素敵じゃない素敵(小説)

何もしていない休みの日。何もしていないのではなく、わたしには何もない。
何もない空っぽなわたしは、空っぽであるのがなんだか怖かった。SNSを開けば、他の人は自分の好きなことや楽しそうなことをして休みをすごしている。
わたしはすごく不安になるのだ。時間は全ての人間に平等に与えられるものだけれど、時間を無駄にしている気がして、何かしなきゃという思いに駆られる。けれど、空っぽなわたしにはやりたいこともなく、ゲームをして、パソコンで動画を見て、たまに寝て、気づけば1日が終わってしまうのだ

わたしもキラキラした日々を過ごしたい、仕事も頑張って、休みの日も有意義に過ごしていたい。

怖い、怖い、怖い
不安だ、不安だ、不安だ

好きなことをしなきゃ、もっと有意義な時間にしなきゃ、そんなことを毎日考えていた。

ある時ヘンテコなマンガを読んだ。

「あれ?昔読んだことあるな」
と目に止まったマンガが「働かないふたり」というマンガだ。昔本屋で試し読みしたことがある。
話の内容はニートのヘンテコな兄妹の話。
兄は働いてはいないものの、アルバイト経験があったり、人付き合いができたり、料理が得意なお兄ちゃん。
逆に妹は働いていないことにいつも引け目を感じていたり、服屋に入るのも苦手なくらいの人見知り。

めちゃくちゃ笑えるのに、日常に埋まっている大事なことや素敵なことに気付かされた。

読んでるうちに段々と心の中の不安がしぼんでいくような気がして、笑っているうちにどうでも良くなってくる。
「あぁ、これでいいのかもなぁ」と、わたしは考えるようになった。
ゲームで遊ぶことができる。パソコンでおもしろい動画をみて笑える。マンガも読んで、好きな時に車で出かけることができる。それはもう素敵だ。素敵になることを目指さなくたって、素敵はわたしのすぐ側に転がっていたんだ。

素敵なものって、キラキラしてるものじゃない。
素敵なものには色が付いていない。それに気付いて自分で色を付けるからキラキラ輝くんだ。

だから素敵じゃない素敵にわたしも気付けたから、わたしの素敵はキラキラしてる。

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