第三話 工場見学のその先に感じたもの「糸からニットができるまで」
普段何気なく着ているニット。
小さい頃、ニットを編めるおもちゃキットが流⾏っていて、
クリスマスプレゼントにお願いした記憶も。
友達と初めて手編みのマフラーを作ったり、
ニットで思い出すことは「懐かしさ」と「温かさ」。
今回「ワイオリキッチン」と「サイフク」が、
キッチンアイテムを共同開発するにあたり、
サイフクで行っている「工場見学」を私もさせてもらった。
ニット作りは、おおまかに「10の⼯程」に分かれる
①原材料
⽷選びからニット作りはスタートする。
デザイン、イメージに沿って⽷選びを⾏い、染⾊をかける。
サイフクには、「ブック」と呼ばれる「⽷⾒本」が棚いっぱいに広がる。楽譜が並んでいるかのような色とりどりの背表紙。
よく見ると「クレヨンハウス」など日本製のものもあれば、ヨーロッパなどの外国製のものも。
ここでまず一気にアパレルの世界を感じる。
②編み柄制作・コンピュータインプット
⾊や柄、デザインを起こし、編み機へ⼊⼒するためのデータ作成を⾏う。
製品に合わせて、さまざまな編み機を使い分けていくので、⼯場の中にはいろいろな種類の編み機が存在する。
柄や編みのサンプル作成を⾏い、専用のコンピューターを使⽤して機械⽤データを作り上げるセクション。
③編⽴(あみたて)
データを編み機に⼊⼒し、編み機を動かす。
現在では、編み機も進化し、極⼒裁断をせずに仕上げる編み⽴てを⾏うなど、いかにコストを抑えて良い商品を作るかもここにかかっている。
④洗い
意外かもしれないが、ニットは製品になる前に、⼀度「洗い」をかける。
風合いを良くしたり、単純に一度洗うことで目を詰めてしまうことで、家庭で手洗いできるようにするなど工夫されている。
⑤裁断
ハサミや裁断機を使⽤して不要な箇所を裁断していくところ。
前身・後身・袖など、パーツに切り分けていく。
⑥縫製
ミシンを使い別れたパーツを立体的に縫い上げていく。
ポケットやフードなどのパーツもここで組み立てられる。
⑦リンキング
手作業で⼀つ⼀つの編み⽬を紡いでいく工程。
伸び縮みする衿部分によく使われる。細かな⼿の動きに驚かされる。
⑧仕上げ
編みキズ、目落ちがないかなどを直す職人の技、細かな手作業。
⑨アイロン
枠に入れ、スチームを使⽤してセットする。
寸法や仕上がりの美しさを整える。
⑩検品
こうしてできた商品。
梱包作業と共に、季節の商品のご案内なども⼀緒に⼊る。
お客様への元へ⼼を込めて届ける最後の仕事。
見学を終えて
今出荷の時を待っている商品は、こうしたいくつものセクションを経てできたもの。
1本の「糸」が編み地という「面」になって、やがて「立体的」になり、体を包むニットに。
梱包された商品は、愛おしく、スタッフの皆さんのメッセージが詰まっているように見えた。
「あの人がこんな思いで作ってるんだ」「こんなふうに作ってるなんて知らなかった」作り手を見れば見るほど、私も大切に使おうと思える。
こうして感じた感情は、もしかすると「大量消費」の対極にあるものなのではないだろうか。
「食」に置き換えてみても同じことが言える。
今、食のシーンで課題となっている「食品ロス」。
「ものを大切に」「食べ物を残さないで」というのは簡単だけど、ものが溢れている時代において、いまいちピンと来ないかもしれない。
どういうものを見て、感じて、選ぶのか、個々の力が試されている。
いくつもの工程を経て、大事にうみだされた製品は、エシカルな視点から暮らし方を考えさせてくれるものだった。