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市民農園が魅力の都市をつくりませんか~全国の市長さんへ~

『広報もりおか』2月1日号に掲載された「食・農業についてどのようなことに興味関心がありますか」の回答は、「1位 家庭菜園36.2%」「5位 農業体験・収穫体験19.9%」となり、市民の野菜づくりに対する関心の高さが表現される結果となりました。

私は、ここ数年、市内にある市民農園をお借りして、野菜づくりをしているのですが、これが実に楽しい。心身ともに「すこやかになる」のを実感しています。

市民農園では、除草剤は禁止。農薬や化学肥料を使用する人も少なく、有機肥料を使用したり、無農薬で肥料さえ使わない自然栽培を行っている人もいます。

そこに育つ野菜は、スーパーマーケットに並ぶ「虫があまり食べない野菜」ではありません。

「中国の野菜は農薬の使いすぎで危険!野菜は国内産が安心」と私たちは信じていますが、これは正しくありません。日本の農薬使用量は、常に世界トップクラス。世界一の中国にはわずかに及びませんが、日中韓は世界でも飛び抜けた農薬使用大国です。

国内には「減農薬や有機肥料の使用」を売りにしているところがありますが、ドイツやフランスの農薬使用量はそもそも日本の3分の1、イギリスが4分の1、アメリカが5分の1、ロシアに至っては、20分の1です(2018年)。

私が考えるプロの農家とは、農薬や化学肥料といった有害物質をできるだけ使用せずに、美味しくて健康な野菜を安定して作れる人たちだと思うのですが…。

同じ先進国である米英独仏では、先述したとおり減農薬が「標準」です。日本の農業にいう「減農薬野菜(特別栽培農産物)」のレベルは独仏のレベルにさえ達していないかもしれません。

さらに、化学肥料の使用についても問題があります。実は化学肥料の使用量も、日本は世界のなかで多い国のひとつです。

また、せっかくの有機肥料も、完熟した有機肥料ではなく、未熟状態のものを使用することがあります。そうした肥料で作られた野菜には有害物質が含まれている場合があるのです。

日本の消費者は、欧米では当たり前の品質(=日本の特別栽培農産物)や品質に問題のある有機野菜(=未熟状態の有機肥料を使用した有機農法野菜)に、高めの料金を支払っていることも少なくないのです。

この現状を変えたくても、農家の内部からの変革にはあまり期待できません。様々な理由で従来型の農業(慣行栽培)を変えるのは難しくなっています。

日本人の食は農家が守るということで、大切にされてきたのが日本の農業でした。しかし、食料自給率の低下、農業人口の激減、耕作放棄地の増大、世界トップクラスの農薬・化学肥料の使用による地球(土壌・水)の汚染、未熟有機肥料の使用など、問題が山積しています。

こうした諸問題を改善していくのは、家庭菜園や農業体験に深い関心を持つひとりひとりの「市民」なのではないかと思います。

全国に先駆けて、○○市が、市民の健康や生きがいづくりを目的とした「市民農園の拡充整備」を実現したら、市内の農家にもよい影響を与えることになると思います。

かつて、情報の発信は、わずかな新聞社とテレビ局による寡占状態が続きました。その結果、彼らの「情報の取扱い方」によって、世論が誘導され、時代がつくられてきた面がたくさんありました。

「情報を取り上げない」「情報を小さく報道する」などのテクニックで、偏った情報により、社会はつくられてきましたが、これを破ったのが、ひとりひとりの発信(YouTubeの普及)です。

初めマスコミはユーチューバーを相手にしませんでしたが、今はどうでしょう。情報発信の寡占状態は、ユーチューバーの出現により解消されつつあります。結果、マスコミや政府が隠してきたことが、日の当たる場所に姿を現し始めました。

ソ連解体も情報操作の限界によるところが大でした。中国や北朝鮮といった独裁体制が最も警戒しているのも、自由な情報交換です。

食料自給率の問題や農家・消費者の意識改革、土壌や河川・地下水の汚染といった地球環境問題も、ひとりひとりの菜園づくりの歩みのなかに解決のためのヒントがあると思います。たかが市民農園と侮ってはなりません。

ロシアの「ダーチャ」はご存じでしょうか。ダーチャは、ソ連時代に国有だった土地の使用を人民に許可したものが主です。ソ連からロシアになってからは、そのまま私有が認められました。広さは平均600㎡。180坪になります。多くの人々が、菜園として利用し、別荘を建てています。

都市の高層アパートで生活しているロシア人は、週末や長期休暇をダーチャで過ごします。野菜、花、住宅、サウナ…彼らはそれらを何年もかけて気長に手作りしています。なんと、豊かな暮らしでしょう。ダーチャは、彼らの心身の健康を育んでいます。

そんなダーチャについて、豊田菜穂子著『ダーチャですごす緑の週末』から少し引用します。

「首都近郊モスクワ州の場合、全世帯の3分の1が菜園を所有。ロシア国家統計局の2003年のデータによると、国内3400万世帯の8割が菜園をもつか野菜づくりの副業経営を行い、同国のじゃがいも生産量の92%をまかなう(『東京新聞』2004年4月15日)」

当時のロシアのじゃがいも生産量はたしか世界第2位。その90%以上を家庭菜園家が行っています。ですから、ソ連からロシアに移行した際の物不足や度重なる経済制裁もロシアにとってはなんでもありません。物がないのは都市の店だけで、郊外にある自分のダーチャにいけば、贅沢品以外はすべてあります。ロシア人は、ひとりひとりの生き抜く力が強いのです。

翻って、今の日本人はどうでしょう。戦前までは、農民が多く、土を耕すDNAは現代人にも100%受け継がれています。それはロシア人と同じです。にもかかわらず、国内の農業人口も自給率もたいへん低い水準です。しかも生産される野菜は先述したような状態です。

これを打開するには、冬眠中のDNAを覚醒させることです。それには、「実際にやってみる」ことが必要です。現にアンケート回答者の36%もの市民が家庭菜園に関心を寄せています。この数値こそ内在するDNAの証明です。

「ロシアには、国や地方公共団体が所有する土地で空いている土地があれば、市民農園(意訳)として貸し出そう」という法律があります。

「○○市においても、空いている市の所有地があれば市民農園にして貸し出す。大規模公園の一画に市民農園を併設させる。市立の小中高には、学校農園を生徒たちに整備させる(生徒会の同意があった場合のみ)。さらに、農家の耕作放棄地を市が借り上げ、市民農園にする」など、市民農園を増やすアイデアはいろいろあります。

ただ、新しいことを始めると、役所はすぐ部署を立ち上げ、人員を配置しますが、その必要はありません。

「管理も利用者の募集も貸主が行う。学校農園は、無償ボランティアのアドバイザーを募集すればいい。市の所有地だけは、職員が定期的に巡回する」といったふうに。

○○市の全世帯の36%が50㎡以上の家庭菜園で野菜づくりを始めたら、ロシアと同じように、家庭菜園家の生産量は農家のそれを超えるかもしれません。少なくとも品目によってはそうした可能性はあると思います。さらに、「無農薬に近い野菜」を食した消費者の行動は、農家にとってもよい刺激になるかもしれません。

結果、○○産の野菜は「美味しい」と評判になるでしょう。市民は生きる力が強くなります。土や日光、外気に触れて汗を流す。すると、ストレスは解消され、基礎体力も向上します。さらに、口にするのは健康野菜、もう元気になるしかありません。

昔で言えば、餓死者を出さないことが、名君の絶対条件。現代でいえば、「心身ともに健やかで生き抜く力のある市民を育む」といった当たりが市長のミッションかもしれません。

戦時中一番強かったのは、お金持ちではなく農家でした。お金より食料を求めた時代があったのです。それを忘れてはならないと思います。

広めの区画(50~100㎡)の市民農園をふんだんに用意できたら、災害や恐慌、戦争さえ乗り越える力を持つことができます。

「○○市民になれば誰でも農園を利用できるらしいよ。なんて豊かな街だろう!」。そんな素敵な街づくりを検討して欲しいと思います。

「○○市の生活困窮者には、給付金ではなくて、100㎡の菜園が貸し出されるらしいよ。生活保護受給者や引きこもり、うつ気味の人も数年畑で汗を流したら、見違えるように元気になって、半数以上が自立していくんだって。○○市ってすごいね」と言われるようになるのも、夢物語ではなくなると思います。

ダーチャ(都市郊外に発達)やドイツのクラインガルテン(ひと区画300㎡、徒歩や自転車で通える都市内に設置されるのが特徴)といった家庭菜園の実績を知れば、この提案が絵空事ではないことがわかると思います。

まずはクラインガルテンを参考にして、市民農園の拡充をお願いします。「利用希望者多数につき抽選」なんて、時代遅れです。「市民農園を誰でも利用できる街○○市」。きっと魅力的な街になると思います。

全国の市長の皆様、よろしくお願いします。




参考「奇跡のリンゴ農家 木村秋則さんの自然栽培講演(2009年)」(約83分)https://youtu.be/avFe15j_Gv8?si=Wto7JsFxtMfTLsCZ














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