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【生きてるだけで丸儲け】明石家さんまのことは嫌いだけど、彼の言ったことで救われるひとはいる

ぼくは明石家さんま、という芸人があまり好きじゃない。

若い頃から彼の番組を観て育ってきて、大笑いしてきたのだが、それでも心のどこかで拒否感があった。

今ならわかる。権力構造を感じてしまうからだ。彼の笑いには、彼の求める権力構造がある。

権力とは強制だ。彼の中にしか存在しない、彼の筋書きに沿って、出演者は笑いのピースを求められ、選別される。お笑い番組は多かれ少なかれそのような傾向があるが、彼はそれが露骨なのだ。

「それおもろいな」
「おもんないな自分」

自然、出演者は彼に同調的となり、例えば彼がお米は黒くあるべきだと唱えれば、どの演者もそうですねと答えるのだ(きっとね)。

ぼくはそういうタイプの権力者が嫌いなのだ。

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でもね、彼の言ったことで救われる人はいると思うし、少なくともぼくは救われた

彼と大竹しのぶの娘IMALUは芸能人だが、本名も大竹いまる。

さんまも公言するように、名前の由来は「生きてるだけで丸儲け」略して「いまる」だ。

「生きてるだけで丸儲け」

ふざけた名前だなと初めて聞いた頃は思ってた。

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ぼくと妻は女の子が欲しかった。特に女系家族出身の妻の女の子への渇望はすごかった。

(※余談だが、妻はフィリピン人で、ぼく自身フィリピンで生きてきた実感として、女の子の方が親に求められてるような感覚はある。仕事せず昼からブラブラして、気怠くストリートバスケしてるのはだいたい男性だけど、女性は家計を支えている人が多い気がする。)

妻は予知夢を見ると信じてるタイプなので、女の子が産まれる夢を見て、わたしは女の子を授かると確信したらしい。

ぼくも幼少期、支配的な父との抑圧された親子関係で苦しむことが多かったので、同性の男の子より女の子を望んでいた部分があった。

名前は女の子なら妻が付けて、男の子ならぼくが付けることを提案したが、ぼく自身、女の子が産まれてくるような気がして、男の子の名前を真剣に考えていなかったぐらいだ。

そして運命の日、事前検診にて産婦人科の先生に告げられるのだ。It's a boy. 男の子ですね、と。

妻の驚きの顔は忘れられない。ぼくもずどんと驚いた。

男の子、か。いやー男の子か。まったく実感が沸かなかった。幸せじゃないわけじゃない、けど男の子か。

ただ不思議なことに、帰りのタクシーで思い出したのは明石家さんまの言葉だった。「生きてるだけで丸儲け」

本当にそうだ。生きてるだけで丸儲けじゃないか。それ以上の何を望もう。母のお腹の中で生きてる命が元気に過ごしてくれてることだけで十分だ。

男の子か、考えもしなかったけど嬉しいなと思えた。

家に着き、カソリックの妻には「これもきっと神の思し召しだ。神が男の子を与えてくれるなら、喜んで受け取ろう」と伝えたら、同意してくれた。妻も道中、同じようなことを考えていたらしい。

その後子どもが無事産まれ、先天性の病気はあるが、日常生活には問題なく、今では家中を走り回るやんちゃ坊主に成長した。

生意気で繊細で独占欲の強い優しい子になった。ぼくは彼の複雑な個性が好きだし、妻も同様だろう。

望んだ性の子どもではなかったが、彼がただ生きてくれているだけで奇跡と思える。

さすが言葉繰りのプロは違う。明石家さんまの生きてるだけで丸儲けは正しい。ぼくは彼に救われたのだ。

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