食物、女性、子供、財産、護符、土地、労働、奉仕、宗教的役割、位階など全てのものは譲渡され、返還される物体であると言うことである。
人と物を含む霊的な物体の永続的交換が位階、性、世帯に分かれたいくつものクランや個々人の間にあるかのように、あらゆるものが往来するのである。(マルセル・モース 贈与論 ちくま学芸文庫)

ポリネシアなどで「ポトラッチ」と呼ばれる全体的給付制度について、モースはこう述べています。

ここで「女性」が譲渡され、返還される物体であり、永続的交換がなされ往来する存在として位置づけられていますが、

「文明」の発達は、女性の往来が途絶えていく、その例が旧約聖書や日本書紀に描かれているように思います。

是の歳に、吉備上道臣田狭、殿側に侍りて、盛に稚姫を朋友に称めて曰く、「天下の麗人は吾が婦に若くは莫し。
茂に、綽にして、諸々の好備われり。曄に温りて、種の相足れり。鉛花も御わず、蘭沢も加ふること無し。曠世より儔罕ならむ。当時の独り秀たる者なり」(日本書紀巻十四)

吉備上道臣田狭さんと言う人が、友達に向かって、自分の妻の「稚媛」さんについて、

天下の麗人は自分の妻が一番だ。「文選『神女』」に出てくる「茂りなり、美なり」のフレーズを使いながら、あらゆる好ましい点が備わっている、華やかだし、表情も豊かだ、化粧をしなくても美人だ、世の中広しと言えども例をみない、現代に一人しかいないぐらいの美人だ」

と賞めまくります。

これを聞いた大泊瀬幼武(オオハツセワカタケル)天皇(後世の漢風諡号で言う「雄略天皇」)は、その稚姫を自分の妃にしてしまいます。

ここから物語は展開していきます。

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