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第56回定期演奏会 曲目解説

・・・・・ 第一部 ・・・・・

●アルセナール

 この曲は、ベルギーのメヘレンという都市を本拠地とする鉄道工場吹奏楽団の、創立50周年を記念して作曲されました。
 格調高い式典行進曲をイメージして書かれたコンサートマーチを、今回はオープニングとして演奏いたします。ファンファーレの華やかさや、中間部の優雅で美しいメロディをお楽しみください。

●ペドロの奇跡の夜

 この曲は、心優しい少年に訪れた、ある一晩の物語をもとに作られました。

 今日はクリスマス。町の教会の鐘は、この日に神様の望む贈り物をすることで美しい音色を奏でるそうですが、人々がどんなに豪華な贈り物をしても鐘は鳴りません。
ペドロという少年とその弟も贈り物をしようと町へ向かいますが、道に倒れている女性を見つけます。ペドロは女性を助けるため贈り物を弟に託してその場へ残りました。弟が1人で教会に行き、贈り物の銀貨1枚を捧げた瞬間、鐘は素晴らしい音を鳴り響かせました。神様が望む贈り物とは豪華なものでなく、ペドロのような優しい心だったのです。

 木管の美しいメロディや金管の猛々しいテーマなどによって、兄弟を取り巻くクリスマスの夜の情景をお届けいたします。ぜひストーリーと合わせてお楽しみください。

・・・・・ 第二部 ・・・・・

●さくらのうた

 2012年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲で、課題曲としては珍しくゆったりとしたテンポが特徴です。
 作曲者は、「サクラを愛でながら思いを馳せるその心が、人によってまったく違うのと同じように、音楽のしなやかな変化を信じて、自分たちだけの『さくらのうた』を演じていただけたら嬉しいです。」と述べ、演奏者に表現が委ねられています。
 桜の華やかさだけでなく儚さも表現されたこの曲を、今回は少人数のフレキシブル・アンサンブルで演奏いたします。私たちだけの「さくらのうた」をお楽しみいただければ幸いです。

●喜歌劇「こうもり」セレクション 

 作曲者のヨハン・シュトラウスⅡ世は、『美しき青きドナウ』、『皇帝円舞曲』など数々の有名なワルツを作曲しました。「ワルツ王」の名で親しまれる彼が書いた『こうもり』はオペレッタの最高傑作と言われており、現在でも大晦日の定番としてウィーン国立歌劇場で上演されています。
 オペレッタは、日本語で「喜歌劇」と訳されるように、コメディ要素の強い軽妙な筋書きと歌が特徴的な音楽劇の一種です。『こうもり』も仮面舞踏会を舞台にした復讐劇ですが、悲しい物語ではないことが曲調にも表れています。中間部分の静かな場面では、別れを惜しむような切ない旋律の中に挟み込まれる明るいメロディに、抑えきれないパーティーへの気持ちが見え隠れしています。各所に散りばめられた小粋でお洒落な音色や、舞踏会のような躍動感あふれるメロディをお楽しみください。

・・・・・ 第三部 ・・・・・

●三つのジャポニスム

 日本を代表する吹奏楽の作曲家である、真島俊夫先生によって2001年に作曲されました。彼自身が日本的だと感じるものを、西洋的な楽器編成、音階、ハーモニー等の語法にこだわって表現した、3曲から成る組曲です。
 ジャポニスムとは、日本から渡った浮世絵や工芸品などの美術に影響を受け、19世紀後半のフランスを中心におこった日本美術ブームです。浮世絵からインスピレーションを受けたゴッホの作品やプッチーニの「蝶々夫人」などが有名です。
 第一楽章「鶴が舞う」は、丹頂鶴の求愛の踊りをイメージしています。曲中では、丹頂鶴の雄と雌の鳴き声のやり取りを様々な楽器を用いて表しています。また、今回の演奏では鶴が舞う様子をある道具を使用して表現します。
 第二楽章「雪の川」は、冬の渓谷を静かに流れる川に雪がしんしんと降り続ける、水墨画のような光景を描写しています。
 第三楽章「祭り」は、日本の激しい夏祭りを描いており、様々な祭りのリズムが目まぐるしく登場します。その中には、真島先生の母の生まれ故郷である青森の「ねぶた」のリズムも使われています。中間部の落ち着いた部分では、青空に入道雲が浮かんでいる炎天下の夏の光景を表現しています。
 3つの異なる「ジャポニスム」を私たちのサウンドでお届けいたします。ぜひ情景を思い浮かべながらお楽しみください。

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