見出し画像

「農業ボランティア」を続けていれば就農できるか?

先日、「農作業のお手伝いをしたい」と言う人に「お断り」をしました。

菜園教室か、菜園起業大学の実習に参加するようにお話したのですが、ご本人は、「お金を払うことはできない、なにかお役に立つことがあれば、お手伝いにいきますので」とお返事してきました。

他の農園にも「お手伝い」に行っているようで、「就農」したいと言う気持ちもあるようです。
しかし、「お手伝い」=「農業ボランティア」を続けていて、就農できるかと言うと難しいのではと思いました。

専業農家になるにしろ、半農半Xでやっていくにしろ、僕の知る限りでは、「就農」する場合は、なにかの講座を受講しているか、農園に勤務しているか、
いずれにしても「お金」が介在しています。

僕の場合、師匠は「タダ」で教えてくれましたが、僕が育てた野菜が「売れた」ので、「売る」事を継続するにはどうしたらいいかと実践を続けているうちに、農業委員さんから「就農したらどうだ」と言われて、申請を出すことになりました。

ちょっと通常とは違うかもしれませんが、やはり「売る」と言うことで「お金」が介在しています。

今までに出会ったいろいろなパターンで就農する人、しなかった人を思い返してみて、
おそらく、何らかの形で「お金」が介在していないと、就農は難しいのではないか、農園にお手伝いに行くと言うのは、「きっかけ」とか、「体験」の範囲ではともかくとして、お金の介在しない「お手伝い」だけで、就農すると言うのは無理があるのではないかと思いました。

「就農」すると言うのは、専業にしろ、半農半Xにしろ、何らかの形で、農園を継続的に運営する必要があります。
そのためには、経費が必要で、半農半Xの場合でも、その経費をどうするか?となると、百パーセント、ボランティア活動と言うわけには行かず、ある程度、半農半Xの「半農」の部分でもお金を稼ぐ必要があります。(菜園起業)

そして、継続的にお金を稼ぐとなると、そのための「ノウハウ」が必要とされます。
その「ノウハウ」を「お手伝い」だけで学べるかと言うと、無理があるのではないかと思うわけです。

講座を受講する場合、講座の主催者側は、お金をもらっている以上、受講者の人に「就農」に役立つノウハウを伝えようと努力します。

どこかの農園に勤務する場合、雇う側は、給料を払っている以上、仕事をしてもらわないと困るので、仕事のしかたは教えると思います。この「仕事のしかた」が「ノウハウ」になります。

野菜を販売すると言う活動を継続していれば、お客さんに売るための野菜を作り続けるにはどうしたらいいかと言うことを考えざるを得ず、やはり、ノウハウの習得につながっていきます。

これに対して、無償の「お手伝い」の場合、どうかと言うと「お手伝い」を受け容れる側もあまり本気では教えない、と言うか教える手間をかけたくないと言うのが本音だと思います。

そもそも、農業は、農地の立地条件やその畑の土質などに左右されることも多く、
実際に農園運営をしている人が持っているノウハウは、「就農に至る過程で『研修』して学んだこと」プラス「その農園を運営している過程で習得したこと」と言う構造を持っています。

特に、後者については、その農園独自のノウハウですが、そのノウハウ開発にはかなりの「元手」がかかっているわけです。

「実習」にしろ、「就業」にしろ、「お手伝い」にしろ、その農園で何らかの作業をしてもらう場合、その作業の内容についての説明をする必要があります。

農園側としては、その「説明(=教える)」手間がかかるわけで、お金をもらって講座を運営しているとか、給与を払って雇っていると言う場合には、その「教える」手間をかけなければならない動機が存在します。

しかし、「お手伝い(ボランティア)」の場合には、あまり、その動機は存在しません。

結局、あまり説明しないで、やってもらえそうな作業を割り振ることになります。
同じ農園でずっと「お手伝い」を続けていれば、ある程度、勝手も分かり、多少は、「複雑な」作業をこなせるようになるかもしれません。
しかし、多少「複雑な作業」をこなせることと農園を継続的に運営するノウハウの間には、落差があります。

今回、見沼菜園クラブに「お手伝い」に来たいと言い出した人の場合、僕は、正直言って「負担」だと思いました。
「お手伝い」に来る人のために、「お手伝い」できる作業を準備しなくてはならないからです。

菜園教室とか菜園起業大学みたいに、お金をもらってやる講座だったら、対価をもらっている以上、野菜の世話について説明して、一定の内容の「農作業」を体験・実習してもらいますが、「お手伝い」の人に、そういう説明をするのは、負担でしかありません。

だから、来なくていいですと「お断り」することにしました。

そうして断られたのにも関わらず、「お金は払えないが、なにか役に゙立つことがあれば、お手伝いしたい」と言うのは、そのへんのところが分かっていないとしか言いようがありません。

そして、「そのへんのところ」が分かっていないと言うことは、農園運営の「手間」について、そもそも理解していないと言うことで、ここが理解出来なければ、就農は無理だと思いました。

講座の受講でも、農園への就職でも、野菜販売活動でもいいですが、就農のためには、単なる無償のお手伝いではなく、お金が介在する関係での実践が必要だと思います。
(きっかけとしての「農業ボランティア」や体験の一環として「農作業のお手伝い」自体を否定するものではありません。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?