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黒崎神社式年例大祭、雑惑 #2

プログラムの二つ目、この祭の目玉である「根岬梯子虎舞」が始まる。

虎舞、は三陸各地に点在するが、梯子虎舞、となると、こと珍しい。気仙沼、高田、大船渡の数カ所。さらに、この根岬(ねさき)のものは、ひときわハシゴの高さがデカいときている。

根岬、の地名が指す如く、根岬は広田半島の突端に位置する集落で、この梯子虎舞はその地区に伝承されてきたもの。

近年は人口減の影響で、この梯子虎舞も他地区からの助っ人を借りて行うようになっている。

梯子虎舞は、「神々が獅子に行く手を遮られた際、才坊と呼ばれる者が獅子を高い岩の上へ上げ、神々は無事に目的地へ着けたという」というエピソードに由来する。そのため、カッシャ(獅子頭のことを指す)を誘う才坊振り(扇子を持った人たち)は、カッシャを招くように、じらすように、梯子の天頂へカッシャを誘う。

左に、右に。

根岬には「鶴樹神社」と呼ばれる、弁天様を祀った神社がある。この鶴樹神社の式年例大祭も、4年に一度(黒崎神社の前年)行われるのだが、女の神さまである弁天様に配慮して、当初、この根岬の梯子虎舞は女人禁制だった。いつしかその規制は緩和され、小太鼓は女性たちが務めているが、笛、大太鼓、それから実際に梯子に乗る者たちは男性のみで構成されている。

近い将来、梯子に乗るパートも女性が入ることになるのかも。今の人口分布を考えると、そう遠くない日に、そんな議論がなされているような気がする。

ついに、頂上へカッシャが誘い上げられた。

ここでやっとハシゴの全景を撮るに至る。

ハシゴの長さこそ20mであるが、境内の土手の中段にハシゴをブっさしているため、長さの割に「高い!」と感じやすい。

カッシャの中には二人組の男性が入っている。頂上で体系をチェンジ。

この体系、いったい中がどうなっているのか想像できた人は、今頃手に汗を握っているのではないか。そう、背中が地面を向くように、腹筋運動を持ってしてカッシャの中にいるのだ。

頂上でアクロバットな舞をしたカッシャは方向転換して、今度はハシゴを下り始める。

この一つのカッシャが登って、上で舞って、下へ降りるまで約20分。二つのカッシャが一公演で舞うので、一回の公演は約40分となる。

下から、もう一体のカッシャが上がっていく。

本来のハシゴの正面とは反対の、境内の土手に生える杉の下から撮ると、ハシゴの裏側から観客たちを望む事が出来る。

鉛色の空。逆光になるのを敢えて狙って黒ツブシ。本当なら青空の下で撮りたかったのだが、、、天候が回復するのを願いながら、祈りながらシャッターを切る。

個人的に根岬の虎舞の「終わる」シーンが好きなのだ。

カッシャがハシゴを下りてきた時に「お疲れ様」と言わんばかりに、先輩の舞い手がカッシャをキャッチするところが、特に。

ハシゴの正面からは見れないシーンのひとつである。

カッシャが降り、才坊振り三人も降り、お囃子がワンコーラス流れ、一瞬の静寂の後に、拍手。早くもクライマックスを迎えたかのような雰囲気に場内は包まれるが、まだ、お祭りは始まったばかりである。



まだまだ、つづく。