レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】
スーパーでカゴに入れられたあの日から2年が経つ。
カレーとビーフシチューと私。
食器棚の引き出しの中で、最高に楽しい日々を過ごしてきた。
私たちの賞味期限はもうすぐ切れる。
少しピリッとしてるけど、意志の強さが魅力的な彼。
トロトロしていてマイペースだけど、優しい彼。
どうやらふたりとも、私のことが好きみたい。
私はふたりのことを大切に思っている。
どちらかと一緒になることで、選ばれなかった方を傷付けてしまうぐらいなら、私は単体で食べられたい。
……。
やっぱり、ちょっと綺麗事だっかも。
本当は、カレーのことが好き。
どうかカレーと一緒になれますように。
そして、その日はやってきた。
「夕飯はビーフシチューにするか。ハンバーグも入れよう」
引き出しから取り出されたのは、ビーフシチューと私だった。
ふたり混ざり合ったとき、ビーフシチューは嬉しそうに言った。
「ずっと君のことが好きだったんだ」
「私もよ」
気丈なふりをしているのに、溢れ出る肉汁を止められなかった。