常識を作る側

先週誕生日を迎えた。

毎年ノーベル賞ウィークになると、自分の誕生日を思い出す。今年の科学系は分かりやすい感じのラインナップで個人的には好きである。ノーベル賞は広大な学術の世界でどういう潮流があるのかをある程度把握する簡単な指標にはなるが、それは一過性のあるトレンドへの評価ではない。デニムとかヒートテックのような、新しい常識を拓いたようなものが取り上げられる。私自身の研究にもノーベル賞受賞研究の恩恵が散りばめられていたりする。それはデニムを履き、ヒートテックを着ている。そこにどんなものを合わせておしゃれにしていくかってのが私の仕事である。今年の誕生日は化学賞発表の日で、実は本記事の本来の投稿日だった。当日に投稿して、歌えや祝えやと自己顕示欲を全面に出すチャンスを無碍にしてしまった。冗談はさておき、たびたび更新が遅れて本当に申し訳ない。

誕生日には、職場に抹茶ティラミスを作って持っていった。誕生日の人が何かしらスイーツなどを持っていくという伝統があるのだけれど、これがなかなか良い。まず、「私今日誕生日なんですよねェ」と、お祝いの言葉の催促ぽいことをしなくて良いのだ。人間だもの、誕生日くらいおめでとうって言われたい。でも自分から話題に出すのは厚かましい気がして嫌だ。そういう時の現物投資である。みんなおめでとうと言ってくれるし(盛ってない、まじでみんな)、ボスはわざわざオフィスまでおめでとうの握手しにくるし、15時になればみんなでキッチンに集まり食っちゃべる。抹茶ティラミスはというと、1キロのマスカルポーネチーズを使って作ったでかいタッパ2つ分があれよあれよと無くなった。かなり好評だった、嬉しかった。祝われずに1人さみしい思いをせずに、なんならwin-winでフィニッシュできるこの制度、私は推せます。

その後余った抹茶パウダーは、ここ最近毎日のように抹茶ラテを作って消費している。抹茶って美味いのよ、知らなかった。抹茶とブラウンシュガーを小さじ2杯ずつコップに入れて、少量のお湯で溶かす。そこになんかしらのミルクを入れてあっためる。そんだけ。余談だが「Iced matcha latte」で始まる歌が流行った時、ベルリン中のカフェの抹茶ラテが売り切れたらしい。そんなおしゃれトレンディな飲み物だったとはつゆ知らず、これまでに抹茶を好んで常飲していたことはなく、飲んでもなんかしっくりこなくて好きではなかった。ところがどっこい、昨日なんかは晩御飯の鶏すき焼きを食べてる最中に、急に食後の抹茶ラテのことを考えだして機嫌が急激に良くなっていくのを感じた。今はネスプレッソのミルクフォーマー機能を駆使してあっため攪拌しているが、IKEAなんかで売ってるちっさいフォーマーを買っても良いかもしれない。今週IKEAに行こう、誕生日クーポンも送られてきたことだし。

ところで、ティラミスやラテと組み合わさって愛されるなんて、抹茶自身は思ってもみなかっただろう。世の中は工夫と思考に溢れている。どんな新しい常識が生まれているのか、私は何か常識を確立するのか、自分がもっと歳をとったときにそれらを見るのが楽しみだ。

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