見出し画像

ゲームで学び、ゲームを学ぶ(11)-「2対2」の「3本目以内返球」ゲームで何を、どうやって学ぶか-②

 前回の記事では「2対2」の「3本目以内返球」のゲームについて、「守り-組み立て-攻め」という機能が独立するという特徴に焦点を当てて説明し、常に得点意識をもつことの重要性について解説しました。今回は「2対2」の「3本目以内返球」で学べることについて具体的に詳しく説明していきたいと思います。

プレーの機能が独立

 「連係プレー」が2回(1本目から2本目、2本目から3本目)できるため、1つのプレーの機能が独立します。例えば、1本目返球の場合では「攻守一体」と呼ばれ、「守り」と「攻め」という2つの機能要素が1本に含まれています。2本目返球の場合では、1本目はボールを落とさない「守り」に加えて、「攻め」にどう繋げるかの「組み立て」の要素が含まれており、2本目は「アタック」の要素が独立しています。これが3本目返球の場合になると、1本目が「守り」で、2本目が「組み立て」で、3本目が「攻め」となり、すべての機能要素が独立します。つまり、1本目が「ディグ(レセプション)」、2本目が「セット」、3本目が「アタック」、そして、その「アタック」を妨害しようとする「ブロック」といった「基本技術」そのものになります。

 2本目返球であると、1本目が「ディグ(レセプション)」と「セット」の2つの意味を持つので、2本目が効果的な「アタック」につながりにくいですが、それぞれが独立して、機能が分かれることで3本目が効果的な「アタック」につながる可能性が大きくなります。ただし、「連係プレー」が2回できるから「アタック」が効果的になるわけではありません。ある程度のボールコントロールができれば、組み立てる・修正する2本目の意味が成立しますが、ボールコントロールが未熟な場合は、味方コート内で連係プレーをしようとしたためにボールを落としてしまうことがあります。3本目以内返球であることが初心者にとって簡単というわけではありません。3本目以内返球のゲームにおける3本目返球の場合、プレーヤーの技能差が表れやすいことを理解する必要があると思います。

守って、攻める

 2人で3本目返球を意図すると、必然的に1人が1本目と3本目、もう1人が2本目をプレーすることになります。つまり、どちらか1人が必ず2回プレーすることになるわけです。これは「守り」から「攻め」へとプレーを移行する動きが求められるということを意味します。この「守り」から「攻め」の一連の動きは、バレーボールにとって必要不可欠なスキルになります。特に、味方のプレーヤーの人数が増えた際にも「守り」から「攻め」へ常に関わることが「基本」であることをこの段階で身に着けておくことが必要だと思います。その「基本」が自分自身できていれば、相手の立場に立った時に、それをさせないような返球の工夫などの「戦術」の「反転思考」につながってきます。

 そういった意味で「2対2」の「3本目以内返球」のゲームは、6対6につながる戦術的な思考を幅広く養うことができるものです。例えば、Aチームに攻撃力が高い選手と低い選手がいる場合、Bチームは意図的な返球で攻撃力が低い選手に1本目のプレーをさせることによって、相手の攻撃力を弱めようとします。一方、Aチームからすると、攻撃力が高い選手が1本目をプレーできるようにネットの近くはなく、ネットから比較的離れた位置で構えている可能性があります。それを予見できれば、Bチームは攻撃力が高い選手がプレーしたとしても、助走を取りづらいネットに近い位置に返球するか、もしくは、ネットの近くにいる攻撃力が低い選手がプレーせざるを得ないような返球が合理的な返球の可能性として挙げられます。

 また、守備力・攻撃力が同じ程度の選手であれば、2本目のプレーの優劣が返球を左右する可能性が高くなります。つまり、Aチームが意図的に2本目が比較的上手い選手の方に返球することで、Bチームの攻撃力を抑制できる可能性が高くなります。一方で、それをBチームが予測しており、なおかつ、Aチームからの返球が弱く、1本目を容易にボールコントロールできるものであれば、Bチームは2本目返球を企てることも想像できます。これは、6対6におけるセッターに1本目をプレーさせることにも、また、それを予見してセッター以外の選手がツーアタックすることにもつながります。

 さらに、2対2であっても前衛1人・後衛1人として、例えば6対6と同じようにローテーションあり、アウト・オブ・ポジションあり、という条件で実施するとどうなるでしょうか。当然、セオリーとしては攻撃力を高めたいので、前衛選手を「攻め」で生かすために「守り」はどうするか、という認識の基に、様々な戦術の攻防が繰り広げられると想像出来ます。レセプションでは後衛選手は前衛選手よりも前にいると反則なので、ギリギリまで前衛選手の後ろにいる必要があります。これはまさにセッターのペネトレーションを学ぶことになります。

 これらの例に挙げたことはもちろん一部です。条件設定によってラリーの質が影響を受けて、それを克服するための様々な戦術的な思考・判断によって、求められる技術が変化すること、つまりゲーム様相によって、学ぶことが変化することを指導者が、常々把握しておく必要があります。

▶︎縄田亮太のプロフィール

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。