デジタルバレンタイン【毎週ショートショートnote】
私は恋人とハグした後、仕事場に向かう。
動く歩道で大通りまで出て、タクシーに乗って空を飛ぶ。
オフィスに到着し、自席に着くと、目の前の空間に、私が工事監督を務める現場の映像が現れた。
無人のショベルカーが土を掘り、ドローンが上空から写真を撮り、レーザースキャナーが測量している。
私は遠隔臨場で現場の様子を確認しながら、報告書の作成に取りかかった。
午後、請負業者とのWeb会議。
現場代理人の茶色い作業着を見て思い出した。
そうだ、今日はバレンタインだ。
彼にチョコレートを渡さなければ。
仕事を終えると私は急いで家に帰った。
彼はいつものように手を振って出迎えてくれた。
私はとっておきの画像を送信した。
彼の胸の画面にチョコレートの詰め合わせが表示される。
「アリガトウ」
照れたように首を動かす彼が愛おしい。
「オカエシ二、ドウゾ」
私の胸の画面には、ホワイトチョコレートが表示された。
「アリガトウ。キガハヤイヨ」
私たちは最高の夜を過ごした後、お互いに充電ケーブルを差し込んだ。