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儚くて美しい物語り

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繊細で儚くて美しいものが大好き♡ そんな物語をまとめました SAIワールド全開でどうぞ('◇')ゞ
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#生き方

赤い金魚と僕の物語り

風が止み、夕焼けが空を染める頃、静かな町の一角に佇む古びた家。 早くに両親を亡くし、姉は嫁ぎ、広い家にただ一人。生きるために生きている。三十路を目前にし、僕は考えることを諦めていたそんな人生について向き合っていた。金魚鉢の前に座り、水槽の中で穏やかに泳ぐ「金魚」に話しかけて。それは、投影していたのかもしれない。金魚鉢で飼いならされる金魚と僕を。 姪っ子がお祭りで手に入れたその金魚は、飼い猫を理由に僕のもとへと託された。とても小柄で泳ぎ方が少しだけ変な真っ赤な金魚。定期的に水

深海の光

息継ぎを忘れた魚のように 尾びれを揺らして眠りにつきたい 忘れがちな記憶と生命力は 透けて見えなくなってしまっても それでいいんだ。 大人になろうとすればするほど 上手に泳げもしない私を、残酷で冷酷な目で見てくる。 見たかった風景は美しくて好きだけど 少し疲れた私は水面に浮上する。 そのことがとても虚しくて、悲しくて まるで売れ残りの魚のように息絶えるようだった。 「おはよ」って優しい色の海に言えなくなってからは 正解を探して、空を眺めている。 私の切り取った輝かしい過

呼吸法

ちょっとすみませんが 肺呼吸の仕方を教えてくれませんか 気になる人が病んでしまって様子を見に行きたいのです さすれば、私は自由に行き来が出来るのです それならば僕に エラ呼吸の仕方を伝授してもらえませんか 肺呼吸をしててもこの頃息がしづらいのです、せめて 僕は水中で生と死を感じることをしたいのです あとがき しんどくなったら、 エラ呼吸に変えて 静かに水中に漂いたい

昨日までの僕が、僕を沈める

沈む、沈む、浮かび上がろうと、また沈む 昨日までの僕が、僕を沈める こんなに静かな朝だというのに、変わろうと決心したのに まだ同じ世界線にいる僕は、昨日までの「僕」にまた静かに沈まされる 口笛を吹いて新しい世界へ生まれ変わりたいと決意したけれど すり減った僕の何かは息苦しいままだった だから、「同じ道を歩こう」と僕の中の僕が言う 地に足をつけたはずだったけど、この浮遊感はなんだろう まるで砂時計のようにこぼれ落ちていく僕の夢は そこにあるのに掴めないような感覚に陥る 「そ