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恋の形

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実る恋  実らない恋 交わる恋  交わらない恋 どの恋も正解はなくて どれも素晴らしい ちょっと人にやさしくできないとき 読んでもらいたいお話しまとめてみました
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#眠れない夜に

左手のドーナツ

左手をドーナツのように丸くして 左目から覗く彼女は 僕の心を読んでるんだって そんなので見えたら苦労しないよって 言い返すんだけど それでも彼女は 見える、見えるよーと言っては 僕を笑わせる そして必ず、明日も大丈夫って見える そう言ってなんの分析力もない言葉を 投げかけて微笑む彼女は 僕を笑わせる それはいつしか僕の中で おまじないのようなものになって 知らない間に、癖になっていた 今日も大丈夫 そうやって鏡の自分へ声をかける あとがき 彼女の癖が彼にも伝わり、日常

夢の灯を持つリリイと夢を食べるドリアン

夢の灯を持つ妖精リリイと、夢を食べる魔法使いのドリアンがいました。リリイは美しい夢を人々に与える存在として崇められ、ドリアンはその夢を食べてしまう存在として嫌われていました。リリイはいい夢を見させて人々へ希望を配りつづけていましたが、ドリアンはそんなリリイのことをよく思いませんでした。 世界ではリリイのように人に夢を与えられるのが正義です。 人の夢を食べるドリアンは誰からも好かれず、一人彷徨っていました。ある日、リリイの作った夢を見ている一人の少女がいました。その夢は、白馬

見えない彼女と見える僕

僕は僕で生きる世界があって この世界に流れる風は、どこまでも冷たい 幾千の星々は、そんな僕にも笑いかけ でもやっぱり、朝になれば泡のように消えていく そこら中を見えないモノたちが潜んでいて 願い事を託す、彼らにはこの世が まるで穴が開いた空のように映っているんだろうか 嫉妬と焦りと闇が漂う世界に何を望むだろうか 冷たい空に見える君を、僕はどうすることもできなくて 海が見える踏切で一人考えてしまう 君に近づく方法は何通りあるのだろうか。 君を見つけてから、灰色であるはずの

酸素と鼓動

酸素不足、僕の鼓動 微かな音、宇宙の果てまで響く 酸欠状態、君の存在 鼓動が交わる、僕たちの物語り 時が止まる、君とのひととき 酸素が満ちる、心の中まで 鼓動がメロディ、君と共に紡ぐ 永遠の誓い、酸素よりも深く 酸素を求め、君のそばへ、鼓動が導く 酸素と鼓動が、永遠に続く、この愛の世界で あとがき この詩は、酸素不足が愛と絆の深さを表現しています。鼓動の微かな音が宇宙の果てまで響き、酸欠状態でも君との存在が心を満たします。そして、鼓動が永遠のメロディを奏で、愛と絆が

左目の言葉たち

「先生、質問です」そばにいるだけでよかったけど、 私の心の原石は、音もなく崩れていく 映画を見に行こうって待ち合わせた昼下がり、 最初の言葉に愛があふれる 手のひらに書いた「人」の字を左目だけで見つめる 姿勢の悪い先生の授業の中の長い沈黙がすき 帰り道の鳥居、小さい頃よく来た懐かしさに浸る 手を添えてまた明日 つま先に力を入れて、遅刻寸前の坂道を走ろう メガネ姿に細い目の先生と話したくて、制服のスカーフを直す 三本目の木の下、街路樹にいる先生の仕草が無邪気で そして穏や

泣き声の向こう側

もし心の中を見える力があれば 嘘ばかりつく君を守ってあげられるのに 頼ってほしいけど甘えることが苦手な君を あなたを泣かせるものから遠ざけてあげるのに 何で見えないんだろう 君は本当に嘘がうまい 僕が帰った後 泣いていることを知ってるから ドア越しに君のすすり泣く声を感じてる 今すぐにドアを開けて抱きしめたいけど それは僕ではなかったことに 君が見つめる先を知ってしまったら 僕の心はまた一つ、ひびが入る 君の幸せを願うのは正しい でも本当は君を僕だけのものにしたい で

どく

最初から知っていた、あなたの心には私の居場所がないと だからこそ、少しずつ、微かにでも 記憶の糸を紡ぐ 数日ごとに繰り返す同じ言葉は 微量の毒のように あなたの意識の隅に静かに滲み込み、こべりつくように 何かが起こるたび、ほんの一瞬だけ その存在を思い出させる そんな私を、どうか許して あなたの世界の片隅に、静かに息づかせて

解放される音

「私は違う人の人生を生きてる」 理想の世界が現実と交差する お金持ちの一人っ子として描かれた私の夢物語り しかし、現実は予期せぬ道を辿る 自由とともに生きる美少女、それが私の理想的物語り 予定と違う現実が私を縛り付ける だからこれは私じゃない だっておかしいじゃん、こんなはずじゃなかった 幼い頃に思い描いていた夢とのギャップ 私の物語りの主人公は 金持ちの一人っ子 白くて長毛のボルゾイを飼って 不自由なんて知らない 自由とともに生きる美少女 それが何一つ叶わない世

涙を超えた愛

泣けば泣くほど人に優しくできると聞きました 今まで泣いてきた数は星の数ほど なら私は誰よりも優しいはずだけど 私はあなたにひどい言葉を並べてしまう あなたの優しさに埋もれてしまう自分が怖いから そうならないように必死に並べる言葉は 支離滅裂で それを受け入れてしまうあなたはアタオカで そんな私もおかしい、絶対。 愛しいあなたを失いたくないのに 感情を言葉で上塗りしてごまかしてしまう そんな罠にひっかからず私を迎えに来てくれる あなたに更に甘えてしまう あとがき 愛とはな

彼女の色

ワクワクってどうやるんだっけ ドキドキってどういう気持ちだっけ 感情を忘れるためにかけたフィルターは 何枚何十枚いろんな色を重ね カラフルだった心はいつしか 限りなく黒に近くなった 「どうしたの?」 柔らかい笑顔で見つめる彼女に声をかけた 「桜の花びら持ってきてくれたの?」 僕の肩にそれはついていて 「手にしてみたいかなって思って」 桜を彼女の指にそっと乗せる 咄嗟に出た言葉だった 「触りたかったの、ありがとう」 そういって満面の笑みを浮かべる 梅雨のある雨の日に会い

約束の付箋

電車で見つけた落とし物 真新しい小説が一冊 ちょこっとだけ顔を出している付箋 興味本位であけたページ 小説を読まない僕には ただの文字の羅列 どうして付箋をつけたかったのか でもすぐに分かった 左下の手書きの文字 「13時にいつもの神社で」 その隣に違う字で「OK」 僕は一安心した 返事が来ていることで二人は 小説がなくても出会えることができるだろうから 〇と△シリーズ 好きな言葉をお題として組み合わせ詩を作る 今日は 約束 × 付箋

凍てつく想い

息をのんだ 君は見えてはいけない人なのかと思うほどに 美しく、透明な、悲しい目をしてた なぜそんなに悲しんでいるんだい 何をそんなに見つめているんだい 君の視線を独り占めしたいと思ってしまった 光にかざしたビー玉のような美しさも 今にも泣きそうなその悲しみさえも 触れたいと思ってしまった 君の冷たい手が僕の肌に触れると まるで氷のような冷たさが僕を貫通し 身体の奥までしみ込んでいった あとがき 恋は一瞬

笑う飴

色とりどりの提灯 鮮やかに並ぶ露店 子供たちの歓声と 音楽が鳴り響く 少し油断をすれば すぐに見失う 彼らは手をつなぎ 人混みを縫って歩く 何食べたい?甘いのがいいな 初々しい二人の会話 甘い香りに誘われて ふたりで買う、いちご飴越しに目が合い 少しだけ緊張はほぐれ笑いあう 始まったばかりの恋を胸に刻み 一生忘れない笑う飴をかみしめる あとがき 初めてのデートって素敵

幸せのレシピ

幼稚園から一緒のあの子は、すぐに流される あの人が今きになっててー あの子と最近気が合うんだよねー 気になる人とは、ちょっとしたことですぐケンカしたり 嫌いになったり、ほんとに忙しいヤツ。 今日は雨ですることなくて なんとなく入れたライン「暇ー」 既読になったのは夕方だったから 気になる人と遊んでたんかなって いつものパターンだし、俺はここにいつもいるんだよって 言いたいけど伝わらない想いに蓋をして 「既読スルーすんなよ」って軽く返す それでも返信ないから、何かあった