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物語り詰め合わせ

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優しい物語りに浸りたい時がある。
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2024年4月の記事一覧

春風のいたずら

春風が吹く 緑が芽吹き始めた葉っぱが ふわっと飛んでいった ゆらゆらと飛んでは 公園に座っているおじいさんの頭へ乗っかった もしかしてたぬきかもしれない 今度はぶわっと風が吹いて その葉っぱは野良猫の頭に乗っかった こっちがたぬきだったのか 最後は砂埃が立つほどの風が舞って おじいさんと猫は消え、葉っぱだけが残った あとがき たぬきと幼稚園の女の子のお話し 幼稚園の女の子目線でもう一度読むと キラキラした目の少女のワクワクが見える·͜·ᰔᩚ 〇と△シリーズ 好き

約束の付箋

電車で見つけた落とし物 真新しい小説が一冊 ちょこっとだけ顔を出している付箋 興味本位であけたページ 小説を読まない僕には ただの文字の羅列 どうして付箋をつけたかったのか でもすぐに分かった 左下の手書きの文字 「13時にいつもの神社で」 その隣に違う字で「OK」 僕は一安心した 返事が来ていることで二人は 小説がなくても出会えることができるだろうから 〇と△シリーズ 好きな言葉をお題として組み合わせ詩を作る 今日は 約束 × 付箋

誕生日嘘をついたページ/記憶の日記

「こうじさん、お誕生日おめでとうございます」 ふみさんが今年も誕生日を祝ってくれる。本当に僕は幸せ者です。 だけれど、彼女は僕を見ているけれど見ていない。 あなたは誰を見ているんだろう。 日記の一行目。 彼女の大切な人が自分ではないことに気が付いた。 手に持った彼女の日記の1行目。 誰か分からない想い人への一行目を、震える指で一文字ずつなぞる。 本当は知っていたし、わかっていた。けれど、彼女が彼女を演じる限り、僕は僕であるべきだとそう思う。 もう僕は知らなかった世界へ戻

キャンドルとハリネズミの森

星明かりが舞う夜の森  キャンドルの灯りが揺らめく 魔法の中に埋もれた ハリネズミの棲家 そこには夢の世界が広がり、 不思議な生き物がたくさん踊りだす しゃべるキノコや青い目のうさぎ、 巨大なありんこに足の短い鹿 時が止まったような静寂の中、 秘密の歌が響き渡る 光と影が織りなす魔法のように キャンドルの灯りが彩る森 夜の奥深くで、 大人びたハリネズミが歌う さぁ、新しい冒険の物語へ 〇と△シリーズ 好きな言葉をお題として組み合わせ詩を作る 今日は ハリネズミ × 

真っ赤な傘の下で

昔、おかしなことばかり言う女の子がいた 「おばあちゃん、明日しんじゃうよ」 「あなたの赤ちゃんもう長くないわ」 村人たちは気味悪がりました。その少女の言う通りになるからです。 あの子は魔女の子だわ、村中で噂になりました。 そんな女の子の不思議なお話し。 彼女には家族はなく、いつも一人でいました。おかしなことばかり言うので村人からは毛嫌いされています。彼女は2つ目の村に住んでいて、1つ目の村からは不吉な少女として村長から追い払われました。 彼女は不吉な予言をし、いつも真っ赤

解放される音

「私は違う人の人生を生きてる」 理想の世界が現実と交差する お金持ちの一人っ子として描かれた私の夢物語り しかし、現実は予期せぬ道を辿る 自由とともに生きる美少女、それが私の理想的物語り 予定と違う現実が私を縛り付ける だからこれは私じゃない だっておかしいじゃん、こんなはずじゃなかった 幼い頃に思い描いていた夢とのギャップ 私の物語りの主人公は 金持ちの一人っ子 白くて長毛のボルゾイを飼って 不自由なんて知らない 自由とともに生きる美少女 それが何一つ叶わない世

彼女の色

ワクワクってどうやるんだっけ ドキドキってどういう気持ちだっけ 感情を忘れるためにかけたフィルターは 何枚何十枚いろんな色を重ね カラフルだった心はいつしか 限りなく黒に近くなった 「どうしたの?」 柔らかい笑顔で見つめる彼女に声をかけた 「桜の花びら持ってきてくれたの?」 僕の肩にそれはついていて 「手にしてみたいかなって思って」 桜を彼女の指にそっと乗せる 咄嗟に出た言葉だった 「触りたかったの、ありがとう」 そういって満面の笑みを浮かべる 梅雨のある雨の日に会い