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「ジャガイモはいつどう植えるか?」を例に、半農半Xの農家を育てる場合の伝達方法を考えてみる

菜園起業大学の受講生の方で、行政の農業教室でお子さんと一緒にジャガイモを植えたのがきっかけで受講された方がいらっしゃいます。
行政の教室では、既に出来ていた畝に用意されたジャガイモを植えるだけだったとのこと。
そこで、見沼菜園クラブでは「種ジャガを切る」、「畝を立ててジャガイモを植える準備をする」と言ったところからやっていただくことにしました。
今回、ジャガイモの植え方について、受講生の方に伝えていく中で、半農半Xの農家を育てると言う場合の「教え方」について考えるべき点をあれこれ感じました。
この点について述べていきたいと思います。


レシピ方式でなく、「考え方」を伝える

ジャガイモに限りませんが、いろいろな野菜を育てたいと言う場合、ネットや本(実用書)、種袋等の説明を見る人がほとんどだと思います。
そういう説明は、お料理のレシピのように、「3月頃、畝間1メートルぐらいに30cm間隔で植える」と言った感じで書かれていることが多いと思います。
もちろん、こういう説明で間違いはないのですが、ジャガイモを植える時期は3月ではないとダメなのか?、2月ではいけないのか?とか、畝間は1メートルでなければならないのか?、80センチではダメなのか?、1メートル20センチではダメなのか?と言うと、それらの説明も、「正しい」と言えば「正しい」のです。
では、2月に植えるのと3月に植えるのではどう違うのか?、畝間80cmと1メートル、1メートル20センチではどう違うか?、そういう「考え方」と言うか、判断の基準を伝えていく事が大事ではないかと思います。
半農半Xの農家として、自分の農園を運営していく場合、大切なのは、この判断の基準となる考え方だからです。

ジャガイモを植える時期はいつか?

では、ジャガイモを植えるのは2月、3月のどちらが良いのでしょうか?、1月ではダメなのでしょうか?、4月ではダメなのでしょうか?
この問題を考える上で大切なのは、発芽、生育、イモの肥大には「適温」が存在すると言うことです。
発芽や生育に適した温度は15℃~20℃です。あまり寒いと芽が出てきません。
それとジャガイモには自然休眠と強制休眠と言う休眠期間があります。自然休眠は、ジャガイモの収穫直後の状態で、この時期は、どんな条件でも芽は出てきません。
収穫してからしばらく経つと、強制休眠期に移行します。
強制休眠期は暖かいと芽が出るが、冷涼な状態では芽が出ない時期です。発芽適温15℃-20℃と言うのは、この強制休眠期にこの程度の温度になると発芽が始まると言う意味です。
あまりに寒い時期にジャガイモを植えるとイモは強制休眠してしまい、芽を出そうとしません。
一度、ほとんど凍結したような地面の時に、シャーベットをガリガリほじるみたいな感じで土に穴を開け、イモを植えた事があります。
もうちょっと暖かくなってから植えたジャガイモの方が先に芽を出しました。
シャーベット状態の土の中でイモは強制休眠してしまい、後から植えたジャガイモが芽を出し始めた頃、休眠から目覚めたのでしょう。
つまり、早く植えたから早く芽が出ると言うものでもなく、強制休眠しずらい時期に植えた方が、早く芽は出ると言えます。
ただ、あまり遅く植えると、今度はイモの肥大時期が盛夏になります。あまりに暑いと光合成で出来た糖分が呼吸で消耗され、「イモ」に転流されなくなります。すると、イモが太らず、収量は落ちます。
結局、寒すぎず、暑すぎずの時期を取って、見沼菜園クラブがあるさいたま市のような関東地方南部では、2-3月植え-6月採りぐらいの方法が、春ジャガイモ栽培として行われているわけです。

では、ジャガイモを植える最適期はいつか?

では、ジャガイモを植える最適な時期はいつでしょうか?
1-2月頃、まだ芽が出ていない種ジャガを買ってきた後、一個50g程度の大きさに切ります。
1-2週間すると、切り口が乾いてくるので、その頃に植えると説明しているネットや本の解説が多いようです。
その通りなのですが、植えようとする頃、ジャガイモから芽が出ているかどうかも重要な点だと思います。
芽が出ていると言うことは、その時季に種イモは強制休眠から目覚めていると思われるからです。
では、芽が「出すぎて」いたらどうなのでしょうか?
実は「出過ぎる」のも問題だと思います。
解説によっては、種ジャガを日に当てる「浴光育芽」を推奨している場合もあります。
「浴光育芽」は確かに芽がよく出ます。ただ、モノの本で、浴光育芽で発芽率が良くなることと収量には直接の関係はないと言う説明を読んだこともあります。
僕自身も「浴光育芽」をやってみて、その通りだと感じました。
地面に植える前の種イモは、どこからも養分供給がなされていません。光合成もできませんし、根も生えていないので肥料を吸う事もないからです。
この状態で発芽を促進すると、種イモ内の養分が消耗されて、イモは「シワシワ」になっていきます。
「シワシワ」を通り越して、完全に「縮んで」しまうと、地面に植えても根を出すことが出来ず、そのまま地中で腐ってしまうこともあります。
ですから、浴光育芽をするかどうかよりも、芽が適度に出て、あまり種イモが「シワシワ」、「縮み」状態にならないうちに植えるのが、「適期」なんじゃないかと思います。
ですから、ジャガイモを植える適期は2月か、3月かと言うより、その年の気象条件で、この芽が適度に出て、シワシワ・縮み状態にならない程度になる時季だと思います。
「ジャガイモは2月~3月頃に植える」と言うレシピ的な説明は、それとして正しいのですが、半農半Xであっても、自分が農家として農園運営をする立場になるのであれば、この辺の「考え方」を理解する必要がある・・・
この間の実習もそうした考えで実施しました。

畝間隔や畝の大きさは、多様にあるが、どの方式を選ぶかも「判断基準」となる考え方の理解が必要

植付け時季を決めるための考え方について書いているだけで、字数が増えてきました。
畝の間隔を80センチにすべきか、1メートルにすべきか、1メートル20センチ、あるいはそれ以上にすべきかと言う問題について、詳しく書いていると、かなり長文になってしまいます。
ですから、実習でやっている解説を全部記載はできません。
(逆に言うと、菜園起業大学の実習解説は、相当、情報量豊富だと言うことになりますね。)
ジャガイモの植え方については、
1)浅い穴を掘って、そこに種ジャガを植える方式
2)ある程度、大きな畝を作っておいて、種ジャガを植える方式

ジャガイモを植える位置についても
「浅植え」と「深植え」があります。

それから、肥料についても
A)種イモと種イモの中間におく
B)ある程度の深さに置いて、間土(種イモと肥料が直接接触しないように間に入れる土)を掛けてから、種イモを置く

方式に分かれます。
また、マルチをするのかどうか、するにしても、後で剥がして、土寄せするのか、マルチしっぱなしにしておくのかと言った違いがあります。

ですから、ジャガイモの植え方は、これらの方式の組み合わせで、かなりの多様性が出てきます。

ただ、マルチをするとなると、畝間80センチではできず、最低110センチ、できれば120センチぐらいの幅が必要になってきます。

またマルチしっぱなしで育てる場合、種イモを浅植えすると、後から着いてきたイモがマルチに接触しやすくなります。
イモの肥大期は5-6月頃なので、マルチの内側はかなり高温になり、接触したイモはマルチの内側で熱せられて腐ってしまいます。
ですから、マルチしっぱなし方式なら種ジャガは深植えにすべきです。
このように、このやり方とこのやり方の組み合わせはいいが、この組み合わせはダメと言うのがあります。
また、マルチをすると、発芽期に地温を上げ、発芽を促進する効果はあります。しかし、後から土寄せをしずらいので、マルチを剥がすか、しっぱなしにするなら、大きな畝を作る必要があります。
そして、マルチ利用は、当然ながら、マルチ代がかかるのでコスト高になります。
このように、どの方式にも「長所」と「短所」があるわけで、そこを理解して、自分(の農園)にあった方式を選ぶ必要があるわけです。
そして、菜園起業大学の実習では、各方式の特徴を伝えて、栽培法の「選び方」、「決め方」の判断基準を理解してもらうようにしています。

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