行ったのはこの1号線を通っていったのか、なんて思う。でもこの写真は何となく、南部から北へ向かう道筋のような気がする。情緒的だ。
フレームインフレーム。テレビの画面。
続くフレームインフレームは今までに出てきたフレームに呼応しているに違いないだろう。建国の英雄の肖像画もそのひとつに入っただろうか。
※これかな?
https://www.ourcampaigns.com/EventDetail.html?EventID=42
《ミネソタ州予備選でスティーブンソンを破ると、スティーブンソンは危機的状況にあることを認識し、フロリダ州でキーフォーバーと討論を行うことに同意した。スティーブンソンとキーフォーバーは、フロリダ州予備選の前の1956年5月21日に、初めてテレビ中継された大統領候補者の討論会を行った。》
とすると、マイアミでこんなことが行われているのに、俺は南部を離れようとしてる、という意味のLeavingって言葉かも知れない。
※Oral Roberts on TV、だそうだ。この人は当時の有名なテレビコメンテーター。
https://en.wikipedia.org/wiki/Oral_Roberts
Drive-in movie - Detroit
テレビというメディアの次は映画だ。
20世紀は映像の世紀と言われるぐらい映像というメディアが発生し、ものすごく発展した。写真だってそうだ。
このロバートフランクのアメリカンズはアメリカ人が見ていた光景を描く写真集だと定義したけど、ほんとにそう思える写真のひとつ。アメリカ人が見ていた世界は、アメリカ発のハリウッドに代表される映像技術として、あっという間に世界中に伝播した。僕らはもうスマホで映画をみて、動画をシェアする時代だ。街のモニターからは広告が流れ、電車に乗ってもモニターから映像が流れ続けている。映像に触れない1日はないに等しい。
そういえばこの本にある写真で、本が写ってるのは保険ビルと、ものみの塔の冊子だけかも知れない。今まで見てきた中で、知性というか活字に親しんでいると見える人々はどれだけいただろう。もちろんアメリカ人が本を読まないと言うことではないだろうし、ロバートフランクがそのような人であるかはよく分からないけど、書物を紐解くような人物をあえて描いていないような気がする。もちろん映像が知的では無いと言うことではない。むしろ、ロバートフランクは「目」の人だったんだと、安易にいえばそうも読める。
この映画はなんだったんだろう。
一日の終わり、家族や恋人と一緒に映画を見るというライフスタイル。ドライブインの映画館で。こういう光景はとてもアメリカだなと、勝手に感じてしまう。そういえば、ドライブインシアターってどこ発祥だろう?
《ドライブインシアターは1950年代末から1960年代初頭にブームのピークを迎え、農村部を中心に全米で4,000以上のドライブインシアターがあった。》
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ドライブインシアター
って、アメリカ発祥みたい。
むかし、多摩センターに25年前にドライブインシアターがあったのを思い出した。今は大きなマンションだかショッピングモールになってるあたりだ。大人になったら行ってみたいなと思ってたけど、大人になっても車は持っていないし、免許も持ってないし、お金もないし、それより、ドライブインシアターもなくなってしまった。こんな大人になるつもりは……ではなくて、使ったことない人間にとっても、懐かしいな、なんて感じてしまう風情が、ドライブインシアターにはあるし、あった。
ヨーロッパでは60年代が最盛期だと言われているので、ロバートフランクにとってアメリカの風景としてドライブインシアターは欠かせなかったに違いない。映画から始まるスターシステムも。四角い枠の中に入ることは、スターの象徴だ。
イッツアメリカン・ドリーム!
あ。忘れてた。フレームインフレーム。前のページの光の位置でめくると映画のスクリーンに目が引き寄せられる対比。
※やっぱり気になったので、自力で何の映画か調べようと3日映画のサイトを廻って古い映画探して見たけど見つからず。思い立って<自分が気になることは、どこかの誰かが気にしてる>という、ネットの原則を思い出した。そっちの方向で検索してみると30秒。
http://epistem-o-philia.blogspot.com/2017/02/what-movie-is-playing-in-robert-franks.html
あった。「The looters」って映画だって。Fuck!
映画はここ https://youtu.be/d81f6PZ_I-g
やってみたら6:24でした。
Mississippi River, Baton Rouge, Louisiana
そしてフレームインフレームから十字架への流れはどうだろうか?
前のページのスクリーンの位置に視線が注目するのと呼応して、この写真は真ん中の黒い司祭が持つ十字架に視線が惹かれる。ちょっと右下がりの構図も前の写真から続いている。画面のフレームの代わりに小さな船が右奥に流れていっている。
気になるのは人物の奥に見えるボロボロになったシート(?)かな?ダンボールかな?
いままで見てきた僕らは、もうこれは、死体を包んだ国旗にしか見えない(以前の投稿参照)。黒人神父が、国家のために死んだ死体に対して河川敷で膝をついて祈ってる光景にしか見えないのではないか。
バトンルージュっていうと、いろいろ歌が聞こえる。
やっぱり冒頭にでてくる Janis Joplin の Me and Bobby Mc Gee とかが有名か。
https://youtu.be/c7CtqwyxHM0
渋好みなら Guy Clark のその名も Baton Rouge
https://youtu.be/U7nO-ttJnVY
フランス語で赤い棒、赤棒かー、と、何とかダジャレを捏造できないかと考えてるけど、元々はインディアンが狩場の境界に木を赤く染めたのが由来らしい。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/バトンルージュの戦い_(1862年)
考えてみたら1955~56年だと90年ぐらい前の戦い。土地の記憶は3代、100年は言い伝えだけでなんとはなく残るものではないかとか思ったりもするけど、たとえば太平洋戦争が日本人にとって未だ語られる物語であるように、1950年代にはまだ南北戦争の記憶はどこかしらで語られてはなかっただろうか? サザンフラッグは望郷の念と共に未だ南部のアイコンだ。そういう情緒的な記憶は住んでないと、長く滞在しないと実感として持ちえないのではないかと思ったりもする。
最近、このアメリカンズを見ているうちに、当初考えてた旅に行って写真を撮っただけ、というのとは全く違う、ドキュメンタリー的な何かに肉薄してゆくというロバートフランクの写真のあり方というのに、とても感動したりしてる。この司祭を調べてみた。
http://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2015/robert-frank-the-americans-n09249/lot.18.html
↑ここにRiver Preacherってのが出てきて、ちょっと地元の有名人だったみたいだ。
<The man shown in this photograph is George H. West, a figure well-known in Baton Rouge as the ‘River Preacher,’ although he preferred to be called ‘Messiah of Jesus.’ West began preaching along the Mississippi River in 1941. He often conducted baptismal rites near the Port Allen-Baton Rouge ferry landing until 1968, when the ferry stopped its regular service.
Photographer Garry Winogrand credits this photograph with teaching him how to use the tilt of the photographic frame as an aesthetic device. >
(最後のウィノグランドの話はちょっと面白い)
ここには関連する写真と記事が。
The River Preacher
https://countryroadsmagazine.com/art-and-culture/people-places/the-river-preacher/
彼は洗礼もしてたようで、いろいろ小さな記憶記事が検索に引っかかってくる。
別の人が撮った写真もあったみたいなのだが、元記事が消えていたので検索画面のスクリーンショット。
この人の話だけでもひとつの物語が生まれそうだけど、こういう人を探し出して撮ってるというのは、かなり面白い。
(誰かサポートした人がいるように思えてならない。新聞社とか)
2015年には彼の絵を飾った展示があったみたいだ。
Library exhibit shows life of River Preacher
https://www.theadvocate.com/baton_rouge/news/communities/ascension/article_147a9d92-6216-5be3-8f8b-336791d3c738.html
※ ちなみにこの辺りは洪水多発地帯。
1927 Mississippi River flood in rare vintage film
https://youtu.be/P9CSnMaA3nI
最近でも
2016 Baton Rouge Lousiana Flood Footage
https://youtu.be/n7ysL25oL28
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